ワノ国編
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夢主視点
「――拙者、この戦いで死ぬのかも知れんな。一生分の“運”を使い果たした気分でござる」
錦えもんの呟きが聞こえる。何か反論してやろうかとも思ったがそれはシルビではなく雷ぞうやイヌアラシ公爵達がしていた。
その中にカン十郎の姿は無い。無くて当然だ。
彼の姿はモモの助を捕まえてまだ港にある。その姿を見れば『誰が内通者だったのか』の答えも分かるというもの。
カン十郎が裏切り者だ。
逃げようとするカン十郎を追って赤鞘の一人である河松が海へと飛び込む。カッパの獣人だと自称する彼ならこの荒れた海でも問題ないのだろう。
シルビも一瞬追いかけようかと考えた。だがその視界にしのぶの姿が映り、柄にも無く躊躇してしまう。
能力で描き出した鶴に乗ってカン十郎が飛び立っていく。
「さらばだお前達! どの道貴様らなどカイドウ様の軍隊に適いはせぬ!」
だが為す術もなく見上げることしか出来ない。今の“シルビ”ではあれを追うことは難しかった。
サニー号から飛び出したサンジが空を蹴って追いかけようとするも、カン十郎が描き出した黒い雲から落下してくる墨の雨の襲撃を受けてそれも適わない。
反乱軍の船だけではなくキッドの船やハートの船も荒れ狂う海と空からの墨の雨に大わらわだ。シルビの背後でワカメとシャチが叫びながら雨を避けようと走り回っている。
ハートの船だけでも被害を減らそうとシルビが召喚器を抜こうとしたところで、モモの助の声がした。
「ぜんいんせっしゃのことは気にするな! それは敵の思うツボでござる! 拙者は一人で逃げてみせるゆえ、カイドウオロチを討ちはたしワノ国を守ってほしい!」
震えた声だ。きっと怖いのだろう。周囲から持ち上げられただけで彼はまだ子供なのだ。
子供ではいられないと諭したのはシルビもだけれど。
「何とか生き延びろ! 必ず助けに行く! 友達だからな!」
ルフィの返事に遠ざかっていくモモの助が泣きながらも力強く頷いているのが見えた。
船長同士の喧嘩には目処がついたのか船長が船に戻ってくる。同時に傳ジローも何故かハートの船に移動してきたが、それは錦えもん達と合流する為だろう。
もう墨の雨は降っていない。素早く損傷がないかの確認を促す指示を出した船長が、甲板の手すりを掴んだままだシルビに気付いて振り向いた。
「ペンギン」
「助けに行くべきでしたか」
歩み寄ってきた船長に問いかける。
「オレはそんな指示は出してねェ」
「アイアイ」
モモの助はさらわれてしまったが気を取り直してといった様子で錦えもん達がこれからの作戦を話し合おうとする。
「おい、ここは侍の駐屯所じゃねェぞ!」
「世話になる」
「世話しねェよ下りろ!」
全く下りる気配のない錦えもん達に船長が怒鳴るが、錦えもん達をまた小舟で海に戻すのは酷だ。
これはもうこのままハートの船で鬼ヶ島へまで行くのだろうなと判断して、シルビは錦えもん達が乗っていた小舟を持ち上げて海へと投げ捨てた。後ろでお菊が驚いていたがシルビの身体能力を知っているシャチやベポは慣れたものである。
三隻あったカイドウ軍の戦艦は一隻が船長達によって沈没した。ルフィがもう一隻を沈め残る一隻は撤退を選んだのか鬼ヶ島のある方角にと逃げている。
その逃げる戦艦が視界に入りシルビは悩んだ。向かう方向は同じではあるが逃がして良かったのか。おそらく沈めようと思った時にはもうだいぶ距離が出来ていたから諦めたのだろうが、反乱軍の情報を持ち帰られてしまうという点では悪手だ。
自分なら届くしこっそり沈めに行こうか船長に提案しようとしたところで、反乱軍の船の一つが砲撃を受けて沈んだ。
「逃げた艦からだ!」
「長距離砲!?」
順繰りに反乱軍の船が砲撃を受ける。距離がありすぎてこちらからの攻撃は届かない。ルフィや船長が飛び移るにしても距離がありすぎた。
「くそ……! やけにあっさり逃げたと思えば」
カイドウ軍の戦艦は全力で逃げながらこちらへの砲撃の手を止めない。とにかく追いかけようにも進んでいる間に狙撃されてしまう。
かといって追いかけずに逃げるという手は誰も考えない。考える訳がない。
「まずい、この距離を保たれたらみんな沈んじまうぞ!」
ハートの船だけなら海に潜れば砲撃からは逃げられる。けれどもそんな真似をこのタイミングで、意外と人情がある船長が許す訳がなかった。
「ペンギン。ぶちかませ」
「アイアイ、キャプテン」
船長の命令に従い指を鳴らし、槍を手元に造り上げる。ビッグマムから逃げる時の感覚を思い起こしながら槍を無造作に構え、奮った。
雷鳴よりは穏やかに、けれども普段海の者ではない侍達が絶句する程度に海を裂いて衝撃波が長距離砲を載せた戦艦にと直撃する。その衝撃で砲台が壊れ船体が大きく揺れていた。
「うん。やっぱり何回もやれば慣れるなぁ」
威力をセーブした『威国』はシルビの期待通り程度の威力で砲台を破壊している。戦艦そのものを破壊する程度の威力を出すには足場が不安定だったのだ。
サニー号から拍手が聞こえるのはナミやチョッパー達か。そちらに向かって手を振ろうとしたところで背後から後頭部を叩かれた。
「ったぁ!?」
「予想外のぶちかまし方をすんなっ!」
「だからって頭叩くこと無ぇでしょう!? 久しぶりに命令されて嬉しかった部下の気持ちが分かりませんかぁ?」
「つか何だあの技!」
「巨人族に伝わる槍術の技で『威国』っていうんです。今回は槍も壊してねぇしなかなか上手に出来たでしょう?」
「上手かどうかは知らねェ」
それもそうだ。
とにかくこれで砲撃は問題がなくなった筈である。後はあの戦艦そのものを片付けるだけだと思ったところで件の戦艦に横穴が空いた。
長距離砲台が壊れた余波ではない。横穴は斜め下、“海から”の攻撃で空いたのだ。
そうしている間にも戦艦はやはり海からの謎の攻撃を受けて損傷していき、ついに乗組員達の悲鳴を響かせながら沈んでいった。反乱軍の船がようやく近くにと着いた時には、漂う瓦礫の上には一人の人影しか残っていない。
「どちらさんもお控えなすって!」
聞き覚えのある声。
「手前生国と発しますは海底の国リュウグウ王国『魚人街』 方々のお兄さんとお姐さん方に厄介をかけながら、この度“麦わら”の親分さんに盃を頂く駆け出し者にござんす!」
トットランドで別れてから随分と襲い到着だ。だがしかし、生きて再び会えたという事実にシルビは安堵する。
隣では彼が麦わらの一味に加わると知った船長が驚いていた。
「人呼んで“海侠のジンベエ”! 以後面体お見知りおきの上、よろしくお頼み申します!」
トットランドから逃げる際にかつての仲間達を助ける為に別れたジンベエは、生きて戻るという約束を守ったらしい。
サニー号に乗り込んだジンベエがルフィ達に囲まれて歓迎されているのが見える。シルビも再会を祝って挨拶の一つも交わしたいところだったが、まずは自分の“仲間”との再会を喜ぶ時間が先だ。あのジンベエの様子からして仲間だった魚人達も無事に逃げおおせたのだろう。
大切な人と再会出来るのは幸せなことである。
「良かったなぁ。ジンベエさん」
「感傷に浸ってるところ悪いがな、いくら仲良くなろうがお前は向こうの一味じゃねェんだぞ」
「何を当たり前の事言ってるんです」
船長がいつの間にか機嫌を悪くしていた。ジンベエというある程の知名度と実力を持つ男が麦わらの一味に加わった事がそんなに嫌だったのだろうかと不思議に思う。
知名度と実力に関して言うならシルビの方が上なのに。
「俺がいるだけじゃ駄目……ですよねぇ。『ペンギン』は知名度低けぇもんなぁ……」
「ジンベエよりお前が居て良かった!」
「仲間を大切にしているところ悪いがルフィ殿を呼ばせてもらえぬか?」
船長が怒鳴ったところで錦えもんが割り込んでくる。船長は何とも言えない顔をしていた。
「――拙者、この戦いで死ぬのかも知れんな。一生分の“運”を使い果たした気分でござる」
錦えもんの呟きが聞こえる。何か反論してやろうかとも思ったがそれはシルビではなく雷ぞうやイヌアラシ公爵達がしていた。
その中にカン十郎の姿は無い。無くて当然だ。
彼の姿はモモの助を捕まえてまだ港にある。その姿を見れば『誰が内通者だったのか』の答えも分かるというもの。
カン十郎が裏切り者だ。
逃げようとするカン十郎を追って赤鞘の一人である河松が海へと飛び込む。カッパの獣人だと自称する彼ならこの荒れた海でも問題ないのだろう。
シルビも一瞬追いかけようかと考えた。だがその視界にしのぶの姿が映り、柄にも無く躊躇してしまう。
能力で描き出した鶴に乗ってカン十郎が飛び立っていく。
「さらばだお前達! どの道貴様らなどカイドウ様の軍隊に適いはせぬ!」
だが為す術もなく見上げることしか出来ない。今の“シルビ”ではあれを追うことは難しかった。
サニー号から飛び出したサンジが空を蹴って追いかけようとするも、カン十郎が描き出した黒い雲から落下してくる墨の雨の襲撃を受けてそれも適わない。
反乱軍の船だけではなくキッドの船やハートの船も荒れ狂う海と空からの墨の雨に大わらわだ。シルビの背後でワカメとシャチが叫びながら雨を避けようと走り回っている。
ハートの船だけでも被害を減らそうとシルビが召喚器を抜こうとしたところで、モモの助の声がした。
「ぜんいんせっしゃのことは気にするな! それは敵の思うツボでござる! 拙者は一人で逃げてみせるゆえ、カイドウオロチを討ちはたしワノ国を守ってほしい!」
震えた声だ。きっと怖いのだろう。周囲から持ち上げられただけで彼はまだ子供なのだ。
子供ではいられないと諭したのはシルビもだけれど。
「何とか生き延びろ! 必ず助けに行く! 友達だからな!」
ルフィの返事に遠ざかっていくモモの助が泣きながらも力強く頷いているのが見えた。
船長同士の喧嘩には目処がついたのか船長が船に戻ってくる。同時に傳ジローも何故かハートの船に移動してきたが、それは錦えもん達と合流する為だろう。
もう墨の雨は降っていない。素早く損傷がないかの確認を促す指示を出した船長が、甲板の手すりを掴んだままだシルビに気付いて振り向いた。
「ペンギン」
「助けに行くべきでしたか」
歩み寄ってきた船長に問いかける。
「オレはそんな指示は出してねェ」
「アイアイ」
モモの助はさらわれてしまったが気を取り直してといった様子で錦えもん達がこれからの作戦を話し合おうとする。
「おい、ここは侍の駐屯所じゃねェぞ!」
「世話になる」
「世話しねェよ下りろ!」
全く下りる気配のない錦えもん達に船長が怒鳴るが、錦えもん達をまた小舟で海に戻すのは酷だ。
これはもうこのままハートの船で鬼ヶ島へまで行くのだろうなと判断して、シルビは錦えもん達が乗っていた小舟を持ち上げて海へと投げ捨てた。後ろでお菊が驚いていたがシルビの身体能力を知っているシャチやベポは慣れたものである。
三隻あったカイドウ軍の戦艦は一隻が船長達によって沈没した。ルフィがもう一隻を沈め残る一隻は撤退を選んだのか鬼ヶ島のある方角にと逃げている。
その逃げる戦艦が視界に入りシルビは悩んだ。向かう方向は同じではあるが逃がして良かったのか。おそらく沈めようと思った時にはもうだいぶ距離が出来ていたから諦めたのだろうが、反乱軍の情報を持ち帰られてしまうという点では悪手だ。
自分なら届くしこっそり沈めに行こうか船長に提案しようとしたところで、反乱軍の船の一つが砲撃を受けて沈んだ。
「逃げた艦からだ!」
「長距離砲!?」
順繰りに反乱軍の船が砲撃を受ける。距離がありすぎてこちらからの攻撃は届かない。ルフィや船長が飛び移るにしても距離がありすぎた。
「くそ……! やけにあっさり逃げたと思えば」
カイドウ軍の戦艦は全力で逃げながらこちらへの砲撃の手を止めない。とにかく追いかけようにも進んでいる間に狙撃されてしまう。
かといって追いかけずに逃げるという手は誰も考えない。考える訳がない。
「まずい、この距離を保たれたらみんな沈んじまうぞ!」
ハートの船だけなら海に潜れば砲撃からは逃げられる。けれどもそんな真似をこのタイミングで、意外と人情がある船長が許す訳がなかった。
「ペンギン。ぶちかませ」
「アイアイ、キャプテン」
船長の命令に従い指を鳴らし、槍を手元に造り上げる。ビッグマムから逃げる時の感覚を思い起こしながら槍を無造作に構え、奮った。
雷鳴よりは穏やかに、けれども普段海の者ではない侍達が絶句する程度に海を裂いて衝撃波が長距離砲を載せた戦艦にと直撃する。その衝撃で砲台が壊れ船体が大きく揺れていた。
「うん。やっぱり何回もやれば慣れるなぁ」
威力をセーブした『威国』はシルビの期待通り程度の威力で砲台を破壊している。戦艦そのものを破壊する程度の威力を出すには足場が不安定だったのだ。
サニー号から拍手が聞こえるのはナミやチョッパー達か。そちらに向かって手を振ろうとしたところで背後から後頭部を叩かれた。
「ったぁ!?」
「予想外のぶちかまし方をすんなっ!」
「だからって頭叩くこと無ぇでしょう!? 久しぶりに命令されて嬉しかった部下の気持ちが分かりませんかぁ?」
「つか何だあの技!」
「巨人族に伝わる槍術の技で『威国』っていうんです。今回は槍も壊してねぇしなかなか上手に出来たでしょう?」
「上手かどうかは知らねェ」
それもそうだ。
とにかくこれで砲撃は問題がなくなった筈である。後はあの戦艦そのものを片付けるだけだと思ったところで件の戦艦に横穴が空いた。
長距離砲台が壊れた余波ではない。横穴は斜め下、“海から”の攻撃で空いたのだ。
そうしている間にも戦艦はやはり海からの謎の攻撃を受けて損傷していき、ついに乗組員達の悲鳴を響かせながら沈んでいった。反乱軍の船がようやく近くにと着いた時には、漂う瓦礫の上には一人の人影しか残っていない。
「どちらさんもお控えなすって!」
聞き覚えのある声。
「手前生国と発しますは海底の国リュウグウ王国『魚人街』 方々のお兄さんとお姐さん方に厄介をかけながら、この度“麦わら”の親分さんに盃を頂く駆け出し者にござんす!」
トットランドで別れてから随分と襲い到着だ。だがしかし、生きて再び会えたという事実にシルビは安堵する。
隣では彼が麦わらの一味に加わると知った船長が驚いていた。
「人呼んで“海侠のジンベエ”! 以後面体お見知りおきの上、よろしくお頼み申します!」
トットランドから逃げる際にかつての仲間達を助ける為に別れたジンベエは、生きて戻るという約束を守ったらしい。
サニー号に乗り込んだジンベエがルフィ達に囲まれて歓迎されているのが見える。シルビも再会を祝って挨拶の一つも交わしたいところだったが、まずは自分の“仲間”との再会を喜ぶ時間が先だ。あのジンベエの様子からして仲間だった魚人達も無事に逃げおおせたのだろう。
大切な人と再会出来るのは幸せなことである。
「良かったなぁ。ジンベエさん」
「感傷に浸ってるところ悪いがな、いくら仲良くなろうがお前は向こうの一味じゃねェんだぞ」
「何を当たり前の事言ってるんです」
船長がいつの間にか機嫌を悪くしていた。ジンベエというある程の知名度と実力を持つ男が麦わらの一味に加わった事がそんなに嫌だったのだろうかと不思議に思う。
知名度と実力に関して言うならシルビの方が上なのに。
「俺がいるだけじゃ駄目……ですよねぇ。『ペンギン』は知名度低けぇもんなぁ……」
「ジンベエよりお前が居て良かった!」
「仲間を大切にしているところ悪いがルフィ殿を呼ばせてもらえぬか?」
船長が怒鳴ったところで錦えもんが割り込んでくる。船長は何とも言えない顔をしていた。