ドレスローザ編
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夢主視点
襲撃者である『早害のジャック』との戦闘は夕刻になっても収束を迎える予兆もなく、目を覚ましたネコマムシも報告を聞いて活動時間である夕方六時を迎えた瞬間に、迎撃へ打って出ると宣言した。
それを聞かされたところでハートの海賊団は動けないのが歯がゆい。侠客団を率いる為にシルビの傍から去っていったペドロと入れ替わりに、収束後の治療の用意の手伝いをしていたはずのバンダナがシルビの元へと戻ってくる。
「もう怪我した町人達が避難してきてるよ。襲撃してきた奴らは手練れらしいね」
「四皇のカイドウの手下らしいです。賞金は十億ベリー」
「そりゃ……高いね」
「なんですかその拍子抜けな言い方」
「だってねえ。目の前にもっと高いのがいる訳だし」
目の前の『高いの』ことシルビは、自分の賞金額が十億だった頃はもう覚えていない。肩をすくめてどうでもいい会話を終わらせる。
「避難してきた怪我人の治療は」
「ワカメ達が始めてる」
「なら俺も」
「行く前にペンちゃんはあっちだ」
そう言ってバンダナが指差したほうを振り向けば、物言いたげなベポがシルビ達の様子を伺っていた。ベポは医者の勉強をしていないので治療の手伝いしか出来ないにしたって、物言いたげにしている意味は分からない。
いや、分かることには分かっていた。シルビだって二年前の頂上戦争の直前か直後、似たような顔をしていただろう。
歩み寄ってベポの前へ立てば、しかしベポは遠慮がちに俯くだけで話し出そうとはしない。
「ベポ」
仕方なく水を向けるように名を呼ぶ。そうしてやっとベポはシルビと目を合わせた。
「あの、ペンギン……その」
「言ってごらん?」
「……その、オレもネコマムシの旦那達と一緒に、皆を守りたいんだ」
「うん」
「だから、オレ、森を出て、加勢してきて、いい?」
二年前のシルビに『一時的に船を降りていいか』と言われた時、船長はきっとこんな気分にはならなかっただろう。ではどんな気分かと言われたらシルビには答えられない。
ただ、小さい頃から見守ってきた筈の子供が大人になった様な気分ではある。
後ろを振り返って煙草をもみ消していたバンダナを呼んだ。
「バンダナさん。ベポを連れてネコマムシの旦那のところへ行ってきます。シャチ達に加勢班と治療班へ分かれるように指示をお願いします」
「あいよ」
「ペンギン!」
ベポの手を掴んで歩き出す。早くしないと夕方の六時になってしまう。
「ネコマムシの旦那を言いくるめて加勢に出よう。故郷を守るのは決して悪ぃことじゃねぇよ」
一番に加勢へ行きたいと言ったベポに、医療知識を持っていないシャチ。それから同じく医療知識を持っていないジャンバールを筆頭に、シルビも含めて過半数がネコマムシ率いる侠客団と共にクラウ都の中心部へと向かった。
故郷を守ることは決して悪いことではない。シルビだって故郷を守る為になら何だって出来る。正確には故郷の島へ住む者達の為に。
あの国は政府非加盟国家だ。それ故の侵略も襲撃もこの千年の間何度もあった。それはこのズニーシャの背の上へ築かれたミンク族の国も同じだろう。
だがどちらも滅んでいない。滅ぶことを良しとしない者達がいる。
滅ぶことを良しとせず必死に“諦めない者”が一人でもいるのなら、それはとても尊いことだ。
「海賊になってもここはオレの故郷だ!」
「オレ達にゃ……仲間の故郷!」
それぞれの武器を構えてネコマムシ達と共に『早害のジャック』率いる襲撃者達へ対峙する。悪魔の実の能力であったらしいマンモスの姿もさることながら、平素の姿もシルビからすれば見上げるほどの巨体であった。
肩から伸びていた角のような物は曲刀を納めた鞘で、引き抜かれた曲刀は鈍く光って使い込まれていることを知らしめる。ネコマムシへ一度は投げ飛ばされたとはいえ、その分の衝撃など大したダメージにすらなっていないのだろう。
雄叫びをあげてどちらからともなくそれぞれの武器を振り上げる姿に、シルビは持っていた槍をその巨体故に何処からでも見ることが出来るジャックへ向けて投擲した。
当たらずとも構わない。むしろ避けて、シルビの存在へ気付けば良かった。
確実に目を狙って放たれた槍が気に障ったのか、ジャックとその近くにいた腹心らしい者が数名、シルビの姿を視界へ入れる。それから羽虫でも払うかといった程度の気しかシルビへ向けず、けれどもシルビを狙ってその腕を振り上げた。
振り上げられた腕が振り下ろされる瞬間、シルビは腕を伸ばして指を鳴らす。藍色の炎が指先で一瞬激しく燃え上がったのに、いったい何人が気付くことが出来ただろうか。
ジャラリ、と。
周囲の建造物や木々の陰から伸びた鎖が、ジャックと腹心格の数名へと縦横無尽に絡み付いていった。
予想外であったのだろうその出来事に、ジャック達襲撃者側だけではなくネコマムシ達もわずかに驚いたようだ。ハートのクルー達は少しだけ驚きこそすれ、シルビの手元へ繋がる鎖の先端を見て何かに納得したように再び動き出す。
全身へ絡み付いた鎖をギシと軋ませ、身動きの取れなくなったらしいジャックがシルビを睨む。
襲撃者である『早害のジャック』との戦闘は夕刻になっても収束を迎える予兆もなく、目を覚ましたネコマムシも報告を聞いて活動時間である夕方六時を迎えた瞬間に、迎撃へ打って出ると宣言した。
それを聞かされたところでハートの海賊団は動けないのが歯がゆい。侠客団を率いる為にシルビの傍から去っていったペドロと入れ替わりに、収束後の治療の用意の手伝いをしていたはずのバンダナがシルビの元へと戻ってくる。
「もう怪我した町人達が避難してきてるよ。襲撃してきた奴らは手練れらしいね」
「四皇のカイドウの手下らしいです。賞金は十億ベリー」
「そりゃ……高いね」
「なんですかその拍子抜けな言い方」
「だってねえ。目の前にもっと高いのがいる訳だし」
目の前の『高いの』ことシルビは、自分の賞金額が十億だった頃はもう覚えていない。肩をすくめてどうでもいい会話を終わらせる。
「避難してきた怪我人の治療は」
「ワカメ達が始めてる」
「なら俺も」
「行く前にペンちゃんはあっちだ」
そう言ってバンダナが指差したほうを振り向けば、物言いたげなベポがシルビ達の様子を伺っていた。ベポは医者の勉強をしていないので治療の手伝いしか出来ないにしたって、物言いたげにしている意味は分からない。
いや、分かることには分かっていた。シルビだって二年前の頂上戦争の直前か直後、似たような顔をしていただろう。
歩み寄ってベポの前へ立てば、しかしベポは遠慮がちに俯くだけで話し出そうとはしない。
「ベポ」
仕方なく水を向けるように名を呼ぶ。そうしてやっとベポはシルビと目を合わせた。
「あの、ペンギン……その」
「言ってごらん?」
「……その、オレもネコマムシの旦那達と一緒に、皆を守りたいんだ」
「うん」
「だから、オレ、森を出て、加勢してきて、いい?」
二年前のシルビに『一時的に船を降りていいか』と言われた時、船長はきっとこんな気分にはならなかっただろう。ではどんな気分かと言われたらシルビには答えられない。
ただ、小さい頃から見守ってきた筈の子供が大人になった様な気分ではある。
後ろを振り返って煙草をもみ消していたバンダナを呼んだ。
「バンダナさん。ベポを連れてネコマムシの旦那のところへ行ってきます。シャチ達に加勢班と治療班へ分かれるように指示をお願いします」
「あいよ」
「ペンギン!」
ベポの手を掴んで歩き出す。早くしないと夕方の六時になってしまう。
「ネコマムシの旦那を言いくるめて加勢に出よう。故郷を守るのは決して悪ぃことじゃねぇよ」
一番に加勢へ行きたいと言ったベポに、医療知識を持っていないシャチ。それから同じく医療知識を持っていないジャンバールを筆頭に、シルビも含めて過半数がネコマムシ率いる侠客団と共にクラウ都の中心部へと向かった。
故郷を守ることは決して悪いことではない。シルビだって故郷を守る為になら何だって出来る。正確には故郷の島へ住む者達の為に。
あの国は政府非加盟国家だ。それ故の侵略も襲撃もこの千年の間何度もあった。それはこのズニーシャの背の上へ築かれたミンク族の国も同じだろう。
だがどちらも滅んでいない。滅ぶことを良しとしない者達がいる。
滅ぶことを良しとせず必死に“諦めない者”が一人でもいるのなら、それはとても尊いことだ。
「海賊になってもここはオレの故郷だ!」
「オレ達にゃ……仲間の故郷!」
それぞれの武器を構えてネコマムシ達と共に『早害のジャック』率いる襲撃者達へ対峙する。悪魔の実の能力であったらしいマンモスの姿もさることながら、平素の姿もシルビからすれば見上げるほどの巨体であった。
肩から伸びていた角のような物は曲刀を納めた鞘で、引き抜かれた曲刀は鈍く光って使い込まれていることを知らしめる。ネコマムシへ一度は投げ飛ばされたとはいえ、その分の衝撃など大したダメージにすらなっていないのだろう。
雄叫びをあげてどちらからともなくそれぞれの武器を振り上げる姿に、シルビは持っていた槍をその巨体故に何処からでも見ることが出来るジャックへ向けて投擲した。
当たらずとも構わない。むしろ避けて、シルビの存在へ気付けば良かった。
確実に目を狙って放たれた槍が気に障ったのか、ジャックとその近くにいた腹心らしい者が数名、シルビの姿を視界へ入れる。それから羽虫でも払うかといった程度の気しかシルビへ向けず、けれどもシルビを狙ってその腕を振り上げた。
振り上げられた腕が振り下ろされる瞬間、シルビは腕を伸ばして指を鳴らす。藍色の炎が指先で一瞬激しく燃え上がったのに、いったい何人が気付くことが出来ただろうか。
ジャラリ、と。
周囲の建造物や木々の陰から伸びた鎖が、ジャックと腹心格の数名へと縦横無尽に絡み付いていった。
予想外であったのだろうその出来事に、ジャック達襲撃者側だけではなくネコマムシ達もわずかに驚いたようだ。ハートのクルー達は少しだけ驚きこそすれ、シルビの手元へ繋がる鎖の先端を見て何かに納得したように再び動き出す。
全身へ絡み付いた鎖をギシと軋ませ、身動きの取れなくなったらしいジャックがシルビを睨む。