―妖眼幻視行―
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レオが頭突きに失敗してブラッドベリ総合病院へ入院した。
ツェッドから話を聞いたらザップがやらかした結果らしい。頭以外に怪我はないので、目が覚めて少し検査したら即退院出来るらしく、見舞いに行く必要はないと言われた。
本当はスティーブン経由でその知らせを聞いた段階で病院へ行こうとしたのだが、スティーブンに宥められてシルビは病院へ行かせてもらえていない。
一応様子を見に病院へ寄るというスティーブンへ頼まれて、先に事務所へ戻って事務所のキッチンで昼食を作っている最中に戻ってきたザップを、スティーブンとK・Kに怒られていたのをチェインが嬉々として写真へ納めていたのはある意味いつものことである。
「じゃあ本当に頭をぶつけただけなのかぁ」
「ええ。兄弟子の不手際が無かったとは言えませんけれど」
「俺達と同じ感覚で小突いちゃ駄目なんだよなぁ」
同じく戻ってきたツェッドの話では入院したとは言え殆ど気絶しているだけの様なもので、そう重傷でもないらしい。
デミグラスソース掛けオムライスが完成したので運んでいけば、スティーブンとK・Kもやっとザップを解放した。
今日は珍しく全員が揃っていたのだが、レオが入院してしまったのでレオだけいない。大の大人がローテーブルを囲んでオムライスを頬張る光景は、見た目的に一番若いレオがいなくとも随分と秘密結社らしくなかった。
とはいえ、では誰がいれば秘密結社らしいのかと訊かれても答えられないのだが。
「んー美味しい! モルツォグァッツァでのバイトはまだやってるんだっけ?」
「ええ。今のところバイトはそれだけですけど」
舌鼓を打つK・Kにそう答えればスティーブンから物言いたげな視線を受けたが無視した。ヘルサレムズ・ロットの外での『副職』はあるが、ヘルサレムズ・ロット内での職といえばライブラとあのレストランだけであるし、更に言うならバイトはモルツォグァッツァだけなので間違ったことは言っていない。
「ブラッドベリに勤めようとは思わないの? 薬局の店長さんそこに行ったんでしょ?」
「薬剤師ばっかりそんなに入れねぇと思いますよ? いくらルシアナ先生が分裂出来るとはいえ、欲しいのはやっぱり医者や看護師の手でしょうしぃ」
そもそもシルビは薬剤師といっても本来の専門は漢方薬だ。【白澤】になってから結果的に薬剤師になっただけでもあるので、医者でも良くはあったが。
「シルビは医者になろうとは思わなかったの?」
「闇医者になら今すぐなれます。医療技術は叩き込んでありますし」
ローテーブルを囲んでオムライスを頬張っていたライブラメンバーが、揃ってシルビを見た。その眼はクラウス以外驚愕の念が浮かんでいる。クラウスはどうやら感心の念だ。
薬の知識や医者の知識に関わらず、シルビが持つ技術というものは経験を除いて全てが元々【×××】によって与えられたモノだった。
必要不必要に拘らず、シルビが求めるか否かにも関わらず、その森羅万象有相無相の知識はシルビの脳へ詰め込められる。
本来であれば人間一人の脳が処理出来る情報量は限度があり、レオが【神々の義眼】を使う際にその眼へ熱を持つのはその類だ。レオの脳が【義眼】によってもたらされる情報の処理に追いつけない。
けれどもシルビの脳はそうはならないのである。激しい頭痛に吐き気や熱を出す事はあるものの、長い年月を経て処理のペースは把握出来る様になった。
更に言うなら、そうして過負荷を起こしているレオと接触することでレオの脳が行なっている情報を引き受ける事も出来る。それは以前魔法使いの少年ハリーに行なった記憶伝達の応用なのだけれど、そう言うことが出来る時点で、シルビの脳が『異常』である事は断言できた。
大体にして存在自体が異常なのだから今更という話かもしれないが。自覚の無かった神性存在の落ち零れ。
「そもそも『眼』が足りねぇ時点で、俺は現在神性存在じゃなくて化け物なんだと思ってる訳ですよ」
「最初の時に言ってたね」
「五年前の事件のことは」
「……牙狩り本部に調査報告書はあったよ。でも一番重要な事件の原因が書かれていなかった」
向かい合って置かれた机に着席して、報告書の確認や調査資料の確認をしているスティーブンと互いに顔を上げずに話す。シルビはスティーブンの手伝いで、集中力を途切れさせない程度の雑談を始めたのはスティーブンの方からだった。
その内容がオムライスのソースはデミグラスかケチャップかという話から、シルビの『正体』の話になった流れはもう思い出せない。話せない部分はキッチリと答えずにその会話を続けて、五年前の『とある事件』を持ち出したのはシルビだ。
「その事件で結果的に君は『眼』とやらを奪われた。だがシルビ。曲がりなりにも神性存在であった君がやられてしまうような相手だったのか?」
「どうでしょう。俺が最善だと思ってとった手段の結果こうなっただけで、もしかしたら他の手があったかもしれねぇ」
最善だと思って選んだ手段の結果、シルビは数年寝たきり状態になって家族や友人達に多大な心配と迷惑を掛け、元に戻らない力に自分からいらないと思っていたその力を再び集める作業をしている。理不尽かつ傲慢な行動だとは何度も思った。
けれどもそれ以上に、シルビの事を案じてくれた全員へ申し訳ないと思ったのだ。
「後悔があるのなら諦められねぇでしょう?」
ツェッドから話を聞いたらザップがやらかした結果らしい。頭以外に怪我はないので、目が覚めて少し検査したら即退院出来るらしく、見舞いに行く必要はないと言われた。
本当はスティーブン経由でその知らせを聞いた段階で病院へ行こうとしたのだが、スティーブンに宥められてシルビは病院へ行かせてもらえていない。
一応様子を見に病院へ寄るというスティーブンへ頼まれて、先に事務所へ戻って事務所のキッチンで昼食を作っている最中に戻ってきたザップを、スティーブンとK・Kに怒られていたのをチェインが嬉々として写真へ納めていたのはある意味いつものことである。
「じゃあ本当に頭をぶつけただけなのかぁ」
「ええ。兄弟子の不手際が無かったとは言えませんけれど」
「俺達と同じ感覚で小突いちゃ駄目なんだよなぁ」
同じく戻ってきたツェッドの話では入院したとは言え殆ど気絶しているだけの様なもので、そう重傷でもないらしい。
デミグラスソース掛けオムライスが完成したので運んでいけば、スティーブンとK・Kもやっとザップを解放した。
今日は珍しく全員が揃っていたのだが、レオが入院してしまったのでレオだけいない。大の大人がローテーブルを囲んでオムライスを頬張る光景は、見た目的に一番若いレオがいなくとも随分と秘密結社らしくなかった。
とはいえ、では誰がいれば秘密結社らしいのかと訊かれても答えられないのだが。
「んー美味しい! モルツォグァッツァでのバイトはまだやってるんだっけ?」
「ええ。今のところバイトはそれだけですけど」
舌鼓を打つK・Kにそう答えればスティーブンから物言いたげな視線を受けたが無視した。ヘルサレムズ・ロットの外での『副職』はあるが、ヘルサレムズ・ロット内での職といえばライブラとあのレストランだけであるし、更に言うならバイトはモルツォグァッツァだけなので間違ったことは言っていない。
「ブラッドベリに勤めようとは思わないの? 薬局の店長さんそこに行ったんでしょ?」
「薬剤師ばっかりそんなに入れねぇと思いますよ? いくらルシアナ先生が分裂出来るとはいえ、欲しいのはやっぱり医者や看護師の手でしょうしぃ」
そもそもシルビは薬剤師といっても本来の専門は漢方薬だ。【白澤】になってから結果的に薬剤師になっただけでもあるので、医者でも良くはあったが。
「シルビは医者になろうとは思わなかったの?」
「闇医者になら今すぐなれます。医療技術は叩き込んでありますし」
ローテーブルを囲んでオムライスを頬張っていたライブラメンバーが、揃ってシルビを見た。その眼はクラウス以外驚愕の念が浮かんでいる。クラウスはどうやら感心の念だ。
薬の知識や医者の知識に関わらず、シルビが持つ技術というものは経験を除いて全てが元々【×××】によって与えられたモノだった。
必要不必要に拘らず、シルビが求めるか否かにも関わらず、その森羅万象有相無相の知識はシルビの脳へ詰め込められる。
本来であれば人間一人の脳が処理出来る情報量は限度があり、レオが【神々の義眼】を使う際にその眼へ熱を持つのはその類だ。レオの脳が【義眼】によってもたらされる情報の処理に追いつけない。
けれどもシルビの脳はそうはならないのである。激しい頭痛に吐き気や熱を出す事はあるものの、長い年月を経て処理のペースは把握出来る様になった。
更に言うなら、そうして過負荷を起こしているレオと接触することでレオの脳が行なっている情報を引き受ける事も出来る。それは以前魔法使いの少年ハリーに行なった記憶伝達の応用なのだけれど、そう言うことが出来る時点で、シルビの脳が『異常』である事は断言できた。
大体にして存在自体が異常なのだから今更という話かもしれないが。自覚の無かった神性存在の落ち零れ。
「そもそも『眼』が足りねぇ時点で、俺は現在神性存在じゃなくて化け物なんだと思ってる訳ですよ」
「最初の時に言ってたね」
「五年前の事件のことは」
「……牙狩り本部に調査報告書はあったよ。でも一番重要な事件の原因が書かれていなかった」
向かい合って置かれた机に着席して、報告書の確認や調査資料の確認をしているスティーブンと互いに顔を上げずに話す。シルビはスティーブンの手伝いで、集中力を途切れさせない程度の雑談を始めたのはスティーブンの方からだった。
その内容がオムライスのソースはデミグラスかケチャップかという話から、シルビの『正体』の話になった流れはもう思い出せない。話せない部分はキッチリと答えずにその会話を続けて、五年前の『とある事件』を持ち出したのはシルビだ。
「その事件で結果的に君は『眼』とやらを奪われた。だがシルビ。曲がりなりにも神性存在であった君がやられてしまうような相手だったのか?」
「どうでしょう。俺が最善だと思ってとった手段の結果こうなっただけで、もしかしたら他の手があったかもしれねぇ」
最善だと思って選んだ手段の結果、シルビは数年寝たきり状態になって家族や友人達に多大な心配と迷惑を掛け、元に戻らない力に自分からいらないと思っていたその力を再び集める作業をしている。理不尽かつ傲慢な行動だとは何度も思った。
けれどもそれ以上に、シルビの事を案じてくれた全員へ申し訳ないと思ったのだ。
「後悔があるのなら諦められねぇでしょう?」