原作前日常編
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バンダナ視点
「潜水艦……?」
「珍しいだろ」
私物の買出しから戻ると何処かに行っていた船長が港へ戻ってきていた。
停泊中の自船を隣へ居る誰かへ自慢しているようで、新しい船員を探しに行ったのではなかったのかと思ったものの、船長がナンパに船を使う事もないだろうとバンダナはその場で様子を窺うつもりで立ち止まる。
船長の隣に居るのは、長い黒髪の人物だ。細いし筋肉が付いている風でもなく新しい船員なのかどころか、後ろ姿では男か女かも分からなかった。
それでも旅支度のように鞄を提げているので、勧誘された船員である事は間違い無さそうだ。あの様子からして比較的体力が無くとも出来るだろう料理人か航海士か。
バンダナはそう考えながら、買い込んで来たばかりの煙草の箱を開ける。波の音と一緒に船長達の会話も聞こえていた。
「潜水士は居んのかぁ?」
「当たり前だろ」
「操舵士はぁ?」
「操舵は出来る」
「航海士」
「知識はある」
「……戦闘員、船医、料理番」
「料理は当番制だ」
煙草に火を点けようとしてなかなかマッチに火が点かず、船の傍の二人から視線を離したところで『ッパーン』と小気味のいい音がする。
何事かと顔を上げれば、頭を押さえてしゃがみ込む船長とさっきまでは持っていなかった巨大ハリセンを手に持つ黒髪。
「それは海賊って言わねぇんだよぉ! 漂流って言うんだこの馬鹿船長! テメェは『一人楽しすぎる船乗りさん』かぁ!?」
二人きりで『賊』を名乗る事に関しては最もだと思うが、流石に漂流は言い過ぎだろうと結局火の点かなかった煙草を咥えたまま近付いていけば、足音に気付いてか黒髪が振り返る。
紫の瞳が水面から反射された光を映して揺れて、一瞬『これは人か?』と不思議に思った。
ハリセンを肩に担ぎ、半眼の訝しむ様な表情でバンダナを見た黒髪は、しゃがんでいる船長を横目に口を開く。
「これの知り合いですか?」
「知り合いも何も、その潜水艦の潜水士だよ」
「……潜水士もこの馬鹿船長が兼任してんのかと思った」
それはつまり船員は誰も居ないと疑っていたという事で、なるほどそれなら漂流という言葉も頷けた。一人なら『賊』ですらない。
「オレはハートの海賊団専属潜水士のバンダナだ。麻酔医師の免許を持ってる。好きなモンは煙草とオンナ。お前さんは?」
「三日前にこの船長未満に勧誘されました。薬師ですが一応外科手術も出来ます。趣味は雑用。よろしくお願いします。バンダナさん」
「船長には勿体無い礼儀正しい子だねえアンタ。敬語なんて使わなくていいって」
「……年上で、目上の方には使わねぇ訳にはいかないでしょう」
「そりゃオレが老けてるって話しかい?」
「職人のようだと褒めているつもりです」
これがバンダナと、これから長い付き合いになるシルビとの出会いである。
「潜水艦……?」
「珍しいだろ」
私物の買出しから戻ると何処かに行っていた船長が港へ戻ってきていた。
停泊中の自船を隣へ居る誰かへ自慢しているようで、新しい船員を探しに行ったのではなかったのかと思ったものの、船長がナンパに船を使う事もないだろうとバンダナはその場で様子を窺うつもりで立ち止まる。
船長の隣に居るのは、長い黒髪の人物だ。細いし筋肉が付いている風でもなく新しい船員なのかどころか、後ろ姿では男か女かも分からなかった。
それでも旅支度のように鞄を提げているので、勧誘された船員である事は間違い無さそうだ。あの様子からして比較的体力が無くとも出来るだろう料理人か航海士か。
バンダナはそう考えながら、買い込んで来たばかりの煙草の箱を開ける。波の音と一緒に船長達の会話も聞こえていた。
「潜水士は居んのかぁ?」
「当たり前だろ」
「操舵士はぁ?」
「操舵は出来る」
「航海士」
「知識はある」
「……戦闘員、船医、料理番」
「料理は当番制だ」
煙草に火を点けようとしてなかなかマッチに火が点かず、船の傍の二人から視線を離したところで『ッパーン』と小気味のいい音がする。
何事かと顔を上げれば、頭を押さえてしゃがみ込む船長とさっきまでは持っていなかった巨大ハリセンを手に持つ黒髪。
「それは海賊って言わねぇんだよぉ! 漂流って言うんだこの馬鹿船長! テメェは『一人楽しすぎる船乗りさん』かぁ!?」
二人きりで『賊』を名乗る事に関しては最もだと思うが、流石に漂流は言い過ぎだろうと結局火の点かなかった煙草を咥えたまま近付いていけば、足音に気付いてか黒髪が振り返る。
紫の瞳が水面から反射された光を映して揺れて、一瞬『これは人か?』と不思議に思った。
ハリセンを肩に担ぎ、半眼の訝しむ様な表情でバンダナを見た黒髪は、しゃがんでいる船長を横目に口を開く。
「これの知り合いですか?」
「知り合いも何も、その潜水艦の潜水士だよ」
「……潜水士もこの馬鹿船長が兼任してんのかと思った」
それはつまり船員は誰も居ないと疑っていたという事で、なるほどそれなら漂流という言葉も頷けた。一人なら『賊』ですらない。
「オレはハートの海賊団専属潜水士のバンダナだ。麻酔医師の免許を持ってる。好きなモンは煙草とオンナ。お前さんは?」
「三日前にこの船長未満に勧誘されました。薬師ですが一応外科手術も出来ます。趣味は雑用。よろしくお願いします。バンダナさん」
「船長には勿体無い礼儀正しい子だねえアンタ。敬語なんて使わなくていいって」
「……年上で、目上の方には使わねぇ訳にはいかないでしょう」
「そりゃオレが老けてるって話しかい?」
「職人のようだと褒めているつもりです」
これがバンダナと、これから長い付き合いになるシルビとの出会いである。