原作前日常編
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シャチ視点
「はい」
零れた涙を汚れた手で拭ったせいか顔にも血を付けたまま、両手と両足を赤く汚した少女達が汚れたシャチ達の武器を差し出した。シャチ達はその姿に絶句しながらも彼女の覚悟を悟って武器を受け取る。
少女が武器を取りに行くといった先は行き止まりと言っていた部屋のほうで、その部屋の中をシャチは見せてもらえなかった。見ないほうがいいと言われたというのもあるが、扉が開かれた途端の、今まで嗅いだ事の無いほどの臭気に見る気にもなれなかったからだ。
その部屋を見たクルーは取りに行ってくれると名乗り出た少女達に『無理はしないでいい』と言っていたけど、少女達は『行って確かめたい事もあるから』と譲らなかった。そうして取り戻された武器は血で汚れていて、正直言うと手に取りたくなかった。
けれども受け取らなければ彼女達の行為を無駄にすると、黙って受け取る。
「シャチ、その子達と一緒にちょっと待ってろ」
「え、なんで? オレも」
「向こうの部屋暗いんだよ。お前見えないだろ」
出口の側の部屋を通れるか見に行く仲間達に言われて、シャチは反論も出来ずに見送る。確かにこの牢屋のある場所はギリギリで見えるが、その先がここより暗かったら何も見えない。
少女同様牢屋に入れられていた者達は、集まって小声で何かを話していた。中には泣き出す者もいて、シャチの武器を取ってきてくれた少女がそれを宥めている。
小さく聞こえる家族を呼ぶ声。母親だったり姉だったり、兄だったりするそれはもう一度会いたいという叫びなのか。
何故泣いているのかを聞くのは、何となく憚られた。
「――シャチ! 皆ぁ!」
聞こえた声に振り返ると全身血塗れになった私服姿のペンギンが出口側の扉からやってきたところで。
「お前ら怪我はぁ!? 全員身体に変なところがあるとかねぇかぁ!?」
「それよりペンギン! 血、血ぃ!」
「はぁ? ああ、これかぁ。大丈夫俺の血じゃねぇ」
「逆に怖えーよ!」
自分の身体を見降ろしてあっけらかんと言うペンギンの神経がちょっと分からない。けれど叫ぶシャチとは裏腹に仲間達や少女達は何か言いたげにペンギンを見ていた。
ペンギンはペンギンでシャチの反応を訝しげに見やってから、傍に居たクルーへ話しかけている。
「シャチは『見てねぇ』のかぁ?」
「見せてない。暗いし、まだ医者じゃないし」
「そっか。じゃあ最後までシャチには見せねぇ事にしよう」
「何を……?」
聞いてもペンギンは答えなかった。シャチから視線を捕まっていた少女達へ向ける。
「当然だけど俺達はここを脱出する。今なら外へまで一緒に連れて行けるけど、どうするぅ?」
「はい」
零れた涙を汚れた手で拭ったせいか顔にも血を付けたまま、両手と両足を赤く汚した少女達が汚れたシャチ達の武器を差し出した。シャチ達はその姿に絶句しながらも彼女の覚悟を悟って武器を受け取る。
少女が武器を取りに行くといった先は行き止まりと言っていた部屋のほうで、その部屋の中をシャチは見せてもらえなかった。見ないほうがいいと言われたというのもあるが、扉が開かれた途端の、今まで嗅いだ事の無いほどの臭気に見る気にもなれなかったからだ。
その部屋を見たクルーは取りに行ってくれると名乗り出た少女達に『無理はしないでいい』と言っていたけど、少女達は『行って確かめたい事もあるから』と譲らなかった。そうして取り戻された武器は血で汚れていて、正直言うと手に取りたくなかった。
けれども受け取らなければ彼女達の行為を無駄にすると、黙って受け取る。
「シャチ、その子達と一緒にちょっと待ってろ」
「え、なんで? オレも」
「向こうの部屋暗いんだよ。お前見えないだろ」
出口の側の部屋を通れるか見に行く仲間達に言われて、シャチは反論も出来ずに見送る。確かにこの牢屋のある場所はギリギリで見えるが、その先がここより暗かったら何も見えない。
少女同様牢屋に入れられていた者達は、集まって小声で何かを話していた。中には泣き出す者もいて、シャチの武器を取ってきてくれた少女がそれを宥めている。
小さく聞こえる家族を呼ぶ声。母親だったり姉だったり、兄だったりするそれはもう一度会いたいという叫びなのか。
何故泣いているのかを聞くのは、何となく憚られた。
「――シャチ! 皆ぁ!」
聞こえた声に振り返ると全身血塗れになった私服姿のペンギンが出口側の扉からやってきたところで。
「お前ら怪我はぁ!? 全員身体に変なところがあるとかねぇかぁ!?」
「それよりペンギン! 血、血ぃ!」
「はぁ? ああ、これかぁ。大丈夫俺の血じゃねぇ」
「逆に怖えーよ!」
自分の身体を見降ろしてあっけらかんと言うペンギンの神経がちょっと分からない。けれど叫ぶシャチとは裏腹に仲間達や少女達は何か言いたげにペンギンを見ていた。
ペンギンはペンギンでシャチの反応を訝しげに見やってから、傍に居たクルーへ話しかけている。
「シャチは『見てねぇ』のかぁ?」
「見せてない。暗いし、まだ医者じゃないし」
「そっか。じゃあ最後までシャチには見せねぇ事にしよう」
「何を……?」
聞いてもペンギンは答えなかった。シャチから視線を捕まっていた少女達へ向ける。
「当然だけど俺達はここを脱出する。今なら外へまで一緒に連れて行けるけど、どうするぅ?」