トットランド編
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サンジ視点
黒い長髪。紫色の瞳。それらに見覚えは微かにしかない。
ハートの海賊団のクルーでペンギンと名乗ったその男は、ルフィ達と一緒にサンジを連れ戻しに来たのだとやっと目的を明らかにした。今に至るまでに既に何度か会っているというのに名前を名乗ってもくれなかった男である。
今思えばヒントはそこかしこにあったのだろう。例えばトラ男のものだと思われる白黒斑のモフモフの帽子とか。何故部下のペンギンが奴の帽子を被っているのかは不明だ。
名乗ってくれたならもっと早く状況を知ってサンジは動けただろうか。いや、結局ルフィと話すまでサンジは覚悟が決められなかっただろう。
とはいえそれでも、この男が現れなければもう少し早く心が折れていたかも知れないとは思えた。たった一人の味方など存在しない状況などとは過去にも経験済みだとはいえ楽しいものなんかではない。
『手が温かい人は、その暖かさを誰かへ与えられる子だよ』
レイジュから聞いた母の話。母にとってサンジはやさしい子でありレイジュにとっても少なからずそうだったのだろう。
だからレイジュはサンジだけはと。
差し出された手枷はレイジュがすり替えたものだ。
「それ、まだオレの腕に填めといてくれるか?」
ペンギンは紫色の眼を細めてサンジを見上げてきた。それから何も言わずに手枷を再びサンジの腕に填める。相変わらずどうやっているのか分からない方法で行われたそれは、最初と寸分変わらず元通りになっていた。
改めて手枷の填められた手をペンギンが両手で包むように掴む。冷たい手。
「暖かくて綺麗な手だなぁ。ふふ」
「……お前は、心が暖かいんだろ」
そう言うとペンギンは帽子の陰で目を丸くし、嬉しくて仕方がないとばかりに笑みを深くした。
「もう一度君の作ったスープが飲みてぇかなぁ」
「全部が終わったら作ってやるよ」
「ふふ、楽しみにしてるぅ」
「ママーン、ミーもう寝てイーデスカー?」
ペンギンの傍にいたカエル頭が欠伸をかみ殺す。ジェルマの城にいるのを時々見かけたそのカエルが、外部からの潜入者だったらしいと聞いてもあまり驚かなかった。
「だからママンじゃねぇっての。ほら向こうで寝かせてもらいなさい。――じゃあサンジ君。また後でぇ」
カエル頭を連れてペンギンがファイアタンクの船員に声を掛けに去っていく。それを見送ってサンジも新郎の部屋に戻ろうと歩き出した。
ペンギンが掴んでいた手が微かに冷たい。ただ心は少し暖かくなったような気がしていた。
黒い長髪。紫色の瞳。それらに見覚えは微かにしかない。
ハートの海賊団のクルーでペンギンと名乗ったその男は、ルフィ達と一緒にサンジを連れ戻しに来たのだとやっと目的を明らかにした。今に至るまでに既に何度か会っているというのに名前を名乗ってもくれなかった男である。
今思えばヒントはそこかしこにあったのだろう。例えばトラ男のものだと思われる白黒斑のモフモフの帽子とか。何故部下のペンギンが奴の帽子を被っているのかは不明だ。
名乗ってくれたならもっと早く状況を知ってサンジは動けただろうか。いや、結局ルフィと話すまでサンジは覚悟が決められなかっただろう。
とはいえそれでも、この男が現れなければもう少し早く心が折れていたかも知れないとは思えた。たった一人の味方など存在しない状況などとは過去にも経験済みだとはいえ楽しいものなんかではない。
『手が温かい人は、その暖かさを誰かへ与えられる子だよ』
レイジュから聞いた母の話。母にとってサンジはやさしい子でありレイジュにとっても少なからずそうだったのだろう。
だからレイジュはサンジだけはと。
差し出された手枷はレイジュがすり替えたものだ。
「それ、まだオレの腕に填めといてくれるか?」
ペンギンは紫色の眼を細めてサンジを見上げてきた。それから何も言わずに手枷を再びサンジの腕に填める。相変わらずどうやっているのか分からない方法で行われたそれは、最初と寸分変わらず元通りになっていた。
改めて手枷の填められた手をペンギンが両手で包むように掴む。冷たい手。
「暖かくて綺麗な手だなぁ。ふふ」
「……お前は、心が暖かいんだろ」
そう言うとペンギンは帽子の陰で目を丸くし、嬉しくて仕方がないとばかりに笑みを深くした。
「もう一度君の作ったスープが飲みてぇかなぁ」
「全部が終わったら作ってやるよ」
「ふふ、楽しみにしてるぅ」
「ママーン、ミーもう寝てイーデスカー?」
ペンギンの傍にいたカエル頭が欠伸をかみ殺す。ジェルマの城にいるのを時々見かけたそのカエルが、外部からの潜入者だったらしいと聞いてもあまり驚かなかった。
「だからママンじゃねぇっての。ほら向こうで寝かせてもらいなさい。――じゃあサンジ君。また後でぇ」
カエル頭を連れてペンギンがファイアタンクの船員に声を掛けに去っていく。それを見送ってサンジも新郎の部屋に戻ろうと歩き出した。
ペンギンが掴んでいた手が微かに冷たい。ただ心は少し暖かくなったような気がしていた。