原作前日常編
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夢主視点
別に隠しているわけでも無いのでシルビは時々自室以外でも愛用の武器の手入れをするのだが、部屋以外で手入れをしていると必ずと言っても良いほど見物人が現れる。
そう刃渡りの長くない、シンプルな装飾のナイフと拳銃だけだというのに何が面白いのだろうかといつも思うが、毎回違う見物人にそれを尋ねる気はなかった。
一昨日に他の海賊船を一隻潰した際に使ったので手入れをしようと思い、食堂のテーブルに敷いた布の上へナイフと銃を置くと、案の定見物人がやってくる。今日はどうやら船長とシャチらしい。
「毎回誰かしら見に来ますけど、そんなに面白ぇモンですかねぇ」
手入れに使う道具を脇に置きながら長年の疑問を口にすれば、頬杖を突いていた船長が銃に手を伸ばした。
「面白いっていうか、変わってるとは思うぜ」
「ただのナイフと銃でしょうに」
「こんな玩具みてぇなのが、『銃』だって事がだ」
人の銃を壁へ向けて構える船長になるほどと思う。そう言えばこの世界では、機関銃などはあってもオートマチックは無かった筈だ。
シルビが愛用している銃の形状はリボルバー式ではなく、素材も鉄ではない。一発装填式でもなく、リボルバー以上に連発出来る。
というかそもそも、それは『銃』の形をしているだけで実のところ『銃ではない』
繰り返した転生の何番目かで手に入れた本来違う用途で使用する『道具』だ。
そんな本来違う用途の道具は、シルビが死ぬ気の炎を併用しなければ使えない代物である。
「……やっぱり撃てねえな」
「船長オレも、オレにも貸してください!」
壁へ向けて引き金を引いたものの当然発射されない弾丸に、シャチまでもがやってみたいと手を伸ばしていた。先にナイフの手入れをしながら好きにさせておく。
誰が何をしたところで、本当にシルビ以外は撃てない。
というのもその銃の弾丸は、シルビが死ぬ気の炎で作り上げる弾丸だからだ。
かつて出会った暗殺部隊のボスや、パンクファッションな双子の戦い方から着想を得ている。実際に行なったのは機械乙女を一時的に動けなくさせる為だったか。
それ以来意外と使えることに気付いてナイフの補助的役割に当てていた。遠距離攻撃はやはり銃だろう。とはいえ暗殺部隊のボス同様、弾丸以外も出す。
手入れを終わらせたナイフを腰のナイフベルトへ戻し、何度も引き金を引いているシャチから銃を受け取って分解する。リボルバーよりも分解箇所の多いその部品を一度布の上へ並べ、シルビはグリップを磨いた。
透かし部分から覗く仄かに青い光は相変わらず綺麗だ。
「その中には何か入ってるのか?」
ついでだから他にも聞いておこうということなのか、普段はただ見ているだけの船長が口を挟んでくる。
「この中には羽根が入ってますよ」
「羽根?」
「ほら、覗き込んで見りゃ分かるでしょう?」
グリップを渡して透かし部分を示せば、片目で中を覗き込んだ。それから直ぐに驚いたように顔を放しグリップを眺めている。
「……見た目だけじゃなく中身も珍しいんだな」
「希少どころじゃねぇでしょうねぇ。それと同じものが他にあるとも思えねぇ」
「つまりコレしかない?」
「Si まぁ、知り合いの彫金師が欠片を持ってるかも知れねぇですけど」
「欠片って、羽根だろ?」
「鉱石みてぇに硬てぇんですよ。隕石みてぇなものですから」
返してもらったグリップを布で磨き、他の部品と組み合わせて元の形へ戻していく。もう何度も繰り返しているので手馴れたそれは、弾が死ぬ気の炎によるものである点において、わざわざ分解してまで手入れする必要性は低い。
では何故分解してまで手入れするのかと言われたら、それがシルビなりの日頃の感謝の気持ちだからである。ナイフもこの銃も、シルビの命を少しでも長くする為の大切な相棒だ。
それをないがしろにしてはいけないだろう。相棒である以前に大切なものであるという理由もある。
元通りの形を成した銃を右手で構えた。銃口の先には船長が座っているが、船長はシルビが引き金に指を掛けても微動だにしない。弾を込めている様子が無かったからだという理由であるのなら残念な事にこの銃はその必要が無いのだが。違う理由であるのなら。
わざとゆっくりと引き金を引くと、船長よりシャチが聞こえた音に驚いていた。
銃口から飛び出したのは弾丸ではなく作り物の花である。
「どうなってんのか全然分かんねえな。やっぱり」
「貴方毎回仕組みを探る為に見てたんですか?」
「オレだって一丁くらい持っててもいいだろ。どうせなら珍しいのがいい」
「残念でしたねぇ。これはこの世に一丁しか無ぇ物ですから」
「らしいな」
「でもまぁ、貴方の物も同然ですけれど」
違う理由があるのなら、シルビが銃口を向けたとしても、シルビが絶対にトラファルガー・ローを撃たないという信頼があるのかだ。そして船長であるローの為に引き金を引くのだから、今は彼の武器も同然。
銃口から飛び出している、無論これも幻覚で作られたものである花を取って銃をホルスターへ戻し、手入れに使った道具を片付ける。恐らく今後は、船長がシルビの武器の手入れを見物する事は減るかもしれない。
シルビとその武器が船長の武器と同義であるにしても、ローはシルビを『ただの武器』とは見ていないので充分である。
別に隠しているわけでも無いのでシルビは時々自室以外でも愛用の武器の手入れをするのだが、部屋以外で手入れをしていると必ずと言っても良いほど見物人が現れる。
そう刃渡りの長くない、シンプルな装飾のナイフと拳銃だけだというのに何が面白いのだろうかといつも思うが、毎回違う見物人にそれを尋ねる気はなかった。
一昨日に他の海賊船を一隻潰した際に使ったので手入れをしようと思い、食堂のテーブルに敷いた布の上へナイフと銃を置くと、案の定見物人がやってくる。今日はどうやら船長とシャチらしい。
「毎回誰かしら見に来ますけど、そんなに面白ぇモンですかねぇ」
手入れに使う道具を脇に置きながら長年の疑問を口にすれば、頬杖を突いていた船長が銃に手を伸ばした。
「面白いっていうか、変わってるとは思うぜ」
「ただのナイフと銃でしょうに」
「こんな玩具みてぇなのが、『銃』だって事がだ」
人の銃を壁へ向けて構える船長になるほどと思う。そう言えばこの世界では、機関銃などはあってもオートマチックは無かった筈だ。
シルビが愛用している銃の形状はリボルバー式ではなく、素材も鉄ではない。一発装填式でもなく、リボルバー以上に連発出来る。
というかそもそも、それは『銃』の形をしているだけで実のところ『銃ではない』
繰り返した転生の何番目かで手に入れた本来違う用途で使用する『道具』だ。
そんな本来違う用途の道具は、シルビが死ぬ気の炎を併用しなければ使えない代物である。
「……やっぱり撃てねえな」
「船長オレも、オレにも貸してください!」
壁へ向けて引き金を引いたものの当然発射されない弾丸に、シャチまでもがやってみたいと手を伸ばしていた。先にナイフの手入れをしながら好きにさせておく。
誰が何をしたところで、本当にシルビ以外は撃てない。
というのもその銃の弾丸は、シルビが死ぬ気の炎で作り上げる弾丸だからだ。
かつて出会った暗殺部隊のボスや、パンクファッションな双子の戦い方から着想を得ている。実際に行なったのは機械乙女を一時的に動けなくさせる為だったか。
それ以来意外と使えることに気付いてナイフの補助的役割に当てていた。遠距離攻撃はやはり銃だろう。とはいえ暗殺部隊のボス同様、弾丸以外も出す。
手入れを終わらせたナイフを腰のナイフベルトへ戻し、何度も引き金を引いているシャチから銃を受け取って分解する。リボルバーよりも分解箇所の多いその部品を一度布の上へ並べ、シルビはグリップを磨いた。
透かし部分から覗く仄かに青い光は相変わらず綺麗だ。
「その中には何か入ってるのか?」
ついでだから他にも聞いておこうということなのか、普段はただ見ているだけの船長が口を挟んでくる。
「この中には羽根が入ってますよ」
「羽根?」
「ほら、覗き込んで見りゃ分かるでしょう?」
グリップを渡して透かし部分を示せば、片目で中を覗き込んだ。それから直ぐに驚いたように顔を放しグリップを眺めている。
「……見た目だけじゃなく中身も珍しいんだな」
「希少どころじゃねぇでしょうねぇ。それと同じものが他にあるとも思えねぇ」
「つまりコレしかない?」
「Si まぁ、知り合いの彫金師が欠片を持ってるかも知れねぇですけど」
「欠片って、羽根だろ?」
「鉱石みてぇに硬てぇんですよ。隕石みてぇなものですから」
返してもらったグリップを布で磨き、他の部品と組み合わせて元の形へ戻していく。もう何度も繰り返しているので手馴れたそれは、弾が死ぬ気の炎によるものである点において、わざわざ分解してまで手入れする必要性は低い。
では何故分解してまで手入れするのかと言われたら、それがシルビなりの日頃の感謝の気持ちだからである。ナイフもこの銃も、シルビの命を少しでも長くする為の大切な相棒だ。
それをないがしろにしてはいけないだろう。相棒である以前に大切なものであるという理由もある。
元通りの形を成した銃を右手で構えた。銃口の先には船長が座っているが、船長はシルビが引き金に指を掛けても微動だにしない。弾を込めている様子が無かったからだという理由であるのなら残念な事にこの銃はその必要が無いのだが。違う理由であるのなら。
わざとゆっくりと引き金を引くと、船長よりシャチが聞こえた音に驚いていた。
銃口から飛び出したのは弾丸ではなく作り物の花である。
「どうなってんのか全然分かんねえな。やっぱり」
「貴方毎回仕組みを探る為に見てたんですか?」
「オレだって一丁くらい持っててもいいだろ。どうせなら珍しいのがいい」
「残念でしたねぇ。これはこの世に一丁しか無ぇ物ですから」
「らしいな」
「でもまぁ、貴方の物も同然ですけれど」
違う理由があるのなら、シルビが銃口を向けたとしても、シルビが絶対にトラファルガー・ローを撃たないという信頼があるのかだ。そして船長であるローの為に引き金を引くのだから、今は彼の武器も同然。
銃口から飛び出している、無論これも幻覚で作られたものである花を取って銃をホルスターへ戻し、手入れに使った道具を片付ける。恐らく今後は、船長がシルビの武器の手入れを見物する事は減るかもしれない。
シルビとその武器が船長の武器と同義であるにしても、ローはシルビを『ただの武器』とは見ていないので充分である。