ドレスローザ編
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ロー視点
ワカメをハートの船へ乗せてすぐのことだったか。ペンギンが甲板で大きな海鳥を近くに留まらせているのを見たことがあった。
普通であれば海鳥は人間慣れしていなければ船へ留まりはしない。島に近い海域でなく、海原の真ん中なら尚更である。とはいえ渡り鳥も羽を休めに留まることもあるので、珍しいことではあってもあり得ないことではなかった。
更に言うならローがそれを気にしたのは珍しいからではなく、ワカメのことがあったからである。
ワカメはペンギン曰く『鳥使いの一族の末裔』らしい。鳥の言葉を理解し鳥に命令を聞かせる。そういう事が出来る一族の末裔であるもののワカメ本人にその力はなく、ワカメよりも妹の方がその能力は顕著だった。
ワカメをハートのクルーへする際にあった騒動でローもその能力の事を知り、だから甲板へ海鳥と一緒にいたペンギンへ言ったのである。
『妹の刺客か?』
ローとしては冗談だった。
『まさか。お詫びの来訪ですよ』
だからペンギンのその返しも、冗談だと思ったのである。
ローの視線の先では、船を背に乗せている海王類の頭の上で麦藁屋と並んで座って談笑しているペンギンの姿。とはいえその見た目は黒い外套で全身を隠した『死告シャイタン』のそれだ。
前にドレスローザで二人きりで話した時には、ロー達がドレスローザを出港したら先にゾウへ戻ると言っていた気がするのだが、それが戻らなかったのはこの船に航海士が乗っていないと聞いたからだったのだろう。ペンギンが居なければ雹の雨を越えるのにもっと時間が掛かっていた。
そうして海王類を呼んで、この船が無事にゾウへ着けるように手助けをしている。
月日は経ってローはベポを拾い、ペンギンとも長い海上生活を一緒に送ってきた。それらを思い返せばペンギンは、ベポの言いたい事を理解したり海王類を呼び寄せたりなんて事をごく普通にやっていた気がする。
つまり、ペンギンは動物や海王類の言葉を理解して命令をすることも出来るのだ。
ワカメのように鳥限定ではない。いや、ワカメはあまり鳥使いとしての能力が顕現化していないのだから、ワカメよりも能力としては格段に上だ。誰がまさか海王類まで呼べると思うのか。
しかも呼んだ海王類を捕まえて食べた覚えがあるのだが、その辺りの論理はペンギンの中でどうなっているのかも不明である。
今更になって気付いたその事実に、ローとしては『死告シャイタン』という肩書きについてより、それらを含めた未だ隠している事に付いての言及はしたかった。
メシの用意が出来たという声に、麦藁屋が海王類の頭の上から腕を伸ばして船の上へと戻ってくる。腕が縮む反動を利用して船内へまで飛び込んでいく麦藁屋とは逆にのんびりと戻ってきて船縁の上へ着地したペンギンは、ローの視線へ気付いたかと思うと船縁から降りてローの傍へとやってきた。
「どうしました船長?」
『船長』呼びをするということは、周囲にロー達の会話を聞いている者はいないということか。
「海王類」
「ぁ……その」
「怒ってる訳じゃない」
ペンギンが何か言おうとするのを遮って先に言えば、ペンギンはあからさまに安堵したような雰囲気になる。
何となく分かってきた話だが、ペンギンは自身が『死告シャイタン』という正体を持っていることや能力のことなどを、ローやハートのクルー達へ知られるのを異常なまでに怖がっているようだった。そのくせ能力を使うタイミングは躊躇せず出し惜しみはしない。少なくともローには躊躇している様には見えなかった。
ペンギンの故郷へ行った時もそうだったと言える。国の相談役であった事も『死ぬ気の炎』のことも、あの島へ行くまでは言わなかった。きっとあの島で騒動が起きなければペンギンは今でも言っていなかったかも知れない。
そういった自分へ関わることを他者へ告げることに怯える。ローが今までに何度も見てきた『怯え』はそこからきていたのだろう。
「呼べるのは海王類だけか?」
「言った方がいいですか? それぇ」
「嫌ならいい」
「あー、その、多分、何でも呼べます」
「多分?」
「必要がなけりゃ行使しねぇっていうか、あんまり自分の能力について深く考えたこと無ぇんです。考えたら嫌になるっていうか」
筋金入りの自己嫌悪だろうか。ペンギンが困ったように微笑む。
「普通の『人間』じゃ出来ねぇ筈のことですし」
悪魔の実を食った能力者であるローや他の奴等よりも格段に実力をもっているくせに、今更そんな事を言うのかと。普通かどうかでいうのなら、おそらくペンギンはローと初めて出会った瞬間から普通ではなかった。
あの薬の扱い、知識、海賊と名乗ったローへの対応。戦闘慣れした動きや人間関係。そういったものがもう普通ではないと言えるだろうに、ペンギンは。
そこまで考えて何となく思い浮かんだ。
「ペンギン」
「何です」
「お前が『人間じゃなくても』オレは構わない」
ペンギンがフードの下で目を見開く。ぎこちなく揺れる身体に動揺しているのがありありと分かった。
ワカメをハートの船へ乗せてすぐのことだったか。ペンギンが甲板で大きな海鳥を近くに留まらせているのを見たことがあった。
普通であれば海鳥は人間慣れしていなければ船へ留まりはしない。島に近い海域でなく、海原の真ん中なら尚更である。とはいえ渡り鳥も羽を休めに留まることもあるので、珍しいことではあってもあり得ないことではなかった。
更に言うならローがそれを気にしたのは珍しいからではなく、ワカメのことがあったからである。
ワカメはペンギン曰く『鳥使いの一族の末裔』らしい。鳥の言葉を理解し鳥に命令を聞かせる。そういう事が出来る一族の末裔であるもののワカメ本人にその力はなく、ワカメよりも妹の方がその能力は顕著だった。
ワカメをハートのクルーへする際にあった騒動でローもその能力の事を知り、だから甲板へ海鳥と一緒にいたペンギンへ言ったのである。
『妹の刺客か?』
ローとしては冗談だった。
『まさか。お詫びの来訪ですよ』
だからペンギンのその返しも、冗談だと思ったのである。
ローの視線の先では、船を背に乗せている海王類の頭の上で麦藁屋と並んで座って談笑しているペンギンの姿。とはいえその見た目は黒い外套で全身を隠した『死告シャイタン』のそれだ。
前にドレスローザで二人きりで話した時には、ロー達がドレスローザを出港したら先にゾウへ戻ると言っていた気がするのだが、それが戻らなかったのはこの船に航海士が乗っていないと聞いたからだったのだろう。ペンギンが居なければ雹の雨を越えるのにもっと時間が掛かっていた。
そうして海王類を呼んで、この船が無事にゾウへ着けるように手助けをしている。
月日は経ってローはベポを拾い、ペンギンとも長い海上生活を一緒に送ってきた。それらを思い返せばペンギンは、ベポの言いたい事を理解したり海王類を呼び寄せたりなんて事をごく普通にやっていた気がする。
つまり、ペンギンは動物や海王類の言葉を理解して命令をすることも出来るのだ。
ワカメのように鳥限定ではない。いや、ワカメはあまり鳥使いとしての能力が顕現化していないのだから、ワカメよりも能力としては格段に上だ。誰がまさか海王類まで呼べると思うのか。
しかも呼んだ海王類を捕まえて食べた覚えがあるのだが、その辺りの論理はペンギンの中でどうなっているのかも不明である。
今更になって気付いたその事実に、ローとしては『死告シャイタン』という肩書きについてより、それらを含めた未だ隠している事に付いての言及はしたかった。
メシの用意が出来たという声に、麦藁屋が海王類の頭の上から腕を伸ばして船の上へと戻ってくる。腕が縮む反動を利用して船内へまで飛び込んでいく麦藁屋とは逆にのんびりと戻ってきて船縁の上へ着地したペンギンは、ローの視線へ気付いたかと思うと船縁から降りてローの傍へとやってきた。
「どうしました船長?」
『船長』呼びをするということは、周囲にロー達の会話を聞いている者はいないということか。
「海王類」
「ぁ……その」
「怒ってる訳じゃない」
ペンギンが何か言おうとするのを遮って先に言えば、ペンギンはあからさまに安堵したような雰囲気になる。
何となく分かってきた話だが、ペンギンは自身が『死告シャイタン』という正体を持っていることや能力のことなどを、ローやハートのクルー達へ知られるのを異常なまでに怖がっているようだった。そのくせ能力を使うタイミングは躊躇せず出し惜しみはしない。少なくともローには躊躇している様には見えなかった。
ペンギンの故郷へ行った時もそうだったと言える。国の相談役であった事も『死ぬ気の炎』のことも、あの島へ行くまでは言わなかった。きっとあの島で騒動が起きなければペンギンは今でも言っていなかったかも知れない。
そういった自分へ関わることを他者へ告げることに怯える。ローが今までに何度も見てきた『怯え』はそこからきていたのだろう。
「呼べるのは海王類だけか?」
「言った方がいいですか? それぇ」
「嫌ならいい」
「あー、その、多分、何でも呼べます」
「多分?」
「必要がなけりゃ行使しねぇっていうか、あんまり自分の能力について深く考えたこと無ぇんです。考えたら嫌になるっていうか」
筋金入りの自己嫌悪だろうか。ペンギンが困ったように微笑む。
「普通の『人間』じゃ出来ねぇ筈のことですし」
悪魔の実を食った能力者であるローや他の奴等よりも格段に実力をもっているくせに、今更そんな事を言うのかと。普通かどうかでいうのなら、おそらくペンギンはローと初めて出会った瞬間から普通ではなかった。
あの薬の扱い、知識、海賊と名乗ったローへの対応。戦闘慣れした動きや人間関係。そういったものがもう普通ではないと言えるだろうに、ペンギンは。
そこまで考えて何となく思い浮かんだ。
「ペンギン」
「何です」
「お前が『人間じゃなくても』オレは構わない」
ペンギンがフードの下で目を見開く。ぎこちなく揺れる身体に動揺しているのがありありと分かった。