―震撃の血槌―
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獄長の身に纏ったオーバースーツを破壊するという形で決着をつけたクラウスは、腕や顔から出血しており、逆に殆ど無傷である獄長はその姿を見て蔑んでいたが、結果は結果だ。
クラウスに駆け寄ってその怪我の具合を確かめ、黄色い炎を灯して怪我の回復を早めてやる。
「む、申し訳ない」
「本来は俺が行くところでしたし、貴方のこの怪我は俺が負ったも同然です」
本当に、あの流れならシルビが行くはずだった気がしてならない。
獄長の怪我も治してやりたかったが時間が惜しいと言うことで『彼』の収容されている牢獄へと向かう。開けられた牢獄の中に居たのは拘束服を着せられ座っている、褐色の肌をした好青年そうな若者が一人だけ。若者と言ってもシルビよりは年上だ。
彼『ら』と言っていたのに一人しか居ないことを不思議に思いつつも、エイブラムスに倣って彼の拘束具を解く。
「こんにちはー。君ダレ?」
「こんにちは。シルビです」
極々普通の好青年である。これが懲役千年の服役者だとしたらサイコパスの類かと思っていれば、拘束具の解けた彼の手首にある傷口から“意思を持っているように”鮮血が飛び出した。
鮮血が手の形になってエイブラムスの腕を掴む。咄嗟に召喚器を取り出して銃口をその血液へ差し向けたシルビの手を、クラウスが掴んだ。
「ああん? なんだこのネエチャン?」
血液の一部が顔の形を作り上げシルビを見る。ソレを見てシルビもやっと『彼』が『彼等』と呼ばれる理由を理解した。
流石ヘルサレムズ・ロッドと言うべきか。“人間を血液にして”“違う人間の血液として存在させる”なんて真似は、流石のシルビでも始めて見る。
「……俺は男だよ。黙ってりゃ女性に見られる程女顔だとしてもなぁ」
「ヤローに興味無えな。その銃を仕舞いな嬢ちゃん」
「俺も血液には然程興味無ぇよ。流動体の分際で銃を向けられるような事をすんじゃねぇ」
「ケッ、いいのは顔だけか。その銃口咥えてその辺のゲイポルノに出演してろ」
「ゲイにも見向きされねぇ流動体が何言ってやがるぅ。水分とまぐわって満足してろ良いところの無ぇ血液風情がぁ」
「おうコラ血液無ぇと死ぬぞこのヤロウ!」
「んなこたぁ知ってんだよ沸騰させんぞぉこの血液野郎!」
「まーまー落ち着いて二人とも。デルドロも沸騰させられたら困るよ」
取り成しをする外側ことハマーは、血液が沸騰したら自分も死ぬと分かっているだろうに然程慌てる素振りも無かった。むしろ慣れた様子で中身ことデルドロを宥めている。
召喚器を仕舞ってハマーが立ち上がるのに手を貸した。ハマーの手首の傷から出ているデルドロと目が合ったが鼻を鳴らして逸らし、逸らしてから何だって子供臭い事をしているんだと正気に戻る。
「仲がいいのだな」
「良くねぇですクラウスさん!」
「いいワケねーだろ! テメーの眼は節穴か!」
アサイラムを出てギルベルトの運転する車へ飛び乗った直後、映像で見た姿よりも巨大化しているモンスタートラックがアサイラムの直ぐ脇を、他の車を蹴散らしながら追いかけてくる。どうやらギリギリでモンスタートラックのアサイラム激突を阻止出来たらしい。
次の問題は追いかけてくるモンスタートラックをどうするかだろう。モンスタートラックからは轟音に紛れて意外と可愛らしい女性の声がする。
「あれが偏執王アリギュラかぁ?」
「オウ。そうだよ嬢ちゃん。オレをこんな姿にした最低最悪の悪女さ」
「嬢ちゃん言うんじゃねぇ」
「……なるほど。君か、アリギュラ」
ハマーがやっとアリギュラを思い出したように呟く。デルドロと複合されたというのにどうやら忘れていたらしい彼は、しかし思い出したというよりは確認したというような呟きだった。
モンスタートラックへ追われて猛スピードで走るオープンカーの上で、ハマーがモンスタートラックを見上げたまま、前置きも無く掴まっていた手を離す。
「行くよ。――『血殖装甲』」
ハマーの両手首の傷から血が吹き出たかと思うと、ハマーが車体を蹴って跳んだ。モンスタートラックへ向かっていくハマーの身体がその血液によって包まれていく。
そうして血液を身に纏い、作り上げられた巨体の豪腕がモンスタートラックへ向けて振り被られ、トラックの正面を殴った。衝撃波がそこを中心に生まれ一瞬音さえも吹き飛ぶが、同時に殴りつけた時の反発力によってハマー達も吹き飛んでいく。
「バカモンが! 自分のパンチ力で自分も吹っ飛びやがった!」
ビルを破壊しつつ慣性のままに飛んでいくハマー達へ、エイブラムスが思わずといったように叫んだ。だが背後ではモンスタートラックが先程までの勢いを無くして、動きを止めている。それに関しては僥倖というべきか。
「二人のとこに行きます!」
「分かった!」
クラウスへ声を掛けて指を鳴らし、ブローディ&ハマーの飛ばされた方角へ空間転移する。二人は血液を身に纏った巨体のまま、ビルへひっくり返った体制でめり込んでいた。
動かない姿にまさか死んだのかと思ったが、近付けば短い足をジタバタと動かし始める。どうやら血液の巨体を纏っていたお陰で怪我は無いらしい。
「大丈夫ですかハマーさん。あとデルドロ」
「オレはオマケかっ!」
心配しているだけマシだ。
助け起こすのは無理なので自力で起き上がってもらおうと考えていると、ライブラのメンバーがやっとやってくる。
「シルビ! ハマーは無事か!」
「デルドロの心配はぁ!?」
「……お前いい奴だわ」
クラウスに駆け寄ってその怪我の具合を確かめ、黄色い炎を灯して怪我の回復を早めてやる。
「む、申し訳ない」
「本来は俺が行くところでしたし、貴方のこの怪我は俺が負ったも同然です」
本当に、あの流れならシルビが行くはずだった気がしてならない。
獄長の怪我も治してやりたかったが時間が惜しいと言うことで『彼』の収容されている牢獄へと向かう。開けられた牢獄の中に居たのは拘束服を着せられ座っている、褐色の肌をした好青年そうな若者が一人だけ。若者と言ってもシルビよりは年上だ。
彼『ら』と言っていたのに一人しか居ないことを不思議に思いつつも、エイブラムスに倣って彼の拘束具を解く。
「こんにちはー。君ダレ?」
「こんにちは。シルビです」
極々普通の好青年である。これが懲役千年の服役者だとしたらサイコパスの類かと思っていれば、拘束具の解けた彼の手首にある傷口から“意思を持っているように”鮮血が飛び出した。
鮮血が手の形になってエイブラムスの腕を掴む。咄嗟に召喚器を取り出して銃口をその血液へ差し向けたシルビの手を、クラウスが掴んだ。
「ああん? なんだこのネエチャン?」
血液の一部が顔の形を作り上げシルビを見る。ソレを見てシルビもやっと『彼』が『彼等』と呼ばれる理由を理解した。
流石ヘルサレムズ・ロッドと言うべきか。“人間を血液にして”“違う人間の血液として存在させる”なんて真似は、流石のシルビでも始めて見る。
「……俺は男だよ。黙ってりゃ女性に見られる程女顔だとしてもなぁ」
「ヤローに興味無えな。その銃を仕舞いな嬢ちゃん」
「俺も血液には然程興味無ぇよ。流動体の分際で銃を向けられるような事をすんじゃねぇ」
「ケッ、いいのは顔だけか。その銃口咥えてその辺のゲイポルノに出演してろ」
「ゲイにも見向きされねぇ流動体が何言ってやがるぅ。水分とまぐわって満足してろ良いところの無ぇ血液風情がぁ」
「おうコラ血液無ぇと死ぬぞこのヤロウ!」
「んなこたぁ知ってんだよ沸騰させんぞぉこの血液野郎!」
「まーまー落ち着いて二人とも。デルドロも沸騰させられたら困るよ」
取り成しをする外側ことハマーは、血液が沸騰したら自分も死ぬと分かっているだろうに然程慌てる素振りも無かった。むしろ慣れた様子で中身ことデルドロを宥めている。
召喚器を仕舞ってハマーが立ち上がるのに手を貸した。ハマーの手首の傷から出ているデルドロと目が合ったが鼻を鳴らして逸らし、逸らしてから何だって子供臭い事をしているんだと正気に戻る。
「仲がいいのだな」
「良くねぇですクラウスさん!」
「いいワケねーだろ! テメーの眼は節穴か!」
アサイラムを出てギルベルトの運転する車へ飛び乗った直後、映像で見た姿よりも巨大化しているモンスタートラックがアサイラムの直ぐ脇を、他の車を蹴散らしながら追いかけてくる。どうやらギリギリでモンスタートラックのアサイラム激突を阻止出来たらしい。
次の問題は追いかけてくるモンスタートラックをどうするかだろう。モンスタートラックからは轟音に紛れて意外と可愛らしい女性の声がする。
「あれが偏執王アリギュラかぁ?」
「オウ。そうだよ嬢ちゃん。オレをこんな姿にした最低最悪の悪女さ」
「嬢ちゃん言うんじゃねぇ」
「……なるほど。君か、アリギュラ」
ハマーがやっとアリギュラを思い出したように呟く。デルドロと複合されたというのにどうやら忘れていたらしい彼は、しかし思い出したというよりは確認したというような呟きだった。
モンスタートラックへ追われて猛スピードで走るオープンカーの上で、ハマーがモンスタートラックを見上げたまま、前置きも無く掴まっていた手を離す。
「行くよ。――『血殖装甲』」
ハマーの両手首の傷から血が吹き出たかと思うと、ハマーが車体を蹴って跳んだ。モンスタートラックへ向かっていくハマーの身体がその血液によって包まれていく。
そうして血液を身に纏い、作り上げられた巨体の豪腕がモンスタートラックへ向けて振り被られ、トラックの正面を殴った。衝撃波がそこを中心に生まれ一瞬音さえも吹き飛ぶが、同時に殴りつけた時の反発力によってハマー達も吹き飛んでいく。
「バカモンが! 自分のパンチ力で自分も吹っ飛びやがった!」
ビルを破壊しつつ慣性のままに飛んでいくハマー達へ、エイブラムスが思わずといったように叫んだ。だが背後ではモンスタートラックが先程までの勢いを無くして、動きを止めている。それに関しては僥倖というべきか。
「二人のとこに行きます!」
「分かった!」
クラウスへ声を掛けて指を鳴らし、ブローディ&ハマーの飛ばされた方角へ空間転移する。二人は血液を身に纏った巨体のまま、ビルへひっくり返った体制でめり込んでいた。
動かない姿にまさか死んだのかと思ったが、近付けば短い足をジタバタと動かし始める。どうやら血液の巨体を纏っていたお陰で怪我は無いらしい。
「大丈夫ですかハマーさん。あとデルドロ」
「オレはオマケかっ!」
心配しているだけマシだ。
助け起こすのは無理なので自力で起き上がってもらおうと考えていると、ライブラのメンバーがやっとやってくる。
「シルビ! ハマーは無事か!」
「デルドロの心配はぁ!?」
「……お前いい奴だわ」