―妖眼幻視行―
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「奢ってくれるぅ? ダーリン」
「割り勘に決まってるだろハニー」
模倣犯がジャンクフード店へ入ったので、シルビも模倣犯を尾行していた人物と一緒にその店へと入って客の振りをする。模倣犯はどうやら店内で食べるらしく、注文した品が来る前にテーブル席へと座っていた。
一番早く出来そうで量とカロリーの少ないセットを注文して、シルビはもう一人と一緒に模倣犯が座る席からそう遠くない場所へ座る。そうして頬杖を突いて連れと談笑している雰囲気を作りながら、模倣犯を尾行していたもう一人へ話しかけた。
「警部さんが警部補さんから昇級したらしいですね」
「ああ。スカーフェイスからか?」
「お兄さんは昇級は?」
「してない」
HLPDのダニエル・ロウ警部の部下の男である。つまり警察官だ。
秘密結社と警察という公にしにくい関係であるが、情報交換や取引を行なう関係で密談を交わすことがある。そうでなくともライブラが出動するような騒動の現場には警察が付き物で、スティーブンの密談に護衛やお付きとして付いて行ったり、騒動の現場で顔を合わす為にだんだんとそれなりに親しくなった相手だった。
とはいえ互いに名前を名乗ったりはしていない。そこまで親しくはならないという線引きのようでいて、明確な理由は特にないが。
「で、お前は何であの男を尾行してんだ」
「最近勃発してる事件の犯人だからです。お兄さんだって同じ理由でしょう?」
「まあな」
「模倣犯であることは?」
「……今確定したな。証拠は」
「後で情報交換しましょう。この件についてはスターフェイスから一任されてますしぃ」
「減給も決まった……」
「警察に恩売るの楽しいなぁ。ふふっ」
「セット奢ってやるよダーリン」
「やっすい恩の返し方ですねぇハニー」
互いに顔を見合わせて笑みを浮かべる。正直シルビはジャンクフードのセットを奢って貰うまでもなく、この情報はリークするつもりだった。
シルビやライブラが欲しいのはその模倣犯が、どのように模倣元の犯行の詳細を知ったかだ。その為には模倣犯は警察へ熨斗をつけてくれてやっていい。ダニエル警部の部下もシルビがそう考えている事には気付いているだろうが、模倣であっても事件の犯人である以上逮捕する必要があるので警察である彼にこの取引は断れないだろう。
模倣犯の元に店員が注文の品を運んでいき、模倣犯が行儀悪く携帯をいじりながら食べ始める。シルビ達の元にも届けられた料理に、シルビ達が包装を解いたところでダニエル警部の部下とシルビの携帯が鳴った。
メールだったシルビと違い、電話だったらしい部下の男が電話に出て短い会話をしてから、食べかけだったセットをシルビのトレーへと移動させてくる。そんなに食べられないし食べる気も無いので軽く睨むと、部下の男はそんなシルビに気付かず尾行していた模倣犯を眺めていた。
「事件ですか」
「らしい」
模倣犯を悔しげに睨んでいるのは、せっかくの機会だというのに尾行が続けられないという理由からだろう。シルビも同じように携帯をいじりながら食べている模倣犯を見やってからバーガーの最後の一口を飲み込んだ。
「お送りしましょう。一応【空間転移】能力者ですし、多分今日はもう尾行出来ません」
立ち上がりかけていた部下の男がシルビを見るのに模倣犯ではなく窓から見える店の外を指差す。店の前に停まった車から降りてきた異界人は模倣犯の知人だったはずだ。
シルビ同様それは知っていたらしい部下の男が舌打ちをこぼすのに、トレーの上を軽く片付けながらシルビも立ち上がって部下の男を促し店を出る。出入り口で模倣犯の知人である異界人とすれ違ったが、特に警戒などはされていなかった。
友人を急かして歩く通行人ぶって歩きながら店から離れる。程々に離れたところで歩調を緩めると部下の男が店を振り返りながら隣へ並んだ。
「足を呼ばれたのか」
「多分そうだと思います。ただ、尾行してたのが俺達だとは分かってなかったでしょうね」
「なら続けられたんじゃないのか?」
「正直、気分転換がしたくなったんですよ」
「は?」
予想していない返答だったのか部下の男が気の抜けた声を発する。シルビとしてもこれは仕事放棄だと分かっていたのだが、携帯に来た『レオの妹可愛い』なんてメールを読んでしまっては真面目に尾行をする気も失せるというものだ。
「しかも何だぁこの添付写真。スティーブンさんとクラウスさんどころか主要メンバーの殆どがこっそり写ってるとかさぁ! 俺だけぇ? 俺だけなのかぁ真面目に尾行とかやってたのぉ! 護衛も確かに大切な仕事だと思うよ? むしろ推奨してぇよ俺は。でもさぁああああ!」
「……まあ、なんだ。ご苦労さん」
「ありがとうお兄さん……」
慰めにくいだろう愚痴をこぼしながら人気のない路地へ入り込んで指を鳴らす。目の前に燃え上がった炎へ驚く部下の男を引っ張るようにしてその炎の輪を潜れば、目の前にはダニエル警部とパワードスーツを着た警官達。
いきなり現れた炎へ驚いて警戒していたようだが、出てきたのが自分の部下とライブラのメンバーであるシルビだと気付いて、すぐにどういう事かを理解したらしいダニエル警部は凄いと思う。
「割り勘に決まってるだろハニー」
模倣犯がジャンクフード店へ入ったので、シルビも模倣犯を尾行していた人物と一緒にその店へと入って客の振りをする。模倣犯はどうやら店内で食べるらしく、注文した品が来る前にテーブル席へと座っていた。
一番早く出来そうで量とカロリーの少ないセットを注文して、シルビはもう一人と一緒に模倣犯が座る席からそう遠くない場所へ座る。そうして頬杖を突いて連れと談笑している雰囲気を作りながら、模倣犯を尾行していたもう一人へ話しかけた。
「警部さんが警部補さんから昇級したらしいですね」
「ああ。スカーフェイスからか?」
「お兄さんは昇級は?」
「してない」
HLPDのダニエル・ロウ警部の部下の男である。つまり警察官だ。
秘密結社と警察という公にしにくい関係であるが、情報交換や取引を行なう関係で密談を交わすことがある。そうでなくともライブラが出動するような騒動の現場には警察が付き物で、スティーブンの密談に護衛やお付きとして付いて行ったり、騒動の現場で顔を合わす為にだんだんとそれなりに親しくなった相手だった。
とはいえ互いに名前を名乗ったりはしていない。そこまで親しくはならないという線引きのようでいて、明確な理由は特にないが。
「で、お前は何であの男を尾行してんだ」
「最近勃発してる事件の犯人だからです。お兄さんだって同じ理由でしょう?」
「まあな」
「模倣犯であることは?」
「……今確定したな。証拠は」
「後で情報交換しましょう。この件についてはスターフェイスから一任されてますしぃ」
「減給も決まった……」
「警察に恩売るの楽しいなぁ。ふふっ」
「セット奢ってやるよダーリン」
「やっすい恩の返し方ですねぇハニー」
互いに顔を見合わせて笑みを浮かべる。正直シルビはジャンクフードのセットを奢って貰うまでもなく、この情報はリークするつもりだった。
シルビやライブラが欲しいのはその模倣犯が、どのように模倣元の犯行の詳細を知ったかだ。その為には模倣犯は警察へ熨斗をつけてくれてやっていい。ダニエル警部の部下もシルビがそう考えている事には気付いているだろうが、模倣であっても事件の犯人である以上逮捕する必要があるので警察である彼にこの取引は断れないだろう。
模倣犯の元に店員が注文の品を運んでいき、模倣犯が行儀悪く携帯をいじりながら食べ始める。シルビ達の元にも届けられた料理に、シルビ達が包装を解いたところでダニエル警部の部下とシルビの携帯が鳴った。
メールだったシルビと違い、電話だったらしい部下の男が電話に出て短い会話をしてから、食べかけだったセットをシルビのトレーへと移動させてくる。そんなに食べられないし食べる気も無いので軽く睨むと、部下の男はそんなシルビに気付かず尾行していた模倣犯を眺めていた。
「事件ですか」
「らしい」
模倣犯を悔しげに睨んでいるのは、せっかくの機会だというのに尾行が続けられないという理由からだろう。シルビも同じように携帯をいじりながら食べている模倣犯を見やってからバーガーの最後の一口を飲み込んだ。
「お送りしましょう。一応【空間転移】能力者ですし、多分今日はもう尾行出来ません」
立ち上がりかけていた部下の男がシルビを見るのに模倣犯ではなく窓から見える店の外を指差す。店の前に停まった車から降りてきた異界人は模倣犯の知人だったはずだ。
シルビ同様それは知っていたらしい部下の男が舌打ちをこぼすのに、トレーの上を軽く片付けながらシルビも立ち上がって部下の男を促し店を出る。出入り口で模倣犯の知人である異界人とすれ違ったが、特に警戒などはされていなかった。
友人を急かして歩く通行人ぶって歩きながら店から離れる。程々に離れたところで歩調を緩めると部下の男が店を振り返りながら隣へ並んだ。
「足を呼ばれたのか」
「多分そうだと思います。ただ、尾行してたのが俺達だとは分かってなかったでしょうね」
「なら続けられたんじゃないのか?」
「正直、気分転換がしたくなったんですよ」
「は?」
予想していない返答だったのか部下の男が気の抜けた声を発する。シルビとしてもこれは仕事放棄だと分かっていたのだが、携帯に来た『レオの妹可愛い』なんてメールを読んでしまっては真面目に尾行をする気も失せるというものだ。
「しかも何だぁこの添付写真。スティーブンさんとクラウスさんどころか主要メンバーの殆どがこっそり写ってるとかさぁ! 俺だけぇ? 俺だけなのかぁ真面目に尾行とかやってたのぉ! 護衛も確かに大切な仕事だと思うよ? むしろ推奨してぇよ俺は。でもさぁああああ!」
「……まあ、なんだ。ご苦労さん」
「ありがとうお兄さん……」
慰めにくいだろう愚痴をこぼしながら人気のない路地へ入り込んで指を鳴らす。目の前に燃え上がった炎へ驚く部下の男を引っ張るようにしてその炎の輪を潜れば、目の前にはダニエル警部とパワードスーツを着た警官達。
いきなり現れた炎へ驚いて警戒していたようだが、出てきたのが自分の部下とライブラのメンバーであるシルビだと気付いて、すぐにどういう事かを理解したらしいダニエル警部は凄いと思う。