トットランド編
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夢主視点
写しとブルックを回収できたので、次にするべきはサンジの奪還かそれに伴ってルフィを探すことだ。しかしその二人の姿が、シルビ達がいる鏡世界の鏡達へ尋ねても誰も見ていないと帰ってきたのである。
鏡の世界も万能ではない。彼等鏡達が知ることが出来るのは鏡という媒体に映る光景だけだ。
その鏡達が知らないということはルフィやサンジは鏡のない場所、あるいは鏡から遠く離れた場所にいるということになる。例えば屋外。
この城内に関しては部屋の中どころか廊下にさえも景観を気にすることなく鏡が飾られている。チョッパーとキャロットがシルビ達と合流出来たのもそのお陰だが、逆に考えるとブリュレのミラミラの実の能力による監視能力を日頃から重視しているともとれた。ならばブリュレを捕虜に出来ていることは僥倖だ。
「でも流石に外じゃ鏡も使えませんねぇ。――無能が」
「辛辣ぅー!」
「城内じゃないなら心当たりがある。外だから鏡はないけど、今朝ルフィとサンジ君が、戦った場所」
猫車でここへ来る時のことかと思い出す。あの場所なら覚えているから自分が迎えに行こうかと提案する前に、シルビより先にジンベエが口を開いた。
「――皆揃うてから話そうと思っとったが、実は明日結婚式が開かれれば、ただの式じゃあ済まん!」
「ただの式ではねぇことは既に分かり切ってるのではぁ?」
「違うんじゃ。お前さん達ペコムズと一緒にここへ来たな?」
ショコラタウンで船から居なくなったペコムズは、この数時間の騒ぎで忘れかけていたがそういえばどこかへ居なくなってしまっていたのだ。そのペコムズはジンベエの話だと、ある陰謀に巻き込まれて殺されてしまうところだったらしい。
その陰謀を企てた相手もジンベエは既に分かっているようである。
「ペンギン。おんしは『カポネ・“ギャング”ベッジ』を知っとるか?」
「? 船長と同じかつての超新星で、今は“最悪の世代”の一人のカポネ・ベッジ?」
「そうじゃ」
カポネ・ギャングベッジ。他とは違いギャングやマフィアが裏社会から勢力を広げる西の海で、更にその裏社会の面々から一目置かれていた五大ファミリーのボスの一人だ。
マフィアやギャングという言葉が出てきたことから察する事が出来るかもしれないが、シルビの故郷とも少なからず関係があった筈である。シルビが故郷に居た頃にも何度か名前を聞いたことがあった。
しかしマフィアのボスとして知っている情報はその程度である。後は彼が海賊として名を売ってから聞こえるようになった風聞くらいだ。
要するに殆ど名前くらいしか知らない。船長と同じ世代でなければ名前すら覚えていなかっただろう。ザコとは言わないが航路が違うので会うこともないと考えていた相手だ。
それが今、部下達共々このトットランドへ、ビッグマムの傘下へと居るらしい。
居るだけなら何の問題も無いだろう。少し敵が増える可能性があるだけだ。だがジンベエが問題視しているのはベッジの存在ではなくその目的である。
ベッジは“お茶会”を利用してビッグマムの首を取ろうとしているらしい。
そこまで聞いたところで、シルビは単独行動をさせてもらうことにした。
お茶会の主役はビッグマムの娘のプリンと、ヴィンスモーク家の三男であるサンジ。つまりヴィンスモーク家は問題なくお茶会が進行すればビッグマム達に、ベッジ達が行動を起こせばベッジ達に片付けられてどのみちお終いとなってしまう可能性があった。
ヴィンスモーク家自体は、シルビはまだそこまで肩入れするつもりもないので滅ぼうがどうなろうが構わない。だがそれにフランが巻き込まれてしまうのは許容出来なかった。
それならば傍に置いておいた方がいいと判断したのである。今のシルビの立場は『ハートの海賊団副船長ペンギン』だが、昔からの知り合い一人くらい助けたって許されるだろう。
ジンベエから話を聞くナミ達に断ってから鏡の世界を走り、ヴィンスモーク家にあてがわれた客室の鏡へと向かった。
「誰か、ヴィンスモーク・イチジの寝室の鏡はいるかぁ?」
「はぁい!」
夜であっても鏡には関係がないのか元気な返事が返ってくる。その鏡を覗き込めば就寝直前だったのか寝間着に着替えた様子のイチジが見えた。
その傍にフランがいるのも。
一歩間違えばストーカーが重宝しそうな能力だなと思いつつ指を鳴らした。すぐ傍に燃え上がった炎の輪へ足を踏み入れれば、寸前まで見ていたイチジの客室の床へと足が着く。
気配に気付いたイチジとフランが振り返る。
「こんばんみ~」
「フラン、話があるからちょっとこっちに来なさい」
手招くと椅子に座っていたフランが素直に歩み寄ってくるが、何故か同時に呼んでいないイチジまでもが傍へ来た。
シャツのボタンが途中までしか留まっていないことはシルビが来たタイミングの問題なのだが、酒臭いのまではシルビのせいではない。目の前に来たイチジが呼吸する度に酒臭さが広がる。
「ちょっと離れてくれぇ。マジごめん。酒臭せぇ」
「酒は苦手か」
酒が苦手かとかそういう話ではない。いったいどれだけ飲んだのか。
こんな酒臭いのとよく一緒に居たなと思ってフランを見やれば、流石に酒の匂いにやられたか単純に眠くなったのか目をこすっている。もう遅い時間だ。
「明日は結婚式だってのに今までずっと飲んでたのかぁ?」
「祝いの前日だ」
「二日酔いになってしまえぇ」
そう言ってはみても遺伝子改造されているだろう彼が二日酔いになるとは思えなかった。おそらくは一晩どころか数時間寝れば体内のアルコールは完全に分解されるだろう。便利と言えば便利だが酔いにくいというデメリットがありそうだ。
シルビの悪態を気にした様子もなくイチジの手が伸びてきた。顔に伸ばされかけたそれを払って、留められていないボタンを留めてやる。イチジが呼吸をする度に酒臭い。
「明日に備えて君はもう寝なさい。そうすりゃ気兼ねなくフランを借りてくからぁ」
フランの本来の仕事はヴィンスモークの監視だ。それにギャングベッジの陰謀の話を聞かせるのは範疇外の役割になる。
とすればやはりイチジやジャッジが起きている状態で連れて行くよりは、寝ていて問題が起こる可能性が低い状態での方が心配はなかった。
「別にいーデスヨー。コイツ等馬鹿だから何もしねーデスしー。ミーだってこのまま寝るつもりでしたしー」
「もうちょっと頑張って起きてろぉ」
自身の任務を完全に舐めきったフランが欠伸をかみ殺す。その頭を撫でてシルビが部屋を出ていこうとすると腕を掴まれた。
掴んだ相手であるイチジは、サングラスの向こうで何を考えているのか分からないままシルビを見下ろしている。
酒が入っているからか少し熱い手。それをシルビは『拒絶』して逃げた。
イチジが再びシルビを捕まえる前に炎の輪を抜けて、ギャングベッジのアジトがある島の北西に至る途中へと転移する。いきなり暖かかった城内から外へ出た為かフランが身震いするのに、眠そうなこともあって抱き上げて歩き出した。
揺すり上げたところで首に抱きついていたフランが口を開く。
「……ママンって、好きなタイプどんなんでしたっけ?」
「? 好きなタイプ? ……年上かなぁ。それがぁ?」
「んー、何でもねーです」
何故いきなりそんなことを聞いてきたのかが分からなかったが、他人のとはいえ明日の結婚式に思うところがあったとかその程度だろう。フランが誰かと付き合うとかそういう話を今まで聞いたことはなかったが、フランも年頃になればそういう事に興味が沸くのも当たり前の話だ。
「でも好きなタイプと好きになるのはまたちょっと別だろぉ?」
「あんたの恋愛観なんてどーでもいーですヨ」
写しとブルックを回収できたので、次にするべきはサンジの奪還かそれに伴ってルフィを探すことだ。しかしその二人の姿が、シルビ達がいる鏡世界の鏡達へ尋ねても誰も見ていないと帰ってきたのである。
鏡の世界も万能ではない。彼等鏡達が知ることが出来るのは鏡という媒体に映る光景だけだ。
その鏡達が知らないということはルフィやサンジは鏡のない場所、あるいは鏡から遠く離れた場所にいるということになる。例えば屋外。
この城内に関しては部屋の中どころか廊下にさえも景観を気にすることなく鏡が飾られている。チョッパーとキャロットがシルビ達と合流出来たのもそのお陰だが、逆に考えるとブリュレのミラミラの実の能力による監視能力を日頃から重視しているともとれた。ならばブリュレを捕虜に出来ていることは僥倖だ。
「でも流石に外じゃ鏡も使えませんねぇ。――無能が」
「辛辣ぅー!」
「城内じゃないなら心当たりがある。外だから鏡はないけど、今朝ルフィとサンジ君が、戦った場所」
猫車でここへ来る時のことかと思い出す。あの場所なら覚えているから自分が迎えに行こうかと提案する前に、シルビより先にジンベエが口を開いた。
「――皆揃うてから話そうと思っとったが、実は明日結婚式が開かれれば、ただの式じゃあ済まん!」
「ただの式ではねぇことは既に分かり切ってるのではぁ?」
「違うんじゃ。お前さん達ペコムズと一緒にここへ来たな?」
ショコラタウンで船から居なくなったペコムズは、この数時間の騒ぎで忘れかけていたがそういえばどこかへ居なくなってしまっていたのだ。そのペコムズはジンベエの話だと、ある陰謀に巻き込まれて殺されてしまうところだったらしい。
その陰謀を企てた相手もジンベエは既に分かっているようである。
「ペンギン。おんしは『カポネ・“ギャング”ベッジ』を知っとるか?」
「? 船長と同じかつての超新星で、今は“最悪の世代”の一人のカポネ・ベッジ?」
「そうじゃ」
カポネ・ギャングベッジ。他とは違いギャングやマフィアが裏社会から勢力を広げる西の海で、更にその裏社会の面々から一目置かれていた五大ファミリーのボスの一人だ。
マフィアやギャングという言葉が出てきたことから察する事が出来るかもしれないが、シルビの故郷とも少なからず関係があった筈である。シルビが故郷に居た頃にも何度か名前を聞いたことがあった。
しかしマフィアのボスとして知っている情報はその程度である。後は彼が海賊として名を売ってから聞こえるようになった風聞くらいだ。
要するに殆ど名前くらいしか知らない。船長と同じ世代でなければ名前すら覚えていなかっただろう。ザコとは言わないが航路が違うので会うこともないと考えていた相手だ。
それが今、部下達共々このトットランドへ、ビッグマムの傘下へと居るらしい。
居るだけなら何の問題も無いだろう。少し敵が増える可能性があるだけだ。だがジンベエが問題視しているのはベッジの存在ではなくその目的である。
ベッジは“お茶会”を利用してビッグマムの首を取ろうとしているらしい。
そこまで聞いたところで、シルビは単独行動をさせてもらうことにした。
お茶会の主役はビッグマムの娘のプリンと、ヴィンスモーク家の三男であるサンジ。つまりヴィンスモーク家は問題なくお茶会が進行すればビッグマム達に、ベッジ達が行動を起こせばベッジ達に片付けられてどのみちお終いとなってしまう可能性があった。
ヴィンスモーク家自体は、シルビはまだそこまで肩入れするつもりもないので滅ぼうがどうなろうが構わない。だがそれにフランが巻き込まれてしまうのは許容出来なかった。
それならば傍に置いておいた方がいいと判断したのである。今のシルビの立場は『ハートの海賊団副船長ペンギン』だが、昔からの知り合い一人くらい助けたって許されるだろう。
ジンベエから話を聞くナミ達に断ってから鏡の世界を走り、ヴィンスモーク家にあてがわれた客室の鏡へと向かった。
「誰か、ヴィンスモーク・イチジの寝室の鏡はいるかぁ?」
「はぁい!」
夜であっても鏡には関係がないのか元気な返事が返ってくる。その鏡を覗き込めば就寝直前だったのか寝間着に着替えた様子のイチジが見えた。
その傍にフランがいるのも。
一歩間違えばストーカーが重宝しそうな能力だなと思いつつ指を鳴らした。すぐ傍に燃え上がった炎の輪へ足を踏み入れれば、寸前まで見ていたイチジの客室の床へと足が着く。
気配に気付いたイチジとフランが振り返る。
「こんばんみ~」
「フラン、話があるからちょっとこっちに来なさい」
手招くと椅子に座っていたフランが素直に歩み寄ってくるが、何故か同時に呼んでいないイチジまでもが傍へ来た。
シャツのボタンが途中までしか留まっていないことはシルビが来たタイミングの問題なのだが、酒臭いのまではシルビのせいではない。目の前に来たイチジが呼吸する度に酒臭さが広がる。
「ちょっと離れてくれぇ。マジごめん。酒臭せぇ」
「酒は苦手か」
酒が苦手かとかそういう話ではない。いったいどれだけ飲んだのか。
こんな酒臭いのとよく一緒に居たなと思ってフランを見やれば、流石に酒の匂いにやられたか単純に眠くなったのか目をこすっている。もう遅い時間だ。
「明日は結婚式だってのに今までずっと飲んでたのかぁ?」
「祝いの前日だ」
「二日酔いになってしまえぇ」
そう言ってはみても遺伝子改造されているだろう彼が二日酔いになるとは思えなかった。おそらくは一晩どころか数時間寝れば体内のアルコールは完全に分解されるだろう。便利と言えば便利だが酔いにくいというデメリットがありそうだ。
シルビの悪態を気にした様子もなくイチジの手が伸びてきた。顔に伸ばされかけたそれを払って、留められていないボタンを留めてやる。イチジが呼吸をする度に酒臭い。
「明日に備えて君はもう寝なさい。そうすりゃ気兼ねなくフランを借りてくからぁ」
フランの本来の仕事はヴィンスモークの監視だ。それにギャングベッジの陰謀の話を聞かせるのは範疇外の役割になる。
とすればやはりイチジやジャッジが起きている状態で連れて行くよりは、寝ていて問題が起こる可能性が低い状態での方が心配はなかった。
「別にいーデスヨー。コイツ等馬鹿だから何もしねーデスしー。ミーだってこのまま寝るつもりでしたしー」
「もうちょっと頑張って起きてろぉ」
自身の任務を完全に舐めきったフランが欠伸をかみ殺す。その頭を撫でてシルビが部屋を出ていこうとすると腕を掴まれた。
掴んだ相手であるイチジは、サングラスの向こうで何を考えているのか分からないままシルビを見下ろしている。
酒が入っているからか少し熱い手。それをシルビは『拒絶』して逃げた。
イチジが再びシルビを捕まえる前に炎の輪を抜けて、ギャングベッジのアジトがある島の北西に至る途中へと転移する。いきなり暖かかった城内から外へ出た為かフランが身震いするのに、眠そうなこともあって抱き上げて歩き出した。
揺すり上げたところで首に抱きついていたフランが口を開く。
「……ママンって、好きなタイプどんなんでしたっけ?」
「? 好きなタイプ? ……年上かなぁ。それがぁ?」
「んー、何でもねーです」
何故いきなりそんなことを聞いてきたのかが分からなかったが、他人のとはいえ明日の結婚式に思うところがあったとかその程度だろう。フランが誰かと付き合うとかそういう話を今まで聞いたことはなかったが、フランも年頃になればそういう事に興味が沸くのも当たり前の話だ。
「でも好きなタイプと好きになるのはまたちょっと別だろぉ?」
「あんたの恋愛観なんてどーでもいーですヨ」