トットランド編
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夢主視点
チョコやその他諸々のお菓子で出来ていたカフェを営業出来ない程に食べ尽くしてしまったルフィとチョッパーを助けてくれたのは、そのカフェのオーナーであった少女『プリン』であった。
助けてくれた理由は店の建造に使っていたチョコを『うますぎた』と言ってくれたかららしい。聞けば自分で新しく考えた調合で練ったものだという。
それだけの理由で警察に捕まりそうだったルフィ達を助けてくれたとなると、裏が無ければ心底のお人好しないい子である。今も招き入れた家の中で、チョッパーやキャロットが勝手にテーブルや壁を食べているのに叱りもしない。
「キャロット。チョッパー船医。勝手に食べるのはやめなさい」
「あ、いいんですよ。どうぞ好きなように食べてください。アナタも」
プリンの言葉にキャロットが勝ち誇ったようにシルビを見て鼻を鳴らすが、本来は許されない事だしそもそも行儀が悪いという話だ。
用があって行くところがあるのだというと、それなら甘くなってしまっただろう口の口直しにと紅茶を淹れ始める。そのくらいならと許容してシルビ達が座り直せば、プリンが名前を聞いてくるのにルフィが素直に返した。
「おれルフィだ。海賊王にな……」
「ちょっとっ!」
『海賊王になる男だ』と続けようとしたルフィの口をナミが慌てて塞ぐ。だが『ルフィ』という名前はしっかりと聞いてしまったらしく、驚いたらしいプリンが振り返った。
「ルフィ、ってサンジさんの!?」
「ん、サンジを知ってんのか?」
「サンジさんはその、私の結婚相手だから」
プリンは顔を真っ赤にして恥ずかしげに告げるが、その発言はつまり彼女こそビッグマムへ連れて行かれたサンジの婚約者で、彼女こそビッグマムの娘という事になる。それを理解した途端にルフィ達が驚きの声を上げるのにシルビは指を鳴らして声が家の外へ漏れないようにした。
シルビだって驚いてはいる。ビッグマムへ何人の娘がいるのか知らないが、結婚間近の娘をこんなところで一人好き勝手にさせているという事にだ。でなければ誰がこんな町中で万国を治めている者の娘へ出会うと思うか。
「ママの傘下にも入ってないあなた達がどうやってタルトの検問を通過したの!? 何故ここへ来たの!? こ、殺されちゃうわよ!? ココはもうママのナワバリで、ママはとても恐い海賊! でも知ってる! あなた達も恐い海賊!」
混乱をきたしたのか、最終的に身を守る為か握った包丁を突き出してよろけていた。
包丁を突き出してよろけているプリンを、ナミが慌てて落ち着かせようとするのとは逆にペドロがさっさとプリンを拘束して剣を押しつけている。
「ルフィ、こいつをどうする」
「キャーッ!」
「乱暴すなァ! ペドロ!」
「ペドロ」
ソファから立ち上がりながら声を掛ければ、何故かペドロだけではなくナミやプリンまで静かになった。視線を向けるキャロットの頭を安心させるように撫でてからプリンを拘束しているペドロへと歩み寄り、その剣を降ろさせる。
何か言いたげなペドロを見上げてから顎でソファを示し、素直にソファヘ向かうのを見てからプリンの手から包丁を取り上げた。
「ショコラティエなら、包丁を人へ向けてはいけません」
「……、はい」
目を丸くして返事をしたプリンに笑みを向けて、椅子へ座るように促す。やはり素直に椅子へ座るプリンにシルビはそのまま彼女が用意をしている途中だった紅茶を淹れ、シルビが動き出してから唖然としているナミ達の前へと並べた。
「ペドロは後で説教です。全員落ち着いたのなら座って紅茶を一口飲みなさい」
「だがペンギン――」
「飲みなさい」
ペドロを睨めばペドロだけではなく、ブルックやチョッパーまで神妙に紅茶へ口を付ける。ハートの船でも薄々感じてはいるが、どうもシルビは怒らせると恐いから逆らってはいけない相手だと認識されやすいらしい。
怒られるような事をしなければいいのだと思うのだが、それを理解してくれる者はいないようである。
そんなに逆らってはいけない雰囲気を出しているつもりはない。
「……おいしい」
呟いたプリンがほうと息を吐く。これなら落ち着いて話を聞いてくれるだろう。
帽子の影から一番話の通じそうなナミへ目配せを送れば頷かれる。このままシルビが話せということか。同盟相手ではあるが麦わらの一味ではないシルビに。
「まず俺達は君へ手を出すつもりは無ぇ。俺達は単純に君と結婚させる為に連れて行かれたサンジ君を連れ戻しに来ただけなんだぁ」
「そうなの。だからあなたを傷つけたりはしないわ」
「――そう。サンジさんを連れ戻しに来たの。やっぱり合意じゃなかったんだ……」
そう言ってプリンがカップをソーサーへ戻す。
プリンの母親であるビッグマムは、自身の子供達の姻戚関係も自分の海賊団を強化する為に利用してきたらしい。それ故に子供達はプリンだけではなく全員が、自由な恋愛結婚は生まれたときから出来ない運命にあるという。
それを嫌がって姉の一人が求婚の旅へ出たくらいらしい。そこは自由恋愛なんじゃないのかと自身も束縛を嫌がって故郷を飛び出した身で思う。求婚の旅と聞いてナミが何か引っかかることがあったようだった。
そうした海賊団強化の為の結婚を繰り返した結果、ビッグマムはたくさんの子供を持つ母親になりプリンは三十五番目の娘らしい。
娘は総勢で三十九人。息子は総勢四十六人の、合わせて八十五人兄弟。そこまでくるとビッグマムは本当に人間なのだろうかとシルビは医学的観念から疑問に思う。子供の父親である夫は四十三人らしい。一妻多夫もここに極まれりだろう。
子供達も既に成人して伴侶や子供がいる者がいるらしく、血縁だけみれば大所帯も過ぎる。そもそもビッグマム自身は何歳になるのか。高齢出産はお勧めしない。
プリンは既にサンジと顔合わせはしたらしく、サンジの事を尋ねるとプリンは顔を赤くしながらサンジを絶賛した。政略結婚でなければ結婚してもいいのではと思う。
ちなみにシルビは結婚しない。プリンと、という意味ではなく誰ともという意味で。
「縛りつけておくべきだその女」
今まで黙っていたペドロがプリンを睨んだ。
「オレ達がここにいる事を喋るぞ! こんな入り口の島で情報が漏れたらサンジのいる場所へなんて到底辿りつけない! ペンギンもそう思うだろう!」
「思わねぇですよ」
「何故!?」
「さっきのカフェを食った騒動で彼女がここにいる事と、カフェを食った犯人が一緒にいることは既に町の住民へ見られてる。それなのに犯人達が忽然といなくなり彼女が縛りつけるなり動けなくなった姿で発見されたら、それこそ危険度が増すって話です」
「――じゃあどうやって口を塞ぐ。忘れるな。そいつはビッグマムの娘だぞ!」
言っていることは正しいのだが、どうにも焦っている様な気がする。
プリンがビッグマムの娘でルフィ達が去った後ママへ報告したとして、侵入する方法自体はいくらでも思いつくだろう。見えない島ではないのだから。
「プリンだって母親が恐いって言ってるのに」
「だからこそ報告する」
言い合うナミやペドロを眺めて、プリンが何かを覚悟したように紙とペンを用意して何かを書き始めた。
「『万国』のみんなは、私の結婚を祝福してくれてる」
それは本来祝福すべきことだから当たり前である。この万国の恩恵に預かって生活している者達からすれば、万国を治める海賊団の強化は喜ばしいことだ。
でもそれは、酷な事を言えば本当に『プリンの結婚』を喜んでいるとは限らないということでもある。流石に口にはしないが、この万国の国民はプリンほど結婚に夢を見ていない可能性もあった。
プリンはどうも生まれた直後から自由に恋愛は出来ないという事実に慣れてしまって、だから『結婚』という行事自体を楽しみにしているようだが。
「プリンちゃん。君はそれでいいのかぁ?」
「それで、って?」
不思議そうにシルビを見上げてくるプリンの目に邪気はない。それを見てシルビは嗚呼そうかと理解した。
彼女や彼女の兄弟にとってはきっと、恋愛というのは好きになったから一緒にいる為に結婚するものではなく、結婚して一緒になったから相手を好きになるものなのだ。だから初対面の婚約者も『良いところ』を真っ先に見つける。
「結婚したことがねぇ俺が言うのも何だけどなぁ。結婚って手段じゃねぇんだよ?」
「私を心配してくれるのね。ありがとう“お姉さん”」
ピシッと時間が止まった。
言い合いをしていたナミ達も黙り込み、気まずげにシルビを見やる。問題発言をしたプリンはそれに気付かず、さっきから書いている物を完成させようとしていた。
訂正をするべきか否か。いや喋っている声を聞いて男だと分からないのかと思ったり、やはり髪を下ろしているのが問題なのかと考えたりしていると、書き終えたらしいプリンがペンを置いた。
「あの、プリンちゃん?」
「このルートを通って来て。――これは私達兄弟しか知らない、ママの目を盗める唯一の航路」
「うぉおおおい……」
スルーされたことで思わず呻く。
プリンが書いていたのはこの万国の周辺海域の地図だったようで、現在居るカカオ島から中央部の島であるホールケーキアイランドまでの行き方が記されていた。ルートの所々に数字が書かれている。
このルートを進めばホールケーキアイランドの『南西の海岸』へ辿りつけるらしい。明日プリンがどうにかしてそこへサンジを連れてくると言う。
そうすればルフィ達はサンジを連れて戻れる。
プリンがビッグマムから叱咤される可能性があるが、実の娘だから心配はいらないと彼女は言ってみせた。
「ちょっと残念だけど、次に現れる私の結婚相手は……もっと素敵な人かも知れない」
それはサンジを諦める為の強がりだったのか、本音だったのか。
家の外からプリンを迎えに来たのだという兵士の声が聞こえる。立ち上がったプリンが玄関ではなく食べられて開いてしまった壁の穴を指差すのに、シルビ達は小さく頷いてそこから外へと逃げ出した。
振り返った先ではプリンがウインクしていたが、結局シルビの性別が訂正出来ていない。
注文していた食料を持って船へと戻ると、待っている筈だったペコムズの姿が無くトイレに『ひきかえせ』とメッセージが残されていた。
チョコやその他諸々のお菓子で出来ていたカフェを営業出来ない程に食べ尽くしてしまったルフィとチョッパーを助けてくれたのは、そのカフェのオーナーであった少女『プリン』であった。
助けてくれた理由は店の建造に使っていたチョコを『うますぎた』と言ってくれたかららしい。聞けば自分で新しく考えた調合で練ったものだという。
それだけの理由で警察に捕まりそうだったルフィ達を助けてくれたとなると、裏が無ければ心底のお人好しないい子である。今も招き入れた家の中で、チョッパーやキャロットが勝手にテーブルや壁を食べているのに叱りもしない。
「キャロット。チョッパー船医。勝手に食べるのはやめなさい」
「あ、いいんですよ。どうぞ好きなように食べてください。アナタも」
プリンの言葉にキャロットが勝ち誇ったようにシルビを見て鼻を鳴らすが、本来は許されない事だしそもそも行儀が悪いという話だ。
用があって行くところがあるのだというと、それなら甘くなってしまっただろう口の口直しにと紅茶を淹れ始める。そのくらいならと許容してシルビ達が座り直せば、プリンが名前を聞いてくるのにルフィが素直に返した。
「おれルフィだ。海賊王にな……」
「ちょっとっ!」
『海賊王になる男だ』と続けようとしたルフィの口をナミが慌てて塞ぐ。だが『ルフィ』という名前はしっかりと聞いてしまったらしく、驚いたらしいプリンが振り返った。
「ルフィ、ってサンジさんの!?」
「ん、サンジを知ってんのか?」
「サンジさんはその、私の結婚相手だから」
プリンは顔を真っ赤にして恥ずかしげに告げるが、その発言はつまり彼女こそビッグマムへ連れて行かれたサンジの婚約者で、彼女こそビッグマムの娘という事になる。それを理解した途端にルフィ達が驚きの声を上げるのにシルビは指を鳴らして声が家の外へ漏れないようにした。
シルビだって驚いてはいる。ビッグマムへ何人の娘がいるのか知らないが、結婚間近の娘をこんなところで一人好き勝手にさせているという事にだ。でなければ誰がこんな町中で万国を治めている者の娘へ出会うと思うか。
「ママの傘下にも入ってないあなた達がどうやってタルトの検問を通過したの!? 何故ここへ来たの!? こ、殺されちゃうわよ!? ココはもうママのナワバリで、ママはとても恐い海賊! でも知ってる! あなた達も恐い海賊!」
混乱をきたしたのか、最終的に身を守る為か握った包丁を突き出してよろけていた。
包丁を突き出してよろけているプリンを、ナミが慌てて落ち着かせようとするのとは逆にペドロがさっさとプリンを拘束して剣を押しつけている。
「ルフィ、こいつをどうする」
「キャーッ!」
「乱暴すなァ! ペドロ!」
「ペドロ」
ソファから立ち上がりながら声を掛ければ、何故かペドロだけではなくナミやプリンまで静かになった。視線を向けるキャロットの頭を安心させるように撫でてからプリンを拘束しているペドロへと歩み寄り、その剣を降ろさせる。
何か言いたげなペドロを見上げてから顎でソファを示し、素直にソファヘ向かうのを見てからプリンの手から包丁を取り上げた。
「ショコラティエなら、包丁を人へ向けてはいけません」
「……、はい」
目を丸くして返事をしたプリンに笑みを向けて、椅子へ座るように促す。やはり素直に椅子へ座るプリンにシルビはそのまま彼女が用意をしている途中だった紅茶を淹れ、シルビが動き出してから唖然としているナミ達の前へと並べた。
「ペドロは後で説教です。全員落ち着いたのなら座って紅茶を一口飲みなさい」
「だがペンギン――」
「飲みなさい」
ペドロを睨めばペドロだけではなく、ブルックやチョッパーまで神妙に紅茶へ口を付ける。ハートの船でも薄々感じてはいるが、どうもシルビは怒らせると恐いから逆らってはいけない相手だと認識されやすいらしい。
怒られるような事をしなければいいのだと思うのだが、それを理解してくれる者はいないようである。
そんなに逆らってはいけない雰囲気を出しているつもりはない。
「……おいしい」
呟いたプリンがほうと息を吐く。これなら落ち着いて話を聞いてくれるだろう。
帽子の影から一番話の通じそうなナミへ目配せを送れば頷かれる。このままシルビが話せということか。同盟相手ではあるが麦わらの一味ではないシルビに。
「まず俺達は君へ手を出すつもりは無ぇ。俺達は単純に君と結婚させる為に連れて行かれたサンジ君を連れ戻しに来ただけなんだぁ」
「そうなの。だからあなたを傷つけたりはしないわ」
「――そう。サンジさんを連れ戻しに来たの。やっぱり合意じゃなかったんだ……」
そう言ってプリンがカップをソーサーへ戻す。
プリンの母親であるビッグマムは、自身の子供達の姻戚関係も自分の海賊団を強化する為に利用してきたらしい。それ故に子供達はプリンだけではなく全員が、自由な恋愛結婚は生まれたときから出来ない運命にあるという。
それを嫌がって姉の一人が求婚の旅へ出たくらいらしい。そこは自由恋愛なんじゃないのかと自身も束縛を嫌がって故郷を飛び出した身で思う。求婚の旅と聞いてナミが何か引っかかることがあったようだった。
そうした海賊団強化の為の結婚を繰り返した結果、ビッグマムはたくさんの子供を持つ母親になりプリンは三十五番目の娘らしい。
娘は総勢で三十九人。息子は総勢四十六人の、合わせて八十五人兄弟。そこまでくるとビッグマムは本当に人間なのだろうかとシルビは医学的観念から疑問に思う。子供の父親である夫は四十三人らしい。一妻多夫もここに極まれりだろう。
子供達も既に成人して伴侶や子供がいる者がいるらしく、血縁だけみれば大所帯も過ぎる。そもそもビッグマム自身は何歳になるのか。高齢出産はお勧めしない。
プリンは既にサンジと顔合わせはしたらしく、サンジの事を尋ねるとプリンは顔を赤くしながらサンジを絶賛した。政略結婚でなければ結婚してもいいのではと思う。
ちなみにシルビは結婚しない。プリンと、という意味ではなく誰ともという意味で。
「縛りつけておくべきだその女」
今まで黙っていたペドロがプリンを睨んだ。
「オレ達がここにいる事を喋るぞ! こんな入り口の島で情報が漏れたらサンジのいる場所へなんて到底辿りつけない! ペンギンもそう思うだろう!」
「思わねぇですよ」
「何故!?」
「さっきのカフェを食った騒動で彼女がここにいる事と、カフェを食った犯人が一緒にいることは既に町の住民へ見られてる。それなのに犯人達が忽然といなくなり彼女が縛りつけるなり動けなくなった姿で発見されたら、それこそ危険度が増すって話です」
「――じゃあどうやって口を塞ぐ。忘れるな。そいつはビッグマムの娘だぞ!」
言っていることは正しいのだが、どうにも焦っている様な気がする。
プリンがビッグマムの娘でルフィ達が去った後ママへ報告したとして、侵入する方法自体はいくらでも思いつくだろう。見えない島ではないのだから。
「プリンだって母親が恐いって言ってるのに」
「だからこそ報告する」
言い合うナミやペドロを眺めて、プリンが何かを覚悟したように紙とペンを用意して何かを書き始めた。
「『万国』のみんなは、私の結婚を祝福してくれてる」
それは本来祝福すべきことだから当たり前である。この万国の恩恵に預かって生活している者達からすれば、万国を治める海賊団の強化は喜ばしいことだ。
でもそれは、酷な事を言えば本当に『プリンの結婚』を喜んでいるとは限らないということでもある。流石に口にはしないが、この万国の国民はプリンほど結婚に夢を見ていない可能性もあった。
プリンはどうも生まれた直後から自由に恋愛は出来ないという事実に慣れてしまって、だから『結婚』という行事自体を楽しみにしているようだが。
「プリンちゃん。君はそれでいいのかぁ?」
「それで、って?」
不思議そうにシルビを見上げてくるプリンの目に邪気はない。それを見てシルビは嗚呼そうかと理解した。
彼女や彼女の兄弟にとってはきっと、恋愛というのは好きになったから一緒にいる為に結婚するものではなく、結婚して一緒になったから相手を好きになるものなのだ。だから初対面の婚約者も『良いところ』を真っ先に見つける。
「結婚したことがねぇ俺が言うのも何だけどなぁ。結婚って手段じゃねぇんだよ?」
「私を心配してくれるのね。ありがとう“お姉さん”」
ピシッと時間が止まった。
言い合いをしていたナミ達も黙り込み、気まずげにシルビを見やる。問題発言をしたプリンはそれに気付かず、さっきから書いている物を完成させようとしていた。
訂正をするべきか否か。いや喋っている声を聞いて男だと分からないのかと思ったり、やはり髪を下ろしているのが問題なのかと考えたりしていると、書き終えたらしいプリンがペンを置いた。
「あの、プリンちゃん?」
「このルートを通って来て。――これは私達兄弟しか知らない、ママの目を盗める唯一の航路」
「うぉおおおい……」
スルーされたことで思わず呻く。
プリンが書いていたのはこの万国の周辺海域の地図だったようで、現在居るカカオ島から中央部の島であるホールケーキアイランドまでの行き方が記されていた。ルートの所々に数字が書かれている。
このルートを進めばホールケーキアイランドの『南西の海岸』へ辿りつけるらしい。明日プリンがどうにかしてそこへサンジを連れてくると言う。
そうすればルフィ達はサンジを連れて戻れる。
プリンがビッグマムから叱咤される可能性があるが、実の娘だから心配はいらないと彼女は言ってみせた。
「ちょっと残念だけど、次に現れる私の結婚相手は……もっと素敵な人かも知れない」
それはサンジを諦める為の強がりだったのか、本音だったのか。
家の外からプリンを迎えに来たのだという兵士の声が聞こえる。立ち上がったプリンが玄関ではなく食べられて開いてしまった壁の穴を指差すのに、シルビ達は小さく頷いてそこから外へと逃げ出した。
振り返った先ではプリンがウインクしていたが、結局シルビの性別が訂正出来ていない。
注文していた食料を持って船へと戻ると、待っている筈だったペコムズの姿が無くトイレに『ひきかえせ』とメッセージが残されていた。