原作前日常編
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ロー視点
シャチが顔色を悪くしてテーブルの上の皿を見つめている。見れば他に付いてきていたクルーも似たような顔色で、ローはそれも仕方ないかと思った。
港に限らず町でも感じられた血の匂いは、この屋敷へ入ってから更に臭気を増し、今では既に手術直後の治療室並みに濃い匂いに覆われている。そんな匂いの中での食事とあっては、料理がどんなに美味しそうな見た目であっても流石に食欲が失われるというものだ。
ローは食べられないことは無いが、別の理由から手を付けていない。誰一人として手をつけなければ不審に思われるだろうと思ってクルーも連れて来たのだが、やはりこういう状況での駆け引きを理解出来るイルカやペンギンを連れて来れば良かったと思う。
ペンギンはあのコニーとかいうガキを家へ帰してから屋敷へ侵入すると言っていたので、もしかしたら遭遇するかもしれない。イルカは来てもいいと言っていたのだが、今日はイルカと寝るとベポが主張した為連れて来なかった。ベポに夜更かしはさせたくない。
「お口にあいませんでしたか?」
「海賊風情にはちょっと高級すぎたな」
「それは残念ですわね」
長テーブルの向かいで一人黙々と銀食器を操る女領主は、確かに残念そうではあった。けれども大して気に掛けた風ではない。むしろ食べないだろうと最初から予想していたような態度でもあった。
「ですがお話はしていただけますでしょう? 島を離れられない女の唯一の楽しみですの」
離れられない、なんてことがある訳が無い。と思うもローは口にしなかった。
島の外の事なんて海賊でなくとも商人や海軍にだって聞ける。そうでなくともニュースクーによって新聞は届けられるだろうし、何だったら島民を島外へ送り出して情報を届けさせる事だって出来なくはない。
だからこの女領主の『目的』は、話を聞く事ではなくこうして持て成すことだと仮定していた。だとすればそれは一体何故か、それがローは知りたい。
雰囲気のせいで普段のように騒ぎも出来ないこの招待に、既にクルー達は帰りたそうにしている。ローも何の進展の無いこの腹の探り合いのような食事へ飽きてきた頃、使用人が女領主の傍へ向かって耳打ちをした。
声は聞こえないが表情から何かがあったのだと知れる。もうロー達がここへ来てから暫く経っているし、まさかとは思うがペンギンが忍び込んだ事がばれたのかもしれない。
ペンギンがそんなヘマをすると思えないし、あの子供を家へ送り届けてからだと言っていたから本当に忍び込んでいるのかも不明だが。
「申し訳ありませんが、少々失礼致します。どうぞそのままお食事を続けていてくださいませ」
立ち上がった女領主が使用人と一緒に部屋を出て行き閉められる扉。
帰るタイミングを失った。
シャチが顔色を悪くしてテーブルの上の皿を見つめている。見れば他に付いてきていたクルーも似たような顔色で、ローはそれも仕方ないかと思った。
港に限らず町でも感じられた血の匂いは、この屋敷へ入ってから更に臭気を増し、今では既に手術直後の治療室並みに濃い匂いに覆われている。そんな匂いの中での食事とあっては、料理がどんなに美味しそうな見た目であっても流石に食欲が失われるというものだ。
ローは食べられないことは無いが、別の理由から手を付けていない。誰一人として手をつけなければ不審に思われるだろうと思ってクルーも連れて来たのだが、やはりこういう状況での駆け引きを理解出来るイルカやペンギンを連れて来れば良かったと思う。
ペンギンはあのコニーとかいうガキを家へ帰してから屋敷へ侵入すると言っていたので、もしかしたら遭遇するかもしれない。イルカは来てもいいと言っていたのだが、今日はイルカと寝るとベポが主張した為連れて来なかった。ベポに夜更かしはさせたくない。
「お口にあいませんでしたか?」
「海賊風情にはちょっと高級すぎたな」
「それは残念ですわね」
長テーブルの向かいで一人黙々と銀食器を操る女領主は、確かに残念そうではあった。けれども大して気に掛けた風ではない。むしろ食べないだろうと最初から予想していたような態度でもあった。
「ですがお話はしていただけますでしょう? 島を離れられない女の唯一の楽しみですの」
離れられない、なんてことがある訳が無い。と思うもローは口にしなかった。
島の外の事なんて海賊でなくとも商人や海軍にだって聞ける。そうでなくともニュースクーによって新聞は届けられるだろうし、何だったら島民を島外へ送り出して情報を届けさせる事だって出来なくはない。
だからこの女領主の『目的』は、話を聞く事ではなくこうして持て成すことだと仮定していた。だとすればそれは一体何故か、それがローは知りたい。
雰囲気のせいで普段のように騒ぎも出来ないこの招待に、既にクルー達は帰りたそうにしている。ローも何の進展の無いこの腹の探り合いのような食事へ飽きてきた頃、使用人が女領主の傍へ向かって耳打ちをした。
声は聞こえないが表情から何かがあったのだと知れる。もうロー達がここへ来てから暫く経っているし、まさかとは思うがペンギンが忍び込んだ事がばれたのかもしれない。
ペンギンがそんなヘマをすると思えないし、あの子供を家へ送り届けてからだと言っていたから本当に忍び込んでいるのかも不明だが。
「申し訳ありませんが、少々失礼致します。どうぞそのままお食事を続けていてくださいませ」
立ち上がった女領主が使用人と一緒に部屋を出て行き閉められる扉。
帰るタイミングを失った。