原作前日常編
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少年視点
小さい頃に見た光景と、同じものはもう見えない。
いつの頃か太陽がとても眩しく感じられるようになって、夜は少しの明かりだけじゃ酷く暗くて怖いものに思えるようになった。ゴミの山から拾ったサングラスを掛けて過ごすようになって、それでも太陽は眩しくて夜は何も見えなくて。だから自然と太陽も夜も嫌いになった。
『死の外科医』という二つ名がつく海賊に『目を治してやる』と船へ乗せられたのはそんな矢先だ。今はもう『船長』と呼んでいるその相手が、自分を連れて船に戻って『PENGUIN』なんて書かれた帽子の男に酷く怒られていたのを怯えながら見ていて、他のクルーに見えない場所へ案内されたのを覚えている。
相手は船長なのにそれを正座させて怒っているソイツが怖くて、同時にムカついた。
船長に連れてこられた潜水艦の中には太陽の明かりは入ってこない。夜も室内灯が点いているので明るくて、自分にはとってもいい場所だった。
なのにソイツは自分が来たことが気に食わないらしい。
海の中を進む潜水艦の中で通路を走る。すれ違うクルーから転ぶなよと声を掛けられて返事を返した。艦内の配置を覚える為にまだ甲板掃除とか簡単な仕事しかさせてもらえないけれど、最近はずっと海へ潜りっぱなしだから甲板の掃除をする必要も無くて、自由な時間がたくさんある。
寝る為の船室の次に一番出入りする食堂で、辺りを見回してからワカメを呼ぶと、右手側のほうから返事が聞こえた。椅子にぶつかりながらもそちらへ向かえば、ワカメが声を掛けてくる。
「何かあった?」
「昨日の続き。ロープの結び方教えてよ」
「じゃあ練習用のロープ取ってこなくちゃ」
「オレが行こうか?」
「いや、オレが行ってくるよ。ついでにペンギンに伝えることあるし」
「……アイツもうすぐここにくるよ」
食堂の外の通路からゴツゴツと特徴的な足音が近付いてきていた。その特徴的な足音からいつも何処へいるのかとか何処を歩いているのかがすぐ分かる。だからあまり会いたくない自分には少しありがたかった。
案の定靴音を響かせてアイツが食堂へ来る。僅かに立ち止まった足音が厨房の方へ向かうのに、そっと息を吐く。苦笑する声がワカメのいる方からした。
「ペンギン怖い?」
「……別に怖いワケじゃねーし」
「じゃあ嫌い?」
答えずにいたら背後でまたゴツゴツとした足音が遠ざかっていくのが響く。
アイツは嫌いだ。だからあの足音だけは真っ先に覚えた。誰が好んで嫌いな奴の傍へ行くものか。
船長を叱るような奴なのに、誰もアイツを悪く言わない。だからシャチだけは、アイツを嫌いでいようと思っていた。
小さい頃に見た光景と、同じものはもう見えない。
いつの頃か太陽がとても眩しく感じられるようになって、夜は少しの明かりだけじゃ酷く暗くて怖いものに思えるようになった。ゴミの山から拾ったサングラスを掛けて過ごすようになって、それでも太陽は眩しくて夜は何も見えなくて。だから自然と太陽も夜も嫌いになった。
『死の外科医』という二つ名がつく海賊に『目を治してやる』と船へ乗せられたのはそんな矢先だ。今はもう『船長』と呼んでいるその相手が、自分を連れて船に戻って『PENGUIN』なんて書かれた帽子の男に酷く怒られていたのを怯えながら見ていて、他のクルーに見えない場所へ案内されたのを覚えている。
相手は船長なのにそれを正座させて怒っているソイツが怖くて、同時にムカついた。
船長に連れてこられた潜水艦の中には太陽の明かりは入ってこない。夜も室内灯が点いているので明るくて、自分にはとってもいい場所だった。
なのにソイツは自分が来たことが気に食わないらしい。
海の中を進む潜水艦の中で通路を走る。すれ違うクルーから転ぶなよと声を掛けられて返事を返した。艦内の配置を覚える為にまだ甲板掃除とか簡単な仕事しかさせてもらえないけれど、最近はずっと海へ潜りっぱなしだから甲板の掃除をする必要も無くて、自由な時間がたくさんある。
寝る為の船室の次に一番出入りする食堂で、辺りを見回してからワカメを呼ぶと、右手側のほうから返事が聞こえた。椅子にぶつかりながらもそちらへ向かえば、ワカメが声を掛けてくる。
「何かあった?」
「昨日の続き。ロープの結び方教えてよ」
「じゃあ練習用のロープ取ってこなくちゃ」
「オレが行こうか?」
「いや、オレが行ってくるよ。ついでにペンギンに伝えることあるし」
「……アイツもうすぐここにくるよ」
食堂の外の通路からゴツゴツと特徴的な足音が近付いてきていた。その特徴的な足音からいつも何処へいるのかとか何処を歩いているのかがすぐ分かる。だからあまり会いたくない自分には少しありがたかった。
案の定靴音を響かせてアイツが食堂へ来る。僅かに立ち止まった足音が厨房の方へ向かうのに、そっと息を吐く。苦笑する声がワカメのいる方からした。
「ペンギン怖い?」
「……別に怖いワケじゃねーし」
「じゃあ嫌い?」
答えずにいたら背後でまたゴツゴツとした足音が遠ざかっていくのが響く。
アイツは嫌いだ。だからあの足音だけは真っ先に覚えた。誰が好んで嫌いな奴の傍へ行くものか。
船長を叱るような奴なのに、誰もアイツを悪く言わない。だからシャチだけは、アイツを嫌いでいようと思っていた。