空白の二年間編2
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夢主視点
自室のドアがノックされる音がして返事をすれば、部屋に入ってきたのは枕を抱えたベポだった。
「ベポ?」
「今日、一緒に寝ていい?」
「いいよ、おいでぇ」
書き掛けだった個人的な薬事ノートを閉じ、ベポを促して寝台へ向かう。もうシルビの身長などとっくに追い抜いてしまっているベポにシルビが使っている寝台は小さいが、シルビが壁の方へ寄れば寝られないことはない。
一晩くらいは我慢するかと掛布を捲ったところで、立っていたベポに呼ばれた。
「ペンギン」
「ん?」
「ミンク族って、どういう人たち?」
振り返ればベポは持ってきた枕を抱えて俯いている。食堂で話した時からずっと考えていたのだろう。
寝台に座って手招けばベポも隣に座った。
「どういう人たちって言われても、ちょっと毛深い奴らだとしか」
「オレ、その人達に会ったらどうすればいいの?」
「どうすればってぇ?」
「……船を降りる、とか」
小さくなっていく声と落ち込むように丸くなっていく背筋に、その背中を撫でる。唐突な相談だったが内容的に船長ではなくシルビへ聞かせてくれた当たりに内心で感謝した。
船長だったら頭ごなしに否定していただろう。ベポが昼間の話から何を考えたのか、それを汲んで言葉を選ぶなんて事は船長には出来まい。言葉を尽くせない男である。
「自分と同じ種族が居るって聞いて、不安になった?」
「……うん」
「別にお前をそこで降ろそうって為に行くんじゃねぇよ」
「うん……。分かってはいる、つもり」
それでもすっきりとは割り切れないだろう事は理解出来た。十数年同族の存在を知らず生きてきたのにいきなり同族が居ると教えられ、更にその同族がいる島へ行くというのだから。
シルビの場合船を降りるつもりは全く無かった。誰かへ呼び止められたとしてもだ。とはいえあの島でシルビを止めようとする者はいないが。
「ベポがゾウでハートを降りるって言い出しても、俺は反対するぜぇ。なんなら攫ってでも船に連れ帰るよ」
「ほんと?」
「本当。ベポは何があってもハートのクルーです」
出来るだけ力強く聞こえるように断言する。実際シルビはベポを船から降ろすつもりはないし、船長だってそうだろう。
ベポを拾ったあの日から、ベポはハートのクルー以外の何でもないのだ。
「お前はうちの子なんだから、今更ミンク族なんかにあげません」
「……ペンギンって、そーいう言い方するから皆に『お母さん』って言われちゃうんだよ」
そう言って笑って、ベポがもそもそと寝台へ潜り込む。その隣にシルビも横になって、ベポの耳を撫でた。
自室のドアがノックされる音がして返事をすれば、部屋に入ってきたのは枕を抱えたベポだった。
「ベポ?」
「今日、一緒に寝ていい?」
「いいよ、おいでぇ」
書き掛けだった個人的な薬事ノートを閉じ、ベポを促して寝台へ向かう。もうシルビの身長などとっくに追い抜いてしまっているベポにシルビが使っている寝台は小さいが、シルビが壁の方へ寄れば寝られないことはない。
一晩くらいは我慢するかと掛布を捲ったところで、立っていたベポに呼ばれた。
「ペンギン」
「ん?」
「ミンク族って、どういう人たち?」
振り返ればベポは持ってきた枕を抱えて俯いている。食堂で話した時からずっと考えていたのだろう。
寝台に座って手招けばベポも隣に座った。
「どういう人たちって言われても、ちょっと毛深い奴らだとしか」
「オレ、その人達に会ったらどうすればいいの?」
「どうすればってぇ?」
「……船を降りる、とか」
小さくなっていく声と落ち込むように丸くなっていく背筋に、その背中を撫でる。唐突な相談だったが内容的に船長ではなくシルビへ聞かせてくれた当たりに内心で感謝した。
船長だったら頭ごなしに否定していただろう。ベポが昼間の話から何を考えたのか、それを汲んで言葉を選ぶなんて事は船長には出来まい。言葉を尽くせない男である。
「自分と同じ種族が居るって聞いて、不安になった?」
「……うん」
「別にお前をそこで降ろそうって為に行くんじゃねぇよ」
「うん……。分かってはいる、つもり」
それでもすっきりとは割り切れないだろう事は理解出来た。十数年同族の存在を知らず生きてきたのにいきなり同族が居ると教えられ、更にその同族がいる島へ行くというのだから。
シルビの場合船を降りるつもりは全く無かった。誰かへ呼び止められたとしてもだ。とはいえあの島でシルビを止めようとする者はいないが。
「ベポがゾウでハートを降りるって言い出しても、俺は反対するぜぇ。なんなら攫ってでも船に連れ帰るよ」
「ほんと?」
「本当。ベポは何があってもハートのクルーです」
出来るだけ力強く聞こえるように断言する。実際シルビはベポを船から降ろすつもりはないし、船長だってそうだろう。
ベポを拾ったあの日から、ベポはハートのクルー以外の何でもないのだ。
「お前はうちの子なんだから、今更ミンク族なんかにあげません」
「……ペンギンって、そーいう言い方するから皆に『お母さん』って言われちゃうんだよ」
そう言って笑って、ベポがもそもそと寝台へ潜り込む。その隣にシルビも横になって、ベポの耳を撫でた。