ドレスローザ編
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夢主視点
燃えさかる街の通りで、倒れた男性にすがりついて泣いている母子を見つける。その後ろで泣きながら剣を振り上げた男へ、シルビは銃を撃って気絶させた。
はっとして顔を上げた母親に声をかける。倒れていた男性は意識はないがまだ息はあった。
「旦那さん?」
「は、はい」
「安全そうな場所へまで運んであげるから、心当たりあるかぁ?」
出来るだけ優しく声をかければ、母親は唇を噛みしめて泣くのを堪えながら辺りを見回しし、それから何かを思い出したようにシルビを見上げ、とある方向を指差す。
「む、向こう。向こうに行けば多分……!」
「Si 娘さんは抱いて、立てるかぁ?」
倒れている父親とシルビが気絶させた男を担ぎ上げて、子供を抱きかかえた母親の案内を受けて走り出した。受けて走っている間にも視界には血塗れで倒れる者や木の棒を手に何処かへと走っていく者達が過ぎ去っていく。
ドフラミンゴが提示した十三人の『受刑者』を襲うつもりなのか、それともとりあえずの安全を確保する為か。こういう時に争いは無くせない事を痛感する。
瓦礫や廃材で作られたバリケードの向こうで、シルビが連れてきた母子の知り合いらしい住民が叫んだ。バリケードを乗り越えてきた知り合いらしい男達へ母子と、シルビが担いできた父親と男を受け渡し、シルビはフードの端を摘んで深く被り直しながら尋ねた。
「アンタ等さっきの映像見たかぁ?」
「ああ見たさ! リク王やヴィオラ様が映っていたが……」
「賞金に興味は無ぇ?」
「……金は命あっての物種だ」
そう言って遠くの爆煙を眺めた男に、どうやらここの人達は誰かへ敵意を向けることを良しとしない者達らしい。無抵抗主義というわけではなく、自分達を守る以上の武力や武器を求めない人達だ。
地形の変動もあって、きっと自分の家の居場所まで分からなくなっているだろう彼らは、けれども生きることを“諦めていない”。
親子が周囲の手を借りてバリケードの向こうへ避難したのを確かめ、シルビは違うことを問いかける。
「悪ぃんだけど、あの受刑者達やドフラミンゴがいそうな場所って分かるかぁ?」
「ド、ドフラミンゴならあそこだろうが」
男が指差したのは一際高くなっている王宮の天辺だ。
シルビが踵を返そうとすると男が慌てて呼び止めてくる。
「アンタ、まさか行くのか!?」
「行くよ。俺の用事はロシ――ロシナンテさん?」
シルビ以外には霊感がある者でないと姿が見えない上、シルビ以外の人が居ると何も触れないので気にしていなかったが、ロシナンテの姿がいつの間にか見えなくなっていた。
このタイミングで成仏した筈がない。というか既に一度成仏している存在なので成仏とは違うのか。
いずれにせよ。
「はぐれてんじゃねぇよチクショォオオオオオオオオオ!」
瓦礫や崩壊した建物の上を飛び越え、第八の炎も使いながら移動して一度来た道を戻りロシナンテを探すも、見つからないことに苛立ちを隠せない。イトイトの実の能力で操られているらしい国民や海兵を返り討ちにして気絶させることでその苛立ちを少し沈め、探すことを放棄したのは数十分後だ。
「勝手にはぐれるのが悪ぃ! そう! 俺は悪くねぇ!」
放っておけばそのうち合流するか見つけられる、もしくは落ち着いてから『×××』を使って居場所を探ればいいと判断して足を止める。それにおそらく、彼が“向かっている場所”の推測も出来ると言えば出来た。
周囲を見回して自分の現在位置を大まかに把握する。コロシアムから少し王宮よりの建物の上だ。
眼下では海兵が暴れる者達を出来るだけ攻撃せずに押さえつけている。出来るだけ攻撃しないようにしているところに、指示を出しただろう海軍上官が少し気になった。
ただ、その海兵達はどうもドンキホーテ軍には手を出していない。ドフラミンゴは敵ではないと判断しているのか、違う目的があって今はそうしているだけなのかは分かりかねた。
ふと、近くの一角が静かになったのを感じてそちらへ歩み寄る。往来を見下ろせば麦藁のルフィと海楼石の手錠で拘束されているロー、それと緑髪のルフィの仲間の一人が、海軍将校と対峙していた。
「船長が居るんじゃ出ていけねぇなぁ。どうしたもんかなぁ」
こちらに顔を出す訳にはいかない。ではどうするかと往来の騒ぎから視線を逸らし、街を見回す。コロシアムの崩れた壁のところからゾロゾロと人が蟻の様に溢れ出てきていた。
先に国民の避難を手助けした方が楽かと考えていると、不意に足下が揺れる。ふらつく程度だった震動は次第に大きくなり、土地が歪んでいったかと思うと王宮の真下辺りから地面が建物ごとせり上がって人の形を形成していった。
甲冑を被った男の姿へと形成されたが、口を開く。
滅茶苦茶高い声だった。
「っていうか喋るんだぁ、アレ」
おそらく能力者なのだろう。往来ではルフィは思い切り笑っていて、それをドンキホーテ軍の兵士が必死に止めようとしている。が、ルフィの笑いは止まらない。
ルフィの声があの距離で聞こえるというのも凄い話だが、声を笑われた巨大石像男の手が怒りを露わに拳を握って振り上げられる。その目標は笑ったルフィなのだろうが、拳が大きすぎてシルビまでもこの場に留まっていれば確実に危ないだろう。
別に止められないことは無い。というかシルビなら確実に止められる手段も持ってはいる。
ドレスローザの国民や海兵達が死にそうな間際であってもシルビが手を出さないのは、単に近くへローと海軍将校が居るからだ。二人が近くに居なければシルビだって手を出していた。少なくともローにばれない様に手を出す方法もあるにはある。
ただ、同時に二人も居て『死告シャイタン』として二人の目の前に姿を出し、騒がれたら面倒なのだ。特にローはシルビがドレスローザへ来ている事を知ったら確実に怒る。ただでさえ海楼石で動きを制限されて苛ついているようだったし、そこへ顔を出す程馬鹿ではない。
とりあえずはルフィ達を無事を確認するまでは追いかけるかと、迫り来る拳から逃げる為に走りながらルフィ達の逃げる方向へ向かう。
振り下ろされた拳による爆風で、周囲の建物や色々なものが吹き飛んでいった。風圧でフードが外れそうになるどころか身体が吹き飛びかけ、落ち着いた風に顔を上げてみるもルフィ達の姿はない。
死んだとは思わないが、無事かどうかが分からないとやはり不安だ。
仕方なくこめかみへ手を当てて目を閉じる。
「……あっちかぁ」
頭痛を引き起こすのであまり多用したくなかったが、『×××』を利用してルフィ達の居場所を探ればそう遠くない場所へ爆風で吹き飛ばされた様だった。一応は無事らしいので安心する。
歩調を緩めつつもルフィ達がいる方向を目指せば、何故か連れを増やしている上に牛へ跨がったルフィ達が王城へ向かって走っていく姿を見つけた。建物の上にいるシルビには無論気づいていない。
「あれ……チンジャオ?」
ルフィと共に走っている増えた面々の中に、四十年ほど前の知り合いらしい男を見つけた。最後に会ってから数十年経っているせいか当然老けているが、あの頭部は忘れにくい。
なんだって彼までドレスローザへいるんだと不思議に思いながらも、シルビはとりあえずルフィ達が走り去った後の往来へと飛び降りた。ルフィ達の姿を見掛け、『受刑者』として襲おうと追いかけていた荒くれ者達の前へ立ちはだかる。
「誰だテメェ!」
「邪魔するならテメェから殺すぞ!」
シルビが一人だからか油断しきって走る足すら止めない集団に、シルビはフードの端を摘んで深く被り直し、出来るだけ不敵に微笑んだ。
「悪ぃなぁ。ルフィ君達の邪魔はさせられねぇんだよ。多分それがこの国の為にもなりそうだしぃ?」
覇気を飛ばして全員を気絶させる。一斉に気を失って倒れる寸前に彼らの足下へ第八の炎を灯し、適当に離れた場所へ移動させた。
「三人も三百人も同じことだ~!」
背後では巨大石像男が甲高い声で叫びながらまた手を振り下ろしている。
燃えさかる街の通りで、倒れた男性にすがりついて泣いている母子を見つける。その後ろで泣きながら剣を振り上げた男へ、シルビは銃を撃って気絶させた。
はっとして顔を上げた母親に声をかける。倒れていた男性は意識はないがまだ息はあった。
「旦那さん?」
「は、はい」
「安全そうな場所へまで運んであげるから、心当たりあるかぁ?」
出来るだけ優しく声をかければ、母親は唇を噛みしめて泣くのを堪えながら辺りを見回しし、それから何かを思い出したようにシルビを見上げ、とある方向を指差す。
「む、向こう。向こうに行けば多分……!」
「Si 娘さんは抱いて、立てるかぁ?」
倒れている父親とシルビが気絶させた男を担ぎ上げて、子供を抱きかかえた母親の案内を受けて走り出した。受けて走っている間にも視界には血塗れで倒れる者や木の棒を手に何処かへと走っていく者達が過ぎ去っていく。
ドフラミンゴが提示した十三人の『受刑者』を襲うつもりなのか、それともとりあえずの安全を確保する為か。こういう時に争いは無くせない事を痛感する。
瓦礫や廃材で作られたバリケードの向こうで、シルビが連れてきた母子の知り合いらしい住民が叫んだ。バリケードを乗り越えてきた知り合いらしい男達へ母子と、シルビが担いできた父親と男を受け渡し、シルビはフードの端を摘んで深く被り直しながら尋ねた。
「アンタ等さっきの映像見たかぁ?」
「ああ見たさ! リク王やヴィオラ様が映っていたが……」
「賞金に興味は無ぇ?」
「……金は命あっての物種だ」
そう言って遠くの爆煙を眺めた男に、どうやらここの人達は誰かへ敵意を向けることを良しとしない者達らしい。無抵抗主義というわけではなく、自分達を守る以上の武力や武器を求めない人達だ。
地形の変動もあって、きっと自分の家の居場所まで分からなくなっているだろう彼らは、けれども生きることを“諦めていない”。
親子が周囲の手を借りてバリケードの向こうへ避難したのを確かめ、シルビは違うことを問いかける。
「悪ぃんだけど、あの受刑者達やドフラミンゴがいそうな場所って分かるかぁ?」
「ド、ドフラミンゴならあそこだろうが」
男が指差したのは一際高くなっている王宮の天辺だ。
シルビが踵を返そうとすると男が慌てて呼び止めてくる。
「アンタ、まさか行くのか!?」
「行くよ。俺の用事はロシ――ロシナンテさん?」
シルビ以外には霊感がある者でないと姿が見えない上、シルビ以外の人が居ると何も触れないので気にしていなかったが、ロシナンテの姿がいつの間にか見えなくなっていた。
このタイミングで成仏した筈がない。というか既に一度成仏している存在なので成仏とは違うのか。
いずれにせよ。
「はぐれてんじゃねぇよチクショォオオオオオオオオオ!」
瓦礫や崩壊した建物の上を飛び越え、第八の炎も使いながら移動して一度来た道を戻りロシナンテを探すも、見つからないことに苛立ちを隠せない。イトイトの実の能力で操られているらしい国民や海兵を返り討ちにして気絶させることでその苛立ちを少し沈め、探すことを放棄したのは数十分後だ。
「勝手にはぐれるのが悪ぃ! そう! 俺は悪くねぇ!」
放っておけばそのうち合流するか見つけられる、もしくは落ち着いてから『×××』を使って居場所を探ればいいと判断して足を止める。それにおそらく、彼が“向かっている場所”の推測も出来ると言えば出来た。
周囲を見回して自分の現在位置を大まかに把握する。コロシアムから少し王宮よりの建物の上だ。
眼下では海兵が暴れる者達を出来るだけ攻撃せずに押さえつけている。出来るだけ攻撃しないようにしているところに、指示を出しただろう海軍上官が少し気になった。
ただ、その海兵達はどうもドンキホーテ軍には手を出していない。ドフラミンゴは敵ではないと判断しているのか、違う目的があって今はそうしているだけなのかは分かりかねた。
ふと、近くの一角が静かになったのを感じてそちらへ歩み寄る。往来を見下ろせば麦藁のルフィと海楼石の手錠で拘束されているロー、それと緑髪のルフィの仲間の一人が、海軍将校と対峙していた。
「船長が居るんじゃ出ていけねぇなぁ。どうしたもんかなぁ」
こちらに顔を出す訳にはいかない。ではどうするかと往来の騒ぎから視線を逸らし、街を見回す。コロシアムの崩れた壁のところからゾロゾロと人が蟻の様に溢れ出てきていた。
先に国民の避難を手助けした方が楽かと考えていると、不意に足下が揺れる。ふらつく程度だった震動は次第に大きくなり、土地が歪んでいったかと思うと王宮の真下辺りから地面が建物ごとせり上がって人の形を形成していった。
甲冑を被った男の姿へと形成されたが、口を開く。
滅茶苦茶高い声だった。
「っていうか喋るんだぁ、アレ」
おそらく能力者なのだろう。往来ではルフィは思い切り笑っていて、それをドンキホーテ軍の兵士が必死に止めようとしている。が、ルフィの笑いは止まらない。
ルフィの声があの距離で聞こえるというのも凄い話だが、声を笑われた巨大石像男の手が怒りを露わに拳を握って振り上げられる。その目標は笑ったルフィなのだろうが、拳が大きすぎてシルビまでもこの場に留まっていれば確実に危ないだろう。
別に止められないことは無い。というかシルビなら確実に止められる手段も持ってはいる。
ドレスローザの国民や海兵達が死にそうな間際であってもシルビが手を出さないのは、単に近くへローと海軍将校が居るからだ。二人が近くに居なければシルビだって手を出していた。少なくともローにばれない様に手を出す方法もあるにはある。
ただ、同時に二人も居て『死告シャイタン』として二人の目の前に姿を出し、騒がれたら面倒なのだ。特にローはシルビがドレスローザへ来ている事を知ったら確実に怒る。ただでさえ海楼石で動きを制限されて苛ついているようだったし、そこへ顔を出す程馬鹿ではない。
とりあえずはルフィ達を無事を確認するまでは追いかけるかと、迫り来る拳から逃げる為に走りながらルフィ達の逃げる方向へ向かう。
振り下ろされた拳による爆風で、周囲の建物や色々なものが吹き飛んでいった。風圧でフードが外れそうになるどころか身体が吹き飛びかけ、落ち着いた風に顔を上げてみるもルフィ達の姿はない。
死んだとは思わないが、無事かどうかが分からないとやはり不安だ。
仕方なくこめかみへ手を当てて目を閉じる。
「……あっちかぁ」
頭痛を引き起こすのであまり多用したくなかったが、『×××』を利用してルフィ達の居場所を探ればそう遠くない場所へ爆風で吹き飛ばされた様だった。一応は無事らしいので安心する。
歩調を緩めつつもルフィ達がいる方向を目指せば、何故か連れを増やしている上に牛へ跨がったルフィ達が王城へ向かって走っていく姿を見つけた。建物の上にいるシルビには無論気づいていない。
「あれ……チンジャオ?」
ルフィと共に走っている増えた面々の中に、四十年ほど前の知り合いらしい男を見つけた。最後に会ってから数十年経っているせいか当然老けているが、あの頭部は忘れにくい。
なんだって彼までドレスローザへいるんだと不思議に思いながらも、シルビはとりあえずルフィ達が走り去った後の往来へと飛び降りた。ルフィ達の姿を見掛け、『受刑者』として襲おうと追いかけていた荒くれ者達の前へ立ちはだかる。
「誰だテメェ!」
「邪魔するならテメェから殺すぞ!」
シルビが一人だからか油断しきって走る足すら止めない集団に、シルビはフードの端を摘んで深く被り直し、出来るだけ不敵に微笑んだ。
「悪ぃなぁ。ルフィ君達の邪魔はさせられねぇんだよ。多分それがこの国の為にもなりそうだしぃ?」
覇気を飛ばして全員を気絶させる。一斉に気を失って倒れる寸前に彼らの足下へ第八の炎を灯し、適当に離れた場所へ移動させた。
「三人も三百人も同じことだ~!」
背後では巨大石像男が甲高い声で叫びながらまた手を振り下ろしている。