―妖眼幻視行―
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空の上を飛行機が飛んでいく。思わず立ち止まって見上げたシルビの顔面に、チェインが揃えた両足で着地してきた。
彼女としてはシルビの頭へ着地するつもりだったのだが、予想外にシルビが見上げたせいで顔面になってしまったらしい。慌ててどいた先はシルビの肩である当たり、並んで立つつもりはないようだった。顔についた靴跡を拭うように顔を払う。
「……お帰りなさい。どうでした?」
「バッチリ」
親指を立てるチェインを肩へ乗せたまま、携帯を取り出しつつ歩き出した。例の模倣犯の捕縛にやっと取りかかることになり、チェインに下見をしてきて貰ったのである。この後近くに待機している警察と連携して模倣犯を捕縛して、事情聴取の結果を警察から貰えばシルビの役目は終わりだ。
「昼食前には終わりそうですね。終わったらレオ君達の手伝いに行こうかなぁ」
「レオ、見送りに行ったのかな」
今日はミシェーラとトビーがヘルサレムズ・ロットを去る日だった。
あれからレオは順調に回復し、一度は斬り落とされた指も【神々の義眼】にも問題はなく、再びライブラの一員としての役目を全うしている。ここ数日は妹と義弟と一緒に過ごしていたようだが、確かスティーブンの計らいで労災と有給扱いになっていた筈だ。
自分からバラしたとは言え、今まで知らなかったライブラメンバーへも知らせる形になったシルビの正体(正体というには中途半端だが)のことは、とりあえずは受け入れてもらっている。ザップが『馬男』と言ってきた時は全力で否定させてもらったが。偶蹄目だが馬ではない。
ちなみにK・Kからは『ここまで面倒臭いとは思ってなかったけど今更ね』という有り難いお言葉を頂戴している。チェインはチェインで『今度尻尾触らせて』だった。
そういう諦観からであっても呆れからであっても、シルビという『化け物』を受け入れる人が一人でも居るから世界は愛おしい。
「空港まで見送りに行ってたら間に合わねぇ時間じゃありませんでした? 作戦決行時間」
「シルビが送り迎えしてあげれば良かった」
「……気付きませんでした」
自分の能力のことを言われて思い出す。移動時間を考慮しなくて済むのが【空間転移】の強みだというのに。
呆れた様子でチェインがシルビの頭の上へ移動してしゃがむ。降りる気はないらしい。軽いしもう慣れてしまって邪魔にもならないので構わないが、激しく動く時になったらやはり降りてもらいたいと思った。
シルビの携帯が鳴って警察の、ダニエル警部の部下の男からの連絡が入る。模倣犯の潜伏先への突入まで後少し。
「……今日は戻ったらドーナッツでも作ろうかなぁ」
化け物が一匹居ようがなんだろうが、生きている限りはヘルサレムズ・ロットの日常も変わりなく続いていくらしい。
彼女としてはシルビの頭へ着地するつもりだったのだが、予想外にシルビが見上げたせいで顔面になってしまったらしい。慌ててどいた先はシルビの肩である当たり、並んで立つつもりはないようだった。顔についた靴跡を拭うように顔を払う。
「……お帰りなさい。どうでした?」
「バッチリ」
親指を立てるチェインを肩へ乗せたまま、携帯を取り出しつつ歩き出した。例の模倣犯の捕縛にやっと取りかかることになり、チェインに下見をしてきて貰ったのである。この後近くに待機している警察と連携して模倣犯を捕縛して、事情聴取の結果を警察から貰えばシルビの役目は終わりだ。
「昼食前には終わりそうですね。終わったらレオ君達の手伝いに行こうかなぁ」
「レオ、見送りに行ったのかな」
今日はミシェーラとトビーがヘルサレムズ・ロットを去る日だった。
あれからレオは順調に回復し、一度は斬り落とされた指も【神々の義眼】にも問題はなく、再びライブラの一員としての役目を全うしている。ここ数日は妹と義弟と一緒に過ごしていたようだが、確かスティーブンの計らいで労災と有給扱いになっていた筈だ。
自分からバラしたとは言え、今まで知らなかったライブラメンバーへも知らせる形になったシルビの正体(正体というには中途半端だが)のことは、とりあえずは受け入れてもらっている。ザップが『馬男』と言ってきた時は全力で否定させてもらったが。偶蹄目だが馬ではない。
ちなみにK・Kからは『ここまで面倒臭いとは思ってなかったけど今更ね』という有り難いお言葉を頂戴している。チェインはチェインで『今度尻尾触らせて』だった。
そういう諦観からであっても呆れからであっても、シルビという『化け物』を受け入れる人が一人でも居るから世界は愛おしい。
「空港まで見送りに行ってたら間に合わねぇ時間じゃありませんでした? 作戦決行時間」
「シルビが送り迎えしてあげれば良かった」
「……気付きませんでした」
自分の能力のことを言われて思い出す。移動時間を考慮しなくて済むのが【空間転移】の強みだというのに。
呆れた様子でチェインがシルビの頭の上へ移動してしゃがむ。降りる気はないらしい。軽いしもう慣れてしまって邪魔にもならないので構わないが、激しく動く時になったらやはり降りてもらいたいと思った。
シルビの携帯が鳴って警察の、ダニエル警部の部下の男からの連絡が入る。模倣犯の潜伏先への突入まで後少し。
「……今日は戻ったらドーナッツでも作ろうかなぁ」
化け物が一匹居ようがなんだろうが、生きている限りはヘルサレムズ・ロットの日常も変わりなく続いていくらしい。
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