トットランド編
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夢主視点
食べられない料理を見捨てて、ナミやルフィ達が食料庫へ向かう。あまり動けないペコムズを置いていくという訳にもいかなかったのか、ペドロが追いかけるのを躊躇して残っていた。
テーブルの上では得体の知れない匂いをさせる大鍋。先程ルフィがひっくり返して処分しようとしていたのを咄嗟に阻止してしまったが、このままでは到底何者でも食べられそうにない。
まさか料理人一人いないだけでこんな事が起こるとは。ハートの海賊団だってシルビが加わった当初は、野菜が少なめと言うだけで料理は問題なかったというのに。交代制で料理を作っていたが船長もバンダナも作れていた。
人数が違うというのはこの場合問題にならない。量とか味とかそれ以前に調理法の問題だからだ。
ハートの船ではないからと出来るだけ手を出すつもりは無かったのだが。
「ペンギン?」
「作り直す」
降ろしたままの髪を縛ってまとめ、ナミに貸してもらった上着を脱ぐ。それを丁寧に畳んで船長の帽子と一緒に置いた。エプロンも欲しいが勝手に借りる訳にはいかないだろう。
鍋をキッチンへ戻し、まずは全く炊けておらず謎の液体へ浸っているだけの米を出来るだけ救い出す。この字面で間違っていないのが怖い。
魚の骨が至るところから突き出しているが、肝心の肉は殆ど取り出せなさそうだった。とりあえず骨を回収して脇に置いておく。ジャムも助けられそうにない。
菜箸で鍋をそっとかき混ぜていけば、何の手も加えられていない魚と肉の塊が出てくる。生煮えなので食中毒が怖い。他にも野菜が真っ二つに両断されただけで放り込まれていたり、皮ごと投げ入れられていたりするのに、よくもまぁここまで調理のイロハを無視できるモノだと逆に感心出来てきた。
あと八人分の一食の料理の量ではない。
「これをカレーと言えたルフィ君が凄げぇなぁ」
「無理に作り直さなくてもいいんじゃないか?」
「食料の節約は出来るだけするべきでしょう。嫌ならペドロは食べなくていいですよ」
言った途端にペドロとペコムズの腹が鳴った。あの嵐を回避するのに動き回って、空腹なのは誰も変わらない。
米を洗い直して炊く為に戸棚を探せば土鍋があったので、それで炊く事にする。野菜のいくつかは洗って切り直せば問題はなさそうだ。とはいえ調理して保存しておかないと早く悪くなるだろう。
「な、何か手伝えることはあるか?」
「使ったことのないキッチンで勝手が分からねぇので、邪魔にならねぇように大人しくしていてくださると助かります」
結構本気でそう思ったのは、二人がずっとシルビを眺めていたからだ。
米は炊けた。鍋に沈んでいた肉の塊は三分の二が使えず廃棄処分である。
野菜は根菜が割と生き延びた。魚は全滅だと考えた方がよい。気候が良ければ釣れると期待した方が早いだろう。
魚の骨は骨に残っている肉が勿体ないので、出来れば後で揚げて煎餅状にしたい。肉の殆どがダメになってしまった以上、骨であっても捨てるのは勿体ないのだ。
それでも大鍋に使われた食材の殆どが駄目だった。
「……再生能力が欲しい」
生憎シルビへそんな能力はない。いやあるのだろうか。使った覚えが無いので分からない。
とりあえず食べられる物が完成したので皆へ食わせるかとドアを開ける。いつの間にかペドロもペコムズも外へ出ていて、食料庫を見に行ったナミ達も何故かキッチンへ入ってきてはいなかった。
ドアを開けた先ではそのナミ達が半泣きで座り込んでいる。ドアの開く音で顔を上げたチョッパー達の表情が、キッチンから漂う匂いで明るくなっていくのがありありと分かった。
「ご、ごはーん!」
「いー匂い!」
「メシー!」
「あ、ルフィ君はちょっと待ったぁ」
涎と涙を垂らしながらダイニングへ飛び込んでいくチョッパー達の中から、同じく涎を垂らしていたルフィの襟首を掴む。ゴム人間なのでその程度の衝撃は痛くもないだろう。
「なんだよペンギン! おれも腹減ってんだぞ!」
「それは皆同じです。でも君はまず反省しなさい」
「反省したらもっと腹が減るだろ」
「食べ物を粗末にしねぇって事だけでもしっかり覚えなさい。出来ねぇのなら食べさせません」
「!?」
ルフィが目を見開いて驚くが、ここで引いてやる訳にはいかない。これはもう海賊同盟とか他海賊船の乗組員だとか、そんなのを気にしていられる段階はシルビの中で越えている。
後ろではダイニングへ入ったブルック達の感動の声が聞こえていた。喜ぶのはいいがちゃんとシルビとルフィの分も残しておいてほしい。配分しておいたので大丈夫だと思いたいが。
「約束できますか。食べ物を粗末にしねぇ」
「……する!」
覚悟だけはしっかりとされているが、何だかこの場限りの返事のようにも思えなくもない。とにかく言質はとれたのでダイニングへ入れるようにドアの前から退くと、ルフィは一直線に飛び込んでは席に着いた。
未だにルフィが作った謎の物体の匂いが消えきらない。ふと気付いて置いておいた帽子の匂いを確かめる。
「……良かったぁ。染み着いてねぇなぁ」
借り物である以前に自分が身に着けるものに、こんな嫌な匂いが染み着くのは嫌だ。
食べられない料理を見捨てて、ナミやルフィ達が食料庫へ向かう。あまり動けないペコムズを置いていくという訳にもいかなかったのか、ペドロが追いかけるのを躊躇して残っていた。
テーブルの上では得体の知れない匂いをさせる大鍋。先程ルフィがひっくり返して処分しようとしていたのを咄嗟に阻止してしまったが、このままでは到底何者でも食べられそうにない。
まさか料理人一人いないだけでこんな事が起こるとは。ハートの海賊団だってシルビが加わった当初は、野菜が少なめと言うだけで料理は問題なかったというのに。交代制で料理を作っていたが船長もバンダナも作れていた。
人数が違うというのはこの場合問題にならない。量とか味とかそれ以前に調理法の問題だからだ。
ハートの船ではないからと出来るだけ手を出すつもりは無かったのだが。
「ペンギン?」
「作り直す」
降ろしたままの髪を縛ってまとめ、ナミに貸してもらった上着を脱ぐ。それを丁寧に畳んで船長の帽子と一緒に置いた。エプロンも欲しいが勝手に借りる訳にはいかないだろう。
鍋をキッチンへ戻し、まずは全く炊けておらず謎の液体へ浸っているだけの米を出来るだけ救い出す。この字面で間違っていないのが怖い。
魚の骨が至るところから突き出しているが、肝心の肉は殆ど取り出せなさそうだった。とりあえず骨を回収して脇に置いておく。ジャムも助けられそうにない。
菜箸で鍋をそっとかき混ぜていけば、何の手も加えられていない魚と肉の塊が出てくる。生煮えなので食中毒が怖い。他にも野菜が真っ二つに両断されただけで放り込まれていたり、皮ごと投げ入れられていたりするのに、よくもまぁここまで調理のイロハを無視できるモノだと逆に感心出来てきた。
あと八人分の一食の料理の量ではない。
「これをカレーと言えたルフィ君が凄げぇなぁ」
「無理に作り直さなくてもいいんじゃないか?」
「食料の節約は出来るだけするべきでしょう。嫌ならペドロは食べなくていいですよ」
言った途端にペドロとペコムズの腹が鳴った。あの嵐を回避するのに動き回って、空腹なのは誰も変わらない。
米を洗い直して炊く為に戸棚を探せば土鍋があったので、それで炊く事にする。野菜のいくつかは洗って切り直せば問題はなさそうだ。とはいえ調理して保存しておかないと早く悪くなるだろう。
「な、何か手伝えることはあるか?」
「使ったことのないキッチンで勝手が分からねぇので、邪魔にならねぇように大人しくしていてくださると助かります」
結構本気でそう思ったのは、二人がずっとシルビを眺めていたからだ。
米は炊けた。鍋に沈んでいた肉の塊は三分の二が使えず廃棄処分である。
野菜は根菜が割と生き延びた。魚は全滅だと考えた方がよい。気候が良ければ釣れると期待した方が早いだろう。
魚の骨は骨に残っている肉が勿体ないので、出来れば後で揚げて煎餅状にしたい。肉の殆どがダメになってしまった以上、骨であっても捨てるのは勿体ないのだ。
それでも大鍋に使われた食材の殆どが駄目だった。
「……再生能力が欲しい」
生憎シルビへそんな能力はない。いやあるのだろうか。使った覚えが無いので分からない。
とりあえず食べられる物が完成したので皆へ食わせるかとドアを開ける。いつの間にかペドロもペコムズも外へ出ていて、食料庫を見に行ったナミ達も何故かキッチンへ入ってきてはいなかった。
ドアを開けた先ではそのナミ達が半泣きで座り込んでいる。ドアの開く音で顔を上げたチョッパー達の表情が、キッチンから漂う匂いで明るくなっていくのがありありと分かった。
「ご、ごはーん!」
「いー匂い!」
「メシー!」
「あ、ルフィ君はちょっと待ったぁ」
涎と涙を垂らしながらダイニングへ飛び込んでいくチョッパー達の中から、同じく涎を垂らしていたルフィの襟首を掴む。ゴム人間なのでその程度の衝撃は痛くもないだろう。
「なんだよペンギン! おれも腹減ってんだぞ!」
「それは皆同じです。でも君はまず反省しなさい」
「反省したらもっと腹が減るだろ」
「食べ物を粗末にしねぇって事だけでもしっかり覚えなさい。出来ねぇのなら食べさせません」
「!?」
ルフィが目を見開いて驚くが、ここで引いてやる訳にはいかない。これはもう海賊同盟とか他海賊船の乗組員だとか、そんなのを気にしていられる段階はシルビの中で越えている。
後ろではダイニングへ入ったブルック達の感動の声が聞こえていた。喜ぶのはいいがちゃんとシルビとルフィの分も残しておいてほしい。配分しておいたので大丈夫だと思いたいが。
「約束できますか。食べ物を粗末にしねぇ」
「……する!」
覚悟だけはしっかりとされているが、何だかこの場限りの返事のようにも思えなくもない。とにかく言質はとれたのでダイニングへ入れるようにドアの前から退くと、ルフィは一直線に飛び込んでは席に着いた。
未だにルフィが作った謎の物体の匂いが消えきらない。ふと気付いて置いておいた帽子の匂いを確かめる。
「……良かったぁ。染み着いてねぇなぁ」
借り物である以前に自分が身に着けるものに、こんな嫌な匂いが染み着くのは嫌だ。