ドレスローザ編
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夢主視点
騒々しい鐘の音がゾウの背中に築かれたモコモ公国に鳴り響く。ベポというミンク族が仲間にいるとはいえ海賊扱いで、くじらの森に住むモコモ公国の王の片割れであるネコマムシの旦那預かりとなっていたハートの海賊団とシルビがその音を聞いたのは、夜行性に近しいネコマムシがまだ活動する時間ではない昼間の事だった。
基本侠客団に属するミンク族は夜行性の動物の姿を持つ者が多い。更に言うならネコマムシがいがみ合っているもう一人の王イヌアラシ公爵との取り決まりで、昼間と夜とで活動時間を完全に区切りあっていた。
だから本来なら夜を活動時間とするネコマムシ預かりのハートの海賊団もそれに倣わねばならないのだが、人間であるということもあってシルビ達はある程度の自由を許されていたのである。だからシルビは魚人島へこっそり行くなんて事が出来た訳であるのだけれども。
そんな昼間の、殆どの侠客団に属するミンク族がネコマムシを筆頭に眠りこけていた時間帯。昼夜問わず二人の王の間を行き来できる側近への連絡にクルーを数名走らせ、シルビは公国の中心部であるクラウ都を確認してもらう為に樹の上へと登らせたワカメやトドを見上げた。
「何か見えたかぁ?」
「象が居た象! 暴れてるんだけど!」
「ゾウの上に象? 動物の象ってこと?」
「ちげーよ! なんだっけ!? アレ! あの、ホラ、肉!」
「……マンモス?」
「そうそれ!」
驚いて言葉が出なかっただけだとワカメにとって都合のいい解釈をしてやりながら、連想ゲームでどうにか理解した動物にシルビは唸る。
ここはズニーシャと呼ばれる巨大象の上だが、動物の象は居なかったはずだ。何せズニーシャは別にただ歩いている訳ではないのである。
となればそのマンモスは何故クラウ都へ現れ、襲撃の鐘を鳴らされているのかが問題だ。
「ペンギン」
呼ばれて振り返れば侠客団の団長であるペドロが向かってくるところだった。船長が居ないのでハートの海賊団の代表は副船長であるシルビが担っている。
「さっきの鐘の音は聞いたか」
「やっぱりただの鐘じゃねぇんですね?」
「ああ、アレは“敵襲の鐘”だ。今部下にクラウ都へ探りに行かせた」
敵襲、ということはワカメが樹の上から見たマンモスは敵の勢力の一部か何かなのだろう。眠そうに目元をこするペドロがクラウ都のある方角を見やる。
今は昼間なので、侠客団はおいそれと森を出て行くことは出来ない。それは夜の王であるネコマムシ預かりのシルビ達も同じことだった。
「イヌアラシ公爵と銃士隊で片が付けばいいのだが……」
「襲撃者の正体と目的次第でしょう。念の為ハートの者達に治療の用意をさせておきます」
「それはありがたい。よろしく頼む」
既に襲撃が始まっている以上怪我人が出ているはずだ。医者の集まりであるハートの海賊団にも手を貸せることがあるのならと提案しかけたところで、騒ぎを聞いて散っていたハートのクルー達も集まってくる。
潜伏させて貰っている身でその組織や社会へ首を突っ込むのは褒められたことではない。だから襲撃があったと話が来てもシルビ達が特攻していく訳には行かなかった。
場合によってはその襲撃者が、船長絡みのハートの海賊団を狙うドフラミンゴの傘下などある可能性も捨てきれない。船長が今頃何をやっているのかという情報は殆ど入っていなかった。
「怪我人が出るだろうことは確実だから、全員治療が出来る準備をしてくれるかぁ。念の為武器は手元へ。でも勝手に森から――」
「出ないこと!」
「――よろしい。いくらベポの故郷とは言え、ネコマムシの旦那の温情で居させてもらってることを忘れねぇようにぃ」
「アイアイ!」
走り出すクルー達を見送る間にも森の外からは戦闘の轟音が響き始めている。空を見上げれば土煙が舞い上がっているのが窺え、シルビは意識して手を握りしめた。
多分シルビが一人で様子を見に行ってしまえば一番早いのだ。情報を得るにも襲撃者を片付けるにも、『死告シャイタン』の二つ名は伊達じゃない。
襲撃者がハートのクルーを狙ったものであるのなら尚のこと。だがそれはミンク族への軽蔑行為になる。
こういう時、船長が居てくれればと思う。船長がいたならハートのクルー達やミンク族への言い訳は船長へ任せて、シルビは一人で悠々と単独行動が出来るからだ。
「不安か」
同じ方角を眺めていたペドロへ問われて横目で彼を見た。物思いに耽っていたのを不安がっているとでも思われたのだろう。
「……別に貴方の同胞を舐めてるつもりはありませんよ。千年の歴史を守り続けた者達だぁ。千年は長い」
「そうだな」
けれども、短いとも思うのはシルビだけか。
クラウ都へ情報収集に出ていたのだろうペドロの部下が戻ってくる。焦りを浮かべた表情でされた報告曰く、襲撃者の正体は四皇の一人であるカイドウの手下『干害のジャック』
目的はこのモコモ公国へいるはずの『ワノの国の武人』らしい。
「ワノ国……『光月家』?」
思わず呟いた横で、ペドロが無言でシルビを見ていた。
騒々しい鐘の音がゾウの背中に築かれたモコモ公国に鳴り響く。ベポというミンク族が仲間にいるとはいえ海賊扱いで、くじらの森に住むモコモ公国の王の片割れであるネコマムシの旦那預かりとなっていたハートの海賊団とシルビがその音を聞いたのは、夜行性に近しいネコマムシがまだ活動する時間ではない昼間の事だった。
基本侠客団に属するミンク族は夜行性の動物の姿を持つ者が多い。更に言うならネコマムシがいがみ合っているもう一人の王イヌアラシ公爵との取り決まりで、昼間と夜とで活動時間を完全に区切りあっていた。
だから本来なら夜を活動時間とするネコマムシ預かりのハートの海賊団もそれに倣わねばならないのだが、人間であるということもあってシルビ達はある程度の自由を許されていたのである。だからシルビは魚人島へこっそり行くなんて事が出来た訳であるのだけれども。
そんな昼間の、殆どの侠客団に属するミンク族がネコマムシを筆頭に眠りこけていた時間帯。昼夜問わず二人の王の間を行き来できる側近への連絡にクルーを数名走らせ、シルビは公国の中心部であるクラウ都を確認してもらう為に樹の上へと登らせたワカメやトドを見上げた。
「何か見えたかぁ?」
「象が居た象! 暴れてるんだけど!」
「ゾウの上に象? 動物の象ってこと?」
「ちげーよ! なんだっけ!? アレ! あの、ホラ、肉!」
「……マンモス?」
「そうそれ!」
驚いて言葉が出なかっただけだとワカメにとって都合のいい解釈をしてやりながら、連想ゲームでどうにか理解した動物にシルビは唸る。
ここはズニーシャと呼ばれる巨大象の上だが、動物の象は居なかったはずだ。何せズニーシャは別にただ歩いている訳ではないのである。
となればそのマンモスは何故クラウ都へ現れ、襲撃の鐘を鳴らされているのかが問題だ。
「ペンギン」
呼ばれて振り返れば侠客団の団長であるペドロが向かってくるところだった。船長が居ないのでハートの海賊団の代表は副船長であるシルビが担っている。
「さっきの鐘の音は聞いたか」
「やっぱりただの鐘じゃねぇんですね?」
「ああ、アレは“敵襲の鐘”だ。今部下にクラウ都へ探りに行かせた」
敵襲、ということはワカメが樹の上から見たマンモスは敵の勢力の一部か何かなのだろう。眠そうに目元をこするペドロがクラウ都のある方角を見やる。
今は昼間なので、侠客団はおいそれと森を出て行くことは出来ない。それは夜の王であるネコマムシ預かりのシルビ達も同じことだった。
「イヌアラシ公爵と銃士隊で片が付けばいいのだが……」
「襲撃者の正体と目的次第でしょう。念の為ハートの者達に治療の用意をさせておきます」
「それはありがたい。よろしく頼む」
既に襲撃が始まっている以上怪我人が出ているはずだ。医者の集まりであるハートの海賊団にも手を貸せることがあるのならと提案しかけたところで、騒ぎを聞いて散っていたハートのクルー達も集まってくる。
潜伏させて貰っている身でその組織や社会へ首を突っ込むのは褒められたことではない。だから襲撃があったと話が来てもシルビ達が特攻していく訳には行かなかった。
場合によってはその襲撃者が、船長絡みのハートの海賊団を狙うドフラミンゴの傘下などある可能性も捨てきれない。船長が今頃何をやっているのかという情報は殆ど入っていなかった。
「怪我人が出るだろうことは確実だから、全員治療が出来る準備をしてくれるかぁ。念の為武器は手元へ。でも勝手に森から――」
「出ないこと!」
「――よろしい。いくらベポの故郷とは言え、ネコマムシの旦那の温情で居させてもらってることを忘れねぇようにぃ」
「アイアイ!」
走り出すクルー達を見送る間にも森の外からは戦闘の轟音が響き始めている。空を見上げれば土煙が舞い上がっているのが窺え、シルビは意識して手を握りしめた。
多分シルビが一人で様子を見に行ってしまえば一番早いのだ。情報を得るにも襲撃者を片付けるにも、『死告シャイタン』の二つ名は伊達じゃない。
襲撃者がハートのクルーを狙ったものであるのなら尚のこと。だがそれはミンク族への軽蔑行為になる。
こういう時、船長が居てくれればと思う。船長がいたならハートのクルー達やミンク族への言い訳は船長へ任せて、シルビは一人で悠々と単独行動が出来るからだ。
「不安か」
同じ方角を眺めていたペドロへ問われて横目で彼を見た。物思いに耽っていたのを不安がっているとでも思われたのだろう。
「……別に貴方の同胞を舐めてるつもりはありませんよ。千年の歴史を守り続けた者達だぁ。千年は長い」
「そうだな」
けれども、短いとも思うのはシルビだけか。
クラウ都へ情報収集に出ていたのだろうペドロの部下が戻ってくる。焦りを浮かべた表情でされた報告曰く、襲撃者の正体は四皇の一人であるカイドウの手下『干害のジャック』
目的はこのモコモ公国へいるはずの『ワノの国の武人』らしい。
「ワノ国……『光月家』?」
思わず呟いた横で、ペドロが無言でシルビを見ていた。