―鰓呼吸ブルース―
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「新年会」
「そう。今超人気の『天空楼閣バー虚居』で。ゲットするのスゲー大変だったんだぜ」
レオが差し出してきたクラウスデザインの新年会開催のチラシへ視線を落とす。レオの言ったバーは確か、完全隔離移動空間と日毎に変わる十三種類の幻術アクセスで今話題の店だと雑誌で見た覚えがあった。
話題であれば予約を取るのも一苦労だっただろう。今年の幹事の一人らしいレオは胸を張っていたので、シルビはちょっとだけ笑ってチラシをレオへ返した。
「俺がいると楽しめねぇだろぉ。遠慮するよ」
「え、え」
そんなに驚くことだろうかと思いつつレオへ背を向ける。これからスティーブンへ頼まれた件の情報収集に行かねばならない。
レオを避け始めてもう数週間が経っている。最低限は今のように話すし、シルビに用事があったりレオが忙しかったりとするのは当たり前だから、ライブラのメンバーは特に何も言ってこない。二人の会話が減ったことに気付いている者は居るかも知れないが、特に何かを言われた覚えもなかった。
それで気付いたのは事務的な会話だけでも十分日々が成り立っているという事。シルビが友人でいたいと思って踏み込んでいただけで、正直そんなことをする必要も無かったのだ。
ただの同僚なら。
スティーブンから頼まれた情報収集は、某犯罪組織の麻薬取引に関する物だ。上手く情報が集まれば年明けには取引現場を押さえることが出来るだろう。それを足がかりに組織も潰せるとなれば力も入ると言うもので。
レオが追いかけてきたら困るなと考えて【第八の炎】で事務所の外へ出る。霧に覆われたビルの屋上からマークしていた人物を見つけて地面を蹴った。
『眼』を一つ取り返して暫くしてから気付いたことだが、視力や聴力、筋力といった身体能力が少し元へ戻っている。なのでもう、初めてレオと出会った時のように簡単に脱臼したりはしないだろう。更には住所や場所が分からずとも、【第八の炎】で繋げられるようになった。これで地道に地図や住所を確認する手間は省ける。
そうやってまた化け物へ戻っていく自分に嫌気がした。
レオと同じく新年会の幹事だったらしい武器商のパトリックからメールが来て、新年会の参加は保留にしておくと連絡がくる。レオからではないのはシルビがレオには直接断ったからか。
そんなことしなくてもいいのにと思いながら携帯をしまった。道路を挟んで反対側でビルから出てきて、車に乗ってどこかへ行くらしい標的を眺めつつ思い出す。
「……そういや、まだ一年経ってねぇのかぁ」
参加しないとはいえシルビがヘルサレムズ・ロットへ来てから、初めての新年会だ。
「そう。今超人気の『天空楼閣バー虚居』で。ゲットするのスゲー大変だったんだぜ」
レオが差し出してきたクラウスデザインの新年会開催のチラシへ視線を落とす。レオの言ったバーは確か、完全隔離移動空間と日毎に変わる十三種類の幻術アクセスで今話題の店だと雑誌で見た覚えがあった。
話題であれば予約を取るのも一苦労だっただろう。今年の幹事の一人らしいレオは胸を張っていたので、シルビはちょっとだけ笑ってチラシをレオへ返した。
「俺がいると楽しめねぇだろぉ。遠慮するよ」
「え、え」
そんなに驚くことだろうかと思いつつレオへ背を向ける。これからスティーブンへ頼まれた件の情報収集に行かねばならない。
レオを避け始めてもう数週間が経っている。最低限は今のように話すし、シルビに用事があったりレオが忙しかったりとするのは当たり前だから、ライブラのメンバーは特に何も言ってこない。二人の会話が減ったことに気付いている者は居るかも知れないが、特に何かを言われた覚えもなかった。
それで気付いたのは事務的な会話だけでも十分日々が成り立っているという事。シルビが友人でいたいと思って踏み込んでいただけで、正直そんなことをする必要も無かったのだ。
ただの同僚なら。
スティーブンから頼まれた情報収集は、某犯罪組織の麻薬取引に関する物だ。上手く情報が集まれば年明けには取引現場を押さえることが出来るだろう。それを足がかりに組織も潰せるとなれば力も入ると言うもので。
レオが追いかけてきたら困るなと考えて【第八の炎】で事務所の外へ出る。霧に覆われたビルの屋上からマークしていた人物を見つけて地面を蹴った。
『眼』を一つ取り返して暫くしてから気付いたことだが、視力や聴力、筋力といった身体能力が少し元へ戻っている。なのでもう、初めてレオと出会った時のように簡単に脱臼したりはしないだろう。更には住所や場所が分からずとも、【第八の炎】で繋げられるようになった。これで地道に地図や住所を確認する手間は省ける。
そうやってまた化け物へ戻っていく自分に嫌気がした。
レオと同じく新年会の幹事だったらしい武器商のパトリックからメールが来て、新年会の参加は保留にしておくと連絡がくる。レオからではないのはシルビがレオには直接断ったからか。
そんなことしなくてもいいのにと思いながら携帯をしまった。道路を挟んで反対側でビルから出てきて、車に乗ってどこかへ行くらしい標的を眺めつつ思い出す。
「……そういや、まだ一年経ってねぇのかぁ」
参加しないとはいえシルビがヘルサレムズ・ロットへ来てから、初めての新年会だ。