―妖眼幻視行―
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ブラッドベリ総合病院へ救急搬送されたレオは、あの異界存在によって右手の指を斬り飛ばされていた。更には時間と隙を作る為に【神々の義眼】の能力をフル回転させていたらしく、眼の周りの肉が酷い火傷を負い、脳にも少し支障が出ていたらしい。
手術室へ運ばれるまでの間、シルビが応急処置と過負荷を起こしていたレオの脳から情報処理を引き受けた訳だが、先にシルビも無理して【×××】を使っていた為、レオの手術が終わるまでの間に吐いてしまった。それをブラッドベリの薬局長になっていたジョン・ワタベ店長に見つかり、点滴を打たれたのも嫌な思い出である。
異界存在に拘束されて擬態されてしたらしいレオの妹ミシェーラの婚約者、トビー・マクラクランも無事に救出され問題無し。ミシェーラ本人も車椅子の軽い故障と、顔に出来た切り傷だけで、切り傷に関しても綺麗な切断面であったことから傷跡も残らず直るらしい。婚前でなくとも女性の顔に傷が残るのは良くないことだ。
術後経過に問題は無し。過負荷を起こしかけていた脳に障害が残ることもなく、【神々の義眼】にも問題は無い。
問題は、無い。あるとすればそれはシルビの内心の話だ。
「力が欲しいと思ったことはあんまり無かったんです」
隣を歩く女医のルシアナが横目でシルビを眺める。シルビの手にはあの騒動の日から入院しているレオへの見舞いの品として、アイスが入った袋が提げられていた。とはいえ多分レオはまだ食べられない。
「力を失って『化け物』に戻って、後悔しなかったのはほんの数時間で、数年の昏睡状態から目が覚めたら後悔しかなかった。俺が力を失ったのは別に皆と同じ高さへ戻れたとかそういうことじゃなくて、ただ『喪失した』だけだったんです」
だから『取り戻したい』と思った。あの日の後悔は今もじわじわとシルビを苛んでいる。
「友人も守れねぇ今の自分が許せねぇんです」
「……それはちょっと分かるよ。私も患者を助けたい医者だからね」
レオの病室の前に到着すると、中からザップ達の声がした。ザップの他にK・Kやチェイン、ツェッドも来ているらしくザップへ呆れた声で突っ込む声も聞こえる。
それに紛れてレオの笑い声が聞こえて、シルビはルシアナへ持っていた袋を渡して【白澤】の姿になった。ルシアナによって病室の扉が開けられ、中にいたザップ達が振り返って黙り込む。
唯一目の見えないミシェーラと目に包帯の巻かれているレオが、静かになった病室に声を上げた。
「誰か来たの?」
かし、と蹄が床を掠る。
手術室へ運ばれるまでの間、シルビが応急処置と過負荷を起こしていたレオの脳から情報処理を引き受けた訳だが、先にシルビも無理して【×××】を使っていた為、レオの手術が終わるまでの間に吐いてしまった。それをブラッドベリの薬局長になっていたジョン・ワタベ店長に見つかり、点滴を打たれたのも嫌な思い出である。
異界存在に拘束されて擬態されてしたらしいレオの妹ミシェーラの婚約者、トビー・マクラクランも無事に救出され問題無し。ミシェーラ本人も車椅子の軽い故障と、顔に出来た切り傷だけで、切り傷に関しても綺麗な切断面であったことから傷跡も残らず直るらしい。婚前でなくとも女性の顔に傷が残るのは良くないことだ。
術後経過に問題は無し。過負荷を起こしかけていた脳に障害が残ることもなく、【神々の義眼】にも問題は無い。
問題は、無い。あるとすればそれはシルビの内心の話だ。
「力が欲しいと思ったことはあんまり無かったんです」
隣を歩く女医のルシアナが横目でシルビを眺める。シルビの手にはあの騒動の日から入院しているレオへの見舞いの品として、アイスが入った袋が提げられていた。とはいえ多分レオはまだ食べられない。
「力を失って『化け物』に戻って、後悔しなかったのはほんの数時間で、数年の昏睡状態から目が覚めたら後悔しかなかった。俺が力を失ったのは別に皆と同じ高さへ戻れたとかそういうことじゃなくて、ただ『喪失した』だけだったんです」
だから『取り戻したい』と思った。あの日の後悔は今もじわじわとシルビを苛んでいる。
「友人も守れねぇ今の自分が許せねぇんです」
「……それはちょっと分かるよ。私も患者を助けたい医者だからね」
レオの病室の前に到着すると、中からザップ達の声がした。ザップの他にK・Kやチェイン、ツェッドも来ているらしくザップへ呆れた声で突っ込む声も聞こえる。
それに紛れてレオの笑い声が聞こえて、シルビはルシアナへ持っていた袋を渡して【白澤】の姿になった。ルシアナによって病室の扉が開けられ、中にいたザップ達が振り返って黙り込む。
唯一目の見えないミシェーラと目に包帯の巻かれているレオが、静かになった病室に声を上げた。
「誰か来たの?」
かし、と蹄が床を掠る。