トットランド編
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夢主視点
互いに何も見なかった事にしてヨンジとレイジュが乗るヴィンスモークの船と別れ、サニー号は住民以外の全てがチョコで出来ているカカオ島『ショコラタウン』へと碇を降ろした。検問の兵士にはペコムズがサプライズで強奪してきた船だと誤魔化している。兵士はそんなペコムズを小粋だと褒めていたが、確実にバレるのではとシルビは思う。
島の名前はともかく『ショコラタウン』という町の名前は伊達ではなく、住民が住む建造物どころか噴水、銭湯どころか着ている洋服までチョコレートで出来ているらしい。
変装の為に揃って服を変えることになり、買い揃えてきた服はどれもチョコレート製だ。触れるとか着た程度で溶けることは絶対に無いらしいが、だとしたらそれはチョコレートなのだろうかという疑問が浮かぶ。『お口で溶けて手で溶けない』の究極系も甚だしい。
着替えて船長の帽子を被り直す。甲板では先に着替え終えていたらしいナミとキャロットが互いの服を満足そうに眺めていた。
「ペンギーン! かわいい?」
「可愛いよ。キャロットはリボンがナミさんとお揃いかぁ」
「うんっ。ペンギンもかわいいよ!」
だから男に『可愛い』は褒め言葉ではないと誰か教えるべきだ。帽子の唾を摘んで変に言い返せずにいれば、まだ着替えていないブルックが何故か甲板の芝生へめり込んでたんこぶをいくつも作っていた。
「ガイコツなのにたんこぶは出来るんですね」
「ヨホホホホ。痛いですよ。ホネでも!」
元気そうなので湿布などの手当はいらないだろう。
手を突いて起き上がったブルックがジッとシルビを見やる。どこか変なところでもあっただろうかと自分の身体を思わず見下ろしてしまったが、変なところは無い筈だ。
少なくともちゃんと着こなしているつもりである。
「あの、何か変ですか?」
「イエイエ、そんなことはありません。ペンギンさんもとても良くお似合いですヨ! ただその帽子は被り続けるのかと思いまして」
船長から借り受けた帽子を両手で押さえた。防寒帽とは違って髪を納めきれず、後ろ髪はいつもと違って縛りもせずに降ろしたままにしているが、服装もその髪型へ合わせてはいる。
「ルフィ君の麦わら帽子とまではいきませんが、わざわざ被せられた借り物ですしねぇ」
「トラ男さんがそうして貸すのは良くあるコトで?」
「クルーへ被せることは良くありますけど、そう言えば貸すのは初めてかも知れませんね」
あの船長は帽子でクルーへの信頼を示しているところがあった。それを思い出してふと気付いたのだが、その信頼を示す帽子をシルビへ貸したという事は、もしかして顔を隠すこと以外にも意味があったのだろうか。
ビッグマムがいるホールケーキアイランドへまで、船であと一日は掛かるらしい。そうでなくとも途中で釣ったヨロイオコゼ以外食べていない以上食料の買い出しは必須で、変装したメンバーからショコラタウンへと降りていった。
ルフィやチョッパーなどはシルビが着替え終える前に颯爽と船を下りて町へと行ってしまっている。町からはチョコレートの甘い匂いが届いてきていたが、不思議と胸焼けをしてしまう程の匂いの強さではない。
ショコラタウンには人間以外にも様々な種族が暮らしており、キャロットがそれに驚いていた。ざっと見ただけでも人間だけではなく魚人族や足長族、首長族もいればキャロットやペコムズと同じミンク族もいる。
「それこそがママの夢なのさ! 世界中の全種族が差別なく暮らせる国。いや……この世の“全て”だ! もはやここは“大国”だと思え」
「大国?」
「ホールケーキアイランドの周りには三十四の島が点在し、それらを三十四人の『大臣』達が治めている。……その海域の総称をこう呼ぶ。『万国 』!」
ペコムズの説明を聞いて思い出したのはシルビの故郷だ。
あの故郷も父島を中心にいくつかの島が点在し、それぞれを領主が治めている。死ぬ気の炎の才能があり、国へ害を及ぼさない者という条件はあるがそれを除けば人種も何も関係ない。ミンク族も足長族も魚人族も巨人族もここと変わらずに平穏に暮らしているのだ。
ビッグマムの『夢』だというこのトットランドは、何故だかあまりにもシルビの故郷へ似ていた。
「万国、ねぇ」
「なんだ」
「俺の知ってる国に少し似てる気がして」
「嗚呼、それはもしかして『ボンゴレ』のことか? それなら正しい。ママはかつて訪れたその国に憧れを持ってトットランドを作り上げたそうだからな」
然もありなん、とばかりにされた説明に、『俺の“故郷”』と言わずに良かったと本気で思う。
「二度目からは立ち入るどころかその島を見つけることすら出来なくなったらしいが、その島の住民も万国の一員へ加えることもママの夢だ」
「……なるほどぉ。大層な夢を持ってるんだなぁ」
内心では冷や汗がダラダラだ。
一度は訪れることが出来たが二度目は島を見つけることすら出来なかったというのは、つまりビッグマムは島へ立ち入る権利を失った事になる。権利を失う理由は主に島へ害を及ぼすと認識される事であり、権利を失ったという事は害悪であると認識されたということだ。
要するに、今のビッグマムはシルビの故郷の害悪足りうる可能性を持っている。
何度も言うがシルビの故郷は『人を選ぶ』
そうして千年以上の年月の間島を守り続けてきたのだ。選ばれた者しか立ち入れないことで伝説扱いされているところもある島である。それはシルビが『シャイタン』だろうとそうで無かろうと変わらない。
害悪足りうる理由もペコムズの言葉から何となく察した。様々な人種が差別無く暮らせる国というのは立派だが、シルビの故郷の者も加えたいと言いながら立ち入れられなくなっているという事は、誘拐か強制的にこの万国へ故郷の者を加えようとしたかそんな考えを持ったからだろう。
となると問題は誘拐なんて物騒な考えまでして様々な種族をという考えで、それは差別云々の話ではなく、単純に様々な種族を“傍におきたい”だけなのではとも考えられる。
「そりゃ入れなくなるよなぁ」
ショコラタウンは全てがチョコで出来ているからという訳でも無いのだろうが、ペコムズの話ではチョコは好きなだけ食べて良いらしい。だが屋根に使われている“瓦チョコ”は雨雪を防げなくなるので法に触れ、窓ガラスを形成している飴は『キャンディー大臣』の、ビスケットで出来ている柱は『ビスケット大臣』の管轄というように、色々と取り決まっているようである。
ちなみにチョコ以外は私物または公共物になり、食べてしまえばもちろん御用だ。
「オレは顔が差すから船にいるがチョコは大好きだ! 土産を頼む!」
「ネコ科の動物にチョコは猛毒だろぉ」
「ミンク族とネコを一緒にするな!」
着替えを終えたブルックとペドロが船室から出てきた。町の方からは早速というべきか、『カフェ食い事件』だと騒ぐ声が聞こえる。
ナミはにこやかにルフィ達が原因だろうと察して動じていない。これが『麦わらの一味』なのかとハートとの差に、何度目になるか分からない目眩を覚えた。
ここへ来るまでの数日も初日で食料が大幅に減ったことで驚いて船長へ電話し、それからは流石に電話していないものの、一体何度船長達の声が聞きたいと思ったか。
船を下りて町へと向かっても、町民達は特にシルビ達を珍しがる様子もなかった。旅人へ慣れているのではなく、どんな人種が来ても特別気にする事はないと考えているのだろう。
「とりあえず余裕を持って二三日分でいいでしょう。帰りの分は今買っても無くなりそうですしぃ」
「そうね。ありがとうペンギン君」
「……あの、俺ハートのクルーですよねぇ?」
「それが?」
ごく自然に自船の食料事情を他船のクルーへ伝えていいのか。今はシルビもその船へ乗っている訳だが。
食材を売っている店へ食料の注文をしてから騒いでいる方角へと向かえば、見覚えのない少女が騒ぎを治めていた。
互いに何も見なかった事にしてヨンジとレイジュが乗るヴィンスモークの船と別れ、サニー号は住民以外の全てがチョコで出来ているカカオ島『ショコラタウン』へと碇を降ろした。検問の兵士にはペコムズがサプライズで強奪してきた船だと誤魔化している。兵士はそんなペコムズを小粋だと褒めていたが、確実にバレるのではとシルビは思う。
島の名前はともかく『ショコラタウン』という町の名前は伊達ではなく、住民が住む建造物どころか噴水、銭湯どころか着ている洋服までチョコレートで出来ているらしい。
変装の為に揃って服を変えることになり、買い揃えてきた服はどれもチョコレート製だ。触れるとか着た程度で溶けることは絶対に無いらしいが、だとしたらそれはチョコレートなのだろうかという疑問が浮かぶ。『お口で溶けて手で溶けない』の究極系も甚だしい。
着替えて船長の帽子を被り直す。甲板では先に着替え終えていたらしいナミとキャロットが互いの服を満足そうに眺めていた。
「ペンギーン! かわいい?」
「可愛いよ。キャロットはリボンがナミさんとお揃いかぁ」
「うんっ。ペンギンもかわいいよ!」
だから男に『可愛い』は褒め言葉ではないと誰か教えるべきだ。帽子の唾を摘んで変に言い返せずにいれば、まだ着替えていないブルックが何故か甲板の芝生へめり込んでたんこぶをいくつも作っていた。
「ガイコツなのにたんこぶは出来るんですね」
「ヨホホホホ。痛いですよ。ホネでも!」
元気そうなので湿布などの手当はいらないだろう。
手を突いて起き上がったブルックがジッとシルビを見やる。どこか変なところでもあっただろうかと自分の身体を思わず見下ろしてしまったが、変なところは無い筈だ。
少なくともちゃんと着こなしているつもりである。
「あの、何か変ですか?」
「イエイエ、そんなことはありません。ペンギンさんもとても良くお似合いですヨ! ただその帽子は被り続けるのかと思いまして」
船長から借り受けた帽子を両手で押さえた。防寒帽とは違って髪を納めきれず、後ろ髪はいつもと違って縛りもせずに降ろしたままにしているが、服装もその髪型へ合わせてはいる。
「ルフィ君の麦わら帽子とまではいきませんが、わざわざ被せられた借り物ですしねぇ」
「トラ男さんがそうして貸すのは良くあるコトで?」
「クルーへ被せることは良くありますけど、そう言えば貸すのは初めてかも知れませんね」
あの船長は帽子でクルーへの信頼を示しているところがあった。それを思い出してふと気付いたのだが、その信頼を示す帽子をシルビへ貸したという事は、もしかして顔を隠すこと以外にも意味があったのだろうか。
ビッグマムがいるホールケーキアイランドへまで、船であと一日は掛かるらしい。そうでなくとも途中で釣ったヨロイオコゼ以外食べていない以上食料の買い出しは必須で、変装したメンバーからショコラタウンへと降りていった。
ルフィやチョッパーなどはシルビが着替え終える前に颯爽と船を下りて町へと行ってしまっている。町からはチョコレートの甘い匂いが届いてきていたが、不思議と胸焼けをしてしまう程の匂いの強さではない。
ショコラタウンには人間以外にも様々な種族が暮らしており、キャロットがそれに驚いていた。ざっと見ただけでも人間だけではなく魚人族や足長族、首長族もいればキャロットやペコムズと同じミンク族もいる。
「それこそがママの夢なのさ! 世界中の全種族が差別なく暮らせる国。いや……この世の“全て”だ! もはやここは“大国”だと思え」
「大国?」
「ホールケーキアイランドの周りには三十四の島が点在し、それらを三十四人の『大臣』達が治めている。……その海域の総称をこう呼ぶ。『
ペコムズの説明を聞いて思い出したのはシルビの故郷だ。
あの故郷も父島を中心にいくつかの島が点在し、それぞれを領主が治めている。死ぬ気の炎の才能があり、国へ害を及ぼさない者という条件はあるがそれを除けば人種も何も関係ない。ミンク族も足長族も魚人族も巨人族もここと変わらずに平穏に暮らしているのだ。
ビッグマムの『夢』だというこのトットランドは、何故だかあまりにもシルビの故郷へ似ていた。
「万国、ねぇ」
「なんだ」
「俺の知ってる国に少し似てる気がして」
「嗚呼、それはもしかして『ボンゴレ』のことか? それなら正しい。ママはかつて訪れたその国に憧れを持ってトットランドを作り上げたそうだからな」
然もありなん、とばかりにされた説明に、『俺の“故郷”』と言わずに良かったと本気で思う。
「二度目からは立ち入るどころかその島を見つけることすら出来なくなったらしいが、その島の住民も万国の一員へ加えることもママの夢だ」
「……なるほどぉ。大層な夢を持ってるんだなぁ」
内心では冷や汗がダラダラだ。
一度は訪れることが出来たが二度目は島を見つけることすら出来なかったというのは、つまりビッグマムは島へ立ち入る権利を失った事になる。権利を失う理由は主に島へ害を及ぼすと認識される事であり、権利を失ったという事は害悪であると認識されたということだ。
要するに、今のビッグマムはシルビの故郷の害悪足りうる可能性を持っている。
何度も言うがシルビの故郷は『人を選ぶ』
そうして千年以上の年月の間島を守り続けてきたのだ。選ばれた者しか立ち入れないことで伝説扱いされているところもある島である。それはシルビが『シャイタン』だろうとそうで無かろうと変わらない。
害悪足りうる理由もペコムズの言葉から何となく察した。様々な人種が差別無く暮らせる国というのは立派だが、シルビの故郷の者も加えたいと言いながら立ち入れられなくなっているという事は、誘拐か強制的にこの万国へ故郷の者を加えようとしたかそんな考えを持ったからだろう。
となると問題は誘拐なんて物騒な考えまでして様々な種族をという考えで、それは差別云々の話ではなく、単純に様々な種族を“傍におきたい”だけなのではとも考えられる。
「そりゃ入れなくなるよなぁ」
ショコラタウンは全てがチョコで出来ているからという訳でも無いのだろうが、ペコムズの話ではチョコは好きなだけ食べて良いらしい。だが屋根に使われている“瓦チョコ”は雨雪を防げなくなるので法に触れ、窓ガラスを形成している飴は『キャンディー大臣』の、ビスケットで出来ている柱は『ビスケット大臣』の管轄というように、色々と取り決まっているようである。
ちなみにチョコ以外は私物または公共物になり、食べてしまえばもちろん御用だ。
「オレは顔が差すから船にいるがチョコは大好きだ! 土産を頼む!」
「ネコ科の動物にチョコは猛毒だろぉ」
「ミンク族とネコを一緒にするな!」
着替えを終えたブルックとペドロが船室から出てきた。町の方からは早速というべきか、『カフェ食い事件』だと騒ぐ声が聞こえる。
ナミはにこやかにルフィ達が原因だろうと察して動じていない。これが『麦わらの一味』なのかとハートとの差に、何度目になるか分からない目眩を覚えた。
ここへ来るまでの数日も初日で食料が大幅に減ったことで驚いて船長へ電話し、それからは流石に電話していないものの、一体何度船長達の声が聞きたいと思ったか。
船を下りて町へと向かっても、町民達は特にシルビ達を珍しがる様子もなかった。旅人へ慣れているのではなく、どんな人種が来ても特別気にする事はないと考えているのだろう。
「とりあえず余裕を持って二三日分でいいでしょう。帰りの分は今買っても無くなりそうですしぃ」
「そうね。ありがとうペンギン君」
「……あの、俺ハートのクルーですよねぇ?」
「それが?」
ごく自然に自船の食料事情を他船のクルーへ伝えていいのか。今はシルビもその船へ乗っている訳だが。
食材を売っている店へ食料の注文をしてから騒いでいる方角へと向かえば、見覚えのない少女が騒ぎを治めていた。