ドレスローザ編
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夢主視点
騒動が終わって二日目の夜。まだルフィは目覚めず、けれども海軍がルフィ達を捕まえる動きはない。
珍しく正しい使い方をしたランタンの明かりを頼りに、シルビはドレスローザ南海岸へ停められていた軍艦へと忍び込んだ。見張りやまだ起きている海兵を『霧の炎』でやり過ごし、船底にほど近い船室を改造して作られていた牢屋の前に立つ。
鎖で雁字搦めにされたその体躯はしかし、もうある程度の回復はしているのだろう。少なくとも手当はされている。
「――それは寝た振りかぁ? それとも本気で寝てる?」
「……フッフッフ。こんな時間に来るたぁな」
両手両足を拘束され碌に動くことも出来ないだろうドフラミンゴは、夜の、薄暗い船室の中だというのにシルビが直して掛けさせたサングラスを変わらず掛けていた。
近くにあった木箱へ腰を下ろして足を組む。
「俺の言葉を覚えてるかどうかだけ訊きにきたんだぁ」
ドフラミンゴは何も言わない。
「俺は君に『まだ愛されている』と言った。この状況に及んで何をふざけたことを思っていたかも知れねぇけど、そればかりは事実なんだぁ」
「笑える話だなァ」
「誰が、とは訊かねぇの」
「聞いてどうする」
波の音が響いている。海兵達の見回りはまだ来ない。
シルビが幻覚を掛けて止めているのだから来る筈がないのだけれど。
鉄格子越しにドフラミンゴを見やれば、大の字に寝そべっているドフラミンゴの傍らに膝を抱えてロシナンテが座っている。シルビが来てからもその視線はずっとドフラミンゴへ向けられていて、泣いているのかどうかは暗くて分からなかった。
兄を止めようとしても、凶暴だと評しても、それでもロシナンテはドフラミンゴを殺せなかったのだ。そうして殺されてからも、未だに兄のことを想っている。
「ドンキホーテ・ドフラミンゴ。俺は別に君が嫌いではねぇよ」
「……フフフ」
「でも実の弟を殺した事に関しては、やっぱり許せそうにもねぇ。彼はずっと君のことも考えていた。君を兄として愛してたから、君を止めようとしていたんだろぉ」
海兵の声が聞こえた。幻覚が切れた訳ではないだろう。だがそろそろ潮時かと木箱から立ち上がる。
鉄格子の向こうから、小さく鎖のこすれる音がした。
「……シャイタン」
「なに?」
「オレは今更変われねえ」
「うん」
「だからロシーに伝えろ。『オレを気にするくらいならローでも気にしてろ』」
ドフラミンゴはシルビを見ていない。見ているのは見えない筈のロシナンテがいる場所だ。ロシナンテはボタボタと涙を流していて、その涙は落ちてもドフラミンゴに触れることすらない。
それでもドフラミンゴが、何かを拭うように指を動かした。
ロシナンテが鼻を啜りながら涙を拭って立ち上がる。そうして鉄格子をすり抜けて出てくるのに手を繋いで、牢屋へと背を向けた。
騒動が終わって二日目の夜。まだルフィは目覚めず、けれども海軍がルフィ達を捕まえる動きはない。
珍しく正しい使い方をしたランタンの明かりを頼りに、シルビはドレスローザ南海岸へ停められていた軍艦へと忍び込んだ。見張りやまだ起きている海兵を『霧の炎』でやり過ごし、船底にほど近い船室を改造して作られていた牢屋の前に立つ。
鎖で雁字搦めにされたその体躯はしかし、もうある程度の回復はしているのだろう。少なくとも手当はされている。
「――それは寝た振りかぁ? それとも本気で寝てる?」
「……フッフッフ。こんな時間に来るたぁな」
両手両足を拘束され碌に動くことも出来ないだろうドフラミンゴは、夜の、薄暗い船室の中だというのにシルビが直して掛けさせたサングラスを変わらず掛けていた。
近くにあった木箱へ腰を下ろして足を組む。
「俺の言葉を覚えてるかどうかだけ訊きにきたんだぁ」
ドフラミンゴは何も言わない。
「俺は君に『まだ愛されている』と言った。この状況に及んで何をふざけたことを思っていたかも知れねぇけど、そればかりは事実なんだぁ」
「笑える話だなァ」
「誰が、とは訊かねぇの」
「聞いてどうする」
波の音が響いている。海兵達の見回りはまだ来ない。
シルビが幻覚を掛けて止めているのだから来る筈がないのだけれど。
鉄格子越しにドフラミンゴを見やれば、大の字に寝そべっているドフラミンゴの傍らに膝を抱えてロシナンテが座っている。シルビが来てからもその視線はずっとドフラミンゴへ向けられていて、泣いているのかどうかは暗くて分からなかった。
兄を止めようとしても、凶暴だと評しても、それでもロシナンテはドフラミンゴを殺せなかったのだ。そうして殺されてからも、未だに兄のことを想っている。
「ドンキホーテ・ドフラミンゴ。俺は別に君が嫌いではねぇよ」
「……フフフ」
「でも実の弟を殺した事に関しては、やっぱり許せそうにもねぇ。彼はずっと君のことも考えていた。君を兄として愛してたから、君を止めようとしていたんだろぉ」
海兵の声が聞こえた。幻覚が切れた訳ではないだろう。だがそろそろ潮時かと木箱から立ち上がる。
鉄格子の向こうから、小さく鎖のこすれる音がした。
「……シャイタン」
「なに?」
「オレは今更変われねえ」
「うん」
「だからロシーに伝えろ。『オレを気にするくらいならローでも気にしてろ』」
ドフラミンゴはシルビを見ていない。見ているのは見えない筈のロシナンテがいる場所だ。ロシナンテはボタボタと涙を流していて、その涙は落ちてもドフラミンゴに触れることすらない。
それでもドフラミンゴが、何かを拭うように指を動かした。
ロシナンテが鼻を啜りながら涙を拭って立ち上がる。そうして鉄格子をすり抜けて出てくるのに手を繋いで、牢屋へと背を向けた。