原作前日常編
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シャチ視点 流血表現注意
不機嫌も露わに仁王立ちをしている船長の前には、神妙な様子で正座しているペンギン。
間違ってはいない。普段であればこの光景は立場が逆である事が多いが、今回は立ち位置が正しく遠巻きに眺めているクルー達もペンギンへ助け舟を出すつもりは無かった。
そんなペンギンの、袖が捲られた右腕には白い包帯。
今も下手に動かせば血が滲むのであろうそれが、ペンギンの怒られている原因だった。
事の始まりはそれより数時間前に遡る。
食堂で行なっていた読み書きの勉強を終わらせたシャチは、イルカへ誘われて格闘訓練をしようとしてついでにペンギンも誘おうとした。
勉強道具を片付けるついでに、副船長室で作業をしているらしいペンギンへ声を掛けようと副船長室へ向かい、ノックをした瞬間部屋の中から声がしたのである。
入室の許可をする返事でもシャチの訓練のお誘いへの返事でもなかった。何故ならシャチはドアをノックしてペンギンの名を呼んだだけだったのだから。入っていいかとも手合わせしようとも言っていない。
それに部屋の中から聞こえた言葉は『あ、ヤベッ』という、普段では聞けないような慌てた声だった。
「ペンギン? どったの?」
『……何でもない。ただちょっと手が離せねぇ。何か用かぁ?』
「イルカと手合わせするからペンギンもって思ったんだけど」
『あー、無理ぃ。ゴメン』
ドア越しの声に混じってガタガタと何かを動かしている音がする。独り言でも何か言っているようで、シャチは本当に大丈夫なのかとドアノブへと手を掛けた。
もしかしたらシャチがいきなり声を掛けたせいで、薬壜でも割ってしまったのかもしれない。だったら掃除を手伝ったほうがいいなと軽く考えていたが、部屋の中はそんな優しい状況ではなかった。
「ひっ――」
「あ、馬鹿見るな――」
「ひゃあああああああああああああああああ!? せ、せんちょー! ペンギンがぁああああああ!」
ペンギンが静止の声を掛けていた気がするが、シャチは驚きと混乱でそんな声に構うことなく船長の元へと走り出す。いい歳して半泣きになっていたがきっと仕方ない。
誰だって心構えの無い状態で、仲間の部屋が血塗れになっていて部屋の主も腕を血で真っ赤にしている光景を見たら、平常ではいられないだろう。いくら海賊でも医者の集団でもだ。
甲板でベポと昼寝をしていたらしい船長だけではなく、それぞれの役割や好きな事をやっていたクルー達までもがシャチの叫び声に何事かと顔を出す。飛びつくように船長へしがみ付いてシャチは自分が見たものを説明しようとして、上手く口が回らない。
「どうしたシャチ!?」
「ペ、ぺぺ、ペンギンの部屋、部屋ってか腕、腕が……」
「腕?」
「腕を斬って出血したんで、ちょっと血塗れになっただけです」
後ろから声がして、船長も同じ様にシャチの後を追いかけてきたらしいペンギンを見て目を見開いた。
不機嫌も露わに仁王立ちをしている船長の前には、神妙な様子で正座しているペンギン。
間違ってはいない。普段であればこの光景は立場が逆である事が多いが、今回は立ち位置が正しく遠巻きに眺めているクルー達もペンギンへ助け舟を出すつもりは無かった。
そんなペンギンの、袖が捲られた右腕には白い包帯。
今も下手に動かせば血が滲むのであろうそれが、ペンギンの怒られている原因だった。
事の始まりはそれより数時間前に遡る。
食堂で行なっていた読み書きの勉強を終わらせたシャチは、イルカへ誘われて格闘訓練をしようとしてついでにペンギンも誘おうとした。
勉強道具を片付けるついでに、副船長室で作業をしているらしいペンギンへ声を掛けようと副船長室へ向かい、ノックをした瞬間部屋の中から声がしたのである。
入室の許可をする返事でもシャチの訓練のお誘いへの返事でもなかった。何故ならシャチはドアをノックしてペンギンの名を呼んだだけだったのだから。入っていいかとも手合わせしようとも言っていない。
それに部屋の中から聞こえた言葉は『あ、ヤベッ』という、普段では聞けないような慌てた声だった。
「ペンギン? どったの?」
『……何でもない。ただちょっと手が離せねぇ。何か用かぁ?』
「イルカと手合わせするからペンギンもって思ったんだけど」
『あー、無理ぃ。ゴメン』
ドア越しの声に混じってガタガタと何かを動かしている音がする。独り言でも何か言っているようで、シャチは本当に大丈夫なのかとドアノブへと手を掛けた。
もしかしたらシャチがいきなり声を掛けたせいで、薬壜でも割ってしまったのかもしれない。だったら掃除を手伝ったほうがいいなと軽く考えていたが、部屋の中はそんな優しい状況ではなかった。
「ひっ――」
「あ、馬鹿見るな――」
「ひゃあああああああああああああああああ!? せ、せんちょー! ペンギンがぁああああああ!」
ペンギンが静止の声を掛けていた気がするが、シャチは驚きと混乱でそんな声に構うことなく船長の元へと走り出す。いい歳して半泣きになっていたがきっと仕方ない。
誰だって心構えの無い状態で、仲間の部屋が血塗れになっていて部屋の主も腕を血で真っ赤にしている光景を見たら、平常ではいられないだろう。いくら海賊でも医者の集団でもだ。
甲板でベポと昼寝をしていたらしい船長だけではなく、それぞれの役割や好きな事をやっていたクルー達までもがシャチの叫び声に何事かと顔を出す。飛びつくように船長へしがみ付いてシャチは自分が見たものを説明しようとして、上手く口が回らない。
「どうしたシャチ!?」
「ペ、ぺぺ、ペンギンの部屋、部屋ってか腕、腕が……」
「腕?」
「腕を斬って出血したんで、ちょっと血塗れになっただけです」
後ろから声がして、船長も同じ様にシャチの後を追いかけてきたらしいペンギンを見て目を見開いた。