ドレスローザ編
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ロー視点
青い部屋だった。
壁の見えないどこまでも広い部屋で、青い扉が不等間隔で点在している。
青い一人掛けの椅子と青いテーブル。その向こうへ置かれた青いソファに、黒い長髪の男が寝そべったまま驚いたようにローを見ていた。
ローの記憶は、ドレスローザのコロシアムの前でドフラミンゴにやられ意識を失ったところで終わっている。コロシアムの中に麦藁屋がいた気がするとかそういうことは思い出せるのに、肝心の会話は何一つ思い出せなかった。
色々と確認したいことはあったが、それよりもテーブルを挟んで向かいのソファへ寝そべっている男だ。男はローの良く知る者と同じ姿をしている。
ただ、その知り合いと違って目の色は“金色”だ。
「……トラファルガー・D・ワーテル・ロー?」
男によく似た知り合いは、男には教えたことがないローの本当のフルネームを口にしてローを見つめたまま体を起こす。陶器のこすれる音がしてテーブルの上を見ると、一瞬にして二人分の紅茶が置かれていた。
「驚いたな。君はここへ来られると思っていなかった」
「……ここは何処だ?」
「深い深い海の底だよ。人の殻を纏ったままでは本来容易にはたどり着けない、ね」
そうかだからこんなにこの場所は青いのかと妙な納得をする。海の底になど行ったことは無いけれど、きっとここの様に深い青色をしているのだろう。
「ここの主は出掛けていてね。最近はオレの出番も少ねぇからここで暇を潰しているんだぁ。それにしても君は、何かを成し遂げようとしている最中ではなかったのかね?」
「……多分」
「どうにもはっきりしない返事ですね。いやまぁ仕方ねえのか。ここへ来るのはどいつもそういうものであるしね」
「アンタは誰だ」
「“影”だよ」
男がカップを手に取った。
「飲むといい。少しだけだけれど気力を回復できる。君にはそれが必要だ。他にも色々とね」
「色々?」
「そうだな。例えばタイミングだ。例えば救いだ。例えば希望だ」
言われてもローにはピンとこない。清涼感のある香りが鼻をくすぐる。
「前にそこへ座った男は、愛している子が居たのだと泣いたよ」
男がその金色の目でローを見た。
「君はここで死んで、あの男やアイツを悲しませるのかい?」
俯いた先の、カップの中の琥珀色がローの顔を映す。まだ死ねない。死ねる訳がない。
生き残れると思っていないけれど、まだ。
男がため息を吐く。
「アイツが悲しむから君が死ぬのは受け入れ難い。仕方ないからアイツに伝えてやろう」
まるで子供へ取りなすように言って、男は等間隔に並んでいた扉の一つを指差した。振り返って見ればその扉以外のドアが消えてなくなっている。
立ち上がってその扉へ向かい、手をかける直前に男を振り返った。男は誰かへ伝えると言っていたくせに、行動に移す様子は無く既に再びソファへ寝そべっていた。
「アンタの名前は」
「“イブリス”だ。沢山の“唯一”を愛して辿り着けない旅人の、鞄のようなものかな」
ドアを開ける。
青い部屋だった。
壁の見えないどこまでも広い部屋で、青い扉が不等間隔で点在している。
青い一人掛けの椅子と青いテーブル。その向こうへ置かれた青いソファに、黒い長髪の男が寝そべったまま驚いたようにローを見ていた。
ローの記憶は、ドレスローザのコロシアムの前でドフラミンゴにやられ意識を失ったところで終わっている。コロシアムの中に麦藁屋がいた気がするとかそういうことは思い出せるのに、肝心の会話は何一つ思い出せなかった。
色々と確認したいことはあったが、それよりもテーブルを挟んで向かいのソファへ寝そべっている男だ。男はローの良く知る者と同じ姿をしている。
ただ、その知り合いと違って目の色は“金色”だ。
「……トラファルガー・D・ワーテル・ロー?」
男によく似た知り合いは、男には教えたことがないローの本当のフルネームを口にしてローを見つめたまま体を起こす。陶器のこすれる音がしてテーブルの上を見ると、一瞬にして二人分の紅茶が置かれていた。
「驚いたな。君はここへ来られると思っていなかった」
「……ここは何処だ?」
「深い深い海の底だよ。人の殻を纏ったままでは本来容易にはたどり着けない、ね」
そうかだからこんなにこの場所は青いのかと妙な納得をする。海の底になど行ったことは無いけれど、きっとここの様に深い青色をしているのだろう。
「ここの主は出掛けていてね。最近はオレの出番も少ねぇからここで暇を潰しているんだぁ。それにしても君は、何かを成し遂げようとしている最中ではなかったのかね?」
「……多分」
「どうにもはっきりしない返事ですね。いやまぁ仕方ねえのか。ここへ来るのはどいつもそういうものであるしね」
「アンタは誰だ」
「“影”だよ」
男がカップを手に取った。
「飲むといい。少しだけだけれど気力を回復できる。君にはそれが必要だ。他にも色々とね」
「色々?」
「そうだな。例えばタイミングだ。例えば救いだ。例えば希望だ」
言われてもローにはピンとこない。清涼感のある香りが鼻をくすぐる。
「前にそこへ座った男は、愛している子が居たのだと泣いたよ」
男がその金色の目でローを見た。
「君はここで死んで、あの男やアイツを悲しませるのかい?」
俯いた先の、カップの中の琥珀色がローの顔を映す。まだ死ねない。死ねる訳がない。
生き残れると思っていないけれど、まだ。
男がため息を吐く。
「アイツが悲しむから君が死ぬのは受け入れ難い。仕方ないからアイツに伝えてやろう」
まるで子供へ取りなすように言って、男は等間隔に並んでいた扉の一つを指差した。振り返って見ればその扉以外のドアが消えてなくなっている。
立ち上がってその扉へ向かい、手をかける直前に男を振り返った。男は誰かへ伝えると言っていたくせに、行動に移す様子は無く既に再びソファへ寝そべっていた。
「アンタの名前は」
「“イブリス”だ。沢山の“唯一”を愛して辿り着けない旅人の、鞄のようなものかな」
ドアを開ける。