―鰓呼吸ブルース―
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レオナルド視点
「シルビは新年会に参加しないって……」
「マジか。オレの会費代わりに払ってくんねーかな」
「んな屑を助長させる行為オレが許すか」
半分本気だったのか残念そうにするザップに、レオは内心で気楽で良いなと愚痴をこぼす。
シルビがレオを避け始めてから数週間が経った。避けられている事にはとっくに気付いていたし、シルビが避けている理由も何となく察してはいるのだけれど、そこから先にどうすればいいのかがレオには分からないでいる。
ブラッドベリ総合病院で知った、シルビが『神性存在』だという事実に色々物申したいのはレオの方だ。なのにシルビはそれを一つも言わせてくれない。むしろ言わせたくないから避けているのだろうが、もうちょっと隙とか質問タイムとかをくれたって良い筈だ。
考える時間は十分にもらった。だから次はちゃんと話す機会が欲しい。新年会はそのタイミングとして丁度良いものに思えたのだが、当のシルビが不参加とあってはタイミングとして成立すらしなかった。
せめて、本当なのかどうかだけでも本人の口から聞きたい。
ザップと一緒に執務室に行くとスティーブンが珈琲を飲みながら書類を手にしていた。
「仕事すか?」
「ああいや、これはツェッドの水槽とかの設備費だよ」
「へー……うわっ! そんなにするんすか…!?」
書類を覗き込んだザップが思わずといった様子で声を上げるのに、スティーブンが煩わしそうに書類をテーブルへ戻す。
「そりゃまあ、アイツに関わる備品は全部特注品だしなあ」
「ズルいっすよ魚類ばっかり! オレもお金欲しい!」
大声で屑の屑らしい発言をしたザップは安定の屑だ。それに設備費はともかく給料こと活動資金は一律らしいのでツェッドばかりが優遇されている訳でもない。ザップやレオだって仕事中の移動でカブやランブレッタを使う時のガソリン代は、領収書を貰っている。
ただちょっと、レオと前に見たスティーブンの生活水準を比べると、いくらレオがミシェーラの為に実家へ仕送りをしているとはいえ、一律というのは嘘ではないのかと思えた。
金の使い方か、生活の違いか。
ザップの下瞼をつま先で踏んづけつつ現れたチェインが、貰って二十五分程で全ての給料を使い切ってしまうザップを貶している。億単位の金を渡しても全部すっからかんにしてしまうだろうという意見には、レオも大いに賛同出来た。
というかそんな金が手に入ったら、使い切る前に今まで立て替えた分を返して欲しい。
「まあ言っても、アレはあいつにとって生命維持装置そのもの。一日中逆スクーバ・ダイビングしてる様なもんだし、これでも随分安くしてもらっているんだぞ」
「安くって、特注品でしょ?」
「シルビの知り合いの伝手を辿って造って貰ったんだよ。冗談だと思うが『社割が効く』とまで言ってたしな」
「社割、って、アレ『復讐者』製なんすか?」
「違うよ」
ぎゃあぎゃあと喧嘩をしていたザップとチェインが話に戻ってくる。
『復讐者』というのはシルビがライブラへ来るに至った、シルビが所属している組織だ。レオもあまり詳しいことは知らないが、ライブラ以上の謎が多い組織らしい。犯罪者の捕縛が主な活動だと前に言っていた気がするし、ブローディ&ハマーがいるアサイラムの様な監獄関係とも関わりがあるのか無いのか。
だがそことは関係ないのだとスティーブンは言う。
「シルビの副職のほうの関係でそういう製造部門に頼んだらしい。でなけりゃ殆どツェッドしか使わないような逆アクアラングなんて誰も造ろうとは思わないだろうさ」
「シルビのバイトはモルツォグァッツァだけになったんじゃねーんすか?」
「HLの外の事も少しは知っておけよ。まぁ名前が違うから仕方ないのかもしれないけどな。シルビは一部の界隈じゃ有名人だぞ」
レオやザップだけではなく、あのチェインまで絶句した。
「前のフリージャ次期国王との宴席だって、大方顔を見られるのが困るとかそういう理由で辞退したんだろう」
「……え、え。マジ?」
辛うじて零されたザップの言葉にレオも同意である。ブラッドベリで判明した『シルビが神性存在』という事実に続いて、またもやおいそれとスルー出来ない事実が浮上してきた。
恐るべしはシルビが今まで微塵たりともその事実を悟らせなかった事か。聞かれなかったから言わなかったという部分もあるだろうが、それにしたってこれは酷い。
「あいつが出動の際の器物破損や建造物破壊もさりげなく防いでくれてるから、修繕費や補償金の出費も減ったしなあ。シルビも協力してくれているしツェッドの設備に関してはご理解賜りたいもんだね」
単純に出動時の移動サポートだけではなく、破壊による二次被害なども防いでいたというのもレオは知らなかった。自分の身を守るだけでも精一杯な現場で、周囲を見ていられるなんて言うのは流石『神性存在』なのか。
いや、これはひねくれた感想だ。
「いや、そういうの。奴の為にならないっすね逆に」
そう言ってザップが馬鹿みたいに胸を張る。
「働かざるもの食うべからず」
背後で丁度執務室へ入ろうとしていたツェッドがそれを聞いて、無言でドアを閉めて出て行った。
「シルビは新年会に参加しないって……」
「マジか。オレの会費代わりに払ってくんねーかな」
「んな屑を助長させる行為オレが許すか」
半分本気だったのか残念そうにするザップに、レオは内心で気楽で良いなと愚痴をこぼす。
シルビがレオを避け始めてから数週間が経った。避けられている事にはとっくに気付いていたし、シルビが避けている理由も何となく察してはいるのだけれど、そこから先にどうすればいいのかがレオには分からないでいる。
ブラッドベリ総合病院で知った、シルビが『神性存在』だという事実に色々物申したいのはレオの方だ。なのにシルビはそれを一つも言わせてくれない。むしろ言わせたくないから避けているのだろうが、もうちょっと隙とか質問タイムとかをくれたって良い筈だ。
考える時間は十分にもらった。だから次はちゃんと話す機会が欲しい。新年会はそのタイミングとして丁度良いものに思えたのだが、当のシルビが不参加とあってはタイミングとして成立すらしなかった。
せめて、本当なのかどうかだけでも本人の口から聞きたい。
ザップと一緒に執務室に行くとスティーブンが珈琲を飲みながら書類を手にしていた。
「仕事すか?」
「ああいや、これはツェッドの水槽とかの設備費だよ」
「へー……うわっ! そんなにするんすか…!?」
書類を覗き込んだザップが思わずといった様子で声を上げるのに、スティーブンが煩わしそうに書類をテーブルへ戻す。
「そりゃまあ、アイツに関わる備品は全部特注品だしなあ」
「ズルいっすよ魚類ばっかり! オレもお金欲しい!」
大声で屑の屑らしい発言をしたザップは安定の屑だ。それに設備費はともかく給料こと活動資金は一律らしいのでツェッドばかりが優遇されている訳でもない。ザップやレオだって仕事中の移動でカブやランブレッタを使う時のガソリン代は、領収書を貰っている。
ただちょっと、レオと前に見たスティーブンの生活水準を比べると、いくらレオがミシェーラの為に実家へ仕送りをしているとはいえ、一律というのは嘘ではないのかと思えた。
金の使い方か、生活の違いか。
ザップの下瞼をつま先で踏んづけつつ現れたチェインが、貰って二十五分程で全ての給料を使い切ってしまうザップを貶している。億単位の金を渡しても全部すっからかんにしてしまうだろうという意見には、レオも大いに賛同出来た。
というかそんな金が手に入ったら、使い切る前に今まで立て替えた分を返して欲しい。
「まあ言っても、アレはあいつにとって生命維持装置そのもの。一日中逆スクーバ・ダイビングしてる様なもんだし、これでも随分安くしてもらっているんだぞ」
「安くって、特注品でしょ?」
「シルビの知り合いの伝手を辿って造って貰ったんだよ。冗談だと思うが『社割が効く』とまで言ってたしな」
「社割、って、アレ『復讐者』製なんすか?」
「違うよ」
ぎゃあぎゃあと喧嘩をしていたザップとチェインが話に戻ってくる。
『復讐者』というのはシルビがライブラへ来るに至った、シルビが所属している組織だ。レオもあまり詳しいことは知らないが、ライブラ以上の謎が多い組織らしい。犯罪者の捕縛が主な活動だと前に言っていた気がするし、ブローディ&ハマーがいるアサイラムの様な監獄関係とも関わりがあるのか無いのか。
だがそことは関係ないのだとスティーブンは言う。
「シルビの副職のほうの関係でそういう製造部門に頼んだらしい。でなけりゃ殆どツェッドしか使わないような逆アクアラングなんて誰も造ろうとは思わないだろうさ」
「シルビのバイトはモルツォグァッツァだけになったんじゃねーんすか?」
「HLの外の事も少しは知っておけよ。まぁ名前が違うから仕方ないのかもしれないけどな。シルビは一部の界隈じゃ有名人だぞ」
レオやザップだけではなく、あのチェインまで絶句した。
「前のフリージャ次期国王との宴席だって、大方顔を見られるのが困るとかそういう理由で辞退したんだろう」
「……え、え。マジ?」
辛うじて零されたザップの言葉にレオも同意である。ブラッドベリで判明した『シルビが神性存在』という事実に続いて、またもやおいそれとスルー出来ない事実が浮上してきた。
恐るべしはシルビが今まで微塵たりともその事実を悟らせなかった事か。聞かれなかったから言わなかったという部分もあるだろうが、それにしたってこれは酷い。
「あいつが出動の際の器物破損や建造物破壊もさりげなく防いでくれてるから、修繕費や補償金の出費も減ったしなあ。シルビも協力してくれているしツェッドの設備に関してはご理解賜りたいもんだね」
単純に出動時の移動サポートだけではなく、破壊による二次被害なども防いでいたというのもレオは知らなかった。自分の身を守るだけでも精一杯な現場で、周囲を見ていられるなんて言うのは流石『神性存在』なのか。
いや、これはひねくれた感想だ。
「いや、そういうの。奴の為にならないっすね逆に」
そう言ってザップが馬鹿みたいに胸を張る。
「働かざるもの食うべからず」
背後で丁度執務室へ入ろうとしていたツェッドがそれを聞いて、無言でドアを閉めて出て行った。