ドレスローザ編
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夢主視点
いつになっても終わりそうになかった宴が終わり、日が落ちた濃い藍色の空を船尾の船縁へ寄りかかって座りながら見上げた。宴から持ってきた料理と酒はとっくの昔に温くなっていて、傍らに置いたランタンを点けようか悩む。
宴の会場になっているであろう甲板の方も、流石に殆どの者が寝落ちや酔い潰れて泥酔しているだろう。ハートの船であったならその片付けに動いている頃だが、この船はハートの船ではない。
ずっと杖の代わりにしていた棍棒からランタンを外し、用済みになった棍棒を立ち上がって海へ放り捨てる。僅かな星の明かりを反射している海面を眺めていると、背後から堅い足音がした。
振り返れば、煙草へ火を点けながらロシナンテが歩いてくるところで。
「もう、いいんですか?」
努めて何も思っていない風を装いながら問えば、紫煙を吐き出したロシナンテはシルビの前で立ち止まってシルビを見下ろした。
「もう充分だ」
ロシナンテの姿がほのかに光へ溶ける。吐き出した紫煙と同じように空気へ溶けてしまいそうな彼に、シルビはそれ以上かける言葉を見つけられなかった。
ほの青い光をまき散らしながら蝶が一匹、何処からともなくやってきてシルビとロシナンテの周りを飛び回る。俯いているシルビを心配するように数回肩の辺りへ止まり掛けたそれはしかし、シルビが顔を上げることはないと諦めてか、ロシナンテの肩へと留まって羽を休めた。
死者と生者の壁は厚い。その壁にある扉を守る『兄』もシルビには遠かった。
だからシルビには最後までロシナンテを見送ることは出来ない。千年どころかもっと昔から分かり切っていたそれに、シルビは言葉を飲み込んでロシナンテを見上げた。
ロシナンテは相変わらず笑顔のようなメイクをしていて、そのメイクにはそぐわない優しい笑みを浮かべている。それはローやセンゴクへ向けるべきだ。
青い蝶が舞い上がる。
苦笑しながら伸ばされたロシナンテの指先がシルビの頬を擦るのに、シルビはぎこちなく笑みを浮かべる努力をしてランタンへ明かりを点けた。
「貴方の『心』は、ずっとハートの船へ乗せておいてくれますか」
前にも言った言葉を繰り返す。
堅い足音がして第三者の気配がした。ロシナンテの手がシルビの頬を透けて、ロシナンテが振り返った先に長刀を持ったローが呆然と立っているのが見える。
信じられないものを、信じられない光景を目にしているかのようなローの態度にシルビは周囲を飛んでいた青い蝶を視線だけで見上げた。蝶は何食わぬ態度で飛び続けている。
「コ――コラさん?」
戦慄いた唇から漏れたその声に、シルビはランタンの明かりを細めた。
いつになっても終わりそうになかった宴が終わり、日が落ちた濃い藍色の空を船尾の船縁へ寄りかかって座りながら見上げた。宴から持ってきた料理と酒はとっくの昔に温くなっていて、傍らに置いたランタンを点けようか悩む。
宴の会場になっているであろう甲板の方も、流石に殆どの者が寝落ちや酔い潰れて泥酔しているだろう。ハートの船であったならその片付けに動いている頃だが、この船はハートの船ではない。
ずっと杖の代わりにしていた棍棒からランタンを外し、用済みになった棍棒を立ち上がって海へ放り捨てる。僅かな星の明かりを反射している海面を眺めていると、背後から堅い足音がした。
振り返れば、煙草へ火を点けながらロシナンテが歩いてくるところで。
「もう、いいんですか?」
努めて何も思っていない風を装いながら問えば、紫煙を吐き出したロシナンテはシルビの前で立ち止まってシルビを見下ろした。
「もう充分だ」
ロシナンテの姿がほのかに光へ溶ける。吐き出した紫煙と同じように空気へ溶けてしまいそうな彼に、シルビはそれ以上かける言葉を見つけられなかった。
ほの青い光をまき散らしながら蝶が一匹、何処からともなくやってきてシルビとロシナンテの周りを飛び回る。俯いているシルビを心配するように数回肩の辺りへ止まり掛けたそれはしかし、シルビが顔を上げることはないと諦めてか、ロシナンテの肩へと留まって羽を休めた。
死者と生者の壁は厚い。その壁にある扉を守る『兄』もシルビには遠かった。
だからシルビには最後までロシナンテを見送ることは出来ない。千年どころかもっと昔から分かり切っていたそれに、シルビは言葉を飲み込んでロシナンテを見上げた。
ロシナンテは相変わらず笑顔のようなメイクをしていて、そのメイクにはそぐわない優しい笑みを浮かべている。それはローやセンゴクへ向けるべきだ。
青い蝶が舞い上がる。
苦笑しながら伸ばされたロシナンテの指先がシルビの頬を擦るのに、シルビはぎこちなく笑みを浮かべる努力をしてランタンへ明かりを点けた。
「貴方の『心』は、ずっとハートの船へ乗せておいてくれますか」
前にも言った言葉を繰り返す。
堅い足音がして第三者の気配がした。ロシナンテの手がシルビの頬を透けて、ロシナンテが振り返った先に長刀を持ったローが呆然と立っているのが見える。
信じられないものを、信じられない光景を目にしているかのようなローの態度にシルビは周囲を飛んでいた青い蝶を視線だけで見上げた。蝶は何食わぬ態度で飛び続けている。
「コ――コラさん?」
戦慄いた唇から漏れたその声に、シルビはランタンの明かりを細めた。