ゾウ編
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夢主視点
仮住居へ戻ってきて放置していた防寒帽を回収する。誰かが洗ってはくれたらしいが血が落ちきっておらず、血の跡が滲んで斑に汚れていた。シルビ自身の血なのかどうかは分からない。
それを持って浴室へと向かえば何故か船長も付いてきた。それぞれの桶へぬるま湯を溜めて帽子を浸けるシルビの傍で、後から置かれたらしい浴槽へと寄りかかる。
濡れていないから今はいいが、間違えてシャワーのコックを捻ったり滑って湯船に落ちたりしたら頭からずぶ濡れだろう。
ぬるま湯に浸けるだけでまだ帽子から血が滲み、湯が赤くなっていく。返り血だけではない。イブリスの血までもが染み込んでいる。イブリスの血とは物質的には何なのか分からないが。
「船長の帽子は、俺の程しっかり洗わなくて良さそうですね」
「血だらけになってる方がおかしいだろ」
「っていうか自分で洗ってもいいんですよ」
「オレは別に気にしてなかった」
淡い赤色に染まりきった桶の湯を捨てた。流れていくそれが素足になっているシルビと船長の足下を濡らす。
「……コラさんは、いつから居たんだ」
水音に紛れるような小さい声に、手を止めて船長を見上げた。見返されている視線にすぐ手元へ顔を戻す。
「貴方が船を降りる前に、俺が声を出せなくなったことがあったでしょう」
「ああ」
「あの時です」
「……。おい待て。そんな素振りは」
「幽霊が増えてますなんて言う訳無ぇでしょう。それに、それ以前にも何度か来てましたし」
ただ、その時は船長と知り合いであるとは知らなかったし、知り合いであると察してもその関係までは分からなかった。愛している子供がいたのだと泣いた彼を、けれどもシルビは他と同じく深く踏み込めなかったのだから。
禍根を遺していたのとは違う。帽子へ染み込んだ血の様に、何かがじわじわと残っていただけである。
船長が濡れた足でシルビの肩を踏み付けてきた。グイと押しやられたせいで持っていた桶からお湯がこぼれる。
弁解をするつもりもない。
「また来るのか」
「どうでしょう」
それはシルビにも分からなかった。
だいぶ血の落ちた防寒帽と、さっぱり綺麗になったであろう船長の帽子を湯の中から出す。滴る水を帽子の形を崩さないように絞り取って、それから指を鳴らして晴の炎を灯し水分を蒸発させた。
防寒帽は漂白剤を使わないとこれ以上綺麗にならないだろうが、船長の帽子は満足のいくフワモコになっている。柔軟剤を使えばもっとフワッフワのモコモコになっていただろうが、どうせ船長はまた汚すに違いない。
立ち上がって浴槽に寄りかかっていた船長の頭へそれを被せる。やはり船長にはこの帽子がなければ。
「うん。イケメン。流石俺の船長」
船長が物凄く何か言いたげな顔をした。
仮住居へ戻ってきて放置していた防寒帽を回収する。誰かが洗ってはくれたらしいが血が落ちきっておらず、血の跡が滲んで斑に汚れていた。シルビ自身の血なのかどうかは分からない。
それを持って浴室へと向かえば何故か船長も付いてきた。それぞれの桶へぬるま湯を溜めて帽子を浸けるシルビの傍で、後から置かれたらしい浴槽へと寄りかかる。
濡れていないから今はいいが、間違えてシャワーのコックを捻ったり滑って湯船に落ちたりしたら頭からずぶ濡れだろう。
ぬるま湯に浸けるだけでまだ帽子から血が滲み、湯が赤くなっていく。返り血だけではない。イブリスの血までもが染み込んでいる。イブリスの血とは物質的には何なのか分からないが。
「船長の帽子は、俺の程しっかり洗わなくて良さそうですね」
「血だらけになってる方がおかしいだろ」
「っていうか自分で洗ってもいいんですよ」
「オレは別に気にしてなかった」
淡い赤色に染まりきった桶の湯を捨てた。流れていくそれが素足になっているシルビと船長の足下を濡らす。
「……コラさんは、いつから居たんだ」
水音に紛れるような小さい声に、手を止めて船長を見上げた。見返されている視線にすぐ手元へ顔を戻す。
「貴方が船を降りる前に、俺が声を出せなくなったことがあったでしょう」
「ああ」
「あの時です」
「……。おい待て。そんな素振りは」
「幽霊が増えてますなんて言う訳無ぇでしょう。それに、それ以前にも何度か来てましたし」
ただ、その時は船長と知り合いであるとは知らなかったし、知り合いであると察してもその関係までは分からなかった。愛している子供がいたのだと泣いた彼を、けれどもシルビは他と同じく深く踏み込めなかったのだから。
禍根を遺していたのとは違う。帽子へ染み込んだ血の様に、何かがじわじわと残っていただけである。
船長が濡れた足でシルビの肩を踏み付けてきた。グイと押しやられたせいで持っていた桶からお湯がこぼれる。
弁解をするつもりもない。
「また来るのか」
「どうでしょう」
それはシルビにも分からなかった。
だいぶ血の落ちた防寒帽と、さっぱり綺麗になったであろう船長の帽子を湯の中から出す。滴る水を帽子の形を崩さないように絞り取って、それから指を鳴らして晴の炎を灯し水分を蒸発させた。
防寒帽は漂白剤を使わないとこれ以上綺麗にならないだろうが、船長の帽子は満足のいくフワモコになっている。柔軟剤を使えばもっとフワッフワのモコモコになっていただろうが、どうせ船長はまた汚すに違いない。
立ち上がって浴槽に寄りかかっていた船長の頭へそれを被せる。やはり船長にはこの帽子がなければ。
「うん。イケメン。流石俺の船長」
船長が物凄く何か言いたげな顔をした。