原作前日常編
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ロー視点
ローが目を覚ますと薄暗い中に天幕の天井が広がっていた。寝かされていたのかと考え体を起こそうとすると、非常に脱力感を覚えた上に手が自由に動かない事に気付く。
頭の上、寝台の枠に絡めつけられた手錠に両手首が拘束されていた。しかもご丁寧な事に能力者対策の海楼石で出来ている手錠だ。
ここへ来る前の最後の記憶は、女領主が出て行った食堂で帰るタイミングを失ったところだ。シャチが大きな欠伸を漏らしたのを覚えている。酒も飲まず飯も食わずだったが、三大欲求の一つである眠気には勝てないのかと下らないことを考えて。
考えて、意識を失ったのだ。
「……くそっ」
悪態を吐いて手錠の鎖を鳴らしたところで外れる訳も無い。手元には持って来たはずの愛刀も無ければ、運ばれる最中に落ちたのか帽子もなかった。
手錠のせいで能力を使っての脱出も出来ない。クルー達は無事だろうかと寝台に寝かされた場所からでも見える扉を睨んだところで、誰かが来る気配も無かった。
むしろそれは反対側の窓からで、星明りのせいか室内より明るい窓辺に何かの気配が現れる。脱力感のせいで動かすのも億劫な首を巡らせてそちらを見るも、それはすぐに窓の外へ引っ込んでしまう。
小声で話し声が聞こえたような気がした後、窓枠が僅かに軋む。それから顔を覗かせた男と目が合って、ローはこんな状況だと言うのに笑いが浮かんだ。
「貴方笑ってる場合ですかぁ?」
「お前が傍にいる状況ならな」
そう返せば呆れた様子のペンギンが窓枠を乗り越えて部屋へ侵入してくる。それから窓の外を振り返り、潜水艦で見た子供を引き上げていた。
おどおどと周囲を警戒する子供とは裏腹に、ペンギンは毛の長い絨毯に足音を吸収させつつ近付いてきて寝台の端へ腰を降ろし、身を捻るようにしてローを拘束している手錠を確認する。ガチャガチャと耳障りな音をさせてから嘆息を漏らす。
「海楼石ですか。用意周到なのか日頃からなのか微妙なところですねぇ」
手錠の端が擦れる手首の肌をなぞられる。くすぐったいが反撃も阻止も出来ない。それが分かってやっているらしいのは分かったが。
「壊せ」
「ダイヤモンドより硬てぇ手錠を素手で壊させる船長が何処にいるんです」
「壊せねェなら先にシャチ達を助けに行け」
ペンギンの目が防寒帽の下で紫色に煌めく。手錠に擦れたローの手首を指先でなぞっていたペンギンが、帽子を僅かにずらしローの顔を覗きこんでくる。
「……今の貴方なら、片手で殺せそうですね」
ローが目を覚ますと薄暗い中に天幕の天井が広がっていた。寝かされていたのかと考え体を起こそうとすると、非常に脱力感を覚えた上に手が自由に動かない事に気付く。
頭の上、寝台の枠に絡めつけられた手錠に両手首が拘束されていた。しかもご丁寧な事に能力者対策の海楼石で出来ている手錠だ。
ここへ来る前の最後の記憶は、女領主が出て行った食堂で帰るタイミングを失ったところだ。シャチが大きな欠伸を漏らしたのを覚えている。酒も飲まず飯も食わずだったが、三大欲求の一つである眠気には勝てないのかと下らないことを考えて。
考えて、意識を失ったのだ。
「……くそっ」
悪態を吐いて手錠の鎖を鳴らしたところで外れる訳も無い。手元には持って来たはずの愛刀も無ければ、運ばれる最中に落ちたのか帽子もなかった。
手錠のせいで能力を使っての脱出も出来ない。クルー達は無事だろうかと寝台に寝かされた場所からでも見える扉を睨んだところで、誰かが来る気配も無かった。
むしろそれは反対側の窓からで、星明りのせいか室内より明るい窓辺に何かの気配が現れる。脱力感のせいで動かすのも億劫な首を巡らせてそちらを見るも、それはすぐに窓の外へ引っ込んでしまう。
小声で話し声が聞こえたような気がした後、窓枠が僅かに軋む。それから顔を覗かせた男と目が合って、ローはこんな状況だと言うのに笑いが浮かんだ。
「貴方笑ってる場合ですかぁ?」
「お前が傍にいる状況ならな」
そう返せば呆れた様子のペンギンが窓枠を乗り越えて部屋へ侵入してくる。それから窓の外を振り返り、潜水艦で見た子供を引き上げていた。
おどおどと周囲を警戒する子供とは裏腹に、ペンギンは毛の長い絨毯に足音を吸収させつつ近付いてきて寝台の端へ腰を降ろし、身を捻るようにしてローを拘束している手錠を確認する。ガチャガチャと耳障りな音をさせてから嘆息を漏らす。
「海楼石ですか。用意周到なのか日頃からなのか微妙なところですねぇ」
手錠の端が擦れる手首の肌をなぞられる。くすぐったいが反撃も阻止も出来ない。それが分かってやっているらしいのは分かったが。
「壊せ」
「ダイヤモンドより硬てぇ手錠を素手で壊させる船長が何処にいるんです」
「壊せねェなら先にシャチ達を助けに行け」
ペンギンの目が防寒帽の下で紫色に煌めく。手錠に擦れたローの手首を指先でなぞっていたペンギンが、帽子を僅かにずらしローの顔を覗きこんでくる。
「……今の貴方なら、片手で殺せそうですね」