二年後編
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夢主視点
船長が船を降りて暫く。合流地点であり目的地であるゾウへ着き、ミンク族に世話になりながら船長との合流を待つ日々が続いている。
早朝の誰もいない開けた場所へ移動すれば、ミンク族とは違う動物と呼ばれる側の鳥や小動物が集まっていた。シルビの姿に気付いてそれぞれ顔を上げたり、歩み寄ってきてはすり寄ったりしてくるそれらを適当に撫でながら、シルビは木の枝へ留まっていた鳥を見上げる。
シルビの視線に気付いてその鳥が鳴く。
「……ルフィ君が?」
『×××』で鳥の言葉を理解して、その情報に目を丸くした。
ルフィ君こと『麦藁の一味』が、二年ぶりにやっと再結成されたらしい。
二年前にシャボンディ諸島でバラバラになった彼らは、その後の頂上戦争でルフィが己の弱さを自覚したが故に、この二年間は各々で自身の研鑽へ勤めていた。筈である。
シルビが知っているのは二年前、ルスカイナ島でレイリーと修行をする為に籠もったルフィまでだがその事情は知っていた。というよりレイリーがルフィへ申し出なければシルビがその役を担っていただろう。
それが『エースとの約束』であった訳ではないが、個人的に気になってはいたのだ。まだルフィ本人との縁は浅いがその周りとの縁は深いからこそ。
『麦藁の一味』の船は確か、シャボンティ諸島に二年間置きっぱなしになっていたはずだ。鳥の話では再集結した『麦藁の一味』はシャボンディ諸島から新世界へと旅立ったようである。
シャボンディ諸島の次は多くの海賊船がそうであるように魚人島だろう。シルビが気にすることはないが、あの島には古代兵器の一つが”眠っている”。
「……まぁ、問題無ぇだろぉ」
「何がだい?」
声がして振り返ればバンダナが歩いてくるところで、シルビの周りにいた鳥や小動物がバンダナの姿を見て一斉に逃げ去っていった。
「麦藁の一味が再結成したらしいですよ」
「……ペンちゃん。オレやシャチに正体ばれてからちょっと警戒心が薄れてやしないかい?」
呆れたように指摘されたが、言われて自分でも確かにと思ってしまった辺り、少し『ペンギン』としての自覚が薄れてしまっているのかも知れない。船長が居なくなって、あの船長の面倒をしなくなって地が出てしまっているのか。
「船長が戻ったら気を付けます。それまでは信頼の証ってことでぇ」
「オッサンもっと普通の信頼の証が欲しいや。……で? 麦藁の一味が再結成って?」
「もう出航もしたらしいし、敵であれ味方であれ会えたら嬉しいですねぇ」
「まぁ、そりゃペンちゃんだけだろうね」
「敵船だからですか? まぁそう言われたらそうなんでしょうけど」
「そもそも別に麦藁の船に興味がないって言う感じかねえ。麦藁だけを治療しただけの仲だよ? オレ達にとってはね」
『麦藁の一味の再結成』という、個人的には船長の安否の次に大々的なニュースについて、バンダナは煙草を吹かしながらそう言ってきた。
バンダナの言うことも尤もといえば尤もだ。シルビはルフィと治療だけではなく『十六点鐘』に付き合ったりエースについて話したりと、ハートの海賊団の一人という括り以上の関わりがあった。
だがシルビ以外のハートのメンバーにとっては、ルフィは『船長の指示で治療した患者』でしかない。思い入れの度合いなど最初から違っている。
「大体、麦藁んとこが再結成したからって、ペンちゃんはお祝いにでも行くつもりかい?」
「シャチ達を放っては行けねぇですねぇ」
「そうだね。行くって言ったら流石に怒るところだったよ。船長が聞いてたらそうやって喜んでるだけでも機嫌悪くなってただろうねえ」
紫煙を吐き出して言うバンダナのその言葉には首を傾げる。横目でそれを見たバンダナが呆れ果てたように息を吐いた。
「船長もルフィ君の再活動は意外と喜ぶんじゃ?」
「そりゃあ喜ぶだろうさ。自分が治した患者だ。オレが言いたいのはそういう事じゃなくてねえ……」
そうではない、と言われてもシルビにはピンとくる理由が思い付かない。この二年間殆どルフィの話などしなかったが、便りがないのが良い便りともいうし悪い話も聞いていなかった。だが医者を名乗る者としては患者の経過も気になっていたはずである。
それに船長はルフィの兄であるエースだって一応助けに行こうとした。その意図は未だに分からないがそう行動するだけの思い入れか何かがあったのなら、ハートのクルーよりはシルビに近い思考で麦藁の一味の再結成へ興味を持ってくれるのではと思っていたのだが。
「せめて船長がどんな反応するのかは見てみてぇ気がしませんか?」
「……あー、そうだね。オレもちょっとだけ見てみたいわ。もう最高に機嫌が悪くなるだろうねえ」
「なんでですか?」
「……分からないならそれでいいよ」
煙草の火を念入りに消してバンダナが寄りかかっていた樹から身を離す。仕事へ戻るのだろうと判断してシルビも仕事へ戻ろうとすると、吸い殻を灰皿へ捨てたバンダナに呼ばれた。
「もし船長が麦藁の一味に会いに行っていいって言って、会いに行って向こうがペンちゃんの事を勧誘したらどうする?」
「どうするって、オレはハートの副船長なんだから断るに決まってるじゃねぇですか」
当たり前のことを何故聞いてくるのかと視線だけで尋ねれば、バンダナは腕組みをして考え込むように呟く。
「一本気ではあるんだけどねえ……」
何の話かは分からなかった。
船長が船を降りて暫く。合流地点であり目的地であるゾウへ着き、ミンク族に世話になりながら船長との合流を待つ日々が続いている。
早朝の誰もいない開けた場所へ移動すれば、ミンク族とは違う動物と呼ばれる側の鳥や小動物が集まっていた。シルビの姿に気付いてそれぞれ顔を上げたり、歩み寄ってきてはすり寄ったりしてくるそれらを適当に撫でながら、シルビは木の枝へ留まっていた鳥を見上げる。
シルビの視線に気付いてその鳥が鳴く。
「……ルフィ君が?」
『×××』で鳥の言葉を理解して、その情報に目を丸くした。
ルフィ君こと『麦藁の一味』が、二年ぶりにやっと再結成されたらしい。
二年前にシャボンディ諸島でバラバラになった彼らは、その後の頂上戦争でルフィが己の弱さを自覚したが故に、この二年間は各々で自身の研鑽へ勤めていた。筈である。
シルビが知っているのは二年前、ルスカイナ島でレイリーと修行をする為に籠もったルフィまでだがその事情は知っていた。というよりレイリーがルフィへ申し出なければシルビがその役を担っていただろう。
それが『エースとの約束』であった訳ではないが、個人的に気になってはいたのだ。まだルフィ本人との縁は浅いがその周りとの縁は深いからこそ。
『麦藁の一味』の船は確か、シャボンティ諸島に二年間置きっぱなしになっていたはずだ。鳥の話では再集結した『麦藁の一味』はシャボンディ諸島から新世界へと旅立ったようである。
シャボンディ諸島の次は多くの海賊船がそうであるように魚人島だろう。シルビが気にすることはないが、あの島には古代兵器の一つが”眠っている”。
「……まぁ、問題無ぇだろぉ」
「何がだい?」
声がして振り返ればバンダナが歩いてくるところで、シルビの周りにいた鳥や小動物がバンダナの姿を見て一斉に逃げ去っていった。
「麦藁の一味が再結成したらしいですよ」
「……ペンちゃん。オレやシャチに正体ばれてからちょっと警戒心が薄れてやしないかい?」
呆れたように指摘されたが、言われて自分でも確かにと思ってしまった辺り、少し『ペンギン』としての自覚が薄れてしまっているのかも知れない。船長が居なくなって、あの船長の面倒をしなくなって地が出てしまっているのか。
「船長が戻ったら気を付けます。それまでは信頼の証ってことでぇ」
「オッサンもっと普通の信頼の証が欲しいや。……で? 麦藁の一味が再結成って?」
「もう出航もしたらしいし、敵であれ味方であれ会えたら嬉しいですねぇ」
「まぁ、そりゃペンちゃんだけだろうね」
「敵船だからですか? まぁそう言われたらそうなんでしょうけど」
「そもそも別に麦藁の船に興味がないって言う感じかねえ。麦藁だけを治療しただけの仲だよ? オレ達にとってはね」
『麦藁の一味の再結成』という、個人的には船長の安否の次に大々的なニュースについて、バンダナは煙草を吹かしながらそう言ってきた。
バンダナの言うことも尤もといえば尤もだ。シルビはルフィと治療だけではなく『十六点鐘』に付き合ったりエースについて話したりと、ハートの海賊団の一人という括り以上の関わりがあった。
だがシルビ以外のハートのメンバーにとっては、ルフィは『船長の指示で治療した患者』でしかない。思い入れの度合いなど最初から違っている。
「大体、麦藁んとこが再結成したからって、ペンちゃんはお祝いにでも行くつもりかい?」
「シャチ達を放っては行けねぇですねぇ」
「そうだね。行くって言ったら流石に怒るところだったよ。船長が聞いてたらそうやって喜んでるだけでも機嫌悪くなってただろうねえ」
紫煙を吐き出して言うバンダナのその言葉には首を傾げる。横目でそれを見たバンダナが呆れ果てたように息を吐いた。
「船長もルフィ君の再活動は意外と喜ぶんじゃ?」
「そりゃあ喜ぶだろうさ。自分が治した患者だ。オレが言いたいのはそういう事じゃなくてねえ……」
そうではない、と言われてもシルビにはピンとくる理由が思い付かない。この二年間殆どルフィの話などしなかったが、便りがないのが良い便りともいうし悪い話も聞いていなかった。だが医者を名乗る者としては患者の経過も気になっていたはずである。
それに船長はルフィの兄であるエースだって一応助けに行こうとした。その意図は未だに分からないがそう行動するだけの思い入れか何かがあったのなら、ハートのクルーよりはシルビに近い思考で麦藁の一味の再結成へ興味を持ってくれるのではと思っていたのだが。
「せめて船長がどんな反応するのかは見てみてぇ気がしませんか?」
「……あー、そうだね。オレもちょっとだけ見てみたいわ。もう最高に機嫌が悪くなるだろうねえ」
「なんでですか?」
「……分からないならそれでいいよ」
煙草の火を念入りに消してバンダナが寄りかかっていた樹から身を離す。仕事へ戻るのだろうと判断してシルビも仕事へ戻ろうとすると、吸い殻を灰皿へ捨てたバンダナに呼ばれた。
「もし船長が麦藁の一味に会いに行っていいって言って、会いに行って向こうがペンちゃんの事を勧誘したらどうする?」
「どうするって、オレはハートの副船長なんだから断るに決まってるじゃねぇですか」
当たり前のことを何故聞いてくるのかと視線だけで尋ねれば、バンダナは腕組みをして考え込むように呟く。
「一本気ではあるんだけどねえ……」
何の話かは分からなかった。