閑話23
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寝室のドアの向こうでレオが帰る気配がないので、回復を早める為の【白澤】の姿になれない。だるさと熱と頭痛と無為な戦いを繰り広げながらシルビは寝る気にもなれず、仕方なくメールで友人達へ昨日のヴァルハラ社との問題を詳細に記したものを製作していく。個人的な騒動でもあるので、深く追求されなければこのメールだけで事は済む筈だ。
そうしてメールの送信ボタンを押そうとした時、思いっきり音を立ててドアが開いた。
「ぅおっ!?」
掛布を押しのけて咄嗟にナイフを掴んで振り返った先に立っていたのは、寝室の外でなかなか帰る気配が無かったレオで、その手には見覚えのある付箋の付いた大判封筒が握られている。勝手に仕事部屋に入ったなと文句を言い掛けて、先にレオが怒鳴ってきた。
「報告! 連絡! 相談だよマジで! 昨日ツェッドさんが言ってたろーがよ!」
「あ、ハイ……ぇ?」
勢いに負けて思わず拍子抜けした声で返事をしてしまって、状況が分からずにいる間にレオがズカズカと寝室に入ってくる。そうしてベッドの上へ昇ってきたかと思うとシルビの前で胡座をかき、シルビへ大判封筒を突きつけてきた。
中に入っているのは付箋のメモからしてレオの【神々の義眼】に関するシルビが調べた結果だ。まだまとめ直していない上に適当な考察が多く、不十分なのでレオへ渡すのはまだまだ先だと考えていた物である。
「殆ど読めなかったわ! 何だコレ暗号か!」
「いやまだ翻訳前っていうか……クセでいろんな言語で書いちゃうっていうかぁ」
「っていうか本気で調べてくれてたのかよ! ありがとう!」
「う、うん」
「あーもうシルビマジで信用出来ねーよ! なんでこういう事黙ってるかな! 調べてんなら調べてるって教えてくれるくらいはしても良かったんじゃねーの!?」
「ご……ごめん?」
感謝されているのか幻滅されているのかいまいち分からない。とりあえず勝手に調べていたのが悪かったのだろうかと謝れば、手刀を頭へ落とされた。
頭痛と相まって地味に痛いそれに持ったままだったナイフをサイドテーブルへ置いて頭を押さえる。レオを追いかけてきたらしいソニックがレオの肩へと飛び乗って短く鳴いていた。まさかソニックまで何かに怒っているのかと思ったが、流石にそういう訳ではなかったらしい。
「……教えてくれてもいいじゃん」
「レオ君?」
「そりゃオレは凡人でこの【眼】以外何もない貧弱な臆病者だけど、だから余計にお前の態度で信用されてないとかって不安になるんだよ」
【神々の義眼】を隠す様な細い眼で睨まれる。【義眼】になる前からそういう目だったのだろうかと少し現実逃避をしつつ、シルビはレオの手から大判封筒を取り返して脇に置いた。
封筒を奪われたことで少しショックを受けているような雰囲気になったレオに、シルビは頭を掻いてから口を開く。
「誤解させたのなら謝る。俺は別に君のことを信用してねぇとかそういうことはなくて、むしろ嫌われたくねぇから黙ってたっていうか……」
「神性存在だって事」
「……うん」
「悪いけど夕べのツェッドさんとの話、盗み聞きしてた」
「そう――は?」
「でも正直ツェッドさんより先に教えて欲しかった。オレのほうが付き合い長げーのに、ツェッドさんが周りとちょっと違うってだけで先に話すなよ。ザップさんじゃないけど不公平だろ」
嫉妬、なのだろうかと内心で首を傾げたのは、そう不満をこぼすレオの姿が少し姉と言い合いになった後の兄に似ていたからだ。シルビが姉の言い分を聞いている間の、自分が先が良かったのにと不貞腐れる兄に。
思わず笑いそうになれば、そんなシルビの気配に気付いたのかレオが唇を尖らせる。
「ツェッドさんも俺は大事なんだけどぉ?」
「だろうな」
「でもレオ君。俺と最初に出会ってくれたのは君だよ」
大判封筒を脇に置いた手でレオの手を取るとレオがシルビを見た。
「俺とHLで最初に出会って、最初に話して最初に仲良くなってくれたのは君で、俺は君が大切だぁ。だから嫌われるようなことは隠しておきたかったし、怖がられるようなことは黙っておきたかった。でもそれがレオ君は嫌だったんだなぁ」
「……そうだよ」
「俺は『神性存在』の一端で、でも力を失っているのでレオ君のその眼をどうにか出来る力も持ってません。明確に人間とは言い切れねぇし、角とか尻尾どころか偶蹄目だけど」
レオの手を握る。
「どうか俺と友達で居続けてください」
シルビにとって友人は生きていく為の支えだ。ただの知人程度の知り合いであってもそれは変わらないけれど、どうせなら友達がいい。
家族や親友や、友達以外にも多くの人との関係に名前を付けて縛って、その縛ったものの数に頼ってシルビは成り立っている。これはその束縛の中へ、レオも加えていいかと聞いている『契約』も同じだ。
レオは驚いたように眼から青い光を漏らしながらシルビを見つめて、それからやんわりとシルビの手を離す。余計に嫌われたかと落胆しかけたシルビの手を、改めて握手の形で繋ぎ直した。
「今度からは、もうちょっと色々言えよ」
そうしてメールの送信ボタンを押そうとした時、思いっきり音を立ててドアが開いた。
「ぅおっ!?」
掛布を押しのけて咄嗟にナイフを掴んで振り返った先に立っていたのは、寝室の外でなかなか帰る気配が無かったレオで、その手には見覚えのある付箋の付いた大判封筒が握られている。勝手に仕事部屋に入ったなと文句を言い掛けて、先にレオが怒鳴ってきた。
「報告! 連絡! 相談だよマジで! 昨日ツェッドさんが言ってたろーがよ!」
「あ、ハイ……ぇ?」
勢いに負けて思わず拍子抜けした声で返事をしてしまって、状況が分からずにいる間にレオがズカズカと寝室に入ってくる。そうしてベッドの上へ昇ってきたかと思うとシルビの前で胡座をかき、シルビへ大判封筒を突きつけてきた。
中に入っているのは付箋のメモからしてレオの【神々の義眼】に関するシルビが調べた結果だ。まだまとめ直していない上に適当な考察が多く、不十分なのでレオへ渡すのはまだまだ先だと考えていた物である。
「殆ど読めなかったわ! 何だコレ暗号か!」
「いやまだ翻訳前っていうか……クセでいろんな言語で書いちゃうっていうかぁ」
「っていうか本気で調べてくれてたのかよ! ありがとう!」
「う、うん」
「あーもうシルビマジで信用出来ねーよ! なんでこういう事黙ってるかな! 調べてんなら調べてるって教えてくれるくらいはしても良かったんじゃねーの!?」
「ご……ごめん?」
感謝されているのか幻滅されているのかいまいち分からない。とりあえず勝手に調べていたのが悪かったのだろうかと謝れば、手刀を頭へ落とされた。
頭痛と相まって地味に痛いそれに持ったままだったナイフをサイドテーブルへ置いて頭を押さえる。レオを追いかけてきたらしいソニックがレオの肩へと飛び乗って短く鳴いていた。まさかソニックまで何かに怒っているのかと思ったが、流石にそういう訳ではなかったらしい。
「……教えてくれてもいいじゃん」
「レオ君?」
「そりゃオレは凡人でこの【眼】以外何もない貧弱な臆病者だけど、だから余計にお前の態度で信用されてないとかって不安になるんだよ」
【神々の義眼】を隠す様な細い眼で睨まれる。【義眼】になる前からそういう目だったのだろうかと少し現実逃避をしつつ、シルビはレオの手から大判封筒を取り返して脇に置いた。
封筒を奪われたことで少しショックを受けているような雰囲気になったレオに、シルビは頭を掻いてから口を開く。
「誤解させたのなら謝る。俺は別に君のことを信用してねぇとかそういうことはなくて、むしろ嫌われたくねぇから黙ってたっていうか……」
「神性存在だって事」
「……うん」
「悪いけど夕べのツェッドさんとの話、盗み聞きしてた」
「そう――は?」
「でも正直ツェッドさんより先に教えて欲しかった。オレのほうが付き合い長げーのに、ツェッドさんが周りとちょっと違うってだけで先に話すなよ。ザップさんじゃないけど不公平だろ」
嫉妬、なのだろうかと内心で首を傾げたのは、そう不満をこぼすレオの姿が少し姉と言い合いになった後の兄に似ていたからだ。シルビが姉の言い分を聞いている間の、自分が先が良かったのにと不貞腐れる兄に。
思わず笑いそうになれば、そんなシルビの気配に気付いたのかレオが唇を尖らせる。
「ツェッドさんも俺は大事なんだけどぉ?」
「だろうな」
「でもレオ君。俺と最初に出会ってくれたのは君だよ」
大判封筒を脇に置いた手でレオの手を取るとレオがシルビを見た。
「俺とHLで最初に出会って、最初に話して最初に仲良くなってくれたのは君で、俺は君が大切だぁ。だから嫌われるようなことは隠しておきたかったし、怖がられるようなことは黙っておきたかった。でもそれがレオ君は嫌だったんだなぁ」
「……そうだよ」
「俺は『神性存在』の一端で、でも力を失っているのでレオ君のその眼をどうにか出来る力も持ってません。明確に人間とは言い切れねぇし、角とか尻尾どころか偶蹄目だけど」
レオの手を握る。
「どうか俺と友達で居続けてください」
シルビにとって友人は生きていく為の支えだ。ただの知人程度の知り合いであってもそれは変わらないけれど、どうせなら友達がいい。
家族や親友や、友達以外にも多くの人との関係に名前を付けて縛って、その縛ったものの数に頼ってシルビは成り立っている。これはその束縛の中へ、レオも加えていいかと聞いている『契約』も同じだ。
レオは驚いたように眼から青い光を漏らしながらシルビを見つめて、それからやんわりとシルビの手を離す。余計に嫌われたかと落胆しかけたシルビの手を、改めて握手の形で繋ぎ直した。
「今度からは、もうちょっと色々言えよ」