原作前日常編
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少年視点
発光というより自ら燃えている蝶は、不思議とシャチの眼でも良く見えた。その蝶の周りも明るく照らされているから、何かに躓いて転ぶ事も無い。
何で見えるんだろうとか、この蝶は悪魔の実の能力みたいなものなんだろうかと思う。だとしたらペンギンは何かの能力者だ。それなら一人で海兵を片付けに行ったのも説明がつく。
森を抜けた先は切り立った崖になっており、既に日も沈んでしまっている。もしかしたらまだ日の光はあったのかもしれないが、シャチの眼では見えない。
蝶の明かりも届かない場所はシャチにとって、ただの暗闇でしかなかった。一歩先に地面があるのかも、遠くの水平線も何も見えない。
背筋を冷たいものが落ちる。本当にここで良かったのか分からなかった。
けれども蝶はそんなシャチの不安を他所に、燃え尽きるように消えてしまう。そうなると当然のようにシャチの視界には何も見えなくなり、ただ波の音と夜行性の鳥の鳴き声や、風で揺れる木の葉の音しか聞こえなくなる。
今なら海兵の声だったとしても聞こえたらその方向へ走っていけそうだ。その後のことを考えるとそれは非常にまずいのだけれど、暗いのと怖いのとでシャチはその場から動けなくなった。
ペンギンはここで待っていろと言っていたけれど、もしも来てくれなかったら。
足元で砂利が鳴る。それに俯いたところで何かが風を切る音がした。
風を切る音に続いて何かが割れる音がして、空がいきなり明るくなる。
唐突過ぎるそれに明順応が追いつかなくて眼が痛い。思わず両手で顔を覆えば、目が刺激に耐えられなかったのか涙が出ていた。
崖下の海で、波の音に紛れて違う音がする。手を離して涙で滲む目をそちらへ向ければ、潜水艦の甲板が先程の明るさの余韻で少しだけ見えた。
「……ハートの」
再び見えなくなってしまったけれどそれが見えた場所を凝視する。眼が痛いなんて言っていられない。もう一度眩しくてもいいから明かりが欲しくて、足を踏み出す。
と、身体が沈んだ。
「え……っ」
背後の茂みが揺れる音がしたが振り返る余裕が無い。崖から落ちたんだと脳が理解した時には、混乱で自分が叫んでいるのかどうかも分からなかった。
自分が上を向いているのかも下を向いているのかも分からず、落ちているのは分かるけれどもその先が岩場なのか海なのかも分からない。
暗闇や太陽の眩しさよりも怖い、と思った時、腕を掴まれた。
「崖から落ちろとは言ってねぇ」
ペンギンの落ちているのに落ち着いた声。
直後シャチは全身が水に漬かる感覚に気を失った。
発光というより自ら燃えている蝶は、不思議とシャチの眼でも良く見えた。その蝶の周りも明るく照らされているから、何かに躓いて転ぶ事も無い。
何で見えるんだろうとか、この蝶は悪魔の実の能力みたいなものなんだろうかと思う。だとしたらペンギンは何かの能力者だ。それなら一人で海兵を片付けに行ったのも説明がつく。
森を抜けた先は切り立った崖になっており、既に日も沈んでしまっている。もしかしたらまだ日の光はあったのかもしれないが、シャチの眼では見えない。
蝶の明かりも届かない場所はシャチにとって、ただの暗闇でしかなかった。一歩先に地面があるのかも、遠くの水平線も何も見えない。
背筋を冷たいものが落ちる。本当にここで良かったのか分からなかった。
けれども蝶はそんなシャチの不安を他所に、燃え尽きるように消えてしまう。そうなると当然のようにシャチの視界には何も見えなくなり、ただ波の音と夜行性の鳥の鳴き声や、風で揺れる木の葉の音しか聞こえなくなる。
今なら海兵の声だったとしても聞こえたらその方向へ走っていけそうだ。その後のことを考えるとそれは非常にまずいのだけれど、暗いのと怖いのとでシャチはその場から動けなくなった。
ペンギンはここで待っていろと言っていたけれど、もしも来てくれなかったら。
足元で砂利が鳴る。それに俯いたところで何かが風を切る音がした。
風を切る音に続いて何かが割れる音がして、空がいきなり明るくなる。
唐突過ぎるそれに明順応が追いつかなくて眼が痛い。思わず両手で顔を覆えば、目が刺激に耐えられなかったのか涙が出ていた。
崖下の海で、波の音に紛れて違う音がする。手を離して涙で滲む目をそちらへ向ければ、潜水艦の甲板が先程の明るさの余韻で少しだけ見えた。
「……ハートの」
再び見えなくなってしまったけれどそれが見えた場所を凝視する。眼が痛いなんて言っていられない。もう一度眩しくてもいいから明かりが欲しくて、足を踏み出す。
と、身体が沈んだ。
「え……っ」
背後の茂みが揺れる音がしたが振り返る余裕が無い。崖から落ちたんだと脳が理解した時には、混乱で自分が叫んでいるのかどうかも分からなかった。
自分が上を向いているのかも下を向いているのかも分からず、落ちているのは分かるけれどもその先が岩場なのか海なのかも分からない。
暗闇や太陽の眩しさよりも怖い、と思った時、腕を掴まれた。
「崖から落ちろとは言ってねぇ」
ペンギンの落ちているのに落ち着いた声。
直後シャチは全身が水に漬かる感覚に気を失った。