ドレスローザ編
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夢主視点
巨大石像男の体が先程飛んでいった何かによって両断される。その上半身が更に二つへと分断され、もう一度左腕が細切れにされていった。
その残骸が王の台地へと落下していく。シルビはランタンを高く掲げて指を鳴らし、その王の台地を包み込むように緑色の『雷の炎』を燃え上がらせた。
炎による巨大なドームが形成されたその上で、下の断層から飛ばされた衝撃波がその残骸を王の台地よりも向こう側へと吹き飛ばす。その吹き飛ばされた瓦礫へ向かってシルビはもう一度指を鳴らし、第八の炎による輪を作り上げてその残骸を国土の外の海へと落下させた。
はるか海の方から盛大な水没音がするのを聞いて、シルビは二色の炎を消してその場に膝を突く。
「大丈夫れすか!?」
「さっきの炎はアンタか!?」
「……流石に、範囲が大き過ぎだろぉ畜生」
二色の炎を同時に使ったことと、広範囲にそれを燃え上がらせたことで一気に消耗した。“イブリス”も近くにいない現状、これ以上の大技を使うことがあったら『白澤』の姿に戻らなければならないかもしれない。
けれども、あの国王を守る為であるのなら不満は無かった。ああも気持ちのいい信念を持つ者をシルビは放っておける訳がない。
「良かったなぁトンタッタ族。あの王様はいい王様だぜぇ」
「当たり前れす!」
「ふふ、当たり前かぁ……」
立ち上がって呼吸を整え、王宮の外へ広がるひまわり畑へと足を進める。ここの何処かに居る筈のロビン達を探して合流しなければならなかった。
背の高いひまわりをかき分けて台地の縁へと向かい、やっとロビン達の姿を見つける。隣にいる男と娘がヴィオラ姫の言っていたレベッカとキュロスだろう。
ロビンもキュロスも満身創痍だ。
「ロビン!」
「レベッカ様~!」
呼びかければロビン達が振り返る。そうしてシルビの姿を見てロビンが驚いていた。
シルビの肩からトンタッタ族の三人が飛び降り、キュロスへと駆け寄っていくのとは逆にロビンがシルビへと歩み寄ってくる。
「シャイタン! 貴方来ていたの!? じゃあさっきの炎は――」
「防護膜と転移だと思ってくれぇ。流石に大きく燃やし過ぎて疲れたぁ……」
ふらついたところで腕を掴んで支えられたが、ロビンだって傷だらけだ。座り込んでいるくせにマンシェリー姫が自身の能力で治そうというのを断っているキュロスも血塗れで、シルビは仕方なくロビンの手を引いて二人を並んで座らせる。
それから指を鳴らして晴の炎を灯し、二人の怪我へと押し当てた。小さな怪我からではあるが治っていくそれに皆が驚いている。
だがやはり今の状態では全快は無理だ。少し怪我を治したところで悔しく思いながらもフードを被って座り込み、フードの下で出した角に気付かれないようにする。
「シャイタン?」
「……ごめん。疲れて全部は治してやれねぇ」
「いや、十分だ」
完全に『白澤』の獣の姿になるのは嫌だし無理だ。だから半獣姿で自分を誤魔化すしかない。
シルビがこの世界へ転生する前、シルビは“神”になった。
世界によってその名前は違うし、元からシルビは“そういったものへ近かった”らしいが、明確に“神”と呼ばれる存在に成ってしまったのはそれが初めてだったのだ。
そしてその呪縛は今も残っている。
シルビはあの人生をあまり好んでいなかったが、あの人生を経過したことでシルビの力は何倍にも向上した。少なくともそれ以前よりも能力使用による疲労回復に関して、早くなったのである。
代償として、それは人の姿ではないが。
フードの下で伸びていた角と外套の下にあった尾を意識して“戻す”。そうして響き始めた地響きに立ち上がった。
「シャイタン。もう大丈夫なの?」
「こんな時にゆっくりは休んでいられねぇよ。それよりもロビン。様子がおかしいぜぇ」
「様子?」
王宮の台地から国を見渡す。喧噪の声は未だそこかしこで上がっているが、それだけではない違和感を覚えた。
何かが確実に変わっている。シルビの様子から油断ならないことかもしれないと判断したロビン達も国を見回した。
一見何も変わらずただ騒がしいように見える。けれどもそれだけではない。
国を覆っている糸が、収縮している。
それを言う前に背後の王宮の上階で大きな爆発が起こった。燃え上がる炎に振り返り、あそこにはルフィとローが居るのだと思い出す。
拡散した炎の中からルフィがローを抱えて飛び降りてきた。そのローの右腕が切断されたのか無くなっていて、シルビは思わず叫びそうになったのを必死に堪える。
今シルビが、『死告シャイタン』がローを呼んではいけない。
手を握りしめてロビンが能力で張ったネットへ落下してきたローへ駆け寄る。一緒に落とされた右腕と鬼哭を掴み、キュロスへそれを投げ渡してランタンを提げた棒を構えた。
追いかけてきたドフラミンゴが放ったと思われる弾をそれで防ぐ。脇から金髪の男がシルビと一緒になってそれを防いでいるのを横目に、後ろを庇うように立ってドフラミンゴを見上げた。
「……ドンキホーテ・ドフラミンゴ」
「フッフッフ! こいつは驚いた。とんでもないジョーカーが混じってたとはな!」
「天から降りた若造が粋がってるんじゃねぇよ」
「テメェには分からねェだろうな」
「分かるものか。弟を殺した愚か者めぇ」
『弟』という言葉にドフラミンゴが笑みを消す。
「テメェは何を知ってる」
「何も知らねぇ。ただ君が哀れであることと、それでも君は愛されていたという事を知っている。ドンキホーテ家の末裔。ファミリーというのは決して甘やかしておだてるだけの存在ではないことを学ぶべきだったなぁ」
脳裏に浮かぶ金髪の、優しい笑みを浮かべる男。
「『ファミリー』というのはひたすら褒めそやす要員の集まりじゃねぇよ。己の人生を変える為に時には諫める者もいなければいけねぇ。『彼』は君にとってのそういう者だった。――王になる素質とかより、王になることより君はそれを欲しがるべきだった」
「おいシルビ! ミンゴはオレが倒すんだ!」
ルフィが怒鳴るのを聞いてシルビは背後のロー達を庇いながら一歩後ろへと下がった。
「覚えておけぇドンキホーテ・ドフラミンゴ。君はまだ『愛されている』」
その言葉が聞こえたかどうか。
ルフィと再び王宮の屋上で戦い始めるドフラミンゴに、シルビは余波に巻き込まれて崩壊する王宮の壁を見てから、後ろで下の断層へ逃げようとしているロビン達へと駆け寄った。
ローは先程加勢してくれた金髪の男が抱き上げてくれていたが、意識を取り戻したローがその男の足を止める。そうして自分をここへ置いていけとほざいた。
「――もし負けたなら、オレもここで共に殺されるべきだ」
かすれた声に目の前が真っ赤になる。金髪の男が困るだろう事も分かっていながら、堪えきれずにシルビはローの胸ぐらを掴んで睨みつけた。
意識を飛ばしていたからシルビがドフラミンゴと大声で話していようと今まで居ることに気付いていなかったのか、ローが目を見開いてシルビを見返す。
色々、ちゃんと言いたいことはあったのに言葉には出来なかった。
帰ってきてもらうつもりで見送ったのだ。手錠を掛けられたりするなとか、牢屋に入れられたりするなとかとも言ったけれど本当は帰ってきてくれるだけでいい。
泣こうがわめこうが腕が千切られようが、帰ってきてくれると信じて見送った。だからここでそんな事を言うのは、ハートの皆やシルビへ対する裏切りに近い。
結局何も言えないまま胸ぐらを掴んでいた手を離す。シルビが居ようが居まいが、どうしてもここへ留まるというローへ説得を諦めた金髪の男がローを降ろしてその場へ座り込んだ。
「自殺願望は聞けない。ぼくもここへ残る。――それで妥協しろ。君が死ぬとしたらぼくの次だ」
トンタッタ族のマンシェリー姫とレオが視線を交わして頷き、ローの切断された腕へと近づく。
「逃げる前にその腕を縫い繋げていくれす! うまく繋いで姫のチユがあればきっと!」
「俺も手伝う」
目元を強く擦ってローの千切られた腕の傍らにいたマンシェリー姫の隣へ膝を突いた。
レオが素早く縫い合わせた腕の切断面へ、マンシェリー姫が手の上で咲かせたタンポポの綿毛が吸い込まれていくのを見つつ、シルビも指を鳴らして黒い炎を灯し、それが虹色の光に変わるのを待って切断面へと押し当てた。
ローが何か言いたげにシルビを見上げていたが、今は何も聞いてやるつもりもない。
巨大石像男の体が先程飛んでいった何かによって両断される。その上半身が更に二つへと分断され、もう一度左腕が細切れにされていった。
その残骸が王の台地へと落下していく。シルビはランタンを高く掲げて指を鳴らし、その王の台地を包み込むように緑色の『雷の炎』を燃え上がらせた。
炎による巨大なドームが形成されたその上で、下の断層から飛ばされた衝撃波がその残骸を王の台地よりも向こう側へと吹き飛ばす。その吹き飛ばされた瓦礫へ向かってシルビはもう一度指を鳴らし、第八の炎による輪を作り上げてその残骸を国土の外の海へと落下させた。
はるか海の方から盛大な水没音がするのを聞いて、シルビは二色の炎を消してその場に膝を突く。
「大丈夫れすか!?」
「さっきの炎はアンタか!?」
「……流石に、範囲が大き過ぎだろぉ畜生」
二色の炎を同時に使ったことと、広範囲にそれを燃え上がらせたことで一気に消耗した。“イブリス”も近くにいない現状、これ以上の大技を使うことがあったら『白澤』の姿に戻らなければならないかもしれない。
けれども、あの国王を守る為であるのなら不満は無かった。ああも気持ちのいい信念を持つ者をシルビは放っておける訳がない。
「良かったなぁトンタッタ族。あの王様はいい王様だぜぇ」
「当たり前れす!」
「ふふ、当たり前かぁ……」
立ち上がって呼吸を整え、王宮の外へ広がるひまわり畑へと足を進める。ここの何処かに居る筈のロビン達を探して合流しなければならなかった。
背の高いひまわりをかき分けて台地の縁へと向かい、やっとロビン達の姿を見つける。隣にいる男と娘がヴィオラ姫の言っていたレベッカとキュロスだろう。
ロビンもキュロスも満身創痍だ。
「ロビン!」
「レベッカ様~!」
呼びかければロビン達が振り返る。そうしてシルビの姿を見てロビンが驚いていた。
シルビの肩からトンタッタ族の三人が飛び降り、キュロスへと駆け寄っていくのとは逆にロビンがシルビへと歩み寄ってくる。
「シャイタン! 貴方来ていたの!? じゃあさっきの炎は――」
「防護膜と転移だと思ってくれぇ。流石に大きく燃やし過ぎて疲れたぁ……」
ふらついたところで腕を掴んで支えられたが、ロビンだって傷だらけだ。座り込んでいるくせにマンシェリー姫が自身の能力で治そうというのを断っているキュロスも血塗れで、シルビは仕方なくロビンの手を引いて二人を並んで座らせる。
それから指を鳴らして晴の炎を灯し、二人の怪我へと押し当てた。小さな怪我からではあるが治っていくそれに皆が驚いている。
だがやはり今の状態では全快は無理だ。少し怪我を治したところで悔しく思いながらもフードを被って座り込み、フードの下で出した角に気付かれないようにする。
「シャイタン?」
「……ごめん。疲れて全部は治してやれねぇ」
「いや、十分だ」
完全に『白澤』の獣の姿になるのは嫌だし無理だ。だから半獣姿で自分を誤魔化すしかない。
シルビがこの世界へ転生する前、シルビは“神”になった。
世界によってその名前は違うし、元からシルビは“そういったものへ近かった”らしいが、明確に“神”と呼ばれる存在に成ってしまったのはそれが初めてだったのだ。
そしてその呪縛は今も残っている。
シルビはあの人生をあまり好んでいなかったが、あの人生を経過したことでシルビの力は何倍にも向上した。少なくともそれ以前よりも能力使用による疲労回復に関して、早くなったのである。
代償として、それは人の姿ではないが。
フードの下で伸びていた角と外套の下にあった尾を意識して“戻す”。そうして響き始めた地響きに立ち上がった。
「シャイタン。もう大丈夫なの?」
「こんな時にゆっくりは休んでいられねぇよ。それよりもロビン。様子がおかしいぜぇ」
「様子?」
王宮の台地から国を見渡す。喧噪の声は未だそこかしこで上がっているが、それだけではない違和感を覚えた。
何かが確実に変わっている。シルビの様子から油断ならないことかもしれないと判断したロビン達も国を見回した。
一見何も変わらずただ騒がしいように見える。けれどもそれだけではない。
国を覆っている糸が、収縮している。
それを言う前に背後の王宮の上階で大きな爆発が起こった。燃え上がる炎に振り返り、あそこにはルフィとローが居るのだと思い出す。
拡散した炎の中からルフィがローを抱えて飛び降りてきた。そのローの右腕が切断されたのか無くなっていて、シルビは思わず叫びそうになったのを必死に堪える。
今シルビが、『死告シャイタン』がローを呼んではいけない。
手を握りしめてロビンが能力で張ったネットへ落下してきたローへ駆け寄る。一緒に落とされた右腕と鬼哭を掴み、キュロスへそれを投げ渡してランタンを提げた棒を構えた。
追いかけてきたドフラミンゴが放ったと思われる弾をそれで防ぐ。脇から金髪の男がシルビと一緒になってそれを防いでいるのを横目に、後ろを庇うように立ってドフラミンゴを見上げた。
「……ドンキホーテ・ドフラミンゴ」
「フッフッフ! こいつは驚いた。とんでもないジョーカーが混じってたとはな!」
「天から降りた若造が粋がってるんじゃねぇよ」
「テメェには分からねェだろうな」
「分かるものか。弟を殺した愚か者めぇ」
『弟』という言葉にドフラミンゴが笑みを消す。
「テメェは何を知ってる」
「何も知らねぇ。ただ君が哀れであることと、それでも君は愛されていたという事を知っている。ドンキホーテ家の末裔。ファミリーというのは決して甘やかしておだてるだけの存在ではないことを学ぶべきだったなぁ」
脳裏に浮かぶ金髪の、優しい笑みを浮かべる男。
「『ファミリー』というのはひたすら褒めそやす要員の集まりじゃねぇよ。己の人生を変える為に時には諫める者もいなければいけねぇ。『彼』は君にとってのそういう者だった。――王になる素質とかより、王になることより君はそれを欲しがるべきだった」
「おいシルビ! ミンゴはオレが倒すんだ!」
ルフィが怒鳴るのを聞いてシルビは背後のロー達を庇いながら一歩後ろへと下がった。
「覚えておけぇドンキホーテ・ドフラミンゴ。君はまだ『愛されている』」
その言葉が聞こえたかどうか。
ルフィと再び王宮の屋上で戦い始めるドフラミンゴに、シルビは余波に巻き込まれて崩壊する王宮の壁を見てから、後ろで下の断層へ逃げようとしているロビン達へと駆け寄った。
ローは先程加勢してくれた金髪の男が抱き上げてくれていたが、意識を取り戻したローがその男の足を止める。そうして自分をここへ置いていけとほざいた。
「――もし負けたなら、オレもここで共に殺されるべきだ」
かすれた声に目の前が真っ赤になる。金髪の男が困るだろう事も分かっていながら、堪えきれずにシルビはローの胸ぐらを掴んで睨みつけた。
意識を飛ばしていたからシルビがドフラミンゴと大声で話していようと今まで居ることに気付いていなかったのか、ローが目を見開いてシルビを見返す。
色々、ちゃんと言いたいことはあったのに言葉には出来なかった。
帰ってきてもらうつもりで見送ったのだ。手錠を掛けられたりするなとか、牢屋に入れられたりするなとかとも言ったけれど本当は帰ってきてくれるだけでいい。
泣こうがわめこうが腕が千切られようが、帰ってきてくれると信じて見送った。だからここでそんな事を言うのは、ハートの皆やシルビへ対する裏切りに近い。
結局何も言えないまま胸ぐらを掴んでいた手を離す。シルビが居ようが居まいが、どうしてもここへ留まるというローへ説得を諦めた金髪の男がローを降ろしてその場へ座り込んだ。
「自殺願望は聞けない。ぼくもここへ残る。――それで妥協しろ。君が死ぬとしたらぼくの次だ」
トンタッタ族のマンシェリー姫とレオが視線を交わして頷き、ローの切断された腕へと近づく。
「逃げる前にその腕を縫い繋げていくれす! うまく繋いで姫のチユがあればきっと!」
「俺も手伝う」
目元を強く擦ってローの千切られた腕の傍らにいたマンシェリー姫の隣へ膝を突いた。
レオが素早く縫い合わせた腕の切断面へ、マンシェリー姫が手の上で咲かせたタンポポの綿毛が吸い込まれていくのを見つつ、シルビも指を鳴らして黒い炎を灯し、それが虹色の光に変わるのを待って切断面へと押し当てた。
ローが何か言いたげにシルビを見上げていたが、今は何も聞いてやるつもりもない。