ドレスローザ編
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夢主視点
コロシアムは既にただの廃墟と化している。そこから溢れ出ていた荒くれ者達も出尽くしたらしく、今は国民が避難の為か集まっているようだった。
いや、避難の為ではないのか。集まっている者達はこぞって武器になりそうなものを持っている。避難の為というよりは何かを“制圧”する為といわんばかりの物々しい雰囲気に、シルビは少し考えてコロシアムのすぐ傍へある台地を見上げた。
指を鳴らして台地の上へと移動すれば、映像で見たリク王とその娘だというヴィオラ姫。それから麦藁の一味の一人で魚人島でも見た長鼻の青年に、革命軍のハックの姿があった。他にもいるが見たことのない顔ばかりなのでそちらは分からない。
「ハック!」
「む!? ――シャイタンどの!?」
「ぎゃああ! 死告シャイタンだああああ!?」
叫ぶ長鼻の青年を無視して驚きながらもシルビを見たハックに、ホッとして地面へと降り立った。脱げそうになったフードを直しながら駆け寄ってきたハックへと話しかける。
「久しぶりぃ。元気そうで何よりだけど、そこの長鼻君やリク王に賞金が懸かってんだろぉ」
「ああ。シャイタンどのは何故ここへ?」
「これだけの騒動に『死告シャイタン』が来ねぇでどうすんだよ。まぁ言われてきた口だけど……。ドレスローザ“元”国王、リク・ドルド三世だなぁ?」
突然、しかも空から現れたシルビへ警戒しているリク王へと向き直って声を掛けた。
リク王は遡ること十年前、ドフラミンゴによって討伐された悪の王である。だが今の状況を見ればその世間的評価が企てられたものであったことは誰から見ても明白だ。
ドレスローザという『国』はどうでもいい。シルビが聞きたいのはこの国に住む民達の総意であり、それを話せるのがリク王だと思った。
「俺は『世界政府の宿敵』死告シャイタンと呼ばれている者。突然の来訪失礼する」
「『世界政府の宿敵』……」
「この騒動の中で貴方を見つけるのには骨が折れた。どうしても一つお聞きしたいことがある」
背後ではそこかしこで狂乱の騒ぎが起こっている。ロシナンテだって探しに行かなければならないし、ローのことだって心配だ。
けれどもそれは目の前の男だって同じだろう。シルビの十分の一も生きておらず、それでも一つの国をまとめて治めていた男。
「この土地の人々を見捨てる気をもったことはある?」
シルビの知る『統治者』はいつだってこう答える。
「ある訳が無い!」
リク王の返事に台地の上へいた皆が揃ってリク王を見た。
王とは何か、という問いは常に世の謎として存在する。きっと争いと同じように消えることのない疑問だ。考えが少しでも違えば答えは多彩になるし、時には今のようにその答えこそが争いの切っ掛けとなる時もある。
世界に人間が一人しかいなくなったらそれもまた『王』ではあるかもしれないが、シルビの考えではそれは『王』ではない。
『王』は『なる』ものではない。周りが『する』ものだ。
ではこの目の前の老人は、王か否か。
「――ふふ。リク王。俺は貴方を気に入ったよ」
フードの端を摘んで外した。
シルビの素顔にハック以外の者達が驚いている間に髪を縛る。そうしている間にコロシアムの方から登ってきた国民が『受刑者』である長鼻の青年達を捕まえようと襲いかかっていた。
一度は縄で縛って動きを拘束しながら、けれどもすぐにリク王を囲んで国民達が涙ながらに助けを求める。どうすればいいのかと懇願する国民の向こうから、いつの間に来ていたのか藤虎が手慰みのように賽を転がしていた。
「もう少し待ってみないか」
「え? 待つ……?」
「死を選ぶのは――それからでも遅くない」
「諦めない者達を死なせねぇよ?」
「かつての平和の象徴ドレスローザに戦争なんかさせやしません」
シルビに続いて藤虎も口を開く。どうやらシルビ以外は彼がいつ来たのか気付いていなかったらしくどよめいていた。その中を藤虎へ近付いてシルビは背中越しに彼の手の中の賽を見る。
近くに来たことに気配で分かったのか賽を見やすいように傾けてくれた。
「“麦”の目に一点張り。リク王の旦那に死告のあにさん。……あっしも、あんた等と同じ“賭”をしていやす」
「死告のあにさんって俺のことかぁ?」
「ええ……ですがどうも、あんたは声より年を取ってるようですがね」
カラカラと転がっていた賽が止まる。盲目の相手にまさか見た目と経験が違うことに気付かれると思っていなかった。
相手は盲目だからいいかと思うことにして、シルビは泣いていた国民の手から持っていた棍棒を奪い、シルビの身長よりも長いそれの先端を一部ナイフで削ってランタンを引っかける。無骨だが即席なのでランタンが落ちなければいい。
それを肩へ掛けるように持って、台地を囲う外壁の上へ立つ。当然だがそこからロシナンテの姿など見えない。
「シャイタンどの?」
「はぐれた連れを探しに行ってくる。ついでにドフラミンゴの幹部達の様子も見てきてあげよう」
「危険だぞ!?」
誰かが怒鳴る声にちょっと笑って振り返った。
「千年経っても俺を殺せない者達の末裔って言葉は、君達にも適用するんだぜぇ?」
コロシアムは既にただの廃墟と化している。そこから溢れ出ていた荒くれ者達も出尽くしたらしく、今は国民が避難の為か集まっているようだった。
いや、避難の為ではないのか。集まっている者達はこぞって武器になりそうなものを持っている。避難の為というよりは何かを“制圧”する為といわんばかりの物々しい雰囲気に、シルビは少し考えてコロシアムのすぐ傍へある台地を見上げた。
指を鳴らして台地の上へと移動すれば、映像で見たリク王とその娘だというヴィオラ姫。それから麦藁の一味の一人で魚人島でも見た長鼻の青年に、革命軍のハックの姿があった。他にもいるが見たことのない顔ばかりなのでそちらは分からない。
「ハック!」
「む!? ――シャイタンどの!?」
「ぎゃああ! 死告シャイタンだああああ!?」
叫ぶ長鼻の青年を無視して驚きながらもシルビを見たハックに、ホッとして地面へと降り立った。脱げそうになったフードを直しながら駆け寄ってきたハックへと話しかける。
「久しぶりぃ。元気そうで何よりだけど、そこの長鼻君やリク王に賞金が懸かってんだろぉ」
「ああ。シャイタンどのは何故ここへ?」
「これだけの騒動に『死告シャイタン』が来ねぇでどうすんだよ。まぁ言われてきた口だけど……。ドレスローザ“元”国王、リク・ドルド三世だなぁ?」
突然、しかも空から現れたシルビへ警戒しているリク王へと向き直って声を掛けた。
リク王は遡ること十年前、ドフラミンゴによって討伐された悪の王である。だが今の状況を見ればその世間的評価が企てられたものであったことは誰から見ても明白だ。
ドレスローザという『国』はどうでもいい。シルビが聞きたいのはこの国に住む民達の総意であり、それを話せるのがリク王だと思った。
「俺は『世界政府の宿敵』死告シャイタンと呼ばれている者。突然の来訪失礼する」
「『世界政府の宿敵』……」
「この騒動の中で貴方を見つけるのには骨が折れた。どうしても一つお聞きしたいことがある」
背後ではそこかしこで狂乱の騒ぎが起こっている。ロシナンテだって探しに行かなければならないし、ローのことだって心配だ。
けれどもそれは目の前の男だって同じだろう。シルビの十分の一も生きておらず、それでも一つの国をまとめて治めていた男。
「この土地の人々を見捨てる気をもったことはある?」
シルビの知る『統治者』はいつだってこう答える。
「ある訳が無い!」
リク王の返事に台地の上へいた皆が揃ってリク王を見た。
王とは何か、という問いは常に世の謎として存在する。きっと争いと同じように消えることのない疑問だ。考えが少しでも違えば答えは多彩になるし、時には今のようにその答えこそが争いの切っ掛けとなる時もある。
世界に人間が一人しかいなくなったらそれもまた『王』ではあるかもしれないが、シルビの考えではそれは『王』ではない。
『王』は『なる』ものではない。周りが『する』ものだ。
ではこの目の前の老人は、王か否か。
「――ふふ。リク王。俺は貴方を気に入ったよ」
フードの端を摘んで外した。
シルビの素顔にハック以外の者達が驚いている間に髪を縛る。そうしている間にコロシアムの方から登ってきた国民が『受刑者』である長鼻の青年達を捕まえようと襲いかかっていた。
一度は縄で縛って動きを拘束しながら、けれどもすぐにリク王を囲んで国民達が涙ながらに助けを求める。どうすればいいのかと懇願する国民の向こうから、いつの間に来ていたのか藤虎が手慰みのように賽を転がしていた。
「もう少し待ってみないか」
「え? 待つ……?」
「死を選ぶのは――それからでも遅くない」
「諦めない者達を死なせねぇよ?」
「かつての平和の象徴ドレスローザに戦争なんかさせやしません」
シルビに続いて藤虎も口を開く。どうやらシルビ以外は彼がいつ来たのか気付いていなかったらしくどよめいていた。その中を藤虎へ近付いてシルビは背中越しに彼の手の中の賽を見る。
近くに来たことに気配で分かったのか賽を見やすいように傾けてくれた。
「“麦”の目に一点張り。リク王の旦那に死告のあにさん。……あっしも、あんた等と同じ“賭”をしていやす」
「死告のあにさんって俺のことかぁ?」
「ええ……ですがどうも、あんたは声より年を取ってるようですがね」
カラカラと転がっていた賽が止まる。盲目の相手にまさか見た目と経験が違うことに気付かれると思っていなかった。
相手は盲目だからいいかと思うことにして、シルビは泣いていた国民の手から持っていた棍棒を奪い、シルビの身長よりも長いそれの先端を一部ナイフで削ってランタンを引っかける。無骨だが即席なのでランタンが落ちなければいい。
それを肩へ掛けるように持って、台地を囲う外壁の上へ立つ。当然だがそこからロシナンテの姿など見えない。
「シャイタンどの?」
「はぐれた連れを探しに行ってくる。ついでにドフラミンゴの幹部達の様子も見てきてあげよう」
「危険だぞ!?」
誰かが怒鳴る声にちょっと笑って振り返った。
「千年経っても俺を殺せない者達の末裔って言葉は、君達にも適用するんだぜぇ?」