空白の二年間編2
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夢主視点
「あとコレが一番重要ですが――『必ず戻ってきなさい』」
頭がガンガンと痛むのは、シルビの意思ではなく入られたからだろう。二重に重なって見える視界では船長がいきなり頭を抑えたシルビを訝しげに見ている。
「『ここはお前の居場所で、お前が居る場所だ。だから必ず戻ってきなさい』」
まるで子供へ言い聞かせるようなそれはしかし、シルビの言葉でありながらシルビの言葉だけではない。先程まで船長の隣で寝台へ座っていた彼が、シルビの口を借りて喋っている。
きっと今のシルビの眼は彼の生前の眼の色をしているだろう。それも見られたら困るなとボンヤリ思ったが、頭痛が酷くてあまり集中して考えられない。
ずっと話を聞いているしか出来なかった彼は、船長の『私情』を知っている様だ。だとすれば彼は何者で、船長とどんな関係だったのか。
『オレはそれでもやっぱり兄貴を殺せなかった』
初めて会った時の、何も知らないシルビへ吐露された言葉を思い出す。兄弟で殺し合うなんてシルビには想像すら出来ないが、彼が死んでも尚そう言った心境を思うと、もし船長が彼の代わりにそれを成そうとしているのであれば、それはなんてどうしようもない話なんだと思わざるを得ない。
彼は船長を止める言葉を言わなかった。今なら言えるだろうに、後のことなど何も考えずシルビの都合も気にせず言う事だって出来るだろうに、言わない。
止める気が無いのではなく、止まらないと分かっているのだろう。人の涙腺を占拠するほど泣きたいくせに。
「大丈夫か……?」
「……大丈夫です」
流石に泣いたのは悪いと思ったのか彼が出ていく。人の身体で泣く前に出て行けよとも思ったが、手で顔を覆ってシルビへ背を向ける彼の姿を、船長が見ることも出来やしないことに怒る気力も萎んだ。
彼の悲願だったのだろうか。何故泣いているのだろうか。シルビは。
「俺は貴方が船を降りることを止めねぇ代わりに、手出しも口出しもしません。情報収集も何もしねぇから貴方は全て一人でやってください」
目元を拭って息を吐く。そろそろ喉が痛い。
「でも無理だと思ったら逃げ帰ってくるのも一つの手です。諦めねぇ限りやり直すチャンスはあるんです。死なない限りは、何度でも」
シルビが未だに『兄を助ける』ことを諦めていないように。
船長はきっと『そんな生ぬるい』と思っているのだろうが、口に出しては言わなかった。ただやはり悲願がある事に関しては、競うことではないがシルビのほうが上手だ。
深呼吸して喉を擦り、『Esser restaurato』と言えば再び声が出なくなる。
「あとコレが一番重要ですが――『必ず戻ってきなさい』」
頭がガンガンと痛むのは、シルビの意思ではなく入られたからだろう。二重に重なって見える視界では船長がいきなり頭を抑えたシルビを訝しげに見ている。
「『ここはお前の居場所で、お前が居る場所だ。だから必ず戻ってきなさい』」
まるで子供へ言い聞かせるようなそれはしかし、シルビの言葉でありながらシルビの言葉だけではない。先程まで船長の隣で寝台へ座っていた彼が、シルビの口を借りて喋っている。
きっと今のシルビの眼は彼の生前の眼の色をしているだろう。それも見られたら困るなとボンヤリ思ったが、頭痛が酷くてあまり集中して考えられない。
ずっと話を聞いているしか出来なかった彼は、船長の『私情』を知っている様だ。だとすれば彼は何者で、船長とどんな関係だったのか。
『オレはそれでもやっぱり兄貴を殺せなかった』
初めて会った時の、何も知らないシルビへ吐露された言葉を思い出す。兄弟で殺し合うなんてシルビには想像すら出来ないが、彼が死んでも尚そう言った心境を思うと、もし船長が彼の代わりにそれを成そうとしているのであれば、それはなんてどうしようもない話なんだと思わざるを得ない。
彼は船長を止める言葉を言わなかった。今なら言えるだろうに、後のことなど何も考えずシルビの都合も気にせず言う事だって出来るだろうに、言わない。
止める気が無いのではなく、止まらないと分かっているのだろう。人の涙腺を占拠するほど泣きたいくせに。
「大丈夫か……?」
「……大丈夫です」
流石に泣いたのは悪いと思ったのか彼が出ていく。人の身体で泣く前に出て行けよとも思ったが、手で顔を覆ってシルビへ背を向ける彼の姿を、船長が見ることも出来やしないことに怒る気力も萎んだ。
彼の悲願だったのだろうか。何故泣いているのだろうか。シルビは。
「俺は貴方が船を降りることを止めねぇ代わりに、手出しも口出しもしません。情報収集も何もしねぇから貴方は全て一人でやってください」
目元を拭って息を吐く。そろそろ喉が痛い。
「でも無理だと思ったら逃げ帰ってくるのも一つの手です。諦めねぇ限りやり直すチャンスはあるんです。死なない限りは、何度でも」
シルビが未だに『兄を助ける』ことを諦めていないように。
船長はきっと『そんな生ぬるい』と思っているのだろうが、口に出しては言わなかった。ただやはり悲願がある事に関しては、競うことではないがシルビのほうが上手だ。
深呼吸して喉を擦り、『Esser restaurato』と言えば再び声が出なくなる。