ゾウ編
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モモの助視点
「声の主は――この、ゾウでござる!」
「“象主”!?」
頭の中へ響く声が恐ろしい。揺れる地面よりも訳の分からない騒がしさよりもそれが一番恐ろしかった。
ゾウへ到着してからずっとかすかに響いていた声だ。姿の見えない者の、自分以外には聞こえていないようだったその囁きが、怖いと思った。その怖さからくる気分の悪さにルフィの仲間達にも心配されて、錦えもん達の姿に安心して、少しだけその恐怖は薄れたけれど。
それでも怖いものは怖い。まだ幼い自分に出来る事なんて限られているだろうに、“世界”はどんどんモモの助へ色々なものを押しつけてくる。
頭の中へ響く声が怖い。それが助けを求める内容であっても、得体の知れないものを怖がるのは当たり前だ。
自分の視界に映るのもではない光景が見えたところで、肩を掴まれた。
肩を掴んだのはローの仲間のふざけた帽子を被った男で、帽子の陰から紫色の瞳がモモの助を見つめている。苦痛をこらえるように歪んだそれへ、似ているところなど何処も無いというのに母の面影を見た。
面影ではない。誰かを安心させようとするそれだ。
『見えてるでしょう――?』
すぅ、と風が吹いたような息のしやすさを覚える。見えている海の光景を伝えることが出来た。
ジャックの再襲撃と聞いてミンク達が騒ぎ出す。頭の中にはまだ声が響いていて、何を伝えようとしているのかを必死に分かろうとした。
肩を掴んでいる男の腕を掴む。男はもう会話すらままならないとばかりに目を閉じてしまっていたが、モモの助がゾウの言葉を伝えようとすると薄目を開けてモモの助を見守っていた。
「ゾウは大昔に罪をおかし――ただ歩く事しか許されていないのだ。……命令にしたがい続けている……だから」
頭の中で懇願する声が響く。一度だけ命じて欲しいと、『戦え』という言葉をくれと。
「モモ! お前が言え! お前の声なら届く気がする!」
ルフィが怒鳴るのにモモの助は躊躇した。今まで一方的な声しか届いていない。それにこんな大きなゾウを相手に、どんな大声を出せば届くのか。
ジャックの船に撃たれて傷つくゾウの悲鳴が聞こえる。ゾウが倒れたら皆が海の底へ沈んでしまう。そうなったら泳げなくなってしまったモモの助なんて助からないし、泳げてもこんな大海原じゃ。
「――大丈夫」
落ち着いた声がした。男がモモの助を見ている。
「ズニーシャの耳は大きいから、ちゃんと聞いてくれる」
「――っ負けるなゾウ! 倒れてはならぬ! ジャックを追い払ってくれー!」
信じたのはルフィだったか男だったか。モモの助が叫んだ直後、ゾウの短い返事が聞こえた。
『“承知した”』
「声の主は――この、ゾウでござる!」
「“象主”!?」
頭の中へ響く声が恐ろしい。揺れる地面よりも訳の分からない騒がしさよりもそれが一番恐ろしかった。
ゾウへ到着してからずっとかすかに響いていた声だ。姿の見えない者の、自分以外には聞こえていないようだったその囁きが、怖いと思った。その怖さからくる気分の悪さにルフィの仲間達にも心配されて、錦えもん達の姿に安心して、少しだけその恐怖は薄れたけれど。
それでも怖いものは怖い。まだ幼い自分に出来る事なんて限られているだろうに、“世界”はどんどんモモの助へ色々なものを押しつけてくる。
頭の中へ響く声が怖い。それが助けを求める内容であっても、得体の知れないものを怖がるのは当たり前だ。
自分の視界に映るのもではない光景が見えたところで、肩を掴まれた。
肩を掴んだのはローの仲間のふざけた帽子を被った男で、帽子の陰から紫色の瞳がモモの助を見つめている。苦痛をこらえるように歪んだそれへ、似ているところなど何処も無いというのに母の面影を見た。
面影ではない。誰かを安心させようとするそれだ。
『見えてるでしょう――?』
すぅ、と風が吹いたような息のしやすさを覚える。見えている海の光景を伝えることが出来た。
ジャックの再襲撃と聞いてミンク達が騒ぎ出す。頭の中にはまだ声が響いていて、何を伝えようとしているのかを必死に分かろうとした。
肩を掴んでいる男の腕を掴む。男はもう会話すらままならないとばかりに目を閉じてしまっていたが、モモの助がゾウの言葉を伝えようとすると薄目を開けてモモの助を見守っていた。
「ゾウは大昔に罪をおかし――ただ歩く事しか許されていないのだ。……命令にしたがい続けている……だから」
頭の中で懇願する声が響く。一度だけ命じて欲しいと、『戦え』という言葉をくれと。
「モモ! お前が言え! お前の声なら届く気がする!」
ルフィが怒鳴るのにモモの助は躊躇した。今まで一方的な声しか届いていない。それにこんな大きなゾウを相手に、どんな大声を出せば届くのか。
ジャックの船に撃たれて傷つくゾウの悲鳴が聞こえる。ゾウが倒れたら皆が海の底へ沈んでしまう。そうなったら泳げなくなってしまったモモの助なんて助からないし、泳げてもこんな大海原じゃ。
「――大丈夫」
落ち着いた声がした。男がモモの助を見ている。
「ズニーシャの耳は大きいから、ちゃんと聞いてくれる」
「――っ負けるなゾウ! 倒れてはならぬ! ジャックを追い払ってくれー!」
信じたのはルフィだったか男だったか。モモの助が叫んだ直後、ゾウの短い返事が聞こえた。
『“承知した”』