原作前日常編
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夢主視点
手配書の賞金が更新されたらしく、ニュースクーの持って来た新聞に新しい手配書が挟まっていた。何処の誰だか知らないが、最近は直ぐに桁が上がるのが多い。
かくいう我等が船長であるトラファルガー・ローも、この航海中で着実に手配書の賞金額を上げていた。この調子でいけばそう遠くないうちに億越えするだろう。クルーがその新しい手配書の束から自分のものが出ていないかを確かめたり、額の上がった船長を喜んだり褒めたりしている。
バンダナが船長に劣るものの、それなりの額が懸かった自分の手配書を持ってシルビの隣へ来た。シルビの向かいではイルカが手配書ではなく新聞を広げていたが、バンダナが来たことで顔を上げる。
「今回『も』ペンちゃんの手配書無かったねぇ」
「今回『も』無かったの?」
何故か異様に『も』を強調して話す二人に、シルビはカップへ口を付けて顔を隠しながら思わず苦笑した。
二人の言う通り、『ペンギン』の首には賞金が懸かっていない。
今までにも海兵と対峙することはあったし、船長の命令で他の船を襲撃するなどといった真っ当な海賊行為だって行なっている。だから船長だけではなくバンダナのような他のクルーにも僅かながら賞金が懸かっているのだが、ハートの副船長である『ペンギン』は一向に手配書が出ていない。
実力はハートのクルーの中で船長に次ぐと認識されている。戦闘があった際一番働いているのもシルビだろう。それが敵を倒すにしても策を練るにしてもだ。
なのに手配書が出ない事をクルー達は心底不思議に思っているらしく、こうして新しい手配書が配布される度に話題になるのである。
「海軍も見る目無いよね。ペンギンに賞金懸けないなんてさ」
「まぁ、町中歩いてても私服なら突っかかって来られねぇし、俺としちゃありがてぇけどなぁ」
「もっと目立っていいと思うけどねぇ」
手配書が出ない事を何とも思っていないシルビを、周りのクルーの方が残念がるのもいつもの事だ。
皆には言えないが実のところ、シルビは自分の手配書が出るのを阻止していた。
海軍と戦う度に一緒に行動しているのか現れる戦場カメラマンをこっそり探し出し、幻覚を掛けて前後不覚になっている間に、そのカメラで自分が撮られていないかを確認している。もちろんそれだけでは不安要素の方が強いので、他にも色々小細工を行なってはいたが。
そういう裏作業の積み重ねで、『ペンギン』の手配書を期待しているクルーには悪いがシルビは自分の手配書が出るのを阻止しているのだった。
何故手配されるのが嫌なのかと聞かれても、明確な理由は特に無い。あえて言うなら『面倒臭いから』と答える。
というのもシルビには、『ペンギン』の手配書は無くとも既に『シルビ』の手配書が存在しているからだ。
遡ること遥か昔、単純な言語化をするなら『前世』の話になるのだが、その時シルビはやはりこの世界にいて、多額の賞金をその首へ懸けられていた。海賊としてではなく世界政府に対する重要人物としてではあったが、結局のところ犯罪者扱いである事に変わりは無く、懸けられた額も額だったので迂闊に町中を歩くのに難儀した覚えがある。
大体にして何故『見たら死ぬ』みたいな通説があったのに、外見的特徴が手配書へ表記されていたのかとか、何故自分の眼は珍しい紫色なんて特徴的だったのかとか、手配書にそれが載っている時点で生き延びて情報を伝えた奴いただろとか、思う訳で。
流石に顔写真は載っていなかったが、だからって黒塗りの中に紫の目を書いただけの手配書は逆に怖いといつも思っていた。目の絵も何かのシンボルみたいな絵で不気味だったし。
髪の色と眼の色で『紫黒』と掛けたのか、付いた二つ名は『死告』だった。
本名を隠すのに名乗っていたのは昔と同じ『シャイタン』だったものだから、『死告シャイタン』
なんだこの中二的センスと当時のシルビは思ったものである。異議申し立てと称し当時手配書を出した発足直後の世界政府へ殴り込みに行く程度には思った。結果はただ賞金額が上がっただけだったが。
そんな過去の自分を教訓に生かし、今のシルビは絶対に自分の手配書が作られないように細心の注意を払っているのである。
そちらで賞金が掛かっているので同一人物である『ペンギン』にまで賞金が懸かってしまっても困るのだ。万が一シルビを討ち取った者がいた場合、政府だってどちらの賞金を渡せばいいのかと言う話になるだろう。
「裏から手を回すような参謀ポジションに憧れるんで今はまだいいですかねぇ」
「ペンギンは参謀とかより突撃兵だよ」
「そうかぁ?」
「真っ先に飛び出していく子が何を言ってるんだか」
呆れたように言うバンダナとイルカに表向き酷い言い様だと嘆いてみせて、シルビは内心で話が逸れたと判断する。確かに自分は策を練るよりは先陣切って突っ込んでいくほうが好みだが、だからといって策が練れない訳ではない。
『賞金が懸からないようにする』という策を講じている時点で、シルビはクルー達が思ってくれているほど優しい性格ではないのだ。敵を騙すにはまず味方から、ということだって実践する。
願わくは今後も、せめて『ペンギン』に賞金が懸かるまで、シルビが『シャイタン』と同一人物だという事がバレず、その『シャイタン』へ懸けられていた賞金額が知られなければいい。
手配書の賞金が更新されたらしく、ニュースクーの持って来た新聞に新しい手配書が挟まっていた。何処の誰だか知らないが、最近は直ぐに桁が上がるのが多い。
かくいう我等が船長であるトラファルガー・ローも、この航海中で着実に手配書の賞金額を上げていた。この調子でいけばそう遠くないうちに億越えするだろう。クルーがその新しい手配書の束から自分のものが出ていないかを確かめたり、額の上がった船長を喜んだり褒めたりしている。
バンダナが船長に劣るものの、それなりの額が懸かった自分の手配書を持ってシルビの隣へ来た。シルビの向かいではイルカが手配書ではなく新聞を広げていたが、バンダナが来たことで顔を上げる。
「今回『も』ペンちゃんの手配書無かったねぇ」
「今回『も』無かったの?」
何故か異様に『も』を強調して話す二人に、シルビはカップへ口を付けて顔を隠しながら思わず苦笑した。
二人の言う通り、『ペンギン』の首には賞金が懸かっていない。
今までにも海兵と対峙することはあったし、船長の命令で他の船を襲撃するなどといった真っ当な海賊行為だって行なっている。だから船長だけではなくバンダナのような他のクルーにも僅かながら賞金が懸かっているのだが、ハートの副船長である『ペンギン』は一向に手配書が出ていない。
実力はハートのクルーの中で船長に次ぐと認識されている。戦闘があった際一番働いているのもシルビだろう。それが敵を倒すにしても策を練るにしてもだ。
なのに手配書が出ない事をクルー達は心底不思議に思っているらしく、こうして新しい手配書が配布される度に話題になるのである。
「海軍も見る目無いよね。ペンギンに賞金懸けないなんてさ」
「まぁ、町中歩いてても私服なら突っかかって来られねぇし、俺としちゃありがてぇけどなぁ」
「もっと目立っていいと思うけどねぇ」
手配書が出ない事を何とも思っていないシルビを、周りのクルーの方が残念がるのもいつもの事だ。
皆には言えないが実のところ、シルビは自分の手配書が出るのを阻止していた。
海軍と戦う度に一緒に行動しているのか現れる戦場カメラマンをこっそり探し出し、幻覚を掛けて前後不覚になっている間に、そのカメラで自分が撮られていないかを確認している。もちろんそれだけでは不安要素の方が強いので、他にも色々小細工を行なってはいたが。
そういう裏作業の積み重ねで、『ペンギン』の手配書を期待しているクルーには悪いがシルビは自分の手配書が出るのを阻止しているのだった。
何故手配されるのが嫌なのかと聞かれても、明確な理由は特に無い。あえて言うなら『面倒臭いから』と答える。
というのもシルビには、『ペンギン』の手配書は無くとも既に『シルビ』の手配書が存在しているからだ。
遡ること遥か昔、単純な言語化をするなら『前世』の話になるのだが、その時シルビはやはりこの世界にいて、多額の賞金をその首へ懸けられていた。海賊としてではなく世界政府に対する重要人物としてではあったが、結局のところ犯罪者扱いである事に変わりは無く、懸けられた額も額だったので迂闊に町中を歩くのに難儀した覚えがある。
大体にして何故『見たら死ぬ』みたいな通説があったのに、外見的特徴が手配書へ表記されていたのかとか、何故自分の眼は珍しい紫色なんて特徴的だったのかとか、手配書にそれが載っている時点で生き延びて情報を伝えた奴いただろとか、思う訳で。
流石に顔写真は載っていなかったが、だからって黒塗りの中に紫の目を書いただけの手配書は逆に怖いといつも思っていた。目の絵も何かのシンボルみたいな絵で不気味だったし。
髪の色と眼の色で『紫黒』と掛けたのか、付いた二つ名は『死告』だった。
本名を隠すのに名乗っていたのは昔と同じ『シャイタン』だったものだから、『死告シャイタン』
なんだこの中二的センスと当時のシルビは思ったものである。異議申し立てと称し当時手配書を出した発足直後の世界政府へ殴り込みに行く程度には思った。結果はただ賞金額が上がっただけだったが。
そんな過去の自分を教訓に生かし、今のシルビは絶対に自分の手配書が作られないように細心の注意を払っているのである。
そちらで賞金が掛かっているので同一人物である『ペンギン』にまで賞金が懸かってしまっても困るのだ。万が一シルビを討ち取った者がいた場合、政府だってどちらの賞金を渡せばいいのかと言う話になるだろう。
「裏から手を回すような参謀ポジションに憧れるんで今はまだいいですかねぇ」
「ペンギンは参謀とかより突撃兵だよ」
「そうかぁ?」
「真っ先に飛び出していく子が何を言ってるんだか」
呆れたように言うバンダナとイルカに表向き酷い言い様だと嘆いてみせて、シルビは内心で話が逸れたと判断する。確かに自分は策を練るよりは先陣切って突っ込んでいくほうが好みだが、だからといって策が練れない訳ではない。
『賞金が懸からないようにする』という策を講じている時点で、シルビはクルー達が思ってくれているほど優しい性格ではないのだ。敵を騙すにはまず味方から、ということだって実践する。
願わくは今後も、せめて『ペンギン』に賞金が懸かるまで、シルビが『シャイタン』と同一人物だという事がバレず、その『シャイタン』へ懸けられていた賞金額が知られなければいい。