ゾウ編
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夢主視点
改めて実体化してくれた“イブリス”は言っていた通り、再び出てくると両腕も足も元通りになっていた。元がシルビのシャドウであって人ではない為、変に治療などは必要無いのだろう。まさかそれが分かっていて三肢欠損なんて手段を受け入れたのではとも思ったが、真相は謎である。
その“イブリス”に『死告シャイタン』の格好をしてもらい、出来るだけ人目のある場所へ転移してくれと言ったら、出た先は船長と再会したばっかりのハートの皆の前。
流石にいきなり過ぎる場面に出くわして、言葉を探している間に“イブリス”はさっさとシルビとバンダナを降ろし少し話すと消えてしまった。相変わらず統一されない口調に、シルビの精神はそんなに統一されていないのかと思う。
消えた『シャイタン』こと“イブリス”を気に掛ける振りをしながら立ち上がり、覚悟を決めて振り返る。
「――おかえりなさい。船長」
五体満足なシルビの姿と、『シャイタン』と同時に現れたシルビの姿とにそれぞれ驚いている船長達へ、こっそりガッツポーズをすると呆れた視線をバンダナから向けられた。
だがもう舞台の上に立ったのだ。
「ペ、ペペペペペペペペペペペペペンギンンンンンンンン!?」
そんなにぺもンも無い。
「ペンギン目覚めたの!? っていうか腕ある! 腕!?」
「足もあるじゃん! ナンデ!?」
「つか今のダレ?」
「ウチの子つってなかった?」
「それより腕! 腕取れたじゃん! なんで腕あるの!? 腕生えたの!?」
いい感じに混乱してくれているクルー達に、とりあえずシルビは笑いかける。
それからゆっくりと船長へと歩み寄って、船長が抵抗する前にその腹部へ両腕を回した。
ドレスローザを出た夜の様に抱きつきたかった、訳ではない。いやスキンシップは好きだが今はそのつもりではなかった。
そのまま腕を強く締め上げる。
「ぐっ――テメッ――やめろ!」
「ス、ストップペンギンストップ! キャプテン死んじゃう!」
「なんでサバ折り!?」
ワカメがそんなツッコミを入れてきたが正確にはサバ折りではない。サバ折りは相手に上からのしかかるようにして膝を突かせる技だが、シルビと船長では身長差の問題でサバ折りは出来ないのだ。
よってこれはサバ折りではない。ベアハッグである。
「ペンギン……やめろ」
「――『もし負けたなら』」
苦しげに呻く船長へ向けて、ドレスローザで聞いた言葉を呟いた。
「もし負けたなら、ここで死ぬべきだと? ――ふふ、笑わせる」
締め付ける腕へ更に力を込める。
ベアハッグが効いたのか喋る気力も失ったらしい船長が降参だとばかりに腕を叩くのに、シルビはそこでようやく船長を解放する。腹部を押さえて前屈みになる船長へ、指を突きつけた。
「シャイタンのヤツから聞きましたけど、そんな事を言ってたらしいですねぇ? あれだけ人が無事に帰ってこいと言ったのを忘れましたか? それとも俺の言葉など貴方には些細なことだとでも? まぁ生きて帰ってきてくれたので結果から見れば無事に帰ってきたのかもしれません。お帰りなさい船長。だが許さねぇ」
シルビの勢いに飲まれてシャチ達は何も言えないでいる。そのまま黙って勢いに飲まれ先程の事も忘れてくれたらいいが、流石にそれは無理だろう。
だが、こうして論点を船長へ向けることで自分の落ち度に対する評価を少しでも良くするのが今の目的である。
「俺はちゃんとハートの皆を守ったつもりですよ。まぁ、多少は怪我もしましたが重傷は誰も負ってねぇ。なのに船長は帰ってくる気すら本当は無かったとか」
「いやペンギン重傷だったじゃん」
「イルカ。俺はハートを守れとは言われたが俺を守れとは言われてねぇんだよ。つまり俺はちゃんと命令を守った」
「詭弁だ!」
「ええ詭弁です」
数日前にもこんな会話をした気がした。
「現に少し危なかったかも知れません。でも現状俺は無事でした。つまりシャイタンのヤツは貴方へ俺を叱る権利をやると言っていましたが俺は貴方へ叱られる理由が無ぇ!」
数人が勢いに釣られてなるほどと納得しかけていた。それからジャンバールが不思議そうに口を開く。
「シャイタンのヤツというのは、あの『死告シャイタン』のことか?」
「! そうだペンギン! 死告屋は――」
その言葉を待っていた。
「シャイタンは俺の知り合いです」
死告屋こと『死告シャイタン』はお前だろう、と言おうとしたのだろう船長がポカンとしている。ついでにシャチもサングラス越しに目を丸くしていた。
「こんな場所で言うつもりはありませんでしたけれどねぇ。シャイタンは俺の祖先の兄。つまり広義で言えばアレは俺の親戚なんです。こんな若造が故郷じゃ相談役なんて立場を持ってることを変だと思いませんでしたか? アレと血が繋がっているから、だから俺は幼少期から故郷で相談役という立場を持っていたんですよ」
使えそうなネタは何でも使う。それから船長達が確認しようのないネタもだ。
「たまたま近くに来たというので会いに来て、俺のことを治していったんです」
思うところがあるように、治療した後だと誤魔化す為に包帯を厳重に巻いてきた両腕を見下ろす。実際は何とも思っていない。
思う事があるとしたら、“イブリス”ではなくシルビがこの両腕を失う状況に遭遇したらちゃんと失えるのかということくらいだ。
だがその答えも分かっているので愚問である。
改めて実体化してくれた“イブリス”は言っていた通り、再び出てくると両腕も足も元通りになっていた。元がシルビのシャドウであって人ではない為、変に治療などは必要無いのだろう。まさかそれが分かっていて三肢欠損なんて手段を受け入れたのではとも思ったが、真相は謎である。
その“イブリス”に『死告シャイタン』の格好をしてもらい、出来るだけ人目のある場所へ転移してくれと言ったら、出た先は船長と再会したばっかりのハートの皆の前。
流石にいきなり過ぎる場面に出くわして、言葉を探している間に“イブリス”はさっさとシルビとバンダナを降ろし少し話すと消えてしまった。相変わらず統一されない口調に、シルビの精神はそんなに統一されていないのかと思う。
消えた『シャイタン』こと“イブリス”を気に掛ける振りをしながら立ち上がり、覚悟を決めて振り返る。
「――おかえりなさい。船長」
五体満足なシルビの姿と、『シャイタン』と同時に現れたシルビの姿とにそれぞれ驚いている船長達へ、こっそりガッツポーズをすると呆れた視線をバンダナから向けられた。
だがもう舞台の上に立ったのだ。
「ペ、ペペペペペペペペペペペペペンギンンンンンンンン!?」
そんなにぺもンも無い。
「ペンギン目覚めたの!? っていうか腕ある! 腕!?」
「足もあるじゃん! ナンデ!?」
「つか今のダレ?」
「ウチの子つってなかった?」
「それより腕! 腕取れたじゃん! なんで腕あるの!? 腕生えたの!?」
いい感じに混乱してくれているクルー達に、とりあえずシルビは笑いかける。
それからゆっくりと船長へと歩み寄って、船長が抵抗する前にその腹部へ両腕を回した。
ドレスローザを出た夜の様に抱きつきたかった、訳ではない。いやスキンシップは好きだが今はそのつもりではなかった。
そのまま腕を強く締め上げる。
「ぐっ――テメッ――やめろ!」
「ス、ストップペンギンストップ! キャプテン死んじゃう!」
「なんでサバ折り!?」
ワカメがそんなツッコミを入れてきたが正確にはサバ折りではない。サバ折りは相手に上からのしかかるようにして膝を突かせる技だが、シルビと船長では身長差の問題でサバ折りは出来ないのだ。
よってこれはサバ折りではない。ベアハッグである。
「ペンギン……やめろ」
「――『もし負けたなら』」
苦しげに呻く船長へ向けて、ドレスローザで聞いた言葉を呟いた。
「もし負けたなら、ここで死ぬべきだと? ――ふふ、笑わせる」
締め付ける腕へ更に力を込める。
ベアハッグが効いたのか喋る気力も失ったらしい船長が降参だとばかりに腕を叩くのに、シルビはそこでようやく船長を解放する。腹部を押さえて前屈みになる船長へ、指を突きつけた。
「シャイタンのヤツから聞きましたけど、そんな事を言ってたらしいですねぇ? あれだけ人が無事に帰ってこいと言ったのを忘れましたか? それとも俺の言葉など貴方には些細なことだとでも? まぁ生きて帰ってきてくれたので結果から見れば無事に帰ってきたのかもしれません。お帰りなさい船長。だが許さねぇ」
シルビの勢いに飲まれてシャチ達は何も言えないでいる。そのまま黙って勢いに飲まれ先程の事も忘れてくれたらいいが、流石にそれは無理だろう。
だが、こうして論点を船長へ向けることで自分の落ち度に対する評価を少しでも良くするのが今の目的である。
「俺はちゃんとハートの皆を守ったつもりですよ。まぁ、多少は怪我もしましたが重傷は誰も負ってねぇ。なのに船長は帰ってくる気すら本当は無かったとか」
「いやペンギン重傷だったじゃん」
「イルカ。俺はハートを守れとは言われたが俺を守れとは言われてねぇんだよ。つまり俺はちゃんと命令を守った」
「詭弁だ!」
「ええ詭弁です」
数日前にもこんな会話をした気がした。
「現に少し危なかったかも知れません。でも現状俺は無事でした。つまりシャイタンのヤツは貴方へ俺を叱る権利をやると言っていましたが俺は貴方へ叱られる理由が無ぇ!」
数人が勢いに釣られてなるほどと納得しかけていた。それからジャンバールが不思議そうに口を開く。
「シャイタンのヤツというのは、あの『死告シャイタン』のことか?」
「! そうだペンギン! 死告屋は――」
その言葉を待っていた。
「シャイタンは俺の知り合いです」
死告屋こと『死告シャイタン』はお前だろう、と言おうとしたのだろう船長がポカンとしている。ついでにシャチもサングラス越しに目を丸くしていた。
「こんな場所で言うつもりはありませんでしたけれどねぇ。シャイタンは俺の祖先の兄。つまり広義で言えばアレは俺の親戚なんです。こんな若造が故郷じゃ相談役なんて立場を持ってることを変だと思いませんでしたか? アレと血が繋がっているから、だから俺は幼少期から故郷で相談役という立場を持っていたんですよ」
使えそうなネタは何でも使う。それから船長達が確認しようのないネタもだ。
「たまたま近くに来たというので会いに来て、俺のことを治していったんです」
思うところがあるように、治療した後だと誤魔化す為に包帯を厳重に巻いてきた両腕を見下ろす。実際は何とも思っていない。
思う事があるとしたら、“イブリス”ではなくシルビがこの両腕を失う状況に遭遇したらちゃんと失えるのかということくらいだ。
だがその答えも分かっているので愚問である。