閑話24
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ツェッド視点
天空楼閣バー虚居で行なわれた秘密結社ライブラの新年会で、ツェッドは乾杯の音頭で飲んだシャンパンの後はあまり飲んでいないにも関わらず、いい気分でカウンターで武器商のパトリックの助手であるニーカと喋っていたシルビへと近付いた。
「匣兵器について知ってるなんてニーカさんは勉強熱心……ツェッド君?」
何か武器の話をしていたらしいシルビがツェッドへ気付いて振り返る。
「お邪魔でしたか?」
「いやぁ? まだあんまり広まってねぇ兵器の話をしてただけだぁ」
兵器、と聞いて先日、シルビの取りなしでツェッドへ謝罪をしてきたヴァルハラ社の若社長だった少女を思い出す。
音楽を聴くのを生き甲斐にしていて、素晴らしい音響機器の収集に命を懸けているという話だった。音楽はあまり意識して聞いたことがないと言うと損していると言われ、お勧めのアーティストを数人紹介してきたのはまだ記憶に新しい。
ザップ達が暴れたせいか、ヴァルハラ社では業績見通しの下方修正が行なわれるというが、それがどういうことなのかはツェッドにはよく分からなかった。ただシルビの話では『まだそんなに酷い損でもない』らしい。
「俺は血法使いじゃねぇけど、やっぱり特殊な武器を使ってるからなぁ」
そういうシルビが戦闘に参加した姿を見たことはなかった。いつもはサポート一辺倒だ。
ニーカが料理の傍にいたK・Kに呼ばれて、シルビとツェッドへ軽く手を上げて去っていく。少し残っていたグラスの中身を飲み干したシルビは、会場が決まった頃は『参加しない』と言っていたのを覚えていないのかの様に雰囲気を楽しんでいるようだった。
というよりは、風邪を引いて休んだ次の日から落ち込んでいたのが治っているというべきか。
「楽しいぃ?」
「ええ。お酒はこの前の失態もあってちょっと遠慮してるんですけど、充分楽しいです」
レオやザップ、チェインによって今まで知らなかったライブラメンバーを紹介された。中には不躾に異界人かと言ってきた者もいたが、今見ればその者達はいつの間にかザップと飲み比べをしていたらしく既に潰れている。完全に酔った様子で歓声なのか奇声なのか分からない声を上げている兄弟子を、レオが必死になって黙らせようとしていた。
手を貸しに行くべきかなと考えていると、新しい酒をグラスへ注いだシルビがツェッドへもグラスを差し出してくる。
「度数低ぇよ」
「なら少しだけ」
受け取った酒は淡い青色をしているカクテルだった。飲むと予想以上に度が低く、ジュースかとさえ思う。同じ物を飲んでいたらしいシルビは舐めるようにそれを減らしていた。
「酒は好きなんだけど家で飲む時以外はセーブしてんだぁ。だから飲もうとすれば樽でも飲めるよ」
「……持ち上げるのが大変そうですね」
「ふふ、船の甲板とか汚れていい酒場で飲むもんだからなぁ」
どういう状況で楽しんだのか分からない飲み方にシルビの過去話を聞いていいのかどうか悩むと同時に、そんなに酒豪ならこんなカクテルなんて全然酔えないだろうにと思った。
そんな飲み方で楽しいのだろうかとも不思議に思っていれば、飲みかけのグラスをカウンターへ置いてシルビが笑みを浮かべる。
「酔っぱらい過ぎると角出ちゃうかもしれねぇし」
「尻尾も?」
「出るなぁ。スティーブンさんが触りに来るかも」
「スティーブンさんは知ってたんですか?」
「あとクラウスさんとギルベルトさんも知ってる。一応上司だからなぁあの二人は」
さっきまで騒いでいたザップが、チェインと飲み比べをして潰されていた。K・Kに勧められてニーカが食べている料理が美味しそうだ。
「一度、君に獣の姿を見られたことがある。その時は教えるつもりなんて無かったんだぁ」
「あの白い獣、シルビさんだったんですか」
「うん」
潰れたザップをスティーブンがつま先で小突いている。近くでクラウスがザップを黙らせようと頑張って疲れているレオを労っていた。ジョッキで赤ワインを飲んでいるように見えるのは気のせいか。
K・Kがカウンターにいるツェッドとシルビを手招くのに他の皆も気付いてこちらを振り返る。それぞれ赤みかかった顔や完全に据わった眼をしているなどしているが、明日も仕事があるのに大丈夫なのだろうかと思った。
「……今度ちゃんと、君とレオ君の前であの姿になろうと思うんだけれど」
控えめな声にシルビへと目を向ける。
「怖がらねぇでくれるかなぁ」
レオとスティーブンもこっちへ来いとばかりに手招きをしていた。
ツェッドは持っていたグラスの中の青い液体を飲み干す。一気飲みをすれば流石にアルコールが身体へ回るそれに、空になったグラスを置いて歩き出した。
ソニックが迎えに来たのだとばかりにツェッドの肩を経由してシルビの手の上へと飛び乗る。
「ボクは元から綺麗だと言ってるじゃないですか」
目を見開いたシルビが紫の眼を細め、それからツェッドと同じようにカウンターへ置いていたカクテルを飲み干して歩き出した。
シルビが並ぶのを待って一緒にレオ達の元へ行けば、上機嫌な酔っぱらい達が絡んでくる。
「ちゃんと食べてるアンタ達? 飲んでばっかじゃ身体に悪いんだから」
「小腹は空いてます」
「あ、ならアレ美味しかったよ。何の肉か分からないけど」
「クラウスさんそれワインですか? ジョッキで」
「うむ」
「ツェッドさんもシルビも何処にいたんだよ。こっちはザップさんが煩くて大変だったんだぞ」
天空楼閣バー虚居で行なわれた秘密結社ライブラの新年会で、ツェッドは乾杯の音頭で飲んだシャンパンの後はあまり飲んでいないにも関わらず、いい気分でカウンターで武器商のパトリックの助手であるニーカと喋っていたシルビへと近付いた。
「匣兵器について知ってるなんてニーカさんは勉強熱心……ツェッド君?」
何か武器の話をしていたらしいシルビがツェッドへ気付いて振り返る。
「お邪魔でしたか?」
「いやぁ? まだあんまり広まってねぇ兵器の話をしてただけだぁ」
兵器、と聞いて先日、シルビの取りなしでツェッドへ謝罪をしてきたヴァルハラ社の若社長だった少女を思い出す。
音楽を聴くのを生き甲斐にしていて、素晴らしい音響機器の収集に命を懸けているという話だった。音楽はあまり意識して聞いたことがないと言うと損していると言われ、お勧めのアーティストを数人紹介してきたのはまだ記憶に新しい。
ザップ達が暴れたせいか、ヴァルハラ社では業績見通しの下方修正が行なわれるというが、それがどういうことなのかはツェッドにはよく分からなかった。ただシルビの話では『まだそんなに酷い損でもない』らしい。
「俺は血法使いじゃねぇけど、やっぱり特殊な武器を使ってるからなぁ」
そういうシルビが戦闘に参加した姿を見たことはなかった。いつもはサポート一辺倒だ。
ニーカが料理の傍にいたK・Kに呼ばれて、シルビとツェッドへ軽く手を上げて去っていく。少し残っていたグラスの中身を飲み干したシルビは、会場が決まった頃は『参加しない』と言っていたのを覚えていないのかの様に雰囲気を楽しんでいるようだった。
というよりは、風邪を引いて休んだ次の日から落ち込んでいたのが治っているというべきか。
「楽しいぃ?」
「ええ。お酒はこの前の失態もあってちょっと遠慮してるんですけど、充分楽しいです」
レオやザップ、チェインによって今まで知らなかったライブラメンバーを紹介された。中には不躾に異界人かと言ってきた者もいたが、今見ればその者達はいつの間にかザップと飲み比べをしていたらしく既に潰れている。完全に酔った様子で歓声なのか奇声なのか分からない声を上げている兄弟子を、レオが必死になって黙らせようとしていた。
手を貸しに行くべきかなと考えていると、新しい酒をグラスへ注いだシルビがツェッドへもグラスを差し出してくる。
「度数低ぇよ」
「なら少しだけ」
受け取った酒は淡い青色をしているカクテルだった。飲むと予想以上に度が低く、ジュースかとさえ思う。同じ物を飲んでいたらしいシルビは舐めるようにそれを減らしていた。
「酒は好きなんだけど家で飲む時以外はセーブしてんだぁ。だから飲もうとすれば樽でも飲めるよ」
「……持ち上げるのが大変そうですね」
「ふふ、船の甲板とか汚れていい酒場で飲むもんだからなぁ」
どういう状況で楽しんだのか分からない飲み方にシルビの過去話を聞いていいのかどうか悩むと同時に、そんなに酒豪ならこんなカクテルなんて全然酔えないだろうにと思った。
そんな飲み方で楽しいのだろうかとも不思議に思っていれば、飲みかけのグラスをカウンターへ置いてシルビが笑みを浮かべる。
「酔っぱらい過ぎると角出ちゃうかもしれねぇし」
「尻尾も?」
「出るなぁ。スティーブンさんが触りに来るかも」
「スティーブンさんは知ってたんですか?」
「あとクラウスさんとギルベルトさんも知ってる。一応上司だからなぁあの二人は」
さっきまで騒いでいたザップが、チェインと飲み比べをして潰されていた。K・Kに勧められてニーカが食べている料理が美味しそうだ。
「一度、君に獣の姿を見られたことがある。その時は教えるつもりなんて無かったんだぁ」
「あの白い獣、シルビさんだったんですか」
「うん」
潰れたザップをスティーブンがつま先で小突いている。近くでクラウスがザップを黙らせようと頑張って疲れているレオを労っていた。ジョッキで赤ワインを飲んでいるように見えるのは気のせいか。
K・Kがカウンターにいるツェッドとシルビを手招くのに他の皆も気付いてこちらを振り返る。それぞれ赤みかかった顔や完全に据わった眼をしているなどしているが、明日も仕事があるのに大丈夫なのだろうかと思った。
「……今度ちゃんと、君とレオ君の前であの姿になろうと思うんだけれど」
控えめな声にシルビへと目を向ける。
「怖がらねぇでくれるかなぁ」
レオとスティーブンもこっちへ来いとばかりに手招きをしていた。
ツェッドは持っていたグラスの中の青い液体を飲み干す。一気飲みをすれば流石にアルコールが身体へ回るそれに、空になったグラスを置いて歩き出した。
ソニックが迎えに来たのだとばかりにツェッドの肩を経由してシルビの手の上へと飛び乗る。
「ボクは元から綺麗だと言ってるじゃないですか」
目を見開いたシルビが紫の眼を細め、それからツェッドと同じようにカウンターへ置いていたカクテルを飲み干して歩き出した。
シルビが並ぶのを待って一緒にレオ達の元へ行けば、上機嫌な酔っぱらい達が絡んでくる。
「ちゃんと食べてるアンタ達? 飲んでばっかじゃ身体に悪いんだから」
「小腹は空いてます」
「あ、ならアレ美味しかったよ。何の肉か分からないけど」
「クラウスさんそれワインですか? ジョッキで」
「うむ」
「ツェッドさんもシルビも何処にいたんだよ。こっちはザップさんが煩くて大変だったんだぞ」