原作前日常編
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クルー視点
「割れたカップはどうしたんだ」
「それはその、処分しました」
換金を終えて船長とペンギンがクッキーの詰め合わせをお土産に帰ってきて、一服しようと食堂に入ってきて第一声にクルー全員で『ごめんなさい』と声を合わせたところ、船長を驚かせる事に成功した。それが目的ではなかったので成功してもまだクルー達の心臓はドキドキしている。
イルカとワカメが代表して事のあらましを説明して、最初の言葉だった。船長は自分のカップが処分された事を聞いて帽子を軽く被り直したものの、それ以外にこれといった反応はしない。まさか怒っていないのかと思ったが、続いた声はやはり僅かに低かった。
「で? オレは紙コップでも使って飲めばいいのか」
「いや! その、えっと……代わりのカップを買ってきたんですけど」
誰かがゴクリと唾を飲む。流石にまた割られるのは困るので、イルカがベポの代わりにカップの入った箱を渡す。買いに行ったワカメと選んだベポ以外はまだそのデザインを見ていないので、尚更怖い。
食堂の端のほうでペンギンが口を押さえてそっぽを向いて肩を震わせているが、他は至って真剣なので止めて欲しかった。
リボンを解いて開けられた箱の中身を見て、船長が僅かに反応を零す。緩衝材代わりの紙屑に埋まっていたカップを取り出し、側面の絵柄を眺める。
「シロクマ、か」
「ベポが選んだんです。……これで、せめてベポだけでも許してもらえませんかね?」
「ベポ」
緩衝材の入った箱とカップをテーブルへ置き、船長はバンダナの足に隠れていたベポを呼ぶ。怒られると分かっているのかいつもなら元気よく駆け寄る歩調も今はのたのたとしていた。
それでも大して距離は無かったのですぐに到達してしまった船長の前で、船長を見れずにうな垂れるベポの頭へ手を乗せる。
「割ったのはわざとじゃなかったんだな?」
「……アイ」
「一緒にどうしようか考えてくれたワカメ達には礼を言ったか?」
「……ない」
「じゃあちゃんとその事について礼を言ったら、この話はこれで終わりだ。反省してねえならともかく全員反省してんだ。それを叱ったって意味が無えだろ」
「船長……!」
「キャプテン……!」
船長が叱らないなんてとクルーが変な方向へ感動している事も知らず、船長はテーブルへ置いていたカップを再び手にとって眺めていた。無表情なのでそれが気に入ったのか気に食わないから見ているのか分からなかったが、どうせならいいほうに解釈したい。
話は済んだのだと理解したペンギンが船長に近付き、そのカップを受け取る。
「せっかくなので早速使いましょうか。ベポもちょっと泣いたみてぇだし、ココアでいいかなぁ。ちょうどクッキーもありますしね」
「割れたカップはどうしたんだ」
「それはその、処分しました」
換金を終えて船長とペンギンがクッキーの詰め合わせをお土産に帰ってきて、一服しようと食堂に入ってきて第一声にクルー全員で『ごめんなさい』と声を合わせたところ、船長を驚かせる事に成功した。それが目的ではなかったので成功してもまだクルー達の心臓はドキドキしている。
イルカとワカメが代表して事のあらましを説明して、最初の言葉だった。船長は自分のカップが処分された事を聞いて帽子を軽く被り直したものの、それ以外にこれといった反応はしない。まさか怒っていないのかと思ったが、続いた声はやはり僅かに低かった。
「で? オレは紙コップでも使って飲めばいいのか」
「いや! その、えっと……代わりのカップを買ってきたんですけど」
誰かがゴクリと唾を飲む。流石にまた割られるのは困るので、イルカがベポの代わりにカップの入った箱を渡す。買いに行ったワカメと選んだベポ以外はまだそのデザインを見ていないので、尚更怖い。
食堂の端のほうでペンギンが口を押さえてそっぽを向いて肩を震わせているが、他は至って真剣なので止めて欲しかった。
リボンを解いて開けられた箱の中身を見て、船長が僅かに反応を零す。緩衝材代わりの紙屑に埋まっていたカップを取り出し、側面の絵柄を眺める。
「シロクマ、か」
「ベポが選んだんです。……これで、せめてベポだけでも許してもらえませんかね?」
「ベポ」
緩衝材の入った箱とカップをテーブルへ置き、船長はバンダナの足に隠れていたベポを呼ぶ。怒られると分かっているのかいつもなら元気よく駆け寄る歩調も今はのたのたとしていた。
それでも大して距離は無かったのですぐに到達してしまった船長の前で、船長を見れずにうな垂れるベポの頭へ手を乗せる。
「割ったのはわざとじゃなかったんだな?」
「……アイ」
「一緒にどうしようか考えてくれたワカメ達には礼を言ったか?」
「……ない」
「じゃあちゃんとその事について礼を言ったら、この話はこれで終わりだ。反省してねえならともかく全員反省してんだ。それを叱ったって意味が無えだろ」
「船長……!」
「キャプテン……!」
船長が叱らないなんてとクルーが変な方向へ感動している事も知らず、船長はテーブルへ置いていたカップを再び手にとって眺めていた。無表情なのでそれが気に入ったのか気に食わないから見ているのか分からなかったが、どうせならいいほうに解釈したい。
話は済んだのだと理解したペンギンが船長に近付き、そのカップを受け取る。
「せっかくなので早速使いましょうか。ベポもちょっと泣いたみてぇだし、ココアでいいかなぁ。ちょうどクッキーもありますしね」