原作前日常編
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バンダナ視点
ガシャンと音を立てて床に落ちて割れたカップに、その場の時が僅かに止まった。
直ぐに正気に戻ったのはバンダナで、割れたカップを呆然と見下ろしていたベポを破片の危険から遠ざける為に抱え上げ、近くにいたシャチとイルカに破片の掃除を頼む。
最近ベポは後ろ足での二足歩行をするようになった。
周りのクルー達を真似しているのか、世話と教育の殆どを行なっているペンギンが教えたのかは知らないが、四足歩行より二足歩行で生活しようとしている。けれども元々クマは四足歩行で生きる動物で人の様には上手くいかず、まだ物を持っての歩行は要練習だった。
それでも子供というのは背伸びもしたがる生き物で、軽いものなら持って歩く事も許可されてはいたのである。だがベポが割ってしまったカップは船長の物で、まだベポが持って歩くには難しい物だった。
「ったく、なんで船長のカップなんか持ってたんだい?」
シャチとイルカが箒で小さな破片を履き集めているのを眺めながらバンダナが尋ねれば、ベポは涙目でそれを見つめている。今にも泣き出しそうだが泣いても割れてしまったカップは元に戻らない。
「……て」
「て?」
「てつだう……うぅ……」
「あーバンダナベポ泣かした!」
「オレのせいか!?」
とうとう涙の零れてしまったベポをあやしながら、シャチから理不尽な責めを受けてしまう。こんな時に限って船長もペンギンも、先の海上戦で手に入れた財宝の換金に行っていて不在だった。
そろそろ大きくなっていて抱き上げるにも一苦労するベポにワカメが寄ってきてタオルを渡してやる。そのタオルで顔を覆ってしまうベポの頭を撫でベポを宥めた。
「片付けの手伝いしようとしたんだよな? 船長カップ置き忘れてったし」
ぐずぐずと鼻を鳴らすベポが頷くのに、バンダナはワカメへ対してよく分かるなと思ってしまう。まさかワカメが運べとベポにカップを渡したのかとさえ思ってしまったが、ワカメは先程ベポとは真逆の方向へ居た筈なのでそれはない。
だとすれば完全にベポの善意だ。なのに結果がコレとは。
ともあれベポを叱ることは出来ないと判断し次の問題について考える。割れてしまった船長のカップだ。
「……怒られるよね」
「ベポはまだいいけど、監督責任でオレらが怒られるかもね」
「船長に? ペンギンに?」
破片を片付け終えたイルカの言葉に、聞いていたクルー全員が黙り込む。こういう場合怖いのは、前者より後者であることを全員が分かっていた。
今回に関して言えば結局両方怖いのだが。
「……も、戻ってくる前に同じものを買っておくとか」
「それだ!」
事故そのものを無かった事にする作戦、発動である。
ガシャンと音を立てて床に落ちて割れたカップに、その場の時が僅かに止まった。
直ぐに正気に戻ったのはバンダナで、割れたカップを呆然と見下ろしていたベポを破片の危険から遠ざける為に抱え上げ、近くにいたシャチとイルカに破片の掃除を頼む。
最近ベポは後ろ足での二足歩行をするようになった。
周りのクルー達を真似しているのか、世話と教育の殆どを行なっているペンギンが教えたのかは知らないが、四足歩行より二足歩行で生活しようとしている。けれども元々クマは四足歩行で生きる動物で人の様には上手くいかず、まだ物を持っての歩行は要練習だった。
それでも子供というのは背伸びもしたがる生き物で、軽いものなら持って歩く事も許可されてはいたのである。だがベポが割ってしまったカップは船長の物で、まだベポが持って歩くには難しい物だった。
「ったく、なんで船長のカップなんか持ってたんだい?」
シャチとイルカが箒で小さな破片を履き集めているのを眺めながらバンダナが尋ねれば、ベポは涙目でそれを見つめている。今にも泣き出しそうだが泣いても割れてしまったカップは元に戻らない。
「……て」
「て?」
「てつだう……うぅ……」
「あーバンダナベポ泣かした!」
「オレのせいか!?」
とうとう涙の零れてしまったベポをあやしながら、シャチから理不尽な責めを受けてしまう。こんな時に限って船長もペンギンも、先の海上戦で手に入れた財宝の換金に行っていて不在だった。
そろそろ大きくなっていて抱き上げるにも一苦労するベポにワカメが寄ってきてタオルを渡してやる。そのタオルで顔を覆ってしまうベポの頭を撫でベポを宥めた。
「片付けの手伝いしようとしたんだよな? 船長カップ置き忘れてったし」
ぐずぐずと鼻を鳴らすベポが頷くのに、バンダナはワカメへ対してよく分かるなと思ってしまう。まさかワカメが運べとベポにカップを渡したのかとさえ思ってしまったが、ワカメは先程ベポとは真逆の方向へ居た筈なのでそれはない。
だとすれば完全にベポの善意だ。なのに結果がコレとは。
ともあれベポを叱ることは出来ないと判断し次の問題について考える。割れてしまった船長のカップだ。
「……怒られるよね」
「ベポはまだいいけど、監督責任でオレらが怒られるかもね」
「船長に? ペンギンに?」
破片を片付け終えたイルカの言葉に、聞いていたクルー全員が黙り込む。こういう場合怖いのは、前者より後者であることを全員が分かっていた。
今回に関して言えば結局両方怖いのだが。
「……も、戻ってくる前に同じものを買っておくとか」
「それだ!」
事故そのものを無かった事にする作戦、発動である。