トットランド編
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夢主視点
パンはかじるのではなく、千切って口へ運ぶ方が上品である。頬へ詰め込み過ぎもはしたないし、好き嫌いなど以ての外。姿勢が悪いのは椅子が変なデザインであることを考慮して見逃すにしても、口の中へ物が入っているのに喋っている時点でアウト。ナプキンがあるのに手を舐めるのも駄目だろう。
そんな駄目だしばかりの食事風景が目の前で繰り広げられている訳だが、驚くべきことに彼等はこれでも王族である。
ここへ来る前にイチジと話をしていて思ったことでもあるが、彼等の仕草からは“王族らしさ”があまり感じられなかった。言っては失礼だが躾のなっていないわがまま坊ちゃんと言った方が相応しい気もする。
「我々はまだ……『世界政府』に属する加盟国である」
「そういえば父上。近々“世界会議”ですね」
フランがテーブルに近付いてヨンジの皿からパンを盗って食べていた。ここへ潜入している間はそういう風に食料調達していたのかと思う。厨房へ忍び込むほうが確実だろうに。一種の嫌がらせか。
そんなフランをイチジが表情を変えないままに目で追っていた。シルビはサンジの後ろでやはりサンジの取り分であるパンを一つもらって食べているのだが、シルビも後で厨房へ忍び込んだほうが良さそうである。
パン一つでは口の中がパサパサするし量が足りない。
海賊であり四皇であるビッグマム姻戚関係になることで、世界会議出席の権利は剥奪されるだろうが構わないと宣言している国王ヴィンスモーク・ジャッジの皿から、フランが肉を摘んで食べている。あの子は少し自由が過ぎるなと思いつつも注意するのも面倒で黙って眺めていれば、サンジがニジへ残っている料理を食えと注意した。
「残すんだ。食いたくネェ」
思わず失笑してしまう。サンジとイチジが一瞬視線を寄越した。
そのまま言い合いを初めてしまうサンジとニジに、サンジへ怪我をさせられない限りは手出しするのもはばかられる。ここで下手に手出しをすれば騒がれるのは必須だからだ。
フランの手を借りれば問題なさそうであるが、フランはフランで気にすることではないとばかりにジャッジの皿から料理を摘んでいる。
王族とはいえフランにも気付かない小物。幻術の前に王位も何もないとは思うが、フランの“上司”が“上司”であるからかどうにも比べてしまっているようである。
「嗚呼そっか。成金みてぇなのかぁ」
立ち上がったニジが呼んだ料理長へ向かって料理の乗った皿を投げつけた。それをサンジが止めている。料理長の顔面へ向けて投げられた皿は無事にサンジへ受け止められたが、その上へ乗っていた料理は床へ落ちてしまっていた。
「料理長、女の子なんだなぁ」
とりあえずニジへ向かって指を鳴らし、彼の胃の中へ収まっているであろう消化途中の食べ物を海の上へと転移させることにする。先に食べたチョコは消化寸前だったかも知れないが、食べたばかりの料理は未消化で体外出だ。
軽い栄養不足になるくらいしないと、きっとあれは反省しない。
「“食”に敬意を払えねえバカも、女に手を上げる男も! 部下を人とも思わねェ王族の驕りも、お前達の全てがおれの思想に反する!」
「――お前の言い分は多数弱者の戯言だサンジ。昔からお前の言うことは理解できなかった。王には王たる条理がある! 不条理は貴様だ!」
イチジの言葉で、唐突に彼等から王族らしさを感じられない理由を理解した。同時に少し哀れにさえ思えてしまい、サンジに対して憤然としているらしいイチジの口へパンを突っ込む。
パンを突っ込まれるのは予想外だったらしいイチジはしかし、吐き出すなんて真似はせずにもぐもぐと咀嚼して飲み込んだ。物言いたげな視線がサングラス越しにシルビへと向けられる。
「イチジ君。君や君の家族は、どうにも『王族』を誤解してるなぁ」
眉がひそめられた。
ジャッジが東の海へある海上レストラン『バラティエ』の料理長である男の写真をサンジへ見せて脅迫している。シルビも昔見たことのあるその料理長の名前は『ゼフ』だ。
このジャッジとは違い、ジェルマから逃げたサンジの育ての親であったらしい。美味しい料理を饗されたことを覚えている。サンジと初めて出会ったのもあのレストランだ。
「くれぐれもバカな真似はするな。我々の“機動力”も承知のハズ」
食事を終えた子供達が席を立って部屋を出ていこうとする。シルビはサンジと一緒に残ろうと思っていたのだが、何故か立ち上がったイチジへ腕を捕まれて退室を余儀なくされた。
腹を満たしたらしいフランがそれに気付いて手を振ってくるのが憎らしい。とりあえずサンジを指差して監視を頼んではみたが、その意図が伝わったかどうかもフランが頼みを聞いてくれるのかも不明である。
「あー腹立つ。コゼットでも殴って憂さ晴らしするかァ」
ニジが言うのに睨むがその視線へ気付かれることはない。
「イチジもやるか?」
「いや、一度部屋へ戻る」
シルビの腕を掴んだまま進んでくイチジをニジとヨンジは特に気にした様子も無かった。レイジュは元から興味がない風に廊下の分かれ道で一人違う方角へ行ってしまう。
兄弟達と別れた廊下で無言だったイチジは、自室の近くへまで戻ってくるとやっとシルビの腕を放した。その気になれば彼の拘束くらい簡単に解いて逃げることは出来たが、彼の意向が分からなかったので大人しく付いてきたのである。
どうでも良いことであったなら、すぐにサンジの元へ戻るつもりだった。
「お前の考える『王族』はどんなものだ」
部屋の中へ入ってすぐに訊ねられる。とりあえずコゼットというらしい料理長の彼女をいたぶるよりは有意義な質問だった。
パンはかじるのではなく、千切って口へ運ぶ方が上品である。頬へ詰め込み過ぎもはしたないし、好き嫌いなど以ての外。姿勢が悪いのは椅子が変なデザインであることを考慮して見逃すにしても、口の中へ物が入っているのに喋っている時点でアウト。ナプキンがあるのに手を舐めるのも駄目だろう。
そんな駄目だしばかりの食事風景が目の前で繰り広げられている訳だが、驚くべきことに彼等はこれでも王族である。
ここへ来る前にイチジと話をしていて思ったことでもあるが、彼等の仕草からは“王族らしさ”があまり感じられなかった。言っては失礼だが躾のなっていないわがまま坊ちゃんと言った方が相応しい気もする。
「我々はまだ……『世界政府』に属する加盟国である」
「そういえば父上。近々“世界会議”ですね」
フランがテーブルに近付いてヨンジの皿からパンを盗って食べていた。ここへ潜入している間はそういう風に食料調達していたのかと思う。厨房へ忍び込むほうが確実だろうに。一種の嫌がらせか。
そんなフランをイチジが表情を変えないままに目で追っていた。シルビはサンジの後ろでやはりサンジの取り分であるパンを一つもらって食べているのだが、シルビも後で厨房へ忍び込んだほうが良さそうである。
パン一つでは口の中がパサパサするし量が足りない。
海賊であり四皇であるビッグマム姻戚関係になることで、世界会議出席の権利は剥奪されるだろうが構わないと宣言している国王ヴィンスモーク・ジャッジの皿から、フランが肉を摘んで食べている。あの子は少し自由が過ぎるなと思いつつも注意するのも面倒で黙って眺めていれば、サンジがニジへ残っている料理を食えと注意した。
「残すんだ。食いたくネェ」
思わず失笑してしまう。サンジとイチジが一瞬視線を寄越した。
そのまま言い合いを初めてしまうサンジとニジに、サンジへ怪我をさせられない限りは手出しするのもはばかられる。ここで下手に手出しをすれば騒がれるのは必須だからだ。
フランの手を借りれば問題なさそうであるが、フランはフランで気にすることではないとばかりにジャッジの皿から料理を摘んでいる。
王族とはいえフランにも気付かない小物。幻術の前に王位も何もないとは思うが、フランの“上司”が“上司”であるからかどうにも比べてしまっているようである。
「嗚呼そっか。成金みてぇなのかぁ」
立ち上がったニジが呼んだ料理長へ向かって料理の乗った皿を投げつけた。それをサンジが止めている。料理長の顔面へ向けて投げられた皿は無事にサンジへ受け止められたが、その上へ乗っていた料理は床へ落ちてしまっていた。
「料理長、女の子なんだなぁ」
とりあえずニジへ向かって指を鳴らし、彼の胃の中へ収まっているであろう消化途中の食べ物を海の上へと転移させることにする。先に食べたチョコは消化寸前だったかも知れないが、食べたばかりの料理は未消化で体外出だ。
軽い栄養不足になるくらいしないと、きっとあれは反省しない。
「“食”に敬意を払えねえバカも、女に手を上げる男も! 部下を人とも思わねェ王族の驕りも、お前達の全てがおれの思想に反する!」
「――お前の言い分は多数弱者の戯言だサンジ。昔からお前の言うことは理解できなかった。王には王たる条理がある! 不条理は貴様だ!」
イチジの言葉で、唐突に彼等から王族らしさを感じられない理由を理解した。同時に少し哀れにさえ思えてしまい、サンジに対して憤然としているらしいイチジの口へパンを突っ込む。
パンを突っ込まれるのは予想外だったらしいイチジはしかし、吐き出すなんて真似はせずにもぐもぐと咀嚼して飲み込んだ。物言いたげな視線がサングラス越しにシルビへと向けられる。
「イチジ君。君や君の家族は、どうにも『王族』を誤解してるなぁ」
眉がひそめられた。
ジャッジが東の海へある海上レストラン『バラティエ』の料理長である男の写真をサンジへ見せて脅迫している。シルビも昔見たことのあるその料理長の名前は『ゼフ』だ。
このジャッジとは違い、ジェルマから逃げたサンジの育ての親であったらしい。美味しい料理を饗されたことを覚えている。サンジと初めて出会ったのもあのレストランだ。
「くれぐれもバカな真似はするな。我々の“機動力”も承知のハズ」
食事を終えた子供達が席を立って部屋を出ていこうとする。シルビはサンジと一緒に残ろうと思っていたのだが、何故か立ち上がったイチジへ腕を捕まれて退室を余儀なくされた。
腹を満たしたらしいフランがそれに気付いて手を振ってくるのが憎らしい。とりあえずサンジを指差して監視を頼んではみたが、その意図が伝わったかどうかもフランが頼みを聞いてくれるのかも不明である。
「あー腹立つ。コゼットでも殴って憂さ晴らしするかァ」
ニジが言うのに睨むがその視線へ気付かれることはない。
「イチジもやるか?」
「いや、一度部屋へ戻る」
シルビの腕を掴んだまま進んでくイチジをニジとヨンジは特に気にした様子も無かった。レイジュは元から興味がない風に廊下の分かれ道で一人違う方角へ行ってしまう。
兄弟達と別れた廊下で無言だったイチジは、自室の近くへまで戻ってくるとやっとシルビの腕を放した。その気になれば彼の拘束くらい簡単に解いて逃げることは出来たが、彼の意向が分からなかったので大人しく付いてきたのである。
どうでも良いことであったなら、すぐにサンジの元へ戻るつもりだった。
「お前の考える『王族』はどんなものだ」
部屋の中へ入ってすぐに訊ねられる。とりあえずコゼットというらしい料理長の彼女をいたぶるよりは有意義な質問だった。