原作前日常編
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バンダナ視点
「……失敗したぁ」
船長が勧誘してきた自称『旅の薬師』は、その若さと見た目に反してある意味なんでも出来る男だった。
この大航海時代を一人で旅してきただけあって戦闘経験は当然持っていたし、潜水艦の操舵も最初に注意事項を教えてしまえば問題は無い。
天候を読む能力にも長けていて、航海士がいないこの船に彼が来てからは、来る以前と比べると随分と進行速度が変わったようにバンダナには思えた。
海賊としてはバンダナのほうが少しとはいえ年季が長いと考えて、愚直に先輩面をする事すら叶わない。たった三人の船でも一応新入りとして雑用を分担したところで、そつなくこなしてしまう彼に、何の役割を与えるのかが最近の船長とバンダナの悩みだった。
何も別に、絶対役割を与えなければならないと言う訳ではない。『船員その一』として船に乗っているだけでも別に構いはしないだろう。けれどもせっかくの船長にとっては『二人目』の、バンダナにとっては初めての新入りだった。
「失敗って、綺麗に出来てると思うけどねぇ」
フライパンを持って完成させたばかりのチャーハン三人前を睨むシルビに、バンダナは空腹を訴える腹を宥めつつ席へ着く。反対側の席に船長が座るのを確認してから、シルビがフライパンを置いて席に着いた。
今日の昼食当番はシルビだったのだ。慣れるまではとシルビが船に乗ってからも今までは船長とバンダナが交代で作っていたが、シルビが自分から作りたいと申し出たので頼んだのである。それでいて『失敗した』とは不穏な発言だが。
「食べりゃ分かりますよ。やっぱり慣れねぇ台所は良くねぇですねぇ」
「……コレ、本当に残ってた材料で作ったのか?」
先に食べた船長が信じられないとばかりにシルビを見ていた。バンダナも食べてみれば、今までに食べたチャーハンなんて目じゃないくらい美味しい。
材料は昨日まで作っていたのだから何が残っていたか覚えていたが、その残っている材料でこんなに美味しいチャーハンが作れるとは思わなかった。
「? 当たり前でしょう? こんな海の上で何処に買いに行けってんですかぁ?」
食にこだわりは無いが、下地として高級品に慣れているらしい味覚を持つ船長でさえ、文句の一つ言わずに食べている。食が細い方だったはずだがその手が止まることがない。
食べ終える前からお代わりは有るかと気にしてしまう。だが作った当の本人は不満そうだった。
「これの何処が失敗だ」
「ご飯がパラパラにならなかったんですよぉ」
「お前は料理人か?」
「昔から料理してたんで料理は出来る方なんです」
こんな調子でどんどん自分の万能さを表していくので、一つの役割に決めてしまうのも勿体無い気がするのである。
「……失敗したぁ」
船長が勧誘してきた自称『旅の薬師』は、その若さと見た目に反してある意味なんでも出来る男だった。
この大航海時代を一人で旅してきただけあって戦闘経験は当然持っていたし、潜水艦の操舵も最初に注意事項を教えてしまえば問題は無い。
天候を読む能力にも長けていて、航海士がいないこの船に彼が来てからは、来る以前と比べると随分と進行速度が変わったようにバンダナには思えた。
海賊としてはバンダナのほうが少しとはいえ年季が長いと考えて、愚直に先輩面をする事すら叶わない。たった三人の船でも一応新入りとして雑用を分担したところで、そつなくこなしてしまう彼に、何の役割を与えるのかが最近の船長とバンダナの悩みだった。
何も別に、絶対役割を与えなければならないと言う訳ではない。『船員その一』として船に乗っているだけでも別に構いはしないだろう。けれどもせっかくの船長にとっては『二人目』の、バンダナにとっては初めての新入りだった。
「失敗って、綺麗に出来てると思うけどねぇ」
フライパンを持って完成させたばかりのチャーハン三人前を睨むシルビに、バンダナは空腹を訴える腹を宥めつつ席へ着く。反対側の席に船長が座るのを確認してから、シルビがフライパンを置いて席に着いた。
今日の昼食当番はシルビだったのだ。慣れるまではとシルビが船に乗ってからも今までは船長とバンダナが交代で作っていたが、シルビが自分から作りたいと申し出たので頼んだのである。それでいて『失敗した』とは不穏な発言だが。
「食べりゃ分かりますよ。やっぱり慣れねぇ台所は良くねぇですねぇ」
「……コレ、本当に残ってた材料で作ったのか?」
先に食べた船長が信じられないとばかりにシルビを見ていた。バンダナも食べてみれば、今までに食べたチャーハンなんて目じゃないくらい美味しい。
材料は昨日まで作っていたのだから何が残っていたか覚えていたが、その残っている材料でこんなに美味しいチャーハンが作れるとは思わなかった。
「? 当たり前でしょう? こんな海の上で何処に買いに行けってんですかぁ?」
食にこだわりは無いが、下地として高級品に慣れているらしい味覚を持つ船長でさえ、文句の一つ言わずに食べている。食が細い方だったはずだがその手が止まることがない。
食べ終える前からお代わりは有るかと気にしてしまう。だが作った当の本人は不満そうだった。
「これの何処が失敗だ」
「ご飯がパラパラにならなかったんですよぉ」
「お前は料理人か?」
「昔から料理してたんで料理は出来る方なんです」
こんな調子でどんどん自分の万能さを表していくので、一つの役割に決めてしまうのも勿体無い気がするのである。