原作前日常編
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夢主視点
この世界の識字率は国や島によって様々であるが、平均してそう高くは無い。その原因は学校や寺子屋の様な設備が普及していないからと、国々の収入差が激しいからだろうとシルビは思っている。
故郷の島は一定の年齢までは無償での修学が国民へ浸透していたが、一歩故郷を出ればそれが贅沢であることはすぐに知れた。
何故そんな事を考えたかと思うと、向かいの席に座っている新入りクルーことワカメが、一生懸命文法を覚えようとしていたからである。少し前の島で新しくハートの海賊団へ参入した彼は、当人が自己申告した通り読み書きの段階で詰まっていた。
名詞の単語を読むことは出来るのだが、それを書くことや文章にする事は出来ない。というのも貧乏だった為に家へ本は無く、目にする文字は店頭に並ぶ商品名だけだったからの様だった。
「ワカメ、そこ間違ってるぜぇ」
「え、どこ!?」
「それじゃ“アリスはりんごが食べました”になる」
「……ここ?」
シルビだけに命じられた事ではないが、ワカメを正式にハートの海賊団とするには医者になるまでは勉強させなければならない。それが船長のローが決めたハートのクルーの条件だからである。
ワカメは勉強する機会が無かっただけで、物覚えはすこぶる良かった。だから店先の表示を見ていただけで単語を覚えられたのだろう。このご時勢、それすら出来ない子供だっているのだからこの世界はあべこべだ。
「どうだ? 勉強ははかどってるか?」
「船長、バンダナさん」
「えっと、ここまでやりました」
「どれ……もうここまでやったのかい?」
「覚えるのは早ぇですからねぇ。このまま医学知識も詰め込めりゃいいんですけど」
「……頭が空っぽだって言ってんのか?」
「記憶力がいいってことだぁ」
悪口を言われたと疑うワカメを誤魔化して、シルビは手元に置いていたノートを三人へ見られないようにそっと閉じる。個人的に薬草について記すのに使っているそのノートの中身は、共通語だけではなくワノ国の言語やこの世界ではない国の言葉まで使って綴られていた。
知られたくない製薬方を昔からそうやって記していたものだから、今でもその癖が残っているのである。つまりシルビが使っている言語は一つや二つではないということで。
学びたいのに学べなかったワカメの前で、それを晒して劣等感を覚えさせるはつもり無かった。だいたい、船長のローでも解読不可能だろうし。
「次の島では新しい本を買おうなぁ」
「オレの医学書も」
「それは賞金首の一つでも捕まえたら考えます」
「……ケチだな」
この世界の識字率は国や島によって様々であるが、平均してそう高くは無い。その原因は学校や寺子屋の様な設備が普及していないからと、国々の収入差が激しいからだろうとシルビは思っている。
故郷の島は一定の年齢までは無償での修学が国民へ浸透していたが、一歩故郷を出ればそれが贅沢であることはすぐに知れた。
何故そんな事を考えたかと思うと、向かいの席に座っている新入りクルーことワカメが、一生懸命文法を覚えようとしていたからである。少し前の島で新しくハートの海賊団へ参入した彼は、当人が自己申告した通り読み書きの段階で詰まっていた。
名詞の単語を読むことは出来るのだが、それを書くことや文章にする事は出来ない。というのも貧乏だった為に家へ本は無く、目にする文字は店頭に並ぶ商品名だけだったからの様だった。
「ワカメ、そこ間違ってるぜぇ」
「え、どこ!?」
「それじゃ“アリスはりんごが食べました”になる」
「……ここ?」
シルビだけに命じられた事ではないが、ワカメを正式にハートの海賊団とするには医者になるまでは勉強させなければならない。それが船長のローが決めたハートのクルーの条件だからである。
ワカメは勉強する機会が無かっただけで、物覚えはすこぶる良かった。だから店先の表示を見ていただけで単語を覚えられたのだろう。このご時勢、それすら出来ない子供だっているのだからこの世界はあべこべだ。
「どうだ? 勉強ははかどってるか?」
「船長、バンダナさん」
「えっと、ここまでやりました」
「どれ……もうここまでやったのかい?」
「覚えるのは早ぇですからねぇ。このまま医学知識も詰め込めりゃいいんですけど」
「……頭が空っぽだって言ってんのか?」
「記憶力がいいってことだぁ」
悪口を言われたと疑うワカメを誤魔化して、シルビは手元に置いていたノートを三人へ見られないようにそっと閉じる。個人的に薬草について記すのに使っているそのノートの中身は、共通語だけではなくワノ国の言語やこの世界ではない国の言葉まで使って綴られていた。
知られたくない製薬方を昔からそうやって記していたものだから、今でもその癖が残っているのである。つまりシルビが使っている言語は一つや二つではないということで。
学びたいのに学べなかったワカメの前で、それを晒して劣等感を覚えさせるはつもり無かった。だいたい、船長のローでも解読不可能だろうし。
「次の島では新しい本を買おうなぁ」
「オレの医学書も」
「それは賞金首の一つでも捕まえたら考えます」
「……ケチだな」