原作前日常編
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ロー視点
「どうすればいいのかな」
気弱そうに呟いたコニーという名前の子供は、ペンギンから『海楼石の鍵を探せ』と言われていたものの、何から手をつければいいのか分からないといった様子で立ち尽くしていた。
ペンギンもせめて何処にあるかの可能性だけでも教えていけばいいものを、何も言わずに行ってしまっている。多分ではあるがペンギンもこの状況に困惑していて、そこまで気配りが出来なかったのだろうとは思うが。
今に始まった事ではないが、ペンギンは何かあるとどうも自分の責任だと思い詰めるきらいがある。今回ローやシャチ達がこうして捕まってしまったことに対しても、『自分が付いて行っていたら』と悔いていた様だった。確かにペンギンが居たらまた違う結果になっただろうが、こうなってしまった以上は仕方が無いしまだまだ余裕で弁解できる範囲だ。
そんなに執着している風でもないのにロー達の誰かが死んだら後追い自殺をしそうな勢いで落ち込むから、おちおち罠に掛かってもいられない。
動き出した訳だしとりあえずのフォローは出来ただろうなと考えて、ローは何も出来ないでいるコニーを傍へ呼んだ。
「手錠の鍵の場所だがな。お前は大切なものは何処に隠す?」
「え、えっと、宝箱に隠すよ」
「その宝箱はどこに置いてる」
「ベッドのそば。毎日確認するから」
「ここは寝室だ。でもベッドの傍には無いな。だったら何処に隠す?」
「夏の間は暖炉の中!」
子供らしい発想だが領主が隠す場所ではない。それは違うと否定しようとするもコニーは意気込んで壁際の暖炉へと向かってしまう。
今は使われていない暖炉の周りを探し、それからコニーが暖炉の中へと潜り込んだのが見えたところで、寝室の扉が開いた。
扉を開けたのはバスローブ姿の女領主で、ローと目が合うと悠然と微笑んだ。
「起きていらして? 気分はどうかしら?」
「……最悪だな」
暖炉の中のコニーには気付いていない。そのまま出てくるなよとコニーへ対して願いつつ近付いてくる女領主の動きを見つめた。
テーブルに置かれていたワインをグラスへ注いで一口飲み、そのグラスを持ったままローの寝かされている寝台へと近付いてくる。傍に来たその身体からは昼間とも食事の時とも段違いな血の匂いがした。
まるで全身に血を浴びてきたかのような。
「部下達はどうした」
「安心なさって? 今は少しおやすみになられているでしょうけれど、決して怪我などはしておりませんわ」
「……信用できねえな」
「では信頼なさってください。ちゃんと彼らも私の美しさの為に生かしておきますから」
女の目は狂っている色が浮かんでいる様子は無いが、その思考は狂っている。
「私はこの美しさが衰えてしまう事がなによりも恐ろしいの。旦那様が愛してくださった美貌を維持してこそ、あの方も浮かばれるというもの。その為にはなんだってするつもりですの」
「……なんだって、か」
「ええ、貴方だって醜女より美女を抱きたいのではなくて? 女にとって美しさは何者にも変え難いものよ」
美しさ、若さに取り付かれた女は見た目がどうであれ醜いと思ったが、ローは口にはしなかった。女領主はローの胸元へ手を置いて顔を近づけてくる。濃い血の匂いと僅かな赤ワインの香り。
顎を掴まれそうになるのを盛大に顔を逸らして拒否するが、女領主は笑って再び手を伸ばしてくる。
「手錠を外せ」
「外したら暴れるのでしょう? 私気持ちいいのは好きですけれど、暴力は嫌いですわ。……だからコレはここに」
テーブルの上にワイングラスと、手錠の鍵をこれ見よがしに置いた。そうして再び近付いてくる女領主が身に纏っていたバスローブを脱ぐ姿に、ペンギンの言葉を思い出して表情に出さないものの内心焦る。
何が『想像したくない』だ。知っていたなら教えろと文句を言ってやりたい。
女領主が全裸になって寝台へ乗り上げ、天幕を降ろす。完全に天幕が降りる寸前、暖炉に隠れていたコニーがテーブルに近付いて鍵へ手を伸ばしているのが見えた。
ローの身体を跨いで座り顔へ手を伸ばしてくる女領主の目は楽しげだ。見た目よりも体重のある女が、何が楽しいのか出し惜しみをするようにゆっくり近付いてくるのを睨む。
ガチャガチャと手錠の鎖が鳴ることを、女領主は気にしない。多分今までの獲物もそうしていたのだろう。だからベッドの下から伸びてきた子供の手が、ローを拘束している手錠を手探りで外した事にも気付かなかった。
手錠が外れた直後、ローは身体を捻って女領主を自分の上から退かし勢いを付けて女領主を蹴り飛ばす。蹴りが腹部へ決まっていたが同情してやるつもりは毛頭無い。
「性病を移されんのはゴメンだ。気持ち良くなりたけりゃ自慰でも何でも一人でやってろ」
腹を蹴られたのと寝台から落とされたせいでか気を失ったらしい女領主に、そう吐き捨てて立ち上がると寝台の下からコニーが出てきた。
「大丈夫?」
「ああ。助かった」
「あの魔女、ベッドで裸になってどうするつもりだったんだろうね?」
「……。行くぞ」
不思議がるコニーを小脇に抱えて寝室を脱出する。まずは愛刀を探してシャチ達かペンギンと合流するべきだ。
「どうすればいいのかな」
気弱そうに呟いたコニーという名前の子供は、ペンギンから『海楼石の鍵を探せ』と言われていたものの、何から手をつければいいのか分からないといった様子で立ち尽くしていた。
ペンギンもせめて何処にあるかの可能性だけでも教えていけばいいものを、何も言わずに行ってしまっている。多分ではあるがペンギンもこの状況に困惑していて、そこまで気配りが出来なかったのだろうとは思うが。
今に始まった事ではないが、ペンギンは何かあるとどうも自分の責任だと思い詰めるきらいがある。今回ローやシャチ達がこうして捕まってしまったことに対しても、『自分が付いて行っていたら』と悔いていた様だった。確かにペンギンが居たらまた違う結果になっただろうが、こうなってしまった以上は仕方が無いしまだまだ余裕で弁解できる範囲だ。
そんなに執着している風でもないのにロー達の誰かが死んだら後追い自殺をしそうな勢いで落ち込むから、おちおち罠に掛かってもいられない。
動き出した訳だしとりあえずのフォローは出来ただろうなと考えて、ローは何も出来ないでいるコニーを傍へ呼んだ。
「手錠の鍵の場所だがな。お前は大切なものは何処に隠す?」
「え、えっと、宝箱に隠すよ」
「その宝箱はどこに置いてる」
「ベッドのそば。毎日確認するから」
「ここは寝室だ。でもベッドの傍には無いな。だったら何処に隠す?」
「夏の間は暖炉の中!」
子供らしい発想だが領主が隠す場所ではない。それは違うと否定しようとするもコニーは意気込んで壁際の暖炉へと向かってしまう。
今は使われていない暖炉の周りを探し、それからコニーが暖炉の中へと潜り込んだのが見えたところで、寝室の扉が開いた。
扉を開けたのはバスローブ姿の女領主で、ローと目が合うと悠然と微笑んだ。
「起きていらして? 気分はどうかしら?」
「……最悪だな」
暖炉の中のコニーには気付いていない。そのまま出てくるなよとコニーへ対して願いつつ近付いてくる女領主の動きを見つめた。
テーブルに置かれていたワインをグラスへ注いで一口飲み、そのグラスを持ったままローの寝かされている寝台へと近付いてくる。傍に来たその身体からは昼間とも食事の時とも段違いな血の匂いがした。
まるで全身に血を浴びてきたかのような。
「部下達はどうした」
「安心なさって? 今は少しおやすみになられているでしょうけれど、決して怪我などはしておりませんわ」
「……信用できねえな」
「では信頼なさってください。ちゃんと彼らも私の美しさの為に生かしておきますから」
女の目は狂っている色が浮かんでいる様子は無いが、その思考は狂っている。
「私はこの美しさが衰えてしまう事がなによりも恐ろしいの。旦那様が愛してくださった美貌を維持してこそ、あの方も浮かばれるというもの。その為にはなんだってするつもりですの」
「……なんだって、か」
「ええ、貴方だって醜女より美女を抱きたいのではなくて? 女にとって美しさは何者にも変え難いものよ」
美しさ、若さに取り付かれた女は見た目がどうであれ醜いと思ったが、ローは口にはしなかった。女領主はローの胸元へ手を置いて顔を近づけてくる。濃い血の匂いと僅かな赤ワインの香り。
顎を掴まれそうになるのを盛大に顔を逸らして拒否するが、女領主は笑って再び手を伸ばしてくる。
「手錠を外せ」
「外したら暴れるのでしょう? 私気持ちいいのは好きですけれど、暴力は嫌いですわ。……だからコレはここに」
テーブルの上にワイングラスと、手錠の鍵をこれ見よがしに置いた。そうして再び近付いてくる女領主が身に纏っていたバスローブを脱ぐ姿に、ペンギンの言葉を思い出して表情に出さないものの内心焦る。
何が『想像したくない』だ。知っていたなら教えろと文句を言ってやりたい。
女領主が全裸になって寝台へ乗り上げ、天幕を降ろす。完全に天幕が降りる寸前、暖炉に隠れていたコニーがテーブルに近付いて鍵へ手を伸ばしているのが見えた。
ローの身体を跨いで座り顔へ手を伸ばしてくる女領主の目は楽しげだ。見た目よりも体重のある女が、何が楽しいのか出し惜しみをするようにゆっくり近付いてくるのを睨む。
ガチャガチャと手錠の鎖が鳴ることを、女領主は気にしない。多分今までの獲物もそうしていたのだろう。だからベッドの下から伸びてきた子供の手が、ローを拘束している手錠を手探りで外した事にも気付かなかった。
手錠が外れた直後、ローは身体を捻って女領主を自分の上から退かし勢いを付けて女領主を蹴り飛ばす。蹴りが腹部へ決まっていたが同情してやるつもりは毛頭無い。
「性病を移されんのはゴメンだ。気持ち良くなりたけりゃ自慰でも何でも一人でやってろ」
腹を蹴られたのと寝台から落とされたせいでか気を失ったらしい女領主に、そう吐き捨てて立ち上がると寝台の下からコニーが出てきた。
「大丈夫?」
「ああ。助かった」
「あの魔女、ベッドで裸になってどうするつもりだったんだろうね?」
「……。行くぞ」
不思議がるコニーを小脇に抱えて寝室を脱出する。まずは愛刀を探してシャチ達かペンギンと合流するべきだ。