原作前日常編
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夢主視点
普段は殆ど飲んでいないところをいきなりチャンポンで、更にその後町中を走り回り森を走り回り、海兵を相手に立ち回りという名の逆リンチを行なって、最終的に助ける為とはいえ崖から海への急激な上下移動。人一人を抱えたまま着衣水泳で船まで泳ぎ、更に濡れた服のままシャチを運んで診察の手伝いをして、同時に島から遠ざかる為の指示。
そこまでならシルビもギリギリイケると思っていたが、シャチを探すのに『×××』を使い、更に暗闇で何も見えないシャチに幻覚を掛けて藍色の蝶を認識させ、同時にシャチが崖へ向かうのに通るであろう場所を『×××』で探り、その光景を蝶の明かりによって見えると思わせシャチへ認識させるという荒業を行なっていたら、流石に疲れ果てた。
島から追っ手が来ないだろう距離まで稼いで、クルーに譲られて仮眠をとろうと部屋に戻ったのが三時間前。着ていた服は既に殆ど乾いてしまっていたがそれでも着替えて寝て、起きたら頭痛が酷かったのである。
『×××』を酷使したせいかと思ったが、今回は二日酔いも合わせて起こっているのだろう。だから余計に酷い。
「自棄酒なんてするからだ」
シルビが珍しく二日酔いになっているからと、様子を見に来たローがニヤニヤと笑っている。腹立たしい事この上ない。
「……そうですね。それじゃあ今後の飲み代は自棄酒出来ねぇように大幅カットしましょう」
「職権乱用だ!」
「大声で言わねぇでくださいよ。自分の声でもでかくて響くんですから……」
自作して常備しているクルー用の二日酔いの薬に、更に即効作用と頭痛に効く鎮痛作用を加えて服用する。通常の状態でも『二日酔いになるほど呑むな』という次への反省を込めてわざと苦くしているものだが、即効作用を加えたせいで更に不味い。
グラスの中の水を半分ほど飲んで、グラスを持ったまま寝台の上に座り壁へ寄りかかる。頭を押さえたら手が暖かくて気持ち悪かった。
「シャチはどうですか」
「バンダナが看てる。起きたら言いに来るよう言ってある」
「あの子、自分が医者の集団に弄ばれるだけの患者だと思ってたみてぇなんですけど」
「……あ?」
「貴方ちゃんと『クルーにする』って言いました?」
「船に乗せるならクルーにするも同然だろ」
思わず溜息一つ。これはシルビの教育とかそういうものではないのだろうが、海賊は総じてこういうものなのかとは思ってしまう。それともこの世界では常識なのか。
「眼が覚めたら、ちゃんと言ってあげてください。目を治してぇだけの玩具じゃねぇって」
「言う必要があるのか?」
「え?」
腕を組んで壁に背中を預けていたローがドアを指差す。見ればワカメとシャチが部屋を覗き込んでいた。
やはりまだ嫌われているのかと、ワカメの背中へ隠れているシャチを見ながら思う。
「気分はどうだ?」
「だ、大丈夫、です」
「次からは船に向かって逃げろよ」
「……はい」
シャチの返事を聞いてドヤ顔でシルビを見るローが正直鬱陶しい。あれは昨日の騒ぎがあって、ちゃんと助けに行って、無事に船に乗っているから理解したという事であって、決して誤解していなかったとかそういうことではないのだ。
頭が痛いので普段よりも簡単にイライラしてしまうなと、痛みを逃すように深く息を吐くとシャチが反応していた。ワカメの背後から顔だけを覗かせるシャチは、窺うようにシルビを見ている。
これは船長であるローよりシルビがどうにかしなければいけない問題なのかどうか、盛大に悩みつつ仕方なくシャチを手招いた。遠慮がちに近付いてくるシャチ、というかシルビをローが先程にも増してニヤニヤと眺めているので、二日酔いが治ったら覚えていろと思う。
「シャチ。昨日も言ったがもう一度言うぞぉ。『ただの患者だったら船長も流石に船へ乗せねぇ』んだぁ。眼が悪かろうが泣きべそ掻こうが海に落ちたぐらいで気絶しようが、もうお前はハートのクルーなんだぁ」
「普通はあの高さから海に飛び込んだから気絶するんじゃない?」
「ワカメ煩せぇ。……だから、自分が船長の玩具要員だとか思うのは二度としねぇこと。分かったかぁ?」
「……分かった」
言葉ではちゃんと言った。だから後は、シャチがこの船の上の生活で知っていけばもういい。
普段は殆ど飲んでいないところをいきなりチャンポンで、更にその後町中を走り回り森を走り回り、海兵を相手に立ち回りという名の逆リンチを行なって、最終的に助ける為とはいえ崖から海への急激な上下移動。人一人を抱えたまま着衣水泳で船まで泳ぎ、更に濡れた服のままシャチを運んで診察の手伝いをして、同時に島から遠ざかる為の指示。
そこまでならシルビもギリギリイケると思っていたが、シャチを探すのに『×××』を使い、更に暗闇で何も見えないシャチに幻覚を掛けて藍色の蝶を認識させ、同時にシャチが崖へ向かうのに通るであろう場所を『×××』で探り、その光景を蝶の明かりによって見えると思わせシャチへ認識させるという荒業を行なっていたら、流石に疲れ果てた。
島から追っ手が来ないだろう距離まで稼いで、クルーに譲られて仮眠をとろうと部屋に戻ったのが三時間前。着ていた服は既に殆ど乾いてしまっていたがそれでも着替えて寝て、起きたら頭痛が酷かったのである。
『×××』を酷使したせいかと思ったが、今回は二日酔いも合わせて起こっているのだろう。だから余計に酷い。
「自棄酒なんてするからだ」
シルビが珍しく二日酔いになっているからと、様子を見に来たローがニヤニヤと笑っている。腹立たしい事この上ない。
「……そうですね。それじゃあ今後の飲み代は自棄酒出来ねぇように大幅カットしましょう」
「職権乱用だ!」
「大声で言わねぇでくださいよ。自分の声でもでかくて響くんですから……」
自作して常備しているクルー用の二日酔いの薬に、更に即効作用と頭痛に効く鎮痛作用を加えて服用する。通常の状態でも『二日酔いになるほど呑むな』という次への反省を込めてわざと苦くしているものだが、即効作用を加えたせいで更に不味い。
グラスの中の水を半分ほど飲んで、グラスを持ったまま寝台の上に座り壁へ寄りかかる。頭を押さえたら手が暖かくて気持ち悪かった。
「シャチはどうですか」
「バンダナが看てる。起きたら言いに来るよう言ってある」
「あの子、自分が医者の集団に弄ばれるだけの患者だと思ってたみてぇなんですけど」
「……あ?」
「貴方ちゃんと『クルーにする』って言いました?」
「船に乗せるならクルーにするも同然だろ」
思わず溜息一つ。これはシルビの教育とかそういうものではないのだろうが、海賊は総じてこういうものなのかとは思ってしまう。それともこの世界では常識なのか。
「眼が覚めたら、ちゃんと言ってあげてください。目を治してぇだけの玩具じゃねぇって」
「言う必要があるのか?」
「え?」
腕を組んで壁に背中を預けていたローがドアを指差す。見ればワカメとシャチが部屋を覗き込んでいた。
やはりまだ嫌われているのかと、ワカメの背中へ隠れているシャチを見ながら思う。
「気分はどうだ?」
「だ、大丈夫、です」
「次からは船に向かって逃げろよ」
「……はい」
シャチの返事を聞いてドヤ顔でシルビを見るローが正直鬱陶しい。あれは昨日の騒ぎがあって、ちゃんと助けに行って、無事に船に乗っているから理解したという事であって、決して誤解していなかったとかそういうことではないのだ。
頭が痛いので普段よりも簡単にイライラしてしまうなと、痛みを逃すように深く息を吐くとシャチが反応していた。ワカメの背後から顔だけを覗かせるシャチは、窺うようにシルビを見ている。
これは船長であるローよりシルビがどうにかしなければいけない問題なのかどうか、盛大に悩みつつ仕方なくシャチを手招いた。遠慮がちに近付いてくるシャチ、というかシルビをローが先程にも増してニヤニヤと眺めているので、二日酔いが治ったら覚えていろと思う。
「シャチ。昨日も言ったがもう一度言うぞぉ。『ただの患者だったら船長も流石に船へ乗せねぇ』んだぁ。眼が悪かろうが泣きべそ掻こうが海に落ちたぐらいで気絶しようが、もうお前はハートのクルーなんだぁ」
「普通はあの高さから海に飛び込んだから気絶するんじゃない?」
「ワカメ煩せぇ。……だから、自分が船長の玩具要員だとか思うのは二度としねぇこと。分かったかぁ?」
「……分かった」
言葉ではちゃんと言った。だから後は、シャチがこの船の上の生活で知っていけばもういい。