閑話25
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アンダンタル広場の噴水前で日曜の午後などに、ツェッドが大道芸を披露してお金を稼ぐようになった。
血法シナトベを応用して紙で作った蝶を舞い飛ばせるというシンプルな芸だが、ヘルサレムズ・ロットの中ではお目にかかれない蝶の群れに疑似的とはいえ感動を覚える者が多いらしい。今では決まった時間になるとそれだけを観に噴水前へ来る者もいるという。
ビザも国籍も、何処の世界の存在かも関係のない仕事だ。綺麗だと思う心に国境も界境も種族の差もありはしないのだと証明された瞬間だともシルビは思う。
斗流血法を金稼ぎに使っていると知ったら汁外衛は怒るかと思ったが、こっそりシルビが写真を撮ってメールを送ってみても文句の返事は返ってこなかった。むしろツェッドの生活模様に安心したような返事が来ているので、彼も弟子は可愛いということか。
拍手の音と共にツェッドが用意したトランクへ見物料が放り込まれていく。それが大体落ち着いてから、少し離れた場所でそれを眺めていたシルビは、“鼻先で”隣に立っていたレオを促してツェッドの元へ向かった。
紙の蝶を回収して丁寧に束ねていたツェッドがシルビ達に気付いて顔を上げ、それからレオの隣に並ぶシルビを見て少し驚いたように眼を丸くしてから、穏やかに目元を和らげる。
「やはり綺麗だと思いますよ」
「……もう戻りてぇ」
「ははっ。シルビも恥ずかしがることあんのな」
レオが笑ってシルビの頭へ手を置いた。額の眼窩に指が触れそうで怖い。
今のシルビは【白澤】の姿だった。
先日の新年会でツェッドへ宣言した通りレオとツェッドへ【白澤】の姿を見せようと決めて、事務所にいたレオと一緒にアンダンタル広場へ来たのである。事務所からずっと【白澤】のまま。
道中にすれ違うヘルサレムズ・ロット市民は、動物図鑑には載っていない白い獣であるシルビを物珍しそうに眺めていた。中には『綺麗な生き物ですね』と話しかけてくる声もあったがそれはレオに退けてもらい、『その生き物いくらで売る?』と聞いてきた輩はシルビが直々に返り討ちにしている。
そのどちらもが、人間ではないのは当然ながら『異界存在じゃない』と言っていて、シルビよりもレオが驚いていた。分かる者には分かるのだ。
けれどもその分かる者にも、シルビが異界存在ではないのだとしたら『何』であるのかは、なかなか分からない。
尻尾を振りながらツェッドへと近付いて、その手へとすり寄る。
「迎えに来たんだぁ。人型に戻るから何処かで飯食って帰ろうぜぇ?」
「戻ってしまうんですか?」
「この姿じゃ飲食店入れねぇよ」
血法シナトベを応用して紙で作った蝶を舞い飛ばせるというシンプルな芸だが、ヘルサレムズ・ロットの中ではお目にかかれない蝶の群れに疑似的とはいえ感動を覚える者が多いらしい。今では決まった時間になるとそれだけを観に噴水前へ来る者もいるという。
ビザも国籍も、何処の世界の存在かも関係のない仕事だ。綺麗だと思う心に国境も界境も種族の差もありはしないのだと証明された瞬間だともシルビは思う。
斗流血法を金稼ぎに使っていると知ったら汁外衛は怒るかと思ったが、こっそりシルビが写真を撮ってメールを送ってみても文句の返事は返ってこなかった。むしろツェッドの生活模様に安心したような返事が来ているので、彼も弟子は可愛いということか。
拍手の音と共にツェッドが用意したトランクへ見物料が放り込まれていく。それが大体落ち着いてから、少し離れた場所でそれを眺めていたシルビは、“鼻先で”隣に立っていたレオを促してツェッドの元へ向かった。
紙の蝶を回収して丁寧に束ねていたツェッドがシルビ達に気付いて顔を上げ、それからレオの隣に並ぶシルビを見て少し驚いたように眼を丸くしてから、穏やかに目元を和らげる。
「やはり綺麗だと思いますよ」
「……もう戻りてぇ」
「ははっ。シルビも恥ずかしがることあんのな」
レオが笑ってシルビの頭へ手を置いた。額の眼窩に指が触れそうで怖い。
今のシルビは【白澤】の姿だった。
先日の新年会でツェッドへ宣言した通りレオとツェッドへ【白澤】の姿を見せようと決めて、事務所にいたレオと一緒にアンダンタル広場へ来たのである。事務所からずっと【白澤】のまま。
道中にすれ違うヘルサレムズ・ロット市民は、動物図鑑には載っていない白い獣であるシルビを物珍しそうに眺めていた。中には『綺麗な生き物ですね』と話しかけてくる声もあったがそれはレオに退けてもらい、『その生き物いくらで売る?』と聞いてきた輩はシルビが直々に返り討ちにしている。
そのどちらもが、人間ではないのは当然ながら『異界存在じゃない』と言っていて、シルビよりもレオが驚いていた。分かる者には分かるのだ。
けれどもその分かる者にも、シルビが異界存在ではないのだとしたら『何』であるのかは、なかなか分からない。
尻尾を振りながらツェッドへと近付いて、その手へとすり寄る。
「迎えに来たんだぁ。人型に戻るから何処かで飯食って帰ろうぜぇ?」
「戻ってしまうんですか?」
「この姿じゃ飲食店入れねぇよ」