原作前日常編
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夢主視点
腕を組もうとしたら右腕が痛んだので舌打ちを零す。その途端見張りのつもりか傍にいたイルカがこちらを振り向いた。
本当に、他意はなかったのだ。クルーの名前と顔をちゃんと覚えてきたベポに、ご褒美代わりにジョリーロジャーを入れたスカーフでも作って首へ巻いてやろうと思っただけで。だがその計画は頓挫したと考えた方がいいかもしれない。
何せ部屋はまだ掃除中で、シルビは入れ替わり立ち代わり見張りが就けられている。部屋へ戻ることは出来そうになかった。最悪、少なくとも今晩はクルー達と同じ部屋で寝かされるかもしれない。
部屋の掃除なんて片腕が動かせなくたって出来るのに、と思うものの、それを言えばまた怒られるという結果は見えているので口にはしなかった。“そういう事”が怒られる原因だとは長い人生で流石に学んでいる。ただ今でも時々やはり行動にまでは移せない。
半泣きで騒いでいるシャチと、騒ぎに起きて血を見てぐずっていたベポを宥めるワカメを背後に、船長自ら処置してくれた右腕を見下ろす。剥いでいる最中は沈静の炎で痛みを殺していたが、今は死ぬ気の炎が出せないのでじわじわと痛みが疼いていた。
食堂の壁際の席。壁に寄りかかって右手を軽く動かす。バンダナが食堂へ入って来て、シルビとイルカに気付いて寄ってきた。
「通路にも血が落ちてたってよ」
「そりゃ悪い事をしたなぁ。後で謝んねぇと」
「それより先にいう事があるんじゃないかい?」
「怒られたのは久しぶりかもしれねぇです」
バンダナとイルカに睨まれたのでそれ以上言うのは止める。存外船長から言われた『全然直ってない』という言葉が胸に突き刺さっていて、虚勢を張るので精一杯だ。
「ペンちゃん。腕は痛くないかい?」
「平気です」
「え、でも船長から鎮痛剤……」
「このくらいの痛みなら慣れてる。でなけりゃ剥がそうなんてしねぇよ」
「それ船長に言ったら怒られるって分かってるね?」
「そうなんですか?」
二人から顔を逸らすとバンダナが溜息を吐いたのが聞こえた。左手で包帯の巻かれた右腕を掴む。途端に増す痛みと血の流れを掌に感じて、意味も無く生きていると感じた。
自傷癖は無い。ただそれが怒られる原因だと分かっていても自分の身を省みないだけである。
「簡単に頼れってぇ……」
「頼れないってんなら甘えてみたらどうだい?」
「甘えてないように見えますか」
「うん」
テーブルへ突っ伏すと頭に手を置かれた。とりあえず片手で包帯を巻き直すのは難しいので、いずれにせよ誰かの手を借りなければならないだろう。
腕を組もうとしたら右腕が痛んだので舌打ちを零す。その途端見張りのつもりか傍にいたイルカがこちらを振り向いた。
本当に、他意はなかったのだ。クルーの名前と顔をちゃんと覚えてきたベポに、ご褒美代わりにジョリーロジャーを入れたスカーフでも作って首へ巻いてやろうと思っただけで。だがその計画は頓挫したと考えた方がいいかもしれない。
何せ部屋はまだ掃除中で、シルビは入れ替わり立ち代わり見張りが就けられている。部屋へ戻ることは出来そうになかった。最悪、少なくとも今晩はクルー達と同じ部屋で寝かされるかもしれない。
部屋の掃除なんて片腕が動かせなくたって出来るのに、と思うものの、それを言えばまた怒られるという結果は見えているので口にはしなかった。“そういう事”が怒られる原因だとは長い人生で流石に学んでいる。ただ今でも時々やはり行動にまでは移せない。
半泣きで騒いでいるシャチと、騒ぎに起きて血を見てぐずっていたベポを宥めるワカメを背後に、船長自ら処置してくれた右腕を見下ろす。剥いでいる最中は沈静の炎で痛みを殺していたが、今は死ぬ気の炎が出せないのでじわじわと痛みが疼いていた。
食堂の壁際の席。壁に寄りかかって右手を軽く動かす。バンダナが食堂へ入って来て、シルビとイルカに気付いて寄ってきた。
「通路にも血が落ちてたってよ」
「そりゃ悪い事をしたなぁ。後で謝んねぇと」
「それより先にいう事があるんじゃないかい?」
「怒られたのは久しぶりかもしれねぇです」
バンダナとイルカに睨まれたのでそれ以上言うのは止める。存外船長から言われた『全然直ってない』という言葉が胸に突き刺さっていて、虚勢を張るので精一杯だ。
「ペンちゃん。腕は痛くないかい?」
「平気です」
「え、でも船長から鎮痛剤……」
「このくらいの痛みなら慣れてる。でなけりゃ剥がそうなんてしねぇよ」
「それ船長に言ったら怒られるって分かってるね?」
「そうなんですか?」
二人から顔を逸らすとバンダナが溜息を吐いたのが聞こえた。左手で包帯の巻かれた右腕を掴む。途端に増す痛みと血の流れを掌に感じて、意味も無く生きていると感じた。
自傷癖は無い。ただそれが怒られる原因だと分かっていても自分の身を省みないだけである。
「簡単に頼れってぇ……」
「頼れないってんなら甘えてみたらどうだい?」
「甘えてないように見えますか」
「うん」
テーブルへ突っ伏すと頭に手を置かれた。とりあえず片手で包帯を巻き直すのは難しいので、いずれにせよ誰かの手を借りなければならないだろう。