ワノ国編
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夢主視点
翌日、いまだ深い眠りから覚めないルフィとゾロは討ち入りの立役者だからということもあってモモの助がいる城へと移送された。城の方が瓦礫の廃墟と化した鬼ヶ島よりは清潔だし世話もしやすいだろうという配慮である。
「キラーは怪我平気ぃ?」
「ああ」
常影港から出港した船の上。サニー号を取りに行くのを手伝ってくれとジンベエに頼まれてシルビは、隣で同じくヴィクトリアパンク号を取りに行く為に乗船していたキラーへ話しかける。
ルフィ達の家でもあるサニー号は、空へ舞い上がる前の鬼ヶ島の位置に置き去りになってしまっていた。カイドウによる島の浮遊に巻き込まれていたら船の破損が酷かっただろうから、そこは幸運である。
同じくキッド海賊団のヴィクトリアパンク号も元鬼ヶ島の港だ。
討ち入りの際にも苦労した通り、鬼ヶ島周辺には渦潮が渦巻いていた。島が持ち上げられたことで海流が変わりあの辺りがどうなっているのかは分からず、しかも討ち入りの際に大きめな船は殆ど沈めてしまっている。
そんな中で自分達の船を迎えに行くにはワノ国の人の手や船を借りるしかない。
いくらカイドウを倒す関係で協力したとしても、侍達だってまだ復興作業などがある。何度も荒くれた海へ出てもらうのは申し訳ないと、ジンベエがキッド海賊団にも相談してまとめて二隻の船を迎えに行くことになったのだ。
ハートの海賊団の船であるポーラータング号は比較的無事に常影港にあったのだが、シルビはジンベエ直々に手伝いを頼まれて船回収のメンバーになったのである。
嵐こそ来ていないので海面こそあの時よりも穏やかだが、勝敗を決した後には海底火山の噴火が起きたり、変わらない渦潮の影響もあって揺れが強くなり始めた船の上。
キラーはもう鎌ゾウの格好ではなく青と白のストライプの仮面で顔を覆っている。腰には相変わらずシルビのストールだったボロ布をサッシュ代わりにしていた。
「麦わらほどではないが怪我はキッドのほうが酷かった。お前こそどうなんだ?」
「俺は屋上に行ったメンバーの中じゃ一番軽傷かなぁ」
「なんでだ」
「SMILEの影響は、どう?」
仮面越しに海を眺めていたキラーが振り向く。シルビ相手には無意味だと言ったのに相変わらず仮面をしていれば表情を読まれないと思っているのか、キラーは数秒シルビを見つめてからまた海を眺めた。
「もう、キッドが海に落ちても助けてやれないな」
後ろで同じく船の回収の為に来たキッド海賊団の船員達が数人、ジンベエや侍達と話している。同盟相手に騙されたこともあってキッドは馴れ合いを忌避しているようだったが、少なくとも船員達は侍達にはそこまで警戒していないらしい。
キッド達は同盟を組んだ相手に騙された。バジル・ホーキンスやスクラッチメン・アプーという同盟相手はそれぞれ、元からカイドウ軍の傘下であったり傘下に下ってキッドを裏切ったという。
その結果キラーはSMILEを食べさせられた。
「アイツを助けるのは昔からオレの役目だったんだがな」
「海から助けるだけが、キラーの役目じゃねぇでしょう?」
シルビならきっとSMILEの影響をキラーの体内から排除することも出来るだろう。けれどもそれを言うつもりはなかった。
もし仮にキラーだけをSMILEの呪縛から解放しても、おこぼれ町の町民達はその呪縛に囚われ続けることになる。キラーが治ったと知られれば誰もが自分も助けてくれと縋ってくるだろう事も予想出来た。
繰り返すが、一人を助けておいて万人を助けない理由はシルビにはない。
一人を助けてしまったら万人を助けるべきだ。けれども全てを助けることは出来ない。
「キラー」
キラーの腰に垂れているサッシュを引いてキラーを振り向かせる。
「ごめんなぁ」
「ファッファ、何を謝ることがある」
「色々ぉ? 昔騙したこととか、薬師を名乗ってる癖にお前のことを治してやれねぇこととかぁ。歯がゆいなぁって思ってぇ」
船が大きく揺れる。
「“アマネ”の事は勉強させられたというだけだ。囚人採掘場では助けられたし、それで貸し借りはナシにしよう」
「鈴後でも一応敵対したけどぉ?」
「寒くなかったか?」
「え? ああ、ストールの話かぁ。あの後すぐに移動したからそんなに寒くはなかったぜぇ」
思えばあの場所からずっとシルビのストールは奪われていた。キラーが自身の腰にあるサッシュと変貌したストールを見下ろす。
元はシルビのストールだったそれは、既に洗ったところで落ちきらなかったのだろう汚れが残ってしまっていた。色だって褪せてしまっていて、サッシュ扱いだからまだいいが本来のストールとしてはもう使えそうにない。
手触りだけはまだ良かった。
今更返されたところでシルビなら少々勿体ないとは思うが捨てるだろう。それならばストールとしては使えずともサッシュとして使ってくれているキラーの元にあった方がいい。
「キラーこそ、寒くなったぁ?」
「ああ」
「そっか」
笑って握っていたサッシュを離す。進路を眺めていたジンベエが船が見えたと声を上げるのにシルビ達も進行方向を見た。
船は二隻とも多少の破損はあるだろうが無事だったようだ。
「じゃあキラー、俺ジンベエさんのとこに行くから……なんで寂しそうな顔すんだよぉ」
「……してない」
「仮面から雰囲気が漏れてるぅ」
翌日、いまだ深い眠りから覚めないルフィとゾロは討ち入りの立役者だからということもあってモモの助がいる城へと移送された。城の方が瓦礫の廃墟と化した鬼ヶ島よりは清潔だし世話もしやすいだろうという配慮である。
「キラーは怪我平気ぃ?」
「ああ」
常影港から出港した船の上。サニー号を取りに行くのを手伝ってくれとジンベエに頼まれてシルビは、隣で同じくヴィクトリアパンク号を取りに行く為に乗船していたキラーへ話しかける。
ルフィ達の家でもあるサニー号は、空へ舞い上がる前の鬼ヶ島の位置に置き去りになってしまっていた。カイドウによる島の浮遊に巻き込まれていたら船の破損が酷かっただろうから、そこは幸運である。
同じくキッド海賊団のヴィクトリアパンク号も元鬼ヶ島の港だ。
討ち入りの際にも苦労した通り、鬼ヶ島周辺には渦潮が渦巻いていた。島が持ち上げられたことで海流が変わりあの辺りがどうなっているのかは分からず、しかも討ち入りの際に大きめな船は殆ど沈めてしまっている。
そんな中で自分達の船を迎えに行くにはワノ国の人の手や船を借りるしかない。
いくらカイドウを倒す関係で協力したとしても、侍達だってまだ復興作業などがある。何度も荒くれた海へ出てもらうのは申し訳ないと、ジンベエがキッド海賊団にも相談してまとめて二隻の船を迎えに行くことになったのだ。
ハートの海賊団の船であるポーラータング号は比較的無事に常影港にあったのだが、シルビはジンベエ直々に手伝いを頼まれて船回収のメンバーになったのである。
嵐こそ来ていないので海面こそあの時よりも穏やかだが、勝敗を決した後には海底火山の噴火が起きたり、変わらない渦潮の影響もあって揺れが強くなり始めた船の上。
キラーはもう鎌ゾウの格好ではなく青と白のストライプの仮面で顔を覆っている。腰には相変わらずシルビのストールだったボロ布をサッシュ代わりにしていた。
「麦わらほどではないが怪我はキッドのほうが酷かった。お前こそどうなんだ?」
「俺は屋上に行ったメンバーの中じゃ一番軽傷かなぁ」
「なんでだ」
「SMILEの影響は、どう?」
仮面越しに海を眺めていたキラーが振り向く。シルビ相手には無意味だと言ったのに相変わらず仮面をしていれば表情を読まれないと思っているのか、キラーは数秒シルビを見つめてからまた海を眺めた。
「もう、キッドが海に落ちても助けてやれないな」
後ろで同じく船の回収の為に来たキッド海賊団の船員達が数人、ジンベエや侍達と話している。同盟相手に騙されたこともあってキッドは馴れ合いを忌避しているようだったが、少なくとも船員達は侍達にはそこまで警戒していないらしい。
キッド達は同盟を組んだ相手に騙された。バジル・ホーキンスやスクラッチメン・アプーという同盟相手はそれぞれ、元からカイドウ軍の傘下であったり傘下に下ってキッドを裏切ったという。
その結果キラーはSMILEを食べさせられた。
「アイツを助けるのは昔からオレの役目だったんだがな」
「海から助けるだけが、キラーの役目じゃねぇでしょう?」
シルビならきっとSMILEの影響をキラーの体内から排除することも出来るだろう。けれどもそれを言うつもりはなかった。
もし仮にキラーだけをSMILEの呪縛から解放しても、おこぼれ町の町民達はその呪縛に囚われ続けることになる。キラーが治ったと知られれば誰もが自分も助けてくれと縋ってくるだろう事も予想出来た。
繰り返すが、一人を助けておいて万人を助けない理由はシルビにはない。
一人を助けてしまったら万人を助けるべきだ。けれども全てを助けることは出来ない。
「キラー」
キラーの腰に垂れているサッシュを引いてキラーを振り向かせる。
「ごめんなぁ」
「ファッファ、何を謝ることがある」
「色々ぉ? 昔騙したこととか、薬師を名乗ってる癖にお前のことを治してやれねぇこととかぁ。歯がゆいなぁって思ってぇ」
船が大きく揺れる。
「“アマネ”の事は勉強させられたというだけだ。囚人採掘場では助けられたし、それで貸し借りはナシにしよう」
「鈴後でも一応敵対したけどぉ?」
「寒くなかったか?」
「え? ああ、ストールの話かぁ。あの後すぐに移動したからそんなに寒くはなかったぜぇ」
思えばあの場所からずっとシルビのストールは奪われていた。キラーが自身の腰にあるサッシュと変貌したストールを見下ろす。
元はシルビのストールだったそれは、既に洗ったところで落ちきらなかったのだろう汚れが残ってしまっていた。色だって褪せてしまっていて、サッシュ扱いだからまだいいが本来のストールとしてはもう使えそうにない。
手触りだけはまだ良かった。
今更返されたところでシルビなら少々勿体ないとは思うが捨てるだろう。それならばストールとしては使えずともサッシュとして使ってくれているキラーの元にあった方がいい。
「キラーこそ、寒くなったぁ?」
「ああ」
「そっか」
笑って握っていたサッシュを離す。進路を眺めていたジンベエが船が見えたと声を上げるのにシルビ達も進行方向を見た。
船は二隻とも多少の破損はあるだろうが無事だったようだ。
「じゃあキラー、俺ジンベエさんのとこに行くから……なんで寂しそうな顔すんだよぉ」
「……してない」
「仮面から雰囲気が漏れてるぅ」
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