夢主視点

彼女はウサギだが今泣いたカラスがもう笑ったとでも言うべきか、ルフィに飛びついて噛みついているキャロットにため息を一つ。戦闘力だけはあるとペドロがフォローしているが、戦闘力だけがあっても仕方がないだろう。
とはいえこの船の船長であるルフィが良しと言ったのなら、同盟を組んでいる海賊の船員でしかないシルビにはもう何も言えない。ローだったらもう少し考えるだろうなと思ったところで、鳥の羽音に空を見上げればニュース・クーが新聞を運んできたところだった。
いつの間に登ったのかマスト上の見張り台でペドロがそれを受け取っていて、ブルックがいつの間に登ったのかと驚いている。
ルフィが腹が減ったから誰かメシを作ってくれと言い出すのに、ナミが作ってやるから金を払えと返していた。

「一人五千ベリー払ってね」
「えー！」
「それだけの価値がある料理なんですか？」
「あったり前じゃない。アタシが作るのよ！？ それともアンタが作る？」

作ってもいいのなら作るが、同盟を組んでいるとは言えこの一味の者ではないシルビへ全員の口へ入る料理を作らせるのはどうなのだろうか。もっと警戒しても良いとは思う。少なくともシルビであったなら他人に料理は作らせない。
むしろ食材や調理台すら別にしていいくらいだ。食事というのはどんな生き物でも行なう以上、敵や怪しい人物とのそれは警戒して足りることもない。そういった考えはシルビだけか。
小遣いが無くなるので金は払えないと、ルフィが料理を作ると名乗り出た。それにブルック達が驚いていたところでマストの上からペドロが降りてくる。
その手にはニュース・クーから受け取ったのだろう新聞。

「何か気になる記事はありました？」
「革命軍が壊滅したらしい」
「は？」

差し出された新聞を受け取って目を通す。一面には大見出しとなって『革命軍総本部“発覚”』の文字があった。
急いで詳細へ目を走らせれば、数十年の間不明だとされていた革命軍の総本部が置かれていた島『バルティゴ』が見つかったと書かれている。

「バルティゴがぁ？」
「知ってるのか？」
「何回か行ったことがある」

横で聞いてきたペドロが目を丸くしたがそれには構っていられない。
革命軍の総司令官である『ドラゴン』とは『死告シャイタン』として知り合いだった。その部下である幹部の何人かとも知り合いであるし、ナンバー２であるサボとだってドレスローザで会ったばかりだ。
なのにドレスローザの騒動からすぐに壊滅なんて報を受ければ、誰だって驚くだろう。